ダーリン・イン・ザ・ストラトス   作:とりマヨつくね

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投稿。この作品を作っていて、最近ダリフラをテレビ版、漫画版のゼロヒロを見て脳を焼かれていましたww



知らない幼馴染

「という訳で一年一組のクラス代表は織斑一夏君に決定したことを祝して、かんぱーい!」

「「「「かんぱーい!!」」」」

 

 

 カチンとコップをぶつけ、クラス代表決定戦お疲れ様会が幕を開けた。

 あるものはジュースを飲み、あるものは豪華な食事に手をつけ、あるものは試合の感想を言い合うなど各々が楽しんでいた。

 ある、一人を除いて。

 

 

「なあ……俺負けたはずなのに、なんでクラス代表になってるんだ?」

 

 

 今回のパーティーの主役である織斑一夏は、明らかに納得していなさそうな表情をしながらオレンジジュースを一気に飲み干す。

 先日のセシリアとの戦った。奮戦はしたものの、最後の最後でエネルギーが尽きてしまい敗北。

 その後にあったはずのヒロとの模擬戦も、ヒロが体調を崩したことでうやむやになってしまったかと思いきや、いつの間にかクラス委員になったのである。

 そうやって心の中で溜息をつきながら、ジュースの二杯目を注いでいると。

 

「それは私が辞退したからですわ」

「そしてお前が弱いからだ、馬鹿者」

「ち、ちちちち、千冬姉!? どうしてここに─────アギャ!?」

 

 言葉の途中で千冬の神速の名簿アタックによって、一夏は小さく鳴く。

 それを見ていたセシリアは、「大丈夫ですか!?」とこちらを心配する。

 そこには前のような棘はなくなっており、とても物腰柔らかい。

 どういった心境の変化はわからないが、個人的には今の方がありがたい。

 

「文句はないな?」

「はい」

 

 一夏はギャグ漫画みたいに腫れた右頬を押さえながら、返答する。

 ここ最近、出会い頭に叩かれているので、この人は自分の頭を叩くことを朝の日課としているんじゃないだろうか?

 

 

「それに、仕方がないだろう。オルコットは辞退してしまったし、片空の方は倒れてしまったのだ。本当は模擬戦をさせたかったが、これ以上先延ばしにすると手続きが面倒になるのでな……まあ、とりあえず一年間は頑張れ」

 

 

 なんだろう、こんなにも嬉しくない頑張れは初めてだったかもしれない。

 これから起きるであろう様々な問題に頭を抱えていると、あることを思い出して千冬に顔を向け直した。

 

 

「そういえば、ヒロは大丈夫なのか? いきなりぶっ倒れたんだろ?」

 

 

 一夏の問いに、千冬は肩をすくめる。

 

 

「ああ……保健室の先生の話では軽い貧血だそうだ。初戦があれだけの激闘だったのだから、体調を崩しても仕方がないだろう。今はもう大丈夫だそうだが、今夜ばかりは療養しなければならない。流石にここに呼ぶのは躊躇ってな……」

 

 

 千冬の言葉に、女子たちから「ええ〜〜〜」と明らかに不満げな声が聞こえる。

 うむ、ヒロはこっちに来なくて正解だったかもしれない。

 一夏は親友に何もなかったことに安堵しつつ、いつの間にか注がれていた二杯目のオレンジジュースに口をつけた。

 

 

 

 

 漆黒の空に浮かぶ三日月、学生寮から少し離れた場所でヒロは夜風に吹かれていた。

 本当はちゃんと寝ていなければいけないのだが、特別に許してもらい、こうして夜の散歩をしている訳である。

 季節は春でありそこまで風は冷たくない。だが寝汗で火照った体には丁度いい。

 

 

「……最初はどうなるかなと思ってたけど。悪くないよな、この学校も」

 

 ここ数ヶ月で自分を取り巻く環境は激変した。下手をすれば人並みの自由すらなくなるほどに。

 だが、その激変した環境でも自分を支えてくれる人達、明るく付き合ってくれる友人達がいることを幸いだと感じていた。

 良くも悪くも、充実しているだろう。そのはずなのに……

 

 

「俺は……一体、これ以上何を求めているのだろう」

 

 

 ヒロは、待機形態のストレリチアに触れながら言った。

 物心ついた時から感じていた心の穴。

 一体どうすれば埋められるのだろうかと、色々なことに挑戦してみたが結局今でも分かっていない。

 だけど二ヶ月前、ストレリチアと初めて触れた時。自分の中にある何かが鼓動するのを感じた。この鼓動の正体を知りたいと思った、だから束の誘いに乗り赤兎重工のテストパイロットとしてIS学園に入学したのだ。

 それなのに……たかが模擬戦一回で倒れてしまうなんて。

 ヒロは拳を強く握り、目を閉じて風を感じる。

 いくら春とはいえあまり長い間夜風に当たっていると風邪をひくだろう。

 ほどほどにして寮に戻るか、と思った時声が聞こえた。

 

「……あー、学生寮ってどこなのよ!  事務の人ももうちょっと詳しく教えてくれたっていいじゃない! てかこの学校広すぎんのよ!  大学なのかっての!」

 

 

 キャンキャンと怒声が聞こえる。

 一体何事かと声のした方へと目を向けると、改造した制服を着た女子がボストンバッグを持ちつつ、夜空に向かって吠えていた。

 自分より20cm程低い身長、特徴的なリボンと栗色のツインテール、一目見れば忘れられない特徴の塊である。

 

 

「──ったく、迎えがないのは知っていたけど、いくらなんでも不親切すぎない? 政府のやつも政府のやつよ。いくら代表候補生だからって、なんの事前の連絡もなく十五歳の少女を異国へ送るのはどうなのよ」

 

 

 心中文句を垂れ流しながら、少女は自分の手にある地図とにらめっこしていた。

 周囲を見渡してみるが、他に人影はない。

 ヒロはため息をつくと、少女の方へと足を進めた。

 

 

「あ、あの、大丈夫ですか?」

「ん?」

 

 

 そこで少女はヒロの存在に気づき、こちらを振り向いた。

 そして数秒後、少女は表情をぱあと明るくさせるとヒロの手を取って言った。

 

 

「丁度いい所に来てくれたわね! ここに行きたいんだけど、どこにあるかわかる?」

「ん、どれどれ? ああ、そこならこのまま真っ直ぐ進んで、あの奥に見えてるカフェテリアを左に曲がれば行けるよ」

 

 

 驚きのあまり一瞬固まるが、すぐに我に返ったヒロは少女にわかりやすく説明する・

 

「ありがとう……。そうだ、あなた名前は? もしかしたら同じクラスになるかもしれないし」

「俺の名前? 俺は片空ヒロ」

「片空ヒロ……? どこかで聞いたことがあるような───あっ! もしかして、あんたが噂の二人目ってやつ!?」

「う、うん。一応」

「ふーん、もう少しむっさいかと思っていたけど、案外かわいい顔立ちなのね。てっきり女の子かと思ったわ」

「それは……褒め言葉として受け止めればいいのかな」

 

 

 ヒロが困惑しながら言うと、少女はコクリと首肯する。

 男としてはかわいいよりもかっこいいと言われたいが、そこはとりあえず棚に上げておこう。

 

 

「ふふ……それにしてもなんだか私の知り合いにそっくりだわ。私の名前は凰鈴音。鈴でいいわ。よろしくね、ヒロ」

「うん、こちらこそ」

 

 

 鈴音と名乗る少女が差し出した手を握る。どうやらかなり人懐っこい性格らしく、しかもそれを嫌だと感じさせないのはこの活発さ故か。初対面の相手を名前で呼ぶのにはそれなりに勇気がいるものなのだが、彼女には全く関係ないらしい。

 

「それじゃ、私行くから。今度なんか奢ったげるわよー!」

 

 

 後ろ手に手を振りながら走っていく鈴音の姿が見えなくなったところで、ヒロはくしゃみをする。

 

 

「……そろそろ戻ろうかな」

 

 

 ヒロは寮へと足を向けるのであった。

 

 

 

 

 翌日。ヒロが教室に入ると、クラスが妙に騒がしいことに気づいた。

 いくらクラス代表が決定したとはいえ、ここまで騒々しいことになるのは違う。  

 

「お、ヒロ。おはよう。それで、転校生の噂を聞いたか?

 

 不審に思いながら席に着くなり、一夏からそう話題を振られた。

 気がつくと、話題につられて女子達が集まってきた。

 前までは遠巻きに俺を見ているだけだった女子たちも、今ではこうして普通に話しかけてきてくれる。一時はずっとあのままだったらどうしようとか真剣に悩んだこともあったけど、杞憂に変わったようだ。

 それにしても。

 

「転校生か……」

 

 思い浮かべたのは、昨日の茶髪のツインテールの少女。

 それにしても四月が始まってすぐだというのに転校生とは、何かしらの陰謀を感じぜざる得ない。

 

「それって代表候補生じゃない? 中国の」

「あれ? なんで知ってるの? もしかして誰かに聞いた?」

「いや、何となくだけど」

「まあ、どちらにせよ私やヒロさん、一夏さんには勝てないでしょうけれど」

 

 腰に手を当てながら言うのは、イギリスの代表候補生であるセシリア。

 相変わらず自信家だな〜、と思っていると。

 

「とはいえ、このクラスに転入してくるわけではないのだろう?  騒ぐほどの事でもあるまい」

 

 噂に敏感なのは女子特有とでも言うべきか、さっき席に行ったはずの箒がいつの間にか混ざっていた。

 

「そうだけどさ。やっぱり気になるだろ? だって代表候補生っていうからには強いんだし、もしかしたらクラス対抗戦で当たるかもしれないわけだし」

「……」

「え? なんでいきなり不機嫌になっているんだよ!?」

「なっていない!!」

「なってるじゃないか!!!」

「ま、まあ、彼女の言う通り一組以外で専用機を持っているクラスはないし、クラス対抗戦はぶっちぎりじゃないかな?」

 

 いつもの痴話喧嘩が始まりそうになったところで、ヒロは軽く息を吐いて話題を変えようと適当に言うと。

 

「───その情報、古いよ」

 

 教室の入り口から、聞き覚えのある声が聞こえた。

 声のした方へと目を向けると。

 

「二組も専用機持ちがクラス代表になったの。そう簡単には優勝できないから」

 

 そこには先日あったばかりの鈴こと、凰鈴音が自信満々に立てていた。

 昨夜とは違って、少しだけ大人っぽくなっていて同一人物か疑った。

 ヒロが普通に挨拶をしようとすると、隣にいた一夏が先に声を発した。

 

「鈴……? お前、鈴か?」

「そうよ。中国代表候補生、凰鈴音。今日は宣戦布告に来たってわけ」

 

 ふっと小さく笑みを漏らすと、トレードマークのツインテールが軽く左右に揺れた。

 

「何格好つけてるんだ? すげえ似合わないぞ」

「んなっ!? 言うに事欠いてなんてこと言うのよアンタは!」

  

 一瞬にしてメッキが剥がされた鈴は、プリプリと怒る。

 それを見た人間は全員もれなく疑問符を浮かべた。

 

「え、えっと鈴……?」

「なによ!? ……ってなんだ、アンタこのクラスだったのね」

 

 少し遅れて話しかけると、反応してこちらに目を向ける鈴。

 

「うん、それはそうなんだけど……後ろ」

「はあ? 一体何が─────!?」

 

 鈴が後ろを振り向くと、出席簿を構えた千冬が居た。

 

「もうSHRの時間だ。教室に戻れ」

「ち、千冬さん……」

「織斑先生と呼べ。さっさと戻れ、そして入り口を塞ぐな。邪魔だ」

「す、すみません……」

 

 先程の元気はどこへやら、借りてきた猫のように大人しく言うことを聞く鈴。やはり千冬が怖いのは全人類共通なのだと再認識する。

 

「またあとで来るからね! 逃げないでよ、一夏! それとヒロ、ついでに借りも返すから待ってなさい」

「さっさと戻れ」

「は、はいっ!」

 

 脱兎のごとく二組へと駆けていく鈴を眺めつつ、世間は案外狭いものだと改めて思うのだった。

 

 




次回『忘れられた約束』
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