ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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3話目以降は時間取ります
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第2話「天使のような魔女」feet.B, R

 最初は本当にただの偶然。

 偶然その場所にいた、ただそれだけだ。

 にも関わらず、この子は何故だかこんな私の傍にいたいと言った。きっと、その果てなき知識欲のままに。

 だけど、もし知るために、じゃなくて、私だから……私と一緒にいたいから、傍にいてくれるなら。それがどんなに嬉しいものか。

 あの地獄のような世界(リアル)にはそんな存在いなかった。だけど、このGBNには、私の楽園にはいるのだ。そんな存在が。

 ビリーヴ、あなたを信じる。少なくとも、今は。

 

「ほ、ほんとに大丈夫……?」

「まーだ不安なの? もう…………私はバトル中は性格変わってちょっと怖くなっちゃうんだけどね? 心は変わってないから、大丈夫」

 

 私とシルヴィーを信じてよ。

 その言葉の意味は、きっと単純だ。

 単純で、軽率で、それでいてドロドロと溶けるように熱く、重い。

 呪いのような言葉は、きっと彼女には、大した意味も伝わらないだろう。でもそれを教えてる暇はない。

 あぁ、邪魔だな。早く消して終わりたい。

 でも焦っちゃダメだ。簡単に、純粋に、徹底的に叩こう。目障りな蚊やハエを、擦り潰すように。

 

「ガンダムシルヴィー、レイメイ、出撃()るよ!」

 

 

───────────────────────────

 

 

 押しつぶされるかのような衝撃は一瞬で終わって、まるで飛んでしまうかのように身体が軽くなる。辺りは真っ暗で、白いつぶつぶが無数にある。

 そして目の前には、レイメイがいる。

 ここは、シルヴィーの中。らしい。シルヴィーとは、レイメイのガンプラ。

 白と黒がメインで、黄色が差しで入っている。腰から鉄の棒が伸びていて、肩と繋がっているのが、目に付いた特徴。

 あとは全くもってわからない。

 

 知りたい。

 

「さ、あの輪っかを潜ると戦場だ。腕がなるぅ!」

「輪っか……」

 

 その輪っかの先には、今いる真っ黒な景色とは全く別の景色が広がっている。

 潜ると、それは円になっていた。

 

『Stage:Space Colony』

 

『Battle Start』

 

「お相手さんはもう居るね…………ジンクスⅣかぁ。ダイバールックの割に渋いチョイスだなぁ、あいつ見た目の割に全く活躍しなかったでしょ」

 

 ジンクスⅣ。

 レイメイがそう呼んだあのガンプラは全身が黒くて、目が紫に光っていて、明らかに怖そうな見た目だった。実際、かなり怖い。

 

「ほう、サバーニャの改造機か。同じ太陽炉系とは……面白いッ!!」

 

 ジンクスⅣが、突っ込んでくる。ことはなく。

 寧ろ距離を取って手に持っている筒から赤い弾を撃ってくる。それも何発もだ。

 

「ひ、ひぃ!?」

「芋臭い戦い方だなァ!」

 

 それをシルヴィーは軽々と避ける。そして負けじとレイメイは自分の持っている筒から桃色の弾をジンクスとは比べ物にならない量で撃ち出す。

 

「豆鉄砲が!」

 

 しかし、距離が足りないのか途中で下に落ちてしまう。辛うじて当たった弾も、肩の大きい板で弾かれてしまった。

 

「指揮官機、それもコーラサワー型とは無難なの選んだじゃん!!」

「ハーハッハ!! ホルスタービットを捨てたサバーニャに何が出来る!」

 

 弾が当たるよう距離を縮めようと進撃するが、それをジンクスの放つ弾が阻む。

 しかしレイメイは、シルヴィーはその弾を踊るかのように華麗に避けてみせる。

 

「すごい、ひとつも当たってない……!」

「ちょこざいな……だったらこれだ! 『トランザム』!!」

 

 ジンクスの中にいる人がそう叫んだ瞬間、ジンクスの身体が赤く光り出した。

 

「な、何あれ!?」

「トランザム……フル稼働後のパワーダウンの代わりに3分間だけ総合性能を向上させる諸刃の剣をここで使うか!」

 

 トランザム。

 それは『機動戦士ガンダムOO』に登場する強化システム。残像を生み出す程の速度と基礎スペックの向上の代わり、使用後は大きく消耗するという。この頃のわたしはまだ知らない、未知のシステムだ。

 そんなわたし達にお構い無しに突っ込んでくる。大きな剣を持って。

 

「ハッハッハ!! 潰れろォ!!」

 

 瞬く間に目の前に来たジンクスが剣を大きく振りかぶる。その瞬間。

 

「行くよシルヴィー、『パーメットスコア 2』!」

「っ…………?」

 

 避けられるはずのない一撃は、軽々と避けられた。

 

「なんだとォッ!?」

「残念、でしたァ!!」

 

 そして避けた体勢からそのまま、シルヴィーの脚を大きく蹴り上げ、大振りによって隙が生じたジンクスを『掴んだ』。

 

「落、ち、ろォォォォッッ!!!!」

「グワアアア!!!」

 

 そのままジンクスは、遥か遠くに投げられた。落ちてるというか、飛んでるんじゃ。

 

「あんなのを、こんな簡単に……!?」

「言ったでしょ。大丈夫だって」

 

 すごい、これがレイメイとシルヴィーの力。わたしだけじゃ、無力を前に嘆くだけ。でもレイメイと一緒なら、その限りじゃない。わたし達なら、どこへだって。

 

「この、女ぁ……!!」

「直前でGNフィールド貼って生き残ったのか。そのまま死ねば良かったのに」

 

 わたしに対しては絶対に使わない、ドスの効いた声で相手を見下す。

 対してジンクスはもうボロボロだ。どこもかしこも傷だらけで、左腕は有り得ない方向に曲がっている。

 

「黙れェ……お前ごときにやられる俺じゃねぇ!!」

「そのザマでまだそんなこと言えるの? 惨めだね。死んだ方が楽だよ?」

「お前が死ねェェェ!!!」

 

 遠方から赤い弾を放ってくる。だがそれは当たらない。この距離で当たるわけが無い。

 

「下手な鉄砲数撃ちゃ……とか思ってる? そんなんじゃ先短いよ、鉄砲は上手になんなきゃ。向上心の無い人間に未来はない。だってそうでしょ? 『欲』がなきゃ、生きていけない」

 

 そうだ。わたしも「知りたい」っていう欲があるから生きてる。それがなかったらわたしは…………どうなっていたか、想像もつかない。

 

「『パーメットスコア 3』、終わりだよ」

 

 そう唱えた途端、シルヴィーが応えたような感覚がした。

 シルヴィーの腰から伸びた棒から、数々の板が分離する。また、脚のジンクスを捕まえた爪も分離した。

 

「な、お前のその機体は……!」

「そう、『GUNDフォーマット』を採用したサバーニャの白兵戦仕様。それが私のガンプラ、『ガンダムシルヴィー』」

「ま、待て。こっちにはもうフィールドを貼る粒子なんて残っちゃいない! やめろ、やめてくれぇ!!」

「悪党の親玉なんて、こうなる運命だよ」

 

 無造作に動き始める板と爪は、それぞれ配置につくと、揃って弾を撃ち出した。

 それはもう、雨あられ。

 ジンクスの手足は弾によって弾き飛ばされ、顔も焼かれた。何も手出し出来ない状態で、原型が無くなるまで、焼き尽くされた。

 

『Battle ended Winner:Rei Mei』

 

 

───────────────────────────

 

 

 

 戦いに勝利したわたし達は、相手の事など気にも止めず次の場所に進んだ。次はくつろぎの場、エントランスエリアだそうだ。

 いや、実際のところ、わたしはすごく気にしていた。後ろを振り返れば酷く落ち込んでいる人がいたし、レイメイはなぜかその人らに対して「ストレス発散ならヴァルガでねー!」と恐らく相手を逆撫でするような言葉を放ったのだ。

 だというのに、次の場所への興味が絶えないわたしは意外と、ひどいELダイバーなのだろうか。

 

 

───────────────────────────

 

 ピッピ ピッピ

 

「んあー、うるさいなぁ」

 

 鬱陶しい目覚ましの音で目が覚める。

 時計を見ると、午前9時。

 

「普通なら焦らないとなんだろうね」

 

 普通なら急いで支度して、家を出なければならない。それでも絶対に間に合わない時間。

 だが私の顔には、汗の一滴も流れはしない。

 突然、控えめのノックが聞こえてきた。

 

「ミナ、起きたの?」

「あー、うん。おはようお母さん」

「今日学校は?」

「行かない」

「そう、朝ごはん作ってるから早めに食べるのよ」

「はーい」

 

 母にいつも通りの言葉を返し、再び沈黙が訪れる。

 そうだ。私は学校には行かない。

 

「だって、こんなキモオタが行くような場所じゃないもん」

 

 ガンダム以外に興味が無い。口を開けばガンダムの話ばかり。

 そりゃあ煙たがれるし、嫌われる。協調性の無いクソ陰キャ、それが私、『アカツキノ ミナ』。昔の人みたいに苗字と名前の間に『ノ』が入るのが特徴です。

 

「今日は何しよっか……」

 

 そう言いながらおもむろにスマホの画面を点ける。結局陰キャが朝最初にやるのは、スマホ弄りなのだ。

 

「ガンダム新作アニメーション…………キャラクターデザインは、『カスミ』さん……か」

 

 いいな、この人は。この仕事を受けるということは、きっと私と同じぐらい、ガンダムが好きなのだろう。

 それなのに。彼はガンダムに必要とされていて、私は何ひとつとして求められていない。そんな事実が、私の胸を突き刺した。

 

「最悪……朝からシックになっちゃった」

 

 こんなときは、『アレ』しかない。

 

「あの子、元気かな」

 

 そんなの行かなきゃわからない。GBNに、行かないと。

 

「知りたい……か。私のこと知っても幻滅するだけなのに、変な子だなぁ」

 

 私だけじゃない、きっと多くのダイバーが、私のようなつまらない人間なのだろう。

 だというのに、彼女は知りたがった。私を。

 淡い期待があるのだ。こんな私の将来を半ば諦めかけてる母に代わって、あの子が、ビリーヴが私を受け入れてくれるって。

 まるでシャア・アズナブルみたいだ。「母になってくれる存在が欲しい」とか、ホント気持ち悪。

 

「でも……」

 

 でも、なんだ。その「でも」があるのが彼女なんだ。

 

「でも、私みたいなクズ人間は……勘違いしちゃうんだよ」

 

 優しくされたら直ぐになびく。心の弱い人は、いつもそうだ。弱い人は強い人に惹かれる。そしてその強い人に肯定されれば、まるで取り憑かれたかのようにその人を求めるようになってしまう。今の私は、その典型だ。

 

「君が全部悪いんだよ、ビリーヴ。君のこと、信じちゃってるから」

 

 信じることは、祈りであり、呪いだ。

 誰かに自分の理想を押し付ける行為、「この人はこうあるべき」だという決めつけ。

 信じるっていうのは、詰まるところそんなものなのだ。有名な曲で歌われているような綺麗なものじゃない。

 でも、なんだ。

 でも、彼女は綺麗なんだ。透き通った銀髪に、深いアメジストの瞳。肌は薄ピンクで血色が良い筈なのに白く、儚げで、その肌を包む服は、何にも染まることの無い白。

 そんな少女の正体は、知識欲に取り憑かれた知りたいモンスター。

 おかしい事だ。ELダイバーじゃなかったらそんな人間、空想上の存在だって決めつける。

 

「そんなアニメみたいなことがさ、現実なんだ」

 

 それが、現実。

 厳密には違う。GBNというゲームで生まれた、不謹慎に言ってしまえばバグのような存在。そんな存在に心を揺れ動かされているのが私だ。なんてバカなんだろう。

 彼女はただ、溢れる知識欲を私にぶつけているだけ。きっと全てを知ればその熱も燃え尽きて、私の元を離れてしまう。

 そんなの嫌だ。

 嫌だ、嫌だ、嫌だ。嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ。

 やっと自分を受け入れてくれる存在が出来たんだ。

 やっと自分を認めてくれる存在が出来たんだ。

 やっと私が私でいいって、自信をくれる存在が出来たんだ。

 手放してたまるか。こんなチャンス、滅多にない。

 

「色々教えよう。私のこと以外」

 

 私に関する知識は最後のカード。最後まで残しておく。

 彼女の知識欲は、私以外の事で済ませる。だが俄然、彼女の知りたい対象は私だ。

 つまり、私の事を教えない限り、絶対に彼女は私の元を離れない。ずっと一緒にいてくれる。我ながら完璧だ。これでずっと一緒。

 

「じゃあ、朝ご飯食べちゃおっか」

 

 きっと私の現状みたいに、冷め切ってるだろうけど。

 

 

───────────────────────────

 

 

 セントラル・ディメンションはダイバーが最初に行き着く場所。ならばここにいれば、レイメイに会えるはず。

 いつも人が出てくる場所に、見覚えのあるポニーテールが見えた。レイメイだ。

 

「あっ、レイメイ!」

「お、ビリーヴちゃんおはよー!」

「おはよー……って?」

「挨拶、かな。1日の最初にあったら言うやつ」

「へぇ……じゃあ、おはよう。レイメイ」

「うんうん」

 

 今日は何を教えてもらおうか、この万能のダイバーに。

 道行く人を観察して、知りたい欲を溜め込んでおいた。だから今日も、充実した一日になるはずだ。

 

「ねぇ、レイメイ」

「なにかなビリーヴちゃん」

「がっこうって、何?」

 

 何気なく、そう聞いただけだった。ただ道行く人からたまに聞こえるものの中で、興味のあるものをひとつ、上げただけ。

 でもその言葉を聞いた途端、レイメイは分かりやすく狼狽えて…………。

 

「え…………」

 

 と、拒絶にも似た反応が返ってきたのだ。

 

「あ、知らないならごめんなさい……」

「いや、知ってるよ。学校」

「ホント!?」

「食いつきすごいな相変わらず……」

 

 教えて教えて、と言わんばかりの目線をめいっぱい送る。文字通りに。

 

「えっと、学校っていうのは、みんなで色んなことを知ったり、それを共有したりする場所……かな」

「へぇ……レイメイは行かないの?」

 

 今度は「うぐ」なんて、バツの悪い顔で言われてしまった。どうやらレイメイは、学校が苦手らしい。

 

「私は…………行ってないよ。これ以上知りたいこともないし」

「……そうなんだ」

 

 そう言う彼女の目は、どこか遠くを見ていた。そしてその目は、明らかに…………嫌なものを見る目だった。

 




不登校の少女、その心中は。
次回、新キャラ登場かも!

キャラ&機体設定:

レイメイ/紅月(アカツキノ)ミナ
自由気ままに生きるダイバー。
リアルでは不登校で、GBNに半ば引きこもっている。
その操縦技能は高く、ダイバーランクはSS。ランカーとも張り合える実力があるという噂。
容姿は赤い髪のポニーテールで、Tシャツ短パンの上に三日月・オーガスの着ていたブカブカの上着を着ている。

ガンダムシルヴィー
レイメイが使う、ガンダムサバーニャの改造ガンプラ。
ホルスタービットどころかライフルビットすらも排し、手持ちライフルも射程を切った速射性の高いものに変更した。
その代わりに、腰部GNスラスターにはサブアームを増設、肩部に追加したビームサーベルを主人に代わって振るう。
また脚部にはリング状のフレームを増設し、近接格闘用のGNクローを備えている。ビームを使用しない実体の剣なので、鉄血機体のナノラミネートアーマーとも渡り合える。
そして極めつけは機体に特殊機能の『GUNDフォーマット』を採用、スコアを変動させ、多彩な状況下で使い分けることが可能。
様々な状況下に対応出来る白兵戦仕様として仕上がっており、天使のような魔女、即ち妖精の名を持つに相応しいと言える。
特殊アイテム:
・GNドライブ:
『機動戦士ガンダムOO』に登場するエンジン。通称「太陽炉」。半永久的なGN粒子の生成によって事実上の活動限界は無い。シルヴィーのものは全身のパーメットにGN粒子を流し込む機能も持ち、シルヴィーの肺に等しい機関である。
・自動操縦モード:
シルヴィーに搭載しているAIが学習した戦闘データを元に自動で操作する機能。主にレイメイがミッションで機体を操作するのが面倒なときに使う。
・GUNDフォーマット:
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』に登場するモビルスーツのフォーマット。これを搭載したモビルスーツは「GUND-ARM」、通称「ガンダム」と呼ばれ、高い機動性を誇る。スコアの引き上げにより機能を解放、機体とパイロットの親和性も高めるが、スコア4以降は制限時間が設けられている。
・トランザム:
GNドライブ搭載機が使用出来るシステム。一時的に機体出力を3倍にまで引き上げることが可能で、その速度は残像を生み出す程に素早い。しかし、トランザム終了後は強烈なパワーダウンが起こり、トランザム中に倒せなければ成す術が無くなる諸刃の剣。
武装:
・GNツインピストル×2
・GNビームサーベル×2
・GNクロービット×6(脚部に各3基)
・GNガンビット×6
・サブアーム×2
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