「分かっちゃいた事だが…仕事が全く減らないなぁ…」
「まぁ、丹後半島支部を管理してるのはブーストニキだからな、しかも効率が良いからってワンマンでやってたら、それこそ減る筈の仕事も減る事等無かろうよ」
「一応各製造所なんかはそれぞれの企業に任せているらしいが、それでも背負い込み過ぎじゃないか?」
「支部員に任せ様にも魔界堕ちのせいで何もかも壊滅的だから、一度俺が整えておいた方が良さそうって事でしてるんだよ…流石にある程度のラインまで復旧したら民間業者に投げるわ」
丹後半島支部の支部長室で、大量に展開されている空中投影スクリーン(DEMによる分析データ)を前にボヤく俺に対し、休日だか其々の都合で家から離れたがっていた為此方に来ていたヘラクレニキと百万ニキがツッコミを入れて来た。
丹後半島支部に帰還して暫くの後、終末突入の影響で支部周辺に問題がないかを念入りにチェックしてから、支部長としての事務仕事の傍ら只管ズタボロになっている各ターミナル同士の連絡網を修復していき、更にその片手間に支部内に建設してある機器の調整を続け、そんな雑務を終えて少しだけ出来る時間にプライベートな事を進める毎日。
終末に突入した事による一番分かり易くて大きな変化といえば、地上が魔界に堕ちた事で土地が広がったり、平然とアクマが地上を闊歩する事になった事なのだろうが、物理的に発生した前者は兎も角、地上のMAGが重要となる後者に関しては丹後半島支部ではそこまで問題になっていなかったりする。
「それにしても、本当に『楔』の効果は絶大だな…ブーストニキが土地の管理を出来る『守護者』タイプでもあるからなんだろうが、下手な大型シェルターより安全なのは素晴らしいな」
「敢えて丹後半島支部領域内のMAG状況を半終末頃まで抑える事で、アクマ発生を抑制するだけじゃなく終末未対応の機械も使用可能にする…よくこんな事が出来たな?」
「まぁ、そこら辺は支部員の皆が『楔』の補強をしっかりしてくれたからだな。
てか元々俺は『製造』関係の才能持ちで『守護者』としての特性は後付けだぞ?
土地管理の才能は連合で学んだ程度しかないから、素のスペックでやろうものなら組合とその周り…ギリギリで丹後一帯護れるかどうかってところじゃないか? それも全力出して穴有り前提だけど」
理由は話している通り、以前俺が過激派の手羽先共から隠れながら支部の管理している各地の地脈に埋め込んで俺の能力の補助をさせている『楔』であり、これによって終末により大幅な変動とそれによる大災害が随分と抑えられ、発生した問題も土地の拡大によるインフラの寸断程度*1で済んだのである。
これに対して俺が復活して帰還する迄は事前に終末対策として、備蓄していた物資を配給しつつ復興作業をしていたのだが、別段これといって特殊な素材を使っている訳でもなかったので、これらインフラについては俺の方で即座に復旧させる事で解決した。
寧ろ気を付けなければならないのは、今回の事で埋め込む場所一つにつき五つ埋め込んでいた『楔』が離れ離れになってしまった為、内側だけならば兎も角、外側の『楔』に安全面という意味で不安が出て来た事であり、至急新たな『楔』の製造と支部員の殆どを動員した埋め込み作業を行う羽目になってしまい、いきなり手痛い出費をする事になってしまった。
一応終末前にも予備としてそこそこの本数を備蓄していたのだが、中途半端に費用が嵩む為各所に付き一本ずつしか用意出来ていなかったのが痛かったな…。
「てかなによりも面倒なのはターミナル関係なんだよなぁ…」
「クレクレ厨共をリストから弾いてもまだ大量に対処しないといけないのがあるんだったか?」
「それに下手に対処が早かったせいで、かなりの数の腐った連中がマトモな所に擬態し始めたのが手痛いな…あれでは他の真面目な場所を唆して腐らせかねんぞ」
「俺もそれが面倒だから、そもそもの原因であるターミナルのアップデートを図ってるんだが…中々上手くいかんなぁ…」
各地のターミナルをそれぞれ再接続する事に関しては、各地の大型以上のターミナルはそもそもの通信能力が高い為即座に再接続する事が出来たし、通信範囲にある小型ターミナルも其々の周波数を近くの大型ターミナルに合わせる事で何とか再接続する事が出来た。
問題なのはこの大型ターミナルの通信範囲外にある、各地のシェルター等で使われている小型のターミナルである。
これらに関しては各シェルターの受け持ちをしている黒札が、どうにかして近くの小型ターミナルまで専用のケーブルを伸ばして繋ぐか、中間地点に電波の中継をする為の塔を建築するか、将又終末に入って更に高騰した大型ターミナルを購入するかしなければならない*2のである。
難易度で言えばケーブルが一番時間も掛からず力さえあれば簡単に出来、中継塔は場所さえ良ければ先にある程度作る時間を確保すれば可能、大型ターミナルに関しては…正直納品すら何時になるか分からんレベルで連合が忙しい為現実的じゃない、って所だな。
一応小型とはいえターミナルなので、内蔵されている結界発生装置さえ無事ならある程度は時間に余裕が出来る為、前者二つの方法を試す事も出来るだろう…まぁ、普通に考えてアクマに邪魔されるだろうが…。
ケーブルなんて分かり易い弱点は即座にぶった斬られるのは言わずもがな、中継塔だって四六時中守衛を置いておかなければアッサリ倒されかねないのである。
そしてそんな徒労になってまで責められる位なら投げ出してしまうのが一般的な黒札であり、俺もそこら辺は分かっているので、なんとか大型ターミナルをアップデート出来ないか対処中。
一応任意の方向へ電波を強化する事が出来るモジュールを作れはしたが、複数設置は出来ない上に指向性を作るだけの物なので、正直言って焼け石に水なんだよなぁ…(遠い目)
さて、そろそろ目を背けるのも止めるとするか…。
「…でだ、お前らの嫁から『旦那様が何処に居るのか知らないか?』っていう旨の連絡が来てるんだが、ボチボチ帰宅しようっていう気はないのか?」
『ギクゥ!?』
「お前ら…はぁ…」
指摘された事に対して即座に目──どころか顔毎逸らす野郎二人に思わず特大のため息が出てしまう。
そう、この転生してからでさえも既にいい歳している野郎共二人、休日だというのに家に居たら嫁や女に迫られるからと言い、俺の執務室に転がり込んでいるのである!!
「いやまぁ、なんだかんだ延ばしてはいるものの向き合おうとしている百万ニキは良いよ、全員囲ってしまえと思わなくもないが、一途に行くかハーレムとして全員娶るかは個人の考えなんだし、そこに部外者である俺が口挟むのは筋違いだからな」
「ゆ、許された…」
恋愛に対するスタンスは人其々だから、俺からは別段両者が納得している限り何も言わん…逆に言えば人様が何言おうと俺と嫁達は現状に納得してるんだから、誰が何言おうと気にはせんがな。
「でもヘラクレニキはどうなんだよ? 一度受け入れたんだから今更尻込みするのは男としてダメだろう?」
「いや、流石にあの体型に子供産ませるのは色々と不味くはないか!?」
「なら『変化』スキル入れて大人形態増やせば良いだろ」
「ぐ、ぐうの音も出ない…」
終末迎えて嫁式神と子供作れる様になって*3いざ家族計画!! っていきたいのに、俺がやらなきゃならない事が山積みになってて仕事漬けなせいで、強制的に後回しにせざるを得ない俺を煽ってるのか?
「てかせめて俺の執務室を溜まり場にするのは辞めろや!? 気が散るんだよ!!」
「それに関しては万が一に備えた護衛も兼ねて居るのだから許して欲しい」
「終末突入直後で物資が色々払底している今、日用物資の一大生産拠点である丹後半島支部の支部長であるブーストニキに倒れられたら困るから、お目付け役決めて付けとこうって黒札内の掲示板で決まったから、今後はこんな感じで支部員黒札が誰かしらついてるからよろしくな」
「んんんんんっ…なんとも言えない気遣いをありがとうとは言っておこう!!」
何時もながらなんか締まらねぇなぁ!?
復興開始(側は殆ど復興完了済み)という詐欺の様な展開、こうしたかったから『楔』作り出してたと言っても過言じゃないっすね。
ついでに言えば『楔』を集中的に設置してあるお陰で、簡易的とはいえ五重結界なんていうクソ硬い護りで外部からの侵入をブロック!! 『住民にとっては』これ以上ない安心を齎すでしょう。
…それ以外の結界の外に来てる奴らはどうしてるのかって? それについては次回以降をお楽しみにですね。