ダンッ!
出撃前の廊下、オレは大きな音と共に壁際に追い詰められた。
フォースメンバーであり、親友のカグラに。
「…………何」
「……なんでもない。ただの八つ当たり」
思い当たる節は、ある。オレのルシファーについてだろう。
カグラは、特に何も言わずにオレを解放した。
「ごめん、先に行っててくれる? まだ時間あるだろうし」
「…………わかった」
カグラ、オレが地獄耳なの忘れてるな。
カグラがせせり泣く声を聞きながら、自分のコンテナまで歩いて行った。
「なんでっ……、なんであたしじゃないの……ッ……!!」
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ルールはフラッグ戦。勝利条件は敵の殲滅であり、撃破後の復活は無い。
近接戦闘が得意なアノマロとレイメイ、ビリーヴ等は前衛で突撃。
それ以外のオレ達は前衛の援護を行う後衛に付いた。とはいえ前衛を潜り抜けて後衛を狙う連中もいるわけで。
『ヒャハハハっ!! お遊びバトラー共に吠え面かかせに来たぜぇ!!』
「邪魔だ」
『ハッ? ……ヒャアっ!!?』
突っ込んできたガンダムエアマスターをハイパーバズーカでよろけさせ、MS形態に変形したところをビームマグナムで狙い撃ち、後ろにいたスローネアイン共々撃破。
『俺までェッ!?』
「オレ達後衛を狙うのは変な自信が付いてるバカと前衛が取り逃がすレベルのヤツだ!! 全員気を抜くな!」
『了解!』
「了解なのです!」
味方に状態を伝えながら、前衛の様子を見る。
前方、特に敵拠点であるソロモンっぽい衛星周辺は何度も爆発が起きていて、苛烈な戦いを物語っている。
その中で一際異彩を放つのがあのガンダムTRYAGEマグナム、チャンピオンの機体だ。
機体本体、更にはファンネルに至るまで、他とはあまりにも違う動きをしている。ファンネル一基一基が確実に関節を落とした直後に即死部分であるコクピットにビームガンを直撃させ、そして本体は関節とか狙わず3秒以内に3機同時に撃墜。
確かにこの戦いはアンチVSファンを最大規模で表したようなもんだけど誰がそこまでやれと言った。馬鹿じゃねぇのか。
『隙ありィ!!』
「おっと……!」
なんて心の中で突っ込んでいたらいつの間にか敵が来ていた。乗っていた94式ベースジャバーを特攻させて襲撃してきたローゼン・ズールを撃破。
『覚悟しろ、人気者ォッ!!』
「無駄だ」
次いで突っ込んできたウィンダムに右腕のビームキャノンとビームガトリングガンを一斉掃射し、撃墜。
そして、後ろから来ているヘルムヴィーゲ・リンカーを3連装ミサイルで攻撃。
『クソッ、なんでバレた!?』
「積んでるセンサーが違うんでな!」
シャア・アズナブルよろしく、ヘルムヴィーゲを足裏で蹴ってから、足部のアームドアーマーVNを展開。コクピットにダメージを与えてから離脱。そして置き土産に6連装グレネードをお見舞いしてやった。
「ふぅ、これで4つ」
「カスミさん! 援護に来たのです!」
コネコが来た。どうやらどっかではぐれてから、1人でここまで来てくれたらしい。
「敵は?」
「現状は無し、ここまで倒しながら来たのです」
「成長、凄いな」
「感謝感激、なのです!」
2機で背中を預けながら警戒を強める。特にお互い背中に爆弾を抱えいるのだから、このポジションは重要だ。
「ッ、敵機接近! 3機なのです!」
「確認、アルケーストフリZZだ」
横から来たのは邪悪なる深紅の天使、アルケーガンダム。傲慢な自由の翼、ストライクフリーダム。そしてエゥーゴの最終兵器、ZZガンダムの3機。
『偽物の世界を!』
『我らが破壊する!』
『青き清浄なる世界のために!!』
なんかヤバい思想を持ってる奴らが徒党を組んで攻めてきた。あとあのストフリは絶対どっかに核持って──動力源だったわ。
「どうするコネコ」
「そんなの、一点突破しかないのです!!」
「あ、ちょっ!!」
オレの静止を待たずしてコネコが単騎で突っ込んでしまう。ストフリに狙いを定め、アグニとビームライフルを撃つが機動力を売りにしているストライクフリーダムには当たらない。
「クっ……!」
『そんな見え見えの攻撃当たるかよ! こっちには、コレがあるんだぜ!!』
ストライクフリーダムが禍々しいオーラに包まれる。フェイクデカールか……!
ストライクフリーダムに呼応するように、他の2機もフェイクデカールを起動。絶体絶命のピンチだ。
「だとしても、私は負けない! この世界の存在に心を救われてる人もいるんだって証明するために!!」
『リアルで生きれない社会不適合者が!! ガンプラバトルが出来ないなら勝手に朽ちてろォ!!』
「私の先輩を、馬鹿にするなッ!!」
ストライクフリーダムのラケルタビームサーベルと、オールマイトストライクのビームサーベルが激突、そのままストライクが懐に入り、アーマーシュナイダーを首に突き立てる。
(ストフリはフレームもフェイズシフト……まさか)
『グワアァッ!! し、視界がっ!!』
突き立てたアーマーシュナイダーを振動させ、その振動を頭部に伝える。当然ながらその振動はVRゲームにおいては致命的、隙が生じ、そのままビームサーベルでコクピットを貫かれストライクフリーダムは撃破される。
「カスミさん! 残り2機なのです!」
「わかってる!」
ZZのダブルビームライフルの一撃をIフィールドでいなしながら接近、それを阻もうと上から強襲するアルケーにハイパーバズーカを2連射させて回避。
「私がカバーに……!」
「だから待てって……!」
またもオレの静止を聞かずコネコが単身で突撃していく。
コネコ焦ってる…………? なんで…………。
オレの返事が聞きたいから? この戦いを一刻も早く勝ち上がって終わらせようって、それで躍起になってるのか?
それはいい。いいけど、焦り過ぎは良くない。
「きゃあっ!!」
『ハハハハッ!! 随分殺気立ったおチビさんじゃねぇの!!』
グランドスラムとGNバスターソードの激突。出力は拮抗しているかに思えたが、コネコが至近距離でアグニを射撃。爆発が起こる。
だが、アルケーはGNフィールドで防御。そのままバスターソードで弾かれる。
「だから言った!」
「PS装甲だから大丈夫なのです! まだ……!」
「だから、オレを頼れって!!」
この戦いでオレが死ぬわけじゃないんだから。
「頼るわけには行かないのです!! だって、私がカスミさんを守れるようにならないと…………!!」
「は……?」
「カグラさんに、任されたから……! 2人が一緒にいれない分も一緒にいるって決めたから……!! だから私が強くならないといけないのです!!」
は…………?
2人って、アマネとカグラの事か……?
2人の分までって、そりゃそのうち夫婦になるから当然だけど、だから強くならないとって…………オレは自分の身くらいは自分で
……。
「リアルでも!! GBNでもッ……! カスミさんと一緒に居るために……!! 一緒に!! 戦う為に!!」
一緒に、戦う為に。
それが、コネコの焦ってる理由……?
「……だったら、だったら尚更! 尚更オレを頼れよ!! 一緒に戦うためなんだったらさ!!」
「私が弱いとカスミさんの足を引っ張っちゃう!! だからせめて肩を並べられるように…………!!」
あぁこれは、理想論とか効率とかの話じゃない。
コネコが今の自分に納得がいってないっていう話なんだ。
「…………じゃあ、オレの言う事聞け」
「……え?」
焦ったところで出来ることは変わらない。焦りや私怨なんて所詮感情だけの話。
だから、だから必要なのはその感情を処理するための効率的な方法を求めることだけ。オレが渡せるものが、コネコにとっての最善策だ。
「オレの足を引っ張りたくないなら、まずオレに従うことから始めろ。コネコ、お前が嵌った泥沼から、オレが鎖繋いででも引きずり出してやる……!」
簡単に、容易く。
ポジティブなこともネガティブなことも。
どんな本音でも曝け出せるのが夫婦の理想だって言ったのはコネコだ。
だから今、ここでオレの本音を打ち明ける。
「か、カスミさ……ん?」
「アルケーはオレが倒す。火力が上がった分鈍重なZZならコネコでも倒せるはずだ。各個撃破、これが前提。いいな?」
「わかった、のです……」
さて、律儀に待ってくれた相手には心から感謝しておこう。そして、その感謝の意を仇で返す。
『お喋りは済んだかァ?』
「隙だらけなのによく待ってくれたな」
『無防備なやつを甚振る程外道じゃないんでね。俺達ゃ本気を出してかかって来た雑魚を真正面からなぶり殺すのが大好きなんだよォ!!』
「…………早いな、本性出すのが」
オレはこんなに時間かけたのに。どうやったらそんな簡単に本音を言えるのか教えて欲しいぐらいだ。
(今のが、カスミさんの本性……! わがままな子供って感じなのに、従わざるを得ない威圧感を感じるのです……!)
「行くぞ、コネコ」
「あっは、はいなのです!」
改めて、戦闘リスタート。
ハイパーバズーカを分離、左腕で持ってアルケーに砲撃を放つ。当然ながら当たらない。
『ハハッ! 当たるかよ!!』
「当てる気ねぇからな」
『は?』
2発、3発と撃ち、敵の軌道を制限する。そして、ベストのポジションに付こうとした時点で、ビームマグナムで狙い撃つ。
『何っ!?』
ビームマグナムは着地点で爆発するが、アルケーは健在。赤く光っていることから、直前にトランザムを起動して逃げ延びたらしい。左腕は吹っ飛んでいる。
『は、ハハッ。NT-D! NT-Dは使わねぇのか?』
「お前如きに切るわけないだろ。ネット界のシーオーツー」
いや、流石に二酸化炭素に失礼だな。炭酸飲料作るのにアレは役立つし。灰汁は罵倒としては弱い。まぁいいや、罵倒する気も起きなくなってきた。
「凄い、私も負けてられないっ! のです!!」
オールマイトストライクがアグニとビームライフルを放ち、ZZに避けられる。
『どこ狙ってんだ三下ァ!』
「あなたの武器に決まってるのですっ、四下!!」
相手側からは見えない左腕のビームキャノンでZZのダブルビームライフルを攻撃、メイン武装の破壊に成功する。
『クソッ、クソッ! なんでSEED機体なのにビームが効かねぇんだ!!』
「使う素材が別物、なのです!!」
その機動力を活かして接近、グランドスラムで両腕を切り落とす。下手なビームも効力は無い。そういえば対ビームコーティングとか施してたな……。あれはてっきりシールドのだと思ってたけど、まさか機体全体だったとは。
「さぁ、これで文字通り手出しは──」
『へへ、オラァッ!!』
「きゃあっ!!」
接近したのが仇になり、至近距離でビームキャノンを食らう。流石にあの距離でハイメガキャノンを撃たない程度の冷静さは持っていた。
そしてZZはよろけたオールマイトストライクから離れ、こっちに向かってくる。
「こっちか……」
『行け、ファング!』
『ハイメガキャノンを喰らえッ!!』
トランザムとツールで強化されたファングがアルケーから放たれ、ZZの頭部ハイメガキャノンにエネルギーが集まる。そしてそれら全ての矛先がオレだ。
……ここは、少し荒っぽく行くか。
前方にスモークグレネードを発射。ZZの視界を奪い、そのまま右腕部シールドを捨てて機体に突撃。ファングは二の次で避けながら進む。
そして、目前に来てからZZを…………。
『なっ……グヘェッ!!』
殴る。ビームマグナムの持ち手で。
そしてそのままトリガーを引き、後ろにいたファングの主に直撃させる。
『ニュータイプかよォーッ!!』
ニュータイプじゃない。相手の軌道と知略を予測して、最善手から数えて1番取りそうな選択をカバーしただけ。
『畜生、前が──』
「さよなら、なのです」
視界が遮られどうしようもないZZを、オールマイトストライクが後ろから串刺しにして撃破。
空中を漂うアームドアーマーDEをサイコミュで引き寄せて回収する。
「やった、やったのです!」
「ふぅ、よし」
2人のミスを、2人で補う。そうやって勝利した。
これはまるで、初めての共同作業。みたいな。
「みたい、な…………」
「折角だし、ケーキ入刀! みたいなのがよかったのです」
「はぁっ!?」
コネコ、彼女の爆弾発言は核にも匹敵するレベルだ。
見えなくてもわかる、オレの顔は恐らく林檎と同じくらいには赤かった。
次回、新たなシルヴィーの力は如何に……!