あの後色ボケしているユエを着替えさせて食堂に向かう事にしたのだが、此処で一つ問題が発生した。
「やっぱりコンパスの長さが違うから、かなり移動スピードに差があるな…」
「ん、別に私が走れば良いだけなんじゃないの?」
こっちがいつも通りに歩いていると、ユエの歩幅が狭い為に置いて行きかねないのである。
昨日は起動したてでなんか危なっかしい雰囲気があったので背負って帰っていたのだが、しゃんとしている今もこうなのはちと面倒臭い。
「そんな事やらせて周りから式神の事思いやれてない奴だと思われたくない」
「それなら戦闘モードになれば同じ背丈になれる」
「いや、そんなどうでもいい事で戦闘モードになるとか、省エネモード付けた意味自体無くなるじゃん」
いや確かに昨日確認した戦闘モードになれば解決する問題でもあるんだが、それは何というか間違えた使い方にしか思えないのですが?
例えるならばゲームする為に買ったプレステ3でDVD見る様なもんだぞ?
用途としては間違ってないんだろうけど、それってコレジャナイ感半端なくない?
そんな事を考えていると誰かが此方に気が付いたのか寄って来る気配がした…強制【厳しいモード】の一件から結構な連合員に避けられてる筈だけど、一体誰なんだろうか?
「おはよう、ブーストニキ」
「おん? あぁ、ヘラクレニキだったか…なんで肩に式神乗っけてんの?」
声を掛けてきたのは以前の覚醒から会えばフレンドリーに声を掛けて来るヘラクレニキだった。
彼はあれから基本的に星霊神社の修行用異界に入り浸りの生活を送っているらしく、ストック式&やられればやられるだけ耐性が強化される【十二の試練】スキルで順調にガチ勢の仲間入り有望株へと育っているらしい。
で、そんなヘラクレニキが何故か肩に専用式神であるイリヤを乗せていたのである…確かイリヤって俺が式神の胴体作り上げてからショタオジによって一番最初に『全身型』にアップデートされた式神の筈だから、普通に他の式神よりも重量がある筈なんだが…しかもヘラクレニキが取っておいた『生体素材』が成人男性八人分程詰め込まれてるから、うちのユエより概念的にも重いのでは?
「確かそのイリヤってヘラクレニキが溜め込んでた『生体素材』全部使ったトンデモない代物なんだろ? 概念的にも重くnいてっ!?」
「ハジメ…失礼」
「ほう、其方のユエ嬢は既に自我が目覚めているのか、凄まじいな」
ド直球に重さについて聞こうとしたら、ユエに横腹小突かれたのだが、当のヘラクレニキ本人は全く気にしていない所か、ユエの自我がある事に興味を示している様であり、どうにも重さについては気にしている様子は皆無だった。
…ゴリマッチョになった結果、以前の頭だけしかろくに重さがない状態は寧ろ軽かったりしたのだろうか? てか壁際に移動したけれど廊下が狭くなってて隠キャっぽい【俺ら】が通りにくそうにしてんな…。
「話を聞くに人に近ければ近い程自我に目覚めやすくなり、手っ取り早い方法として汎用スキルを大量に入れれば良いと聞くが…ブーストニキもそうしたのか?」
「あ〜…昨日の今日だからまだ広まってない感じか…細々と汎用スキルを入れるのが結構容量的なデッドスペース作っちまって無駄が出るから、俺の人としての概念をデータ化して式神に覚えさせる、謂わば【汎用スキル詰め合わせパッチ】みたいなのを作ってインストールさせたんだよ」
「そこらの式神なんか目じゃない…ぶい」
人様にマウント取って煽るんじゃないよ。
なんか微妙に彼方さんのイリヤがジト目をしているので、ユエの頭を鷲掴みにして馬鹿な事が言えない様にぐりぐり頭を動かして黙らせる…楽しそうだなオイ。
「多分今日明日にでも購買部から発売されるだろうが…そうだな、宣伝も兼ねてヘラクレニキにはプレゼントでもしておくか」
「む!? 唯の汎用スキルでも千マッカは軽くするのだから、これも恐らく軽く数万マッカはするものだろ? そんな気軽に渡して良いのか?」
「良いんだよ、そもそも詰め合わせだと言った所で人気どころの【料理】は俺自身の料理の技量がそこまで高くないから【男料理】みたいな事になってるから、カレーとかなら兎も角フレンチや精進料理みたいな細かいのは追加で【料理】スキルを入れてくれ」
因みに特に問題無いのは【食事】なんかの凄まじく基礎中の基礎である物を除けば【水泳】とか【登攀】といった身体を動かす系のスキルだったりする。
つまり現実では『外れスキル』呼ばわりされている様なものばかりなので、この【汎用スキル詰め合わせパッチ】の値段も良くて三万行けば高い方だろう。
「まぁ、それでも個々の汎用スキルを入れるよりコイツ突っ込んだ方が容量的には三割程空く様にはなるけどな、ガッチガチに戦闘スキル入れるんじゃないのなら個人的にはお勧めの品だな」
「ふむ、確かに私のイリヤも『全身型』に変えてもらって大幅に容量が空いているから、確かに有用ではあるのだが…」
「どうせ【俺ら】は『ガイア』の名前が表す通り自己中の集まりなんだ、やりたい様にやるし気に入った奴は贔屓する。言っちまえばヘラクレニキのやった『厳しいモード』十二日突破した事に対する祝いみたいなもんだと思っといてくれよ」
多分その時俺がガイア連合に居たら、普通に何か慰めかなんかでアイテム贈ってただろうしな。
「むぅ…そうか、感謝する」
「あ、それと恐らくというか推測の域を出ない事なんだが、汎用スキルって【食事】スキルで判明している『霊薬の効果が高くなる』みたいな『人に近くなる事で副次効果が発動する』特性があるから、多分それに入ってる【水泳】スキルみたいな『水で行動する』スキルを入れれば『霊温泉』の効果が上がるだろうし、【深呼吸】スキルなら回復速度を底上げ出来ると思うぞ」
…ん? なんか俺達の話を聞いていた【俺ら】が一瞬反応したような?」
「『人に近付けばより人らしくなる』…か、成る程良い話を聞いた、重ねて感謝する」
「あ、それと事前に言っとかないと式神に勘違いされかねんから言っておくが、その【詰め合わせパッチ】の中には【房中術】も入ってるから、プラトニックな関係でいきたいなら事前に言っておいた方が良いぞ、ウチのユエみたいな早合点しかねんからな」
「…ハジメの鬼畜」
「俺は俺みたいに頭抱える事態になってほしくないだけだ」
「お、おう、そうか…何があったかは聞かんが災難だったな…む、本当に必要な容量は少な目な感じがするな」
ホントな、付き合うのは初見の印象でも良いとして、そこからはしっかりと段階踏んで行かなきゃ駄目だと思うんだ、俺。
…なんか廊下に居た【俺ら】が一斉に購買部に向かって走って行ったが…今から飯の時間なのに朝から購買で済ませるつもりか? …まさかさっきの話聞いて【詰め合わせパッチ】買いに行ったとか? …ちゃんとマッカ足りるのか?
尚、この後購買部から怨嗟の呻き声が聞こえてきたし、ヘラクレニキにタダでやったのなら俺にも寄越せとかふざけた事言ってくる輩共も居たが、後者に関してはふざけた性根を擦り潰す為に権利を使って【厳しいモード】へぶち込み、取り敢えず五日受けさせてから解放された後に【詰め合わせパッチ】を上げる事にした、何やら色々新スキルも入手したみたいだからアイツは目的の物に新スキル、ガイア連合側は戦力の強化とwin-winの関係だな!!
そんな近い未来更に【俺ら】に恐れられる事になる事態を気にしつつもヘラクレニキと別れた後、ふと気が付いた。
「…あ、そうじゃんそうすれば良かったんだ」
「うん? どうかしたの?」
「いや、歩幅が合わない問題の解決だけどさ…」
そう言ってから左手をユエの背中に回しながら左手をユエの膝裏に添えて抱え上げる。
「うん、ヘラクレニキみたいに連れ歩けば解決する問題だったな」
「…ハジメ、他の人が見てる…」
「別に問題起こしてないんだから大丈夫だろ」
式神居なくて僻んでる奴? 最長でも【厳しいモード】三日受ければ覚醒させてやるから行こっか?
…え? 非人型式神頼んじゃった? …に、二体目目指して頑張れ!! そのガッツで地方依頼回ればきっと直ぐだぞ!!(汗)
本編で書くかどうかは未定ですが、ヘラクレニキのイリヤは流石に成人男性八人分も詰め込む事は出来ないので、後付け装備として七つの霊装を作ってもらっており、戦況に応じて使い分けていく感じとなっており、イリヤ自体の重さはそこまで無かったりします。
え? イリヤが使う七つの霊装に心当たりがある? そうだね、クラスカードだね!!
…普通にヘラクレニキの話書いても面白いのではないのだろうか? まぁ、現状これ以上作品増やす気は無いけども。
追記:誤字として出されてましたが、ハジメがやってるのは両手でやるお姫様抱っこじゃなくて片手で抱え上げるやつをやってます、覚醒者だからそこら辺は軽いだろうと思ってやってるので間違いじゃないんです。