ガンビットを前のシルヴィーの2倍に増設。複座式というよりはガロードとティファのアレに近い感じで、機体本体の制御を私が、ビットの制御をビリーヴが行う。
「よし、準備完了。いつでもいいよー」
「き、緊張してきた……」
「……ごめん、もうちょい待ってもらってもいい?」
「ハァ……どうぞ」
ビリーヴのコンディションが良くなかったので準備時間の延長を求めると、アノマロカリスは溜息をつきながらも了承してくれた。
ビリーヴが『一緒に戦いたい』と言って数日。
あの発言の直後すぐに有志連合の再招集がかかった為、私は急ピッチでシルヴィーのガンビットを増設し、ビリーヴが扱えるよう設定を色々変更した。
そして、残り1週間を切ったというところでようやく形になったのだ。忙しい日々だった。
「テメーらの愛の巣制作に協力してやってんだから感謝しろよ」
「愛の巣って……」
「それって何のこと?」
「さぁ、少なくともシルヴィーのことからかってるんだと思う」
「ふーん、でも悪い気はしないよ。わたし」
「え、そう?」
「愛の巣って、たぶんいい事だと思うから」
そう悪気は無しに言ってくる彼女の笑顔はまるで天使のようだ。それと同時に、何処か恐ろしげでもある。
そう、真ん前のスカルライダーから果てしないまでの苛立ちを感じている、それはもうひしひしと。
「ニュータイプにでもなった気分だ……」
少し話してビリーヴも緊張がほぐれたっぽいので、改めて特訓を開始する。
私とビリーヴ、そしてシルヴィーの三位一体の連携訓練だ。
「悪いがもう時間は無い。油断してるとすぐに飛ばすぞ」
「うん、わかってるよ。レイメイ、行こう」
「うん、ビリーヴ!」
数時間後…………。
「全然ダメじゃねぇか」
「うぅ、ごめんレイメイ……」
数時間の特訓の末、わかったことがある。
ビリーヴは私とシルヴィーの動きに全くついていけてない。
正直言って、ガンビットの制御は初めてとは思えないほど正確だった。でも、それと私の戦いを間近で見ていたことを差し引いたとしても圧倒的な実戦経験の無さが足を引っ張ってしまう。
簡単に言うと、軌道がわかりやすすぎて滅茶苦茶避けられる。
「大丈夫だよビリーヴ。フェイントなんて上級者テクニックだし、こいつが異常なだけで大抵の場合は当たるよ!」
「アノマロカリスぐらい強い敵の時は……?」
「え、えぇ……?」
うっ、言いたくないけど凄いめんどくさいぞ私の彼女!
「銀バカー! あんまビリーヴちゃんいじめんなよ!」
「うるせぇなピンカス、これぐらい荒っぽくしねぇと秒で死ぬんだよ」
「誰がピンカスだ誰が!! レイメイちゃんが守ってくれるから安心だって!」
「だったら脱出機構でも付けとけ!」
あっちもかなりめんどくさそう。
先は長くなりそうだけど、これもビリーヴと幸せなGBNライフを送るため!
「ねぇビリーヴ、アノマロがどういう動きするかわかる?」
「う、うん。わかってきた。アノマロカリス、正面から向かいながら、射撃を避ける為にジグザグに動く」
「うん、それで偶に武器をフェイントに使いながら後ろに回って不意打ちもしてくる。私の死角、見えない箇所をカバーする感じで動かせる?」
「わかった、やってみる」
特訓はかなり厳しいけど、ビリーヴは頑張って私に合わせようと努力してる。
恋人の私も、頑張らないとだ。
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有志連合戦まで、あと3日。
「キルスコア、結構高いのです……!」
様々な難易度の連戦ミッションをこなしながら、新生オールマイトストライクの慣らし運転をしている。
現状は前のよりずっと性能が上がっていて、それに時々振り回されることもあったけど今は安定している。
レイメイ先輩達も頑張ってるしどんどんやっていこう。
「コネコちゃ〜ん」
「あ、カグラ先輩」
「よっす! 調子はどうかね」
「順調なのです。有志連合戦までにはなんとか間に合いそうって感じで」
「それなら良し! でカスミのことなんだけど……」
「んむっ!?」
カグラ先輩からの質問に答えると、続け様にカスミさんの事を聞かれて思わず変な声が出てしまった。
「コネコちゃん、カスミに告ったんだって?」
「な、なんで知ってるのです!?」
「なんでって雰囲気見ればわかるよ?」
「どんな観察眼なのです……?」
カグラ先輩然り、アノマロ先輩然り、このフォースは心を読める人が多い。まるでニュータイプ部隊のようだ。
「というわけでコネコちゃん、名実共にカスミのお嫁さんになる気満々なわけだけど」
「はっはいなのです」
「ここでカスミとの付き合いが長い私からアドバイスをしたいと思います」
「あ、ありがとうなのです」
思わず素っ気ない反応をしてしまう。
「さて、カスミが引っ込み事案という訳でもないがコミュるのが苦手なのは自明だね」
「えっとまぁ、確かに……なのです」
カグラ先輩やアノマロ先輩の前だと偶に砕けた口調が出たりするが、他の人の前だと基本的には優しい印象を受ける話し方をすることから、人と話すことに相当気を使ってるのは確かだ。
その分、遠慮無しに色々言われている2人が羨ましいと感じる。
「あいつ、あたし達との関わりが途切れた事が2回あるから、縁が切れることに凄い怯えてるんだ」
「確かに、言われてみれば」
「だから関係が切れないように、離れようと思われないようにって意識してる節がある。簡単に言えば、人との繋がりに異常な執着心があるんだよ」
「繋がりへの執着、それが受動的な態度の正体……」
確かにそういうことだと、相手にいい思いをさせようと受け身になったり、相手に従いがちだったりするのも腑に落ちる。それに関係が切れても今は持続してるってことは、切れる時に精神的に追い詰められるような、凄く嫌なことがあったに違いない。
「だから、あいつに必要なのは『自分からした行動を認めてくれる相手』、つまりはコネコちゃん。君なわけ」
「私…………? ど、どうして私なのです……?」
そういう相手でいいなら、別に私じゃなくても2人で事足りるはずだ。
「……あたしとカスミとアノマロの関係ってさ、言うなれば『理解と肯定はできるけど、共感は出来ない』っていう感じなんだよね」
「共感は出来ない関係?」
「アノマロはカスミのガンプラが好きって思いを理解してるし、それでいいと肯定してる。でもアノマロ自体は好きでもなんでもない。あたしは、カスミがコネコちゃんとのことで悩んでるのは理解出来るし、あいつのやり方を肯定するつもりだけど、異性を好きになるその感覚に共感出来ない。まぁ、そういう感じだよ」
「なる、ほど…………」
「だからね、足りないんだよ。カスミの全てを受け入れて、あいつとずっと一緒にいられるには、あたし達じゃどうしても足りない。だからコネコちゃんが必要なんだよ。同じ”好き”同士として、カスミと一緒にいて欲しいんだ」
そう語るカグラ先輩の表情はどこか物憂げで、悲しそうで、そして悔しそうだった。
「……わかったのです。私が、2人の分までカスミさんと一緒にいるのです!」
「…………そっか、ならあいつも安心かな」
カグラ先輩は、満足したように微笑んだ。
「よし! それが聞けて私も満足! 有志連合戦、頑張ろー!!」
「おー!! なのです!」
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コネコちゃんが再びミッションに潜った後、あたしはロビーに1人残されていた。
「うん、安心安心。ホントに…………ね」
さて、あたしも戦う前の挨拶にでも行こうか。
”恋人だった”あの子の元に。
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有志連合戦まで、あと1日。
死角からの攻撃をガンビットが阻む。そして続け様に、シルヴィーのライフルがガンビットと共に掃射され、分厚い弾幕網が出来上がる。
その網を掻い潜って横から一撃を入れようとするも、すかさずカバーに入ったガンビットによって右腕が破壊。振り上げた右腕に気を取らせ、左腕からシルヴィーの脇腹をサーベルで斬ろうとするも、それもガンビットの1つ、クロービット2本によって防がれた。
「…………大分動けるようになったな」
ビーム刃を仕舞い込み、戦闘体勢を解く。
「アノマロカリスのおかげでね。それに、レイメイと繋がってるみたいで心地良いから」
「っ……、当たり前のように恥ずかしいこと言うよねビリーヴ……」
「はいはい、バカップルは後でな」
今の動き、完全にスカルライダーが詰んでいた。たった数日の間でこんなにも成長するとは、流石は知識欲のELダイバー。吸収が物凄く早い。
「お、やってるじゃねぇか」
「2人ともいい動きだったぞ」
ふと、後ろから声をかけられる。
「……タイガーウルフ、シドまで」
「おぉ! 虎に熊じゃねぇか!」
「虎、熊……?」
来たのはランキング4位の大規模フォース『虎舞龍』のリーダー、タイガーウルフと、ソロ最強とも謳われるトップランカー、シドだった。
2人を見たアノマロが、高テンションで機体を降りる。
「なんだなんだ、模擬戦か?」
「模擬戦っつーか、あっちのな。ビット制御の練習」
「練習?」
補足するように、ビリーヴとレイメイも機体を降りてくる。
「こっちの、ビリーヴの練習です。機体本体は私が動かしてて…………あの、タイガーウルフさん」
「随分硬っ苦しいなぁ! 俺ぁそういうのは気にしねぇよ」
「なるほど、君は所謂子熊に生きる術を教える母熊というわけか」
「えっ、熊?」
…………なんか、オレが最初に気付いたのに入りづらい。これがコミュ障とコミュ強の弊害か。
謎の理論にレイメイが困惑していると、ビリーヴが1歩前に出て話をしだした。
「母熊……? じゃないよ。レイメイは私の恋人だよ」
「「え」」
「ちょ、ビリーヴ!?」
「だって事実でしょ?」
とんでもないことを口走りやがった。全くもうこのバカップルはトップランカーの前でも1ミリも揺らがねぇ…………。
「こ、恋人ってそりゃあ、あの……」
「
「変な言い方すんじゃねぇ!!」
「まーたやらかしてるよこいつら……」
カグラによるとビルドダイバーズ相手でもやらかしたらしいからな、この2人。
「ところで、虎とか熊とかってなに?」
「え、お嬢ちゃん知らねぇのか……?」
「うん。私ELダイバーだから」
「あー、確かに動物とか見せたことなかったなー……」
…………ん? これはようやっと話しかけるチャンスでは!?
急いでネットワークから虎を調べて、ビリーヴが見れるよう表示位置を変えようとする。
「え、えと、虎ってこういうやつで……」
「虎がこっちで、これが熊」
「へぇー……。なんか、ちょっと怖いけどかっこいい」
「カッ…………」
先を越された。なんだかんだでレイメイ、恋人力が高過ぎる。
「っ……、ふふっ……! 涙拭けよカスミ……っ……!」
「何笑ってんだよアノマロ…………」
「いやまじツボ入った……! く、ふふ……!!」
こいつ…………!
「…………タイガーウルフ、シド」
「お、おう。どうした?」
「あのボール、蹴りたくなりません?」
「は?」
「ふむ、蹴りたいわけでは無いが……あのようなバトルを見せられれば、バトラーとして滾るというものだ」
「あぁ、いっちょやろうぜ! 海!」
「クッ、おのれカスミ…………!!」
恨まれる筋合いは無い。
だってこの2人多分元からバトル目的で近付いて来てんだもん。
「ルールは4対1。アノマロが落ちればオレ達の勝ちで、オレ達全員が落ちればアノマロの勝ちでいい?」
「クソルール過ぎんだろ!!」
「面白ぇじゃねぇか、総当たり合戦!」
「では俺も便乗させてもらう」
「散々ボコされた鬱憤晴らそ、ビリーヴ!」
「うん! 今のわたしは、虎も熊もひっくり返せる気がするよ!」
「お前らふざけんなぁぁぁっっ!!!」
ということで、その日はアノマロの絶叫が鳴り響く夜で終わった。
まるでギャグ漫画のようだった。
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大勢のダイバー。
その中には、この前お世話になったビルドダイバーズの人達や、タイガーウルフ、シドの姿もある。
そして、この沢山の人達を取りまとめるチャンピオン、『クジョウ・キョウヤ』。この人がこのGBNで1番強い人らしい。レイメイもこの人には敵わないと言っていた。
「今日は集まってくれてありがとう! 皆も知っての通り、今回集まったのは2週間前のフォースフェスで使用された、フェイクデカールを先導するものを打ち倒し、拘束するためだ!」
チャンピオンの言葉に、その横にいたゲームマスターという人が続ける。
「フェイクデカールは3年前に流行していたブレイクデカールの模造品。ブレイクデカールのようにバグは起こさないが、その分修正パッチが効かない! 更には、ツールの使用にはサーバーに多大な負荷がかかる!」
「是非ともフェイクデカールを殲滅し、平和なGBNを取り戻そう!」
『オオオォォーッ!!!』
凄い歓声だ。これがチャンピオン、一番強い人の統率力。
「ビリーヴ、守ろう。この世界を」
「うん、一緒に」
後に、第三次有志連合戦と呼ばれる戦いがこの日、切って落とされる。
この時、わたし達はその後に待ち受ける悲劇に気付かずにいた。
次回、ついに第三次有志連合戦開幕!
チャンプの口調難しい……
キャラ解説
タイガーウルフ/オオガミ・コタロー(初出:『ガンダムビルドダイバーズ』)
フォースランキング4位、フォース『虎武龍』のリーダー。
ビルドダイバーズと関わっていったり、女性ダイバーの門下生を受け入れていくうちに、女性に対しての免疫が少しだけ付いた。
シドやアノマロカリスとは凌ぎを削り合うライバル関係で、アノマロカリスからは「虎」と呼ばれている。
使用機体はアルトロンガンダムをベースに、モビルファイターのような格闘性能を取り入れた『ガンダムジーエンアルトロン・ナタク』。
シド/シドー・マサキ(初出:『ガンダムビルドダイバーズRE:RISE』)
ソロで活動するトップランクダイバー。
かつては意識不明の重体だったが、現在はすっかり回復し、再びGBNで新しい伝説を積み重ねている。熊への拘りも健在。
タイガーウルフやアノマロカリスとはライバル関係で、短期間で自分達と肩を並べる程になったアノマロカリスに荒熊の才能を感じている。(アノマロ「熊の才能ってなんだよ」)
使用機体はガンダムMk-Ⅲをベースに、高い火力と高い白兵戦能力、そして高い戦闘継続能力を両立した『ガンダムアドバンスドテルティウム』。