ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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ほのぼの回かもしれない


第19話「INDULGENCE」feet.K

 無機質な白い壁面と、有機的で雑多なものが置かれている我らがフォースネスト。

 そこに3人、窓の向こうに広がる宇宙を見ているダイバーがいた。

 

「…………それで、嫌われたかもしれないと」

「………意訳すれば『あなたのこと話してくれないと結婚しません』ってことだし」

「話せばいいんじゃない? 結婚したいなら」

 

 さすがはバカップル、そんな超絶恥ずかしいことすらもスラスラ言ってくる。

 どうやらオレがいない間にコネコがオレ達の状態について白状してしまったらしく、カグラとレイメイからすっげぇウザイ目で見られた。ビリーヴはよくわかってない様子でこっちを見てたのが余計辛かった。ちなみにアノマロは不在。

 

「ところでレイメイ、結婚って何?」

「ん゛ん゛っ!?」

 

 適当言ってるだけだったわ。

 

「ビリーヴ、その辺にしておけ」

「どうして?」

「どうしてもこうも無いです」

「GBNに教会ってあったかな……」

 

 検討すんな。他所でやれ。

 

「…………で、ビリーヴの言う通り私としては普通に話しちゃえばいいと思うけど」

「お前だって自分の全部をビリーヴに話してるわけじゃないだろ」

「そ、それは……」

「わたしがリアルに行く時に教えてくれるんだって。でも行くためにはお母さんって人をなんとかして丸め込む必要があるとかなんとか」

 

 あー、確かに古い考えの家だとガンプラは男のやる遊びだとか言われそうだし。それにELダイバーのモビルドールは見方を変えればメカ少女のプラモデルに意思が宿ったものだ。到底理解が得られるとは思えない。

 

「かっ、カスミこそ誤魔化さないでよ!」

「誤魔化してるつもりは無いよ」

「誤魔化してる!」

 

 ただ言いたくないだけで。いやこれ誤魔化してるな?

 

「…………オレは、自分の過去を話して同情されるのが嫌だ。だって同情されて結婚するってことになっても、後々苦しくなるだけだから」

「……案外ごもっともな意見だ」

「オレお前らになんだと思われてるの?」

 

 オレのイメージどうなってんの? ねぇ?

 せめてプラモパチパチお兄さんとかにしてよ? いやそれもどちらかと言えば嫌だけど。

 

「どうせなら、ちゃんと恋愛してから結婚したい」

「…………カスミもしっかり考えてんだね」

「当然。だって結婚は人生のパートナーを決める大事な事だから」

「…………へぇー」

 

 あ。

 これは、まずいかもしれない。

 

「レイメイ、結婚しよう」

「ふえぇっ!?」

 

 ビリーヴが突然レイメイの手を取ってそう言い放った。ですよねー。

 

「人生のパートナーってことはずっと一緒ってことでしょ? だからしよ、結婚」

「え、あ、いや、心の準備が……!」

「ね、しよ? レイメイ」

「ひゃぅぅ……!」

 

 はー、やってらんね。帰ろ。

 ログアウトボタンを押して、いち早く退散した。

 

 現実空間に意識が引き戻される。その時刻、午後4時25分。

 流石にそろそろ仕事を再開しなければいけない時間だ。

 

「ギターどこだったかなー……」

 

 ギターを探しにリビングを出ると、玄関のインターホンが押される。

 こんな中途半端な時期に来るやつなんて1人しかいない。

 

「はい、なんですかカグラさん」

「よっ! 鍋パしようぜ!」

 

 玄関のドアを開けた先にいたのは、恐らく勤務帰りのまま食材を買ってきたであろうカグラと、カグラに引きづられてぐったりしているアマネ、そしてその付き添いらしいアマネの妹、イチカの3人がいた。

 

「お、お邪魔します。クロートさん」

「イチカちゃんも来たんだ」

「なんで俺まで……」

「まぁまぁお兄ちゃん、鍋パーティーは人数が多い方が楽しいと思うよ?」

「ゲーム……」

 

 相変わらずのゲーム廃人だ。恐らく新発売のあっためているゲームが何本かあるのだろう。

 とりあえず家に上げる。もう11月だし、この時期は夜が冷え込んでくる。カグラが鍋パに誘ったのもそういう事だろう。

 

「いやー! やっぱ金持ちの家は空気が違うねー!」

「空気洗浄機と加湿器だろ」

「正解。おかげで電気代もバカにならなくて……」

 

 今の稼ぎでもあんまり足りてない。親父からのお小遣いがあるとはいえ、馬鹿でかい金額のせいで税理士さんは毎月頭抱えるし。

 

「あ、イチカちゃんその具材はね……」

「あ、すみません」

「ふふ、いいよいいよ。これを機に覚えれば他の人に知識マウント取れるよ?」

「そんなことしませんよ……」

 

 カグラとイチカが2人で手分けして具材の準備をしていて、オレ達は鍋の中に浮かぶ出汁の具材をただ見つめている。

 

「流石に5年もすれば馴染むか」

「流石に、な……」

 

 今から5年前。

 脳へのダメージが原因で昏睡状態だったイチカちゃんに、アマネの両親の遺産とオレの家からの支援で、最新鋭の手術を受けさせた。

 その結果、イチカちゃんは1ヶ月の観察入院から復帰して日常生活を送れるようにはなったものの、自身の記憶を全て失うことになってしまった。

 担当医は親父の人脈ネットワークを介した世界でも最高峰と言われる名医だった。だがそれでも辛い後遺症を残すほどに、イチカちゃんが”あの事故”で負った傷は深いものだったのだ。

 

「まだ後悔してんのかお前」

「してないよ。あの時手術しなければ、イチカちゃんは今も眠ってる状態だったから」

「…………最悪の置き土産だよ」

「…………」

 

 具材を切り揃えた2人が、皿に乗せて運んでくる。オレ達とは向かいの席に座り、出汁の具材を取ってから具材をどんどん入れていった。

 

「お前ら何硬い話してんのー?」

「社会人には散り積もる話もあるんでしょうけど、今日はとことん楽しみましょうよ!」

「言っとくけど、オレこれから仕事する予定だったからね?」

 

 オレの後ろのソファには、出番を無くして哀愁を漂わせているギターがあった。

 

「じゃあなんか1曲演奏してよ。カスミの演奏なら鍋もグッと美味しくなるかもー?」

「適当言いやがって……」

「私も聞きたいなー、なんて」

「演奏しろよ酷評してやる」

「お前はオレのアンチか何かか」

 

 みんなから押される形で渋々自分の曲を演奏し始める。あんまり激しいのも良くないと思って、大体BPM100前後のゆったりした曲を演奏した。

 合いの手がうるさかった。カグラなんか急に歌い出すし。

 

「はぁー……そろそろ火、通ったかな?」

「かもですね」

「はいじゃあ、ご開帳ー!」

 

 見頃だと感じたカグラが閉じられていた鍋の蓋を開け、中から白い湯気が舞う。

 

「じゃん! 石狩鍋ー!」

「げ、魚……」

「文句言わんで()え!」

「秋田の方言……?」

 

 野菜に魚、その他諸々。各自自分の食べたい具材を好きに取っていく。

 出汁が効いてて、白菜も柔らかくなってる。魚はよくほぐれて美味しい。

 

「そいえばさー、有志連合の話ってどうなったん?」

「有志連合?」

 

 カグラの問いかけにイチカちゃんが反応を示す。

 

「GBNで運営とチャンピオンが直々に募集をかけた最強のフォース組合のことだよ。オレ達も一応そこに所属してる」

「アマネは第二次終わってから参戦したから、有志連合で戦ったことないんだっけ」

「ああ」

「へぇー……」

 

 今の反応、ビリーヴに似てるな。

 というか、イチカちゃんは何処と無くビリーヴに似ている気がする。多分オレの気のせいだろうけど。

 

「有志連合からの招集は受けた。元よりオレ達が掴んだ尻尾なわけだし」

「何故かあっち側から出てきやがったがな。GBN潰す気だぞあいつら」

「一個人が、ゲーム潰すって言ったんですか!?」

「言うなれば革命だよ、革命。GBNが2つ目の世界って言えるぐらいには肥大化しちゃったからねぇ」

 

 アイツらの行動を革命とするなら、それをただの反乱にするオレ達は悪なのだろうか。

 悪なんて、個人にとっての対立する思想でしかない。これは主観的に語れる話じゃないというのは、明白であった。

 

「ぶっちゃけ今の運営で安定してるだろ。誰もが満足するゲームなんて作ってられない。不満が強いやつはいずれ出ていくし、満足してるプレイヤーから多く絞り取れれば良いって方針取れば安牌だろうよ」

「相変わらず夢が無いねぇアマネは」

「事実だろ」

「そういうところだよ、お兄ちゃん」

 

 それから、談笑を繰り広げながら鍋を食べ進め、ようやくシメを終えた頃。アマネがテレビゲームを漁ってやり出したので、本格的に仕事する空気じゃ無くなった。というか、オレの家なんだけど。

 

「いけそこだ!」

「うるせぇ軸がブレる」

「あ、そこに宝箱あるよ!」

「だからうるせぇって!」

 

 アマネがやっているのは発売からしばらく経ったにも関わらず、未だに話題が耐えない超人気のオープンワールド風のRPG。

 なんとなくゲームしてみたかったので買ったけど、結局ラスボスのとこまで行かずにほっぽり出していた。道中の寄り道が充実し過ぎている。

 

 …………ガンプラの作業でもするか。

 キッチン近くのテーブルに放置されていた箱からルシファーと、それに接続するためのパーツを取り出す。あとは棚から必要なものを取ったり。

 

「クロートさん、これガンプラですか?」

「イチカちゃん? まぁ、そうだけど」

「綺麗ですね」

「そ、そりゃどうも」

 

 突然ルシファーを褒められた。まぁ、今はもうくすみ切ってるけど塗った時はメッキシルバーでかなり綺麗だったし、そう思われるのも無理はない。かな?

 

「さっき言ってた有志連合戦用に改良しようと思ってさ。1度に持っていける武器を増やしたいんだ」

「へぇ、私にも何か手伝えることってありますか?」

「へ?」

 

 手伝うこと? え、イチカちゃんガンプラに興味あるの?

 

「え、じゃ、じゃあ……このガンプラの箱から背中のパーツだけ取ってくれないかな。ヤスリもしてくれると助かるんだけど……」

「わかりました、任せてください!」

 

 ガッツポーズをして答えてくれた。

 黙々と改造したパーツのヤスリがけを行いながら、ニッパーでパーツを切り取っていくイチカちゃんを少し見る。初心者なのにちゃんと2度切りしてくれて、400番から1000番までしっかりとヤスリがけをしてくれている。丁寧だ。

 

「痛っ……」

 

 という風に見惚れていたら、ついデザインナイフで指を切ってしまった。これで15敗目か、無駄にキリがいい。

 

「あ、大丈夫ですか? 絆創膏取ってきますね」

「あ、ありがと……食器棚の真ん中に入ってるから」

「はい」

 

 水道で切った部分を洗い、水気を取ってからイチカちゃんが取ってきた絆創膏を貼る。幸いにも爪の周辺じゃなくて良かった。あの辺りの怪我はマジで痛い。

 

「イチカちゃん、どうして手伝ってくれるの? ガンプラに興味あるとか?」

 

 少し気になる質問をしてみる。

 テレビの前でゲームをしている2人は、お互いを煽りながらも楽しそうにゲームをしている。

 こんな地道な作業より、3人で仲良くゲームをしていた方が楽しいに決まってる。

 

「んー、それもありますけど、私って記憶喪失になってからクロートさんとあんまり話したことないじゃないですか。だから、ちゃんとお話出来る機会が欲しかったんです」

「…………そっか。確かに、アマネとカグラばっか話しかけてたもんね」

 

 アマネはたった一人の家族で兄なわけだし、カグラは…………色々あるから。

 

「クロートさんこそ、あの二人の中に混ざらないんですか?」

「オレは…………いいよ。今はガンプラ(こっち)に集中したい。2人は機体に改修とか加えないだろうから、ゲームとかで息抜きさせるのがいいと思う」

「……クロートさんって、本当に優しいですよね」

「えっ、そ、そう?」

 

 面と向かってそういうことを言われるのはちょっと、照れる。

 

「でも、優しすぎて他の人に従ってばかりだと……その人らしさが消えちゃう」

「え……?」

「クロートさんも、たまにはわがまま、言ってもいいんじゃないですか?」

 

 たまには…………?

 いやだって、オレもちゃんと自分のやりたいことを通してるし、ちゃんと自分で考えて行動してる。

 …………あ、そうか。

 それが他人にとって、優しさとか気遣いとか、オレ自身が得することじゃないと思われてるのか。

 だから、だからオレはコネコに、『受動的』だって、言われたのか。

 じゃあ、オレが得するオレのやりたいことって、なんだろ。

 

「……って、人に言ってる時点で私もお節介ですよね。ははは……」

「ううん、イチカちゃんはオレと違って自分のやりたい、自分が得することをやってるじゃん」

「え?」

「ガンプラに興味があるから、オレの手伝いしてくれてるんでしょ? それでガンプラに触れるのは、イチカちゃんにとって得することなんじゃない?」

「そ、そうですかね……」

 

 記憶喪失なのにイチカちゃんは立派だ。

 今だって、兄と一緒の場所で働けるようにって、大学で頑張っている。

 この子は優しくて、そのうえ自分がやりたいことをちゃんとやってる。オレとあんまり変わらないはずなのに、雲泥の差だ。

『一緒に働きたい』って、簡単には行かないはずなのに。そういうのが彼女のわがままなんだろうか。

 …………オレもそういうこと、思っていいのだろうか。イチカちゃんみたいに、自分の為にやりたい事を作れるだろうか。

 

「…………ノート持ってくる」

「ノート、ですか?」

「このガンプラ、ルシファーの強化プランの完成図。ジョイントはもうほとんど完成してるから、あとは噛み合うかどうかだけなんだ。丸投げみたいになるけど微調整お願い出来る?」

「私がこのガンプラの仕上げをするんですか?」

「武器類は後で塗装するから、洗浄前の仕上げって事になるね」

「……わかりました。私にお任せ下さい!」

「こんなわがままな大人でごめんね」

 

 仕返しになっただろうか。まぁ、いいか。

 今はちょっとだけ、ダメな大人になろう。

 

「あーまた負けたー! こいつのビーム強すぎんだろ……」

「パリィしないからだろ」

「おうっクロート!?」

「やーい言われてやんのー」

「あぁ!? だったらお前がやれよ!」

「いいぜやってやるよ。少なくともお前のナメクジみたいなプレイングよりはマシだからな」

「誰がナメクジだってぇ!? 返せもっかいやる!」

「いやお前がやれって言ったんだろうが!」

「いや、ここは流れ的にオレじゃないの?」

「「どうぞどうぞ!」」

「新しいパターン来たな」

 

 久しぶりにやるこのゲームは、感覚なんて忘れててひっどいもんだったけど。

 ここしばらくは感じられてなかった温もりを、感じられたと思う。

 




嵐の前の静けさ

キャラ紹介

小泉(コイズミ)イチカ
アマネの妹で、たった1人の家族。
8年前の事故の後遺症で、あらゆる記憶を喪失してしまった少女。
心優しく、それでいて兄に似た現実に対する力強い姿勢をしており、誰もがよくできた人間だと感じる。
現在は高校の卒業資格を取ってから遅れて大学の法学科に入学し、兄と同じ仕事が出来るよう努力している。
髪は兄と同様灰色で、三つ編みを1本通したセミロング。

chapter.1完結!この段階で一番好きなキャラクターは?

  • レイメイ/アカツキノ ミナ
  • ビリーヴ
  • コネコ/コナミ ネコ
  • カスミ
  • カグラ
  • アノマロカリス
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