…にしても皆さん好きですなぁ(笑)
さて、以前アメリカ行きの途中で寄ったロシアにて、二人丹後半島支部に引き取った訳なのだが、その内の男性であるアナスタシア(現在通称:アーニャ)が『去勢する事によって性別を超越し、その経験によって覚醒する(覚醒出来るとは言っていない)』によって男の証を失って一か八かの覚醒チャレンジを受けていた訳であり…。
しかもそれで覚醒したのがアーニャ君ちゃんだけという大惨事な上、覚醒した事で回復系の魔法二つと情報収集スキルという破格のスキル習得はあれど、耐性が二つだけなのに対して弱点が四つもある*1という地獄絵図な模様…せめてもう少し早く着けばもっとマシな状態で助けれたんだろうか…?
兎に角、結果的にとはいえそんな悲惨な状況に対して滅茶苦茶決意を固めてアーニャ君ちゃんは臨んでいたのにも関わらず、俺が目の前で他の奴等をお手軽覚醒させちゃったせいで決意台無しのハートブレイクを受けてしまい、そんなアーニャを放置出来る筈もなく彼女さん(アナスタシア)と一緒に引き取ったのだが、今日はそんなアーニャ君ちゃんにとって今後に関わる重要な検査を受けてもらう事となった。
…そう、男に戻れるかどうかという、今後の尊厳に関わる検査である。
丹後半島支部に備え付けられている、最新の外科手術さえも可能としている病室の診察室、そこには現在俺とロシアから連れて来た二人に、連合本部から態々足を運んでもらったフェイスレスニキが、検査の結果を報告する為の重苦しい空気を生み出していた。
「…で、どうだろうかフェイスレスニキ? 彼は元の性別に戻せそうか?」
「正直現状の性別が無い状態を詳しく調べさせて欲しい欲求がない訳でもないけど…まぁ、ブーストニキにはいつも楽をさせてもらっているから、さっさと結果話してしまおうか」
そう言って結果が書かれているカルテを覗き込んでいたフェイスレスニキは顔を上げると、一頻り俺達を見渡してから重たい口を開いた。
「結果から言えば元に戻そうと思えばちゃんと『人として』元の男性に戻す事は可能ではあるよ」
「本当ですか!?」
「よ、良かったぁ…」
検査の結果を聞いて喜ぶ二人だったが、そんな二人に対して俺はフェイスレスニキの言い回しに嫌な予感を覚えるのだった。
「なぁ、フェイスレスニキ…その言い方的に『霊能関係には』何かしらの問題が出るって事なのか?」
『え?』
「…ご明察だよブーストニキ、元の性別に戻す事は問題無く出来るだろうね…但し『性別を超越した事によって得た異能』だから、逆を言えば『性別を戻す事によって弱体化する』可能性が非常に高いと思われるよ」
言われてみれば頷けるかもしれない内容に、俺は思わず俺は苦虫を噛み潰した様な表情をしてしまい、半終末を迎えて世界が非情な変遷を遂げていく経験をした二人は、そんな世界をこれからも生きて行く為に最も必要な『力』が喪われるかろしれないという事実に絶望の表現を浮かべた。
「元々大分無茶というかノリと勢い? で中途半端な儀式して得た力みたいだからね、耐性の貧弱さは恐らくそれが原因なんだろうけど、そんな中途半端な儀式をしたせいで、元の性別に戻そうものなら最悪霊能の永続的な喪失も視野に入るレベルだね」
「本当にあの邪神は碌な事しないな…」
「…ふうっ」
「アーニャ大丈夫!? 気をしっかり持って!!」
いかん、まさかの自分が受けた儀式がノリと勢いによる産物だったと知ったアーニャ君ちゃんが精神崩壊を起こし掛けてるぞ!? フェイスレスニキは俺等黒札相手のノリじゃなくて、現地民なんだからちょっとは加減してやれよ!?
「そこで私の提案としては、そんな中途半端な状態ではなく一層の事完全に女になってしまう事を選択肢に上げさせてもらおう」
「おいちょっと待てフェイスレスニキ、その提案のなにが『そこで』なんだ?」
「「?????」」
あぁもうあまりにも話の深刻さ変わり過ぎて、さっきまで絶望的だった二人が宇宙ネコ状態になってるじゃないか、話の温度差酷過ぎてグッピーが死んでしまうぞ…いやうちじゃあグッピー飼ってないけども。
そんな俺達の反応が不服だったのか、フェイスレスニキは不満気な顔で文句を言って来た。
「だって元に戻しても弱体化する可能性が非常に高い上、儀式も中途半端だから今のままだと霊的にも不安定だからどっちかに寄せた方が断然良いし、それなら一層の事未練きっぱり絶って、女性になった方が霊質上げれるからそっちの方が良くない?」
「いや、彼女さんが居るからな? なんなら付き添いで来てくれてる彼女がそうだからな?」
フェイスレスニキの実利的な面を推した説明に対して情の面から説明すると、フェイスレスニキは予想外だったのかとても驚いた表情をしていた…まさか気付いてなかったのか?
「え? …てっきり家族で姉とか妹とかそういった関係だと思ってたんだけど…」
「いや確かに髪の色や瞳の色とかも似てるけどさぁ…流石にチ◯コ無くなったから手術で新しいのを付けるとか、家族に対して説明出来るか?」
「それ寧ろ恋人に対して説明する方がハードル高くない?」
「…確かに」
そもそも今回は前提として彼女であるアナスタシアが知ってたからスルーされてたけど、普通に考えたらかなりおかしな状況だよなこれ、うん、これフェイスレスニキ別になんも悪くなかったわ。
「まぁ、良いか…それでどうする? 個人的には一度自分から捨て去ったんだから、それを拾い直すのはかなりリスクが高いから、正直やめておいた方が良いとだけ言わせてもらうけど? 下手したらブーストニキの【軍勢変生】でもどうしようもない案件かもしれないしね」
「確かに下手したら霊的資質が無くなるかもしれないから、流石にそうなると資質を励起させてる俺のスキルでもどうにもならないかもしれんが、それだともう実質選択肢一つだけじゃねぇか…」
こんなんほぼ強制だぞオイ…。
そんな苦い思いを抱きながら当人達を見てみると、当人であるアーニャ君ちゃんは俯いて悩み続けていたのだが、そんな彼氏を見守っているアナスタシアは暫くアーニャ君ちゃんを見つめていたのだが、何やら意を決した様にアーニャ君ちゃんの肩に手を置いた。
「…ねぇ、アーニャ? 私は別に何時迄も貴方がそばに居てくれさえすれば、男女の差なんて関係無いのよ?」
「でも…二人共女性になったら子供はどうするんだい? ボク達で末代なんて寂しいよ」
「いや、女同士でもやろうと思えば子作り程度なら、準備はいるが簡単に出来るぞ?」
「「…え?」」
どうやら一度自分から性を捨てたアーニャ君ちゃんからすれば、悩みの中心は子供が出来なくなる事だったらしい…それなら別段二人共歴とした人間なんだから、ちょいと手を貸せば簡単に問題解決出来る事を教えてやる事にした。
「古今東西の変身して人間に手を出す神話の魔術を改造すれば、片方の遺伝子を元に精子作って相手の女性と子供を作る事も出来るし、なんなら女性になったからといっても一時的に『生やす』魔術だってある位なんだし、人外とヤルんじゃなく人間同士でヤルんなら、方法なんて腐る程あるぞ?」
「まぁ、ブーストニキは性差よりも難易度の高い事にチャレンジしてる訳だし、女性同士程度とかなんの問題も無いだろうねぇ」
なんなら男性同士ですらやろうと思えば子供作れるからな…あのミヨシノアニキとナナシ君*2とかな…。
噂伝いの弟君が可哀想な感じだったから可能な範囲で装備製作とかで手伝ってたけど、二人の関係の真相に気付いた時には手遅れだったんだよなぁ…ナナシ君が兄であるミヨシノアニキに手を出して調教モドキちゃったから、頭痛堪えながら医療班と一緒になって男でも妊娠、出産出来る技術を開発しましたよ、ええ!!(逆ギレ)
「それじゃあフェイスレス先生、よろしくお願いします」
「うんうん、技術については既にガイア連合では確立されているからね、安心して任せて欲しい」
思い出すだけで頭の痛い出来事に遠い目をしていると、いつの間にか意を決していたらしいアーニャ君ちゃんが、フェイスレスニキに完全な女性への移行手術を頼んでいた、まぁ一度悩んだ点だからね、またそこまで悩む事でもなかったのかな?
さて、これにて二人の問題は一件落着かな? もう俺の出番は子作りの段階まで行けると二人が判断した時に手を貸すくらいだろうし、不安が一つ解決してめでたしめでたし…だよな?
ーー数日後ーー
「………ドウシテコウナッタ?」
「すぅ…すぅ…」
「むにゃ…ふふっ…アーニャかわいぃ…」
朝、俺のベッドには正式に女性となったアーニャとアナスタシアが、俺含めて真っ裸になって眠っていた…二重の意味で頭が痛いが何度でも言わせてもらいたい、ドウシテコウナッタ?
そんな訳でアーニャ君ちゃんはアーニャちゃんとなり、いつの間にやらブーストニキと寝てました、勿論彼女であるアナスタシアも同意の上で一緒です。
さぁブーストニキよ、読者達の為に責任を取るのです()