棒ヤスリで砲身の内部を削り、口径を広げてビームの威力を引き上げる。
PS装甲はビームに対して耐性が弱いから、GPD時代に流行していた対ビームコーティング用のトップコートを吹きかける。
シールドは上から薄いプラ板を何枚も重ねて強度を高める。勿論こっちにも対ビームコーティングを施す。
オールマイトストライクの改修は順調に進んでいる。一見見た目が変わっていないようで、その中身は全くの別物だ。
「これで、次の有志連合戦までバッチリなのです」
本当は組み立てまでやりたかったけど、今日はもう遅いから寝よう。お母さんには元から奇異な目で見られているんだから。
「………………カスミさん、今どうしてるかな」
カスミさんは多分、自己を強く否定されて、今のような性格になった。だから肯定されたくてG-tubeの配信を始めたのだと思う。それが、自己を確立する唯一の方法だから。
でも、例え自分の為にやったことでも救われた人は少なからずいる。私も多分、その1人だ。
私は、昔から大抵のことは出来たし、大抵の場合褒められた。母以外から。
母にとっては、テストで100点を取るのも、徒競走で1位を取るのも、周囲から尊敬されることも当たり前。当たり前のことが出来ない他の子達を母は軽蔑していた。そして私は、その母にとっての”当たり前”をただなぞっていった。
『コナミってさー』
『うんうん、ウザイよねー』
『天才にはアタシら凡人の気持ちなんかわかんないんだよ』
そんな陰からの言葉に気づかないほど馬鹿でもない。みんなにとって私は、尊敬ではなく畏怖と忌避感を感じる存在になってしまった。
私には味方がいない。
使用人はただ料理を作ったり、洗濯をしたりしかせず、私の話を聞くなんてありえない。
父は仕事が忙しくてまともに会えてない。今彼がどんな顔なのかも曖昧だ。
そして母は、私のことをトロフィーを運んでくる人形としか思っていない。私の功績は母の功績になる。私に還元されない。その事実に気付く頃には、私の心から熱は消えていた。
だと思っていた。だけど。
あの日見た光景が、私の心に再び火をつけた。
『先日行われたコミックマーケット。その熱気は凄まじく、天井に雲が出来るほどでした』
テレビで毎日やっている、何気ないニュース。それに映っていたのは、尋常ではない人の数と、その頭上に出来た水滴の塊。
あのイベント1つに、6万人余りの人が一堂に会し、さらには気象現象を発生させるほどの熱気を生み出したという事実に、情熱を忘れた私の心は震えた。
『下賎なニュースね』
母はそう言った。でも私はそう思わない、その日初めて母と意見が食い違った。
その感覚に、私は果てしない開放感を得られた。
それから、私は今までの私とは思えないほど趣味に傾倒していった。
漫画、アニメ、果てはライトノベルまで、いわゆるオタク文化と呼ばれるものを私はこよなく愛した。まるで今までの心の穴を埋めるように。
使用人からは白い目で見られた。そりゃそうだ、ついこの間まで氷のように冷たかった私が、今ではこんなにも溶け切っているのだから。
それでもやめられなかった。否、やめたくなかった。今まで出来なかった自己表現が初めて出来たように感じた。
何よりも、何かを好きでいれることに私は幸福を感じていた。
そんな時だ。彼と、ガンプラに出会ったのは。
『やほ、見えてる? カスミだよ。今日はRTA方式のソロレイドミッションを作ってみたから、デモンストレーションとして友達にやってもらおうと思うよ。行けるー?』
『馬鹿みたいな企画に付き合ってる俺の気持ちにもなってもらおうか』
『行けるっぽい』
かたや柔らかい口調でダウナー気味に話す金髪の青年。かたや対照的に、荒っぽい声で話す灰色のロボット。
それが、私とカスミさん。そしてガンプラとの出会いだった。
(あの時はまだ、画面の向こうの人だった。だけどGBNで出会って、リアルで会って、今は私の婚約者…………)
なんて波乱万丈な人生だろうか。
これも全部、私があのニュースに触発されたから起きたことだ。
私が、私の行動が母を困らせ、軌道を変えている。今まで私の人生を好き勝手してきた母が、私の行動ひとつに惑わされている。
歪なのだろうか、それでも構わない。これは私にとっての『復讐』なのだから。
今までモノ扱いされてきた私の逆襲。母が全てを投げ捨てれば勝ちのゲームだ。
ベッドから再び立ち上がり、机に置かれていたバラバラのストライクを見つめる。
「……こうなったらとことん落ちてやろう、ストライク。きっとカスミさんが救ってくれるのです」
そう、カスミさんは私を救ってくれる。
だから、私は彼が受けた傷を癒してあげるんだ。
それこそが、その救い合いこそが、あるべき夫婦の姿。
「やっぱり、この気持ちは…………」
きゅっ、と締め付けられる感覚。
カスミさんの憂いている表情を思い出すだけで心が苦しくなり、カスミさんが笑っている表情を思い出すだけで心が温かくなるこの気持ち。
ただのファンとしての気持ちとは同じようで、全く違う。
やはり、この気持ちの正体は…………。
────────────────────
GBN、唯一私が私でいられる場所。
その場所が今、危機に晒されている。
(有志連合戦まで、あと1週間……!)
オールマイトストライクの改修が間に合って良かった。この子のスペックは、これまでとは比べものにならない程向上している。
ただの気のせいかもだけど、ストライクの顔付きも凛々しくなったように感じる。
「あ、いた」
「か、カスミさん?」
カスミさんが様子を見に来たのか、私のコンテナに来てくれた。
…………やばい、意識する。
「えと、どうしてここに?」
「オールマイトストライク、どうかなって」
「えっあ、じゅ、順調なのです! 色々細かいところとか、目に見えないところとか修正したり作り直したりして、見た目は一緒でも中身は全然別物っていうか……」
「わかるよ」
「え?」
「ストライク、良い顔付きになってるから」
気のせい、じゃなかった?
カスミさん、そういうのわかってくれるんだ、へぇ…………なんか、嬉しい。
「あ、ありがとうなのです…………」
「スペックも、前のより3倍ぐらいは上がってる。荒削りな感じだったのが洗練された感じ」
「銃口を広げてビームの範囲を広げたりして、シールドはビルドストライクのチョバムシールドの構造を利用したのです。PS装甲でも防げない攻撃をしっかり受け流せるようにって」
「あれって消耗品だから長期戦に不利だよね…………あ。もしかしてだけど、シールドだけナノスキン装甲になってる?」
「せ、正解なのです!!」
それもわかってくれるんだ。凄い。
「なるほど、ナノスキンなら仕様の再生能力があるからチョバムシールドの構造でも長持ちするわけか」
「この前のミッションでゲットした、レア装備を使ってみたのです!」
「うん、いい発想力」
「全部カスミさんのお陰なのです。カスミさんの動画を見て、GBNで勝てる機体を考えたのです。だって、私は他のみんなより劣ってるから……」
私は、GBNを始めてまだ1ヶ月。ランクだってみんなが手伝ってくれたお陰でCランクまで行ったけど、カスミさんはSS。アノマロ先輩は、トップのSSSランクだ。
「だから、せめて機体性能だけはみんなと遜色無いようにって、思ったのです」
「そっか……。まだあんまり慣れてないもんね、コネコ」
「そういえば、カスミさんはどうなのです? やっぱりルシファーに新しい装備とか作ってたり、するのです?」
「あーそうだった、コネコにそれについて言いに来たんだった。ちょっと来て」
「あ、はいなのです」
カスミさんについて行った先は、カスミさん専用のコンテナ。
中に入ると、予備機のアトラスともう1機、バックパックと足部に差異が見られるルシファーの姿があった。
「こ、これって……!」
「フルアーマー・ユニコーンをちょっと真似してみた。アームドアーマーも、BSを手持ち兵装にして、足部にVNを内蔵してる。増加フレームはXCと干渉しないように形を変えたりしてる……っていうか、XCにくっついてる」
機体本体に大きな違いは無い。
特筆すべきはバックパックの増加フレーム。アームドアーマーXCに、ハイパーバズーカと3連装ミサイル、そして手持ち兵装に改造されたアームドアーマーBS。加えて、腰部にも予備のリボルビングランチャー1基とバズーカの弾倉、マグナムパックが各3個増えている。バズーカであれば12発、ビームマグナムであれば15発分だ。
さらに、脚部には6連装グレネードランチャー。足部はアームドアーマーVNを内蔵された全く別のものへと変わっている。
「腕部のビームガトリングガンとDEは据え置き……」
「武器ゴテゴテの奴とアームドアーマー欲張りセット、2つあったフルアーマープランを複合した全部乗せ仕様。流石にハイパー・ビームジャベリンは無理だったけど、乗せられるだけ乗せてみた」
「これを、カスミさんが……」
やっぱり凄い、カスミさんの技術は私なんか足元にも及ばない。
こんなに凄いものをこの短期間で仕上げてきたなんて。
「いや、オレだけで作ったわけじゃないよ」
「え、そうなのです?」
「追加分の微調整は他の人、友達にやってもらった」
「友達って、アノマロ先輩やカグラ先輩のことなのです?」
私の問いかけ、確認に対して、カスミさんは首を横に振った。
「2人とも違う、えーっと……アノマロの、妹さん? だよ」
「え、妹さん?」
「そう」
アノマロ先輩って、妹いたのです!?
凄い好き勝手やってるしてっきり一人っ子かと……。
「アノマロ先輩に妹……意外過ぎるのです……」
「………………」
私が驚いていると、突然カスミさんが顎に手を当てて何か唸っていた。
「カスミさん? どうしたのです?」
「…………もしかして、あの時オレとんでもないクズムーブをかましてしまったのでは……!?」
「え」
「やばい、後で謝らないと……! いやでもイチカちゃん凄い笑顔で引き受けてくれたし嫌味かも、どうすれば…………」
「え、え?」
もしかして、カスミさんって。
ものすっごく臆病…………なのです?
「あ、あの」
「アマネキレないかなぁ……あいつ結構シスコンだし…………あ、アノマロだアノマロ。本名はNG……!」
「カスミさーん?」
「カグラに怒られるのは確定だな……迷惑かけたしルシファーの最終調整イチカちゃんにさせちゃったし確実に嫉妬してるよな……あーどうすれば──」
「カスミさん!!」
「はうっ!?」
あまりにも自分の世界に耽っていたので思わず大声が出てしまった。
「あっあの! とりあえずお手伝いしてくれたことのお礼とかしてみたら、どうなのです?」
「…………そっか。そこは謝罪じゃなくて感謝だよな」
とりあえず後悔と自責の念はここで終結させられた。
「そ、それで……どうして手伝ってもらったのです? カスミさんなら1人でも出来たと思うのに」
「あ、それが疑問だったんだ。えっと…………ちょっとやりたくなったから」
「やりたくなったって、何を?」
「……『誰かに頼る』っていうこと」
誰かに頼る、それがやりたくて手伝ってもらったってこと、なのです?
「長らくやってこなかったから。コネコが言ってたでしょ、『お互いの不幸も幸福も分かち合うのが夫婦だ』って。それってつまり、頼ったり頼られたりするってことだよね」
「えっと、まぁ、はいなのです」
「オレは今まで頼られたりしてばっかりだったから、ちょっと頼ってみたくなった。その、夫婦になるわけだし」
「ふ…………!?」
そ、それは……ずるすぎる。
そんなこと言われたら、脈アリみたいな顔されて…………そんなの。
意識するに、決まってる…………!!
「ッ…………、や、やっぱり受け身なのです!」
「そうだよね……」
「そっそうなのです! もっと自主的に、自分から色々してくれないと……」
例えば……その、デート誘ってくれたり、とか。
「やっぱり慣れないことするのって難しい…………コネコは、頑張ってて偉いな」
「ふぇ……?」
「コネコは自分の力だけでも弱気にならずに頑張れるし、無理だとしても色んな人の力を借りれる。オレは萎縮して、全部自分でやろうってしちゃうから」
あれ、これって?
カスミさん、自分のこと話してくれてる?
「でもコネコは、そういうの隠しちゃうから。オレの動画見て、人知れず技術吸収して。母親の目だってあるだろうにその気苦労も悟らせずに……」
「え、あ、あの…………」
「コネコはオレに自分のこと話せって言ったけど、コネコは全然打ち明かしてくれない。困ってるなら、嫌なことがあるなら言ってくれてもいいのに」
「や、それはだって」
それは、カスミさんに迷惑かけることになる……から。
私の言葉なんて待たずに、カスミさんは続けた。
「だってじゃない。オレのこと頼ってほしい。誰かに頼ってほしいなんて思ったの、コネコが初めてだから」
「え……!?」
「だから、だから……その、えっと…………」
私の肩を掴んで一通り言い切ろうとしたところで、急に勢いが減衰して言い淀む。
「…………何言ってんだろ、オレ」
「あの、カスミさん……」
「コネコ今のは忘れて──」
「期待して、いいのです? それは」
「…………え」
自分のこと話してくれて、私のために行動しようと思っていて、それで私のことをこんなにも気にかけてくれる。
そんなの期待しちゃう、私だって1人の乙女だから。
「ちゃんとお付き合いして、プロポーズして、ちゃんと私を好きだから結婚してくれるのです?」
「あ、いや……」
「私のこと、親の分まで愛してくれるのです?」
「そ、その……」
「私を、私を好きでいてくれるのです?」
ここは一斉に、畳み掛ける。
カスミさんは臆病な人間だってさっきわかったから、私から手を伸ばす。
その手を取るのは、この人次第だ。
「えっと、その……あの……」
「どうなのです? カスミさん」
カスミさんの顔は、耳を侵食する程に真っ赤になっていて、表情は驚きとも羞恥とも取れるなんとも言えない状態。
こうなるのは私に対してだけ。その事実にたまらなく嬉しくなってしまう。
「…………い、今は有志連合戦に向けて機体を慣らしておいた方がいいから! そ、それは戦いが終わってからで……」
「アハハっ! じゃあ返事、楽しみに待ってるのです!」
これは負けていられない。
第三次有志連合戦は絶対に勝って、カスミさんから返事を貰いたい。
『結婚を前提にお付き合い』なんて、とてもドラマチックだ。母ですらそんな想いはしなかっただろう。
私の全てが母を凌駕する。もう言いなりになんてならない、私は私の道を歩みたい。その道を照らしてくれた、この人と。
さぁ、彼らは無事に死亡フラグを折れたのか。
機体解説
GAT-X105/AL オールマイトストライクガンダム(改修後)
コネコがEGストライクをベースにカスタムしたガンプラ。前機体から改修を加えると同時に、型式番号が追加された。
エールストライカーをベースに、アグニとグランドスラム2基を追加したオールマイトストライカーは健在。機体の完成度が上がったことで出力や飛行性能が向上している。
特筆すべき点は対ビームシールドがビルドストライクのチョバムシールドのような多積層構造になった事で、ダメージ吸収の効率が上がったこと。このシールドにはナノスキンが使用されており、時間をかけて損傷を回復することが出来る。
加えて機体装甲にはPS装甲の上から対ビームコーティングを施している。これはGPD時代に流行していたもののうち特に品質が高いものをそのまま使用しており、実弾とビーム双方に対する防御性能が高まっている。
特殊システム
・ニュートロンジャマーキャンセラー:SEEDの核エンジン搭載機体に採用されているシステム。GBNではシステム上これが無い動力炉をSEED系の機体に搭載することは出来ない。
武装
・75mmバルカン砲イーゲルシュテルン2門
・64mm高エネルギービームライフル
・アーマーシュナイダー×2
・対ビームシールド
・ビームサーベル×2(オールマイトストライカー)
・超高速インパルス砲アグニ(オールマイトストライカー)
・対艦刀グランドスラム×2(オールマイトストライカー)
RX-0-4 フルアーマー・ルシファー
カスミがカスタムしたルシファーの総合強化仕様。
フルアーマー・ユニコーンをベースにカスミオリジナルの要素が盛り込まれており、ペルフェクティビリティの要素も加えたまさしく『全部乗せ』の機体となっている。
元ネタ同様、バックパックの増加フレームにハイパーバズーカを2門搭載しているが、この増加フレームはアームドアーマーXCと融合したものとなっている。またハイパーバズーカにはジェスタのグレネードランチャーは接続されておらず、背部の予備シールドも手持ち兵装に改造されたアームドアーマーBSに変更されている。加えて腰部リアアーマーはビームマグナムとハイパーバズーカ、リボルビングランチャーの予備弾倉を備える為にフレームが増設されており、デストロイモード時にも干渉しない作りになっている。
機体足部はアームドアーマーVNを内蔵した全くの別物となっており、格闘性能を向上させている。
なお、これだけ盛り盛りにしたのに肝心の推力の肝であるプロペラントタンク兼用ブースターロケットを搭載するスペースを確保するのを忘れてしまったため、94式ベースジャバーとの併用が余儀無くされた。
特殊システム
・NT-D(ニュータイプ・デストロイヤー):ユニコーン系の機体やナラティブガンダムに搭載されているオペレーションシステム。GBN内ではサイコミュ搭載機に対する強力なバフとして出現し、その発動条件もパイロットの任意となる。ただし、他のNT-Dの発動に引っ張られることもある。
・インテンション・オートマチックシステム:ユニコーン系やシナンジュに搭載されているシステム。GBNが取り入れる思考を反映する機能を全面に押し出すシステムで、使いこなせれば最強のシステムといえる。
・ナイトロ:アームドアーマーXCに搭載されている補助サイコミュ。基本的にマウントされている武装のリモート使用や、94式ベースジャバーの自動操縦に使われる。
武装
・60mmバルカン砲2門
・ビームマグナム
・リボルビングランチャー×2(ビームマグナム内蔵)
・ビームジュッテ(リボルビングランチャー)
・ボップ・ランチャー(リボルビングランチャー)
・瞬光式徹甲榴弾(リボルビングランチャー)
・スモークグレネード(リボルビングランチャー)
・ビームガトリングガン×2
・ハイパーバズーカ×2
・3連装対艦ミサイルランチャー×2
・6連装グレネードランチャー×2
・ビームサーベル×4
・ビームマグナム用Eパック予備弾倉×3
・ハイパーバズーカ用予備弾倉×3
・アームドアーマーBS
・アームドアーマーDE×2
・アームドアーマーVN(足部内蔵)
・アームドアーマーXC
chapter.1完結!この段階で一番好きなキャラクターは?
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レイメイ/アカツキノ ミナ
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ビリーヴ
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コネコ/コナミ ネコ
-
カスミ
-
カグラ
-
アノマロカリス