突如現れた巨神。
黒い装甲に包まれた巨神は、出現と同時に無数の光を放った。その光に飲み込まれたものはたちまち消え去り、人々は混乱に陥れられる。
「うっっっわ…………」
ネオ・ジオングの腕から放たれるアルティメット高出力なビームがこっち側の機体を次々に撃破していき、あたしはそれを避け切るのに精一杯だった。
『フハハハハハッ!! 落ちろ愚民共ォ!!』
「正体見たりって感じだけど、だからなんだとでも言わんばかりだねぇ……!」
ぶっちゃけあの中に突っ込むのキツいわ。前線の皆さんはあんなの至近距離でブッパなされても避け続けてんでしょ? ホントに尊敬する。
なんせこのウーンドウォート・バイカスタムちゃん、近接戦闘能力も遠距離戦闘能力も中途半端という舐めてんのかってスペックなので……。何より売りである大気圏飛行すらここ宇宙空間ではちょっと速いだけである。どうしろと?
「通信繋いでっと…………カスミ様たすけてー!」
通信を繋いでカスミに助けを求める。が、肝心のカスミの声がなんかザーザー言っていて聞き取れない。回線悪くない?
「ワンモア! 全然聞こえないって──わあぁっ!?」
あーもうビームマジうぜぇ!!
『キョウ──、緊急事──』
「どうした!」
『ユー──のアク────して、対応に──い──。この──ではG────バーがダウ───』─
(よく聞こえなかったが、アクセスが集中している…………?)
あたしの身体に一瞬、ノイズが走ったように感じる。それに、なんか身体が重い。
きらーん。
ほほう、この圧倒的天才美少女教師カグラちゃんにはわかっちゃったぞ?
「……この重さ、DDoS攻撃とは随分古典的な……!!」
目には目を、有志には有志ってわけ?
「上等、ラグ如きで止まる連中だと思っ────うわあああなになになにっ!?」
『落ちろ落ちろ落ちろーッ!!』
突然死角からの無数の弾丸があたしを襲ってきた。
「もう、邪魔!!」
『アーハハ! そんな豆鉄砲が効くと思うかァ?』
「かった……!」
フェイクデカールで強化されたカッチカチのIフィールドバリアがビームスマートガンを無効化する。あたしの最大火力なんですけお!!
「ブランチマーカーのシールドを使う羽目になるとは……!」
やばい、このままじゃジリ貧確定……救援も厳しいしマジでヤバい……!
「………………オォォォラッ!!!」
「…………は?」
デンドロビウムの背後に襲いかかる灰色の悪魔。
…………ヒーロー気取りか、この野郎。
「ッッ……!? 通らねぇ!」
『なんだテメェ!!』
デンドロビウムの中枢、ステイメンが放つビームを悪魔は華麗に避けた。そして、あたしの方へ駆けつける。
「遅れて来るのはヒーローだけじゃないとはわかってたよ。だってお前朝クソ弱いからな」
「今それ関係ねぇだろ! それよりなんだあのデカブツ全然刃ァ通んねぇんだけど!」
「デンドロビウム。左側にある飛行機のエンジンみたいなのがIフィールドジェネレーターって言って、まぁよーするにあのクソデカエンジン君がバリアで巨体を包んでるってわけ」
「じゃあアレたたっ壊せばいいってことか」
「いや雑! 正解だけど……」
「正解ならいいじゃ、ねぇかッ!!」
「脳筋ここに極まれりじゃねーか!」
あたしの静止も聞かずに再び突撃するスカルライダー。ホントに探偵なのか疑わしくて仕方ない。
とはいえIフィールドの弱点は実体を通すところにあるから、実体弾でも火力を出せるあいつが前に出るのが実は1番理にかなっている。悔しいが認めざるを得ない。
(純愛かと思ったらNTRだった時のショックにも似た何かを感じる……)
辛いのに面白い、嫌なのに屈しちゃう! みたいなもんだ。屈辱的にも程がある。
『クソっ、帰れ帰れ!』
「お前が帰れ害悪チーター野郎!!」
『あぁ!? これ作るのにどれだけかかったと──』
「無価値に1ヶ月ぐらい消費してんだろッ!!」
『ぐわああッ!!! 俺のジェネレーターがァァ!!』
デンドロビウムの弾幕網を1つの被弾もなく突破、そのままガトリング砲をジェネレーター内部に連射して破壊。スカルライダーは爆発する前にガトリングを捨てて回避。取捨選択の上手いゲーマーの戦い方だ。
「これならいくらでもォッ!!」
『ヤバイヤバイヤバイ!!』
危機を察知したマスダイバーがステイメンを分離、逃げようとする。しかし、スピードはスカルライダーの方が圧倒的に上だ。
『ぐえぇッ!?』
「NPC以下のテメェが俺を振り切れるわけねぇんだよ!!」
スカルライダーがステイメンを掴み、デンドロビウムのコアユニット部分に叩きつける。
『やめ、やめろ──』
「大事に大事に丹精込めて作った自分のガンプラだろ? 一緒に死ねよォッ!!」
『うわあああぁぁぁっっ!!!!』
叩きつけたステイメンにビームザンバーを突き刺し、デンドロビウムと共に大規模な爆発をあげる。スカルライダーは直前に退避して免れた。
「わー、引くわ…………」
「Eパックの呼び寄越せ。もう残弾がない」
「あると思います?」
あたしの機体、EパックじゃなくてEキャップ式で機体内のエネルギーありきなんですよね。
「チッ、先に奪っとくべきだったか」
「略奪前提なのがお前らしい……」
「で、あの黒塗り仏像どうする」
「あのドス黒観音ね」
まぁ火を見るより明らか、あの真っ黒なネオ・ジオングのことを指してるのだろう。
「スタルいねぇと思ったらあんなん持ってきてやがってた……」
「ド畜生君もよくやってくれるねぇ。ま、チャンピオンだかビルドダイバーズだか……あたし達より余裕のある人達がやってくれるでしょ」
「だな。じゃあ俺らは静かに退避」
「りょ! であります!」
そしてあたし達は敵の少ない方角を探してからその方向に直進して行った──
「──ってオイ! なに背中乗ってんだあたしのバイカスタムちゃんはゲタじゃないんだよ!」
「うるせぇ推進剤切れかかってんじゃこっちは!」
「プロペラントタンクでもつけりゃいいだろ!」
「あんな爆弾誰が背負うかバカピンク!」
「んだとこの脳筋ロン毛!」
あーもう、素直に行けないのかこいつは!
────────────────────
ネオ・ジオング。
それはフル・フロンタルが生み出した最強のMA。6本もの巨大な腕を備え、その指は1つ1つが強大なメガ粒子砲となっている。加えて機体をジャックする機能も備え、サイコシャード発生器を起動させれば言葉通りに戦場を支配することもできる。そんな最強の力。
『ひれ伏せ、竦め、そしてこの偽りを否定される悲しみに溺れろォッ!!』
最悪のマスダイバー、スタルが呼び出した黒いネオ・ジオング。フェイクデカールによってありえない程の強化を受け、私達の前に立ちはだかっている。
「まだあんなのを隠し持ってたなんて……」
「怖い…………」
ビリーヴが今までにないくらいに怯えている。スタルの執念やフェイクデカールの軋み等を一辺に受けてしまったからだろう。
ビリーヴの肩をそっと抱き、安心させるように優しく撫でる。
「大丈夫、私はここにいる」
「レイメイ…………ありがとう。わたしも、一緒に戦わないと」
「うん。お願いだけど、あいつに勝つにはビリーヴの力が必要不可欠だから!」
チャンピオンもアレ相手は流石に苦戦するはずだ。そのために、私達が出来るだけネオ・ジオングの力を削り取る!
「行くよ、ビリーヴ!」
「うん! ついてく、だから好きに動いて!」
…………今の言い方、なんかえっちだ。
いやいやいやいや何考えてんだ私は!? ここ戦場! 邪な考えは今は捨てろって!!
「うおっ、ちょ!? た、助けてエミリアさーん!!」
なんて下心との葛藤をしていたら、ネオ・ジオングのワイヤーに引っかかって今にも助けを求めているアヴァロンのメンバー、カルナさんのインパルスガンダムランシエを発見した。ワイヤーの先端が食い付いているので今にも操られてしまいそうだ。
「あっ、今助け──」
私が助けようとした矢先、遠方からのビームが的確にワイヤーを切断した。
「大丈夫ですか、カルナさん」
「ひ、ヒロトぉ!! ありがとなぁ!!」
「いえ、これぐらい元フォース仲間としては当然です」
「照れんなよ〜、一緒に戦おうぜ〜?」
「いや、俺は後方支援が……」
「ヒロトの機体なら前線出ても平気だろ? な?」
「うっ…………」
カルナさんを助けたのは白いコアユニットに紫のアーマーを換装した狙撃特化型、ユーラヴェンガンダム。そしてそれに乗るのはフォース『BUILD_DiVERS』のメンバー、ヒロト。
ま、また先を越された……!
「わかりました……。借りるぞ、ヒナタ」
ユーラヴェンガンダムのコア、コアガンダムIIがユーラヴェンとしてのアーマーを脱ぎ捨てる。
「コアチェンジ、ウラヌスtoハデス!」
続いて後方からやって来た赤い戦闘機からアーマーが分離し、コアガンダムIIの周囲に散らばる。脚、腕、バックパックと段々と装着されていき、最後にツインカメラを片方覆うスコープが付いたブレードアンテナが装着され、様々な射撃兵装を持つ小豆色のガンダムへと変身を遂げた。
「す、すごい! パーツがバラバラになって、全然違うガンプラに……!」
「あれが、プラネッツシステム……」
その速やかで先進的な換装シークエンスに、ビリーヴ共々見惚れてしまう。
「お、おニューのアーマーですかヒロトさん?」
「ヒナタのアーマーです。今回は俺が借りてるけど」
「ヒュー!」
「な、なんですか……」
「いやいや! ここは触れないでおくのが男ってモンなんスよ!」
「はぁ…………」
何がなんだかわからないけど、とにかく私達は蚊帳の外らしいのでさっさと行こう。
しばらく進んでいくと、そこに広がっていたのは地獄絵図だった。
戦場はどこを見ても残骸が転がり、生き延びた機体の多くはネオ・ジオングによって操られ、味方に対し攻撃を繰り返している。その中には、先に向かっていったリクのダブルオースカイメビウスの姿もあった。
「そんな、リクさん……!」
「ごめんレイメイさん、逃げてくれ……!」
すぐそこにはさっきよりもずっと酷いダメージを負ったエクスヴァルキランダーもいる。通信機器が破損しているのか、連絡が取れない。
「なんで、なんでこんなに苦しめられるの……? ダブルオースカイはこんなに苦しんでる……。シルヴィーはこんなに悲しんでる! なのに、どうしてっ……!」
「……ビリーヴ。人間ってね、本当はとっても酷いんだよ」
人間の本性。それは1つの空間の中で自らがその高みに行った時。山頂に辿り着き、雄叫びを上げるように。自らがカースト上位に立った時、人は欲望を曝け出す。
今のスタルがそうだ。ネオ・ジオングによって戦況は逆転し、今彼自身がこの戦場を支配していると言っても過言では無い。いや、元より勝算があったからこそあんなに自信ありげだったんだ。
「私だって、いつだって優しい手段を取る事なんて出来ない。ビリーヴを守るためなら、私はきっとどんなことだって……」
「それは違うよ。レイメイは、わたしの為ならなんでもしてくれるんでしょ」
「え……」
「嬉しい。すっごく嬉しいの。レイメイがわたしの為に戦ってくれることが、そして何よりもわたしが大好きなレイメイの為に戦える、頑張れるのが」
「ビリーヴ……」
「でも、あの人は違う。頑張ってない。戦ってない。誰かの為に……それが出来てない。だからあの人はレイメイとはぜんぜん違うの。むしろわたしは、あの人がハッキリ嫌いだってわかる。ガンプラを苦しめるあの人を、許せない」
「…………うん、私も。シルヴィーの声はわからないけど、他人のガンプラを弄ぶあいつは絶対に許さない」
高速で飛ばしたガンビットがダブルオースカイに纏わりついているワイヤーを切断する。
「行こうビリーヴ。私達の明日の為に!」
「うん! レイメイ、行こう!」
静かに上昇し、ネオ・ジオングのハルユニット、スタイン・シュバルツの正面に見えるようにする。
『さっきのELダイバー……? お前も操られに来たのか?』
声は無く、ただ無言で見つめ合う。
お互いの手を掴み、離れないよう力いっぱいに握り、握られる。
そして、意を決したように息を吸い、揃って叫ぶ。
「「パーメットスコア、6!!」」
瞬間、シルヴィーのシェルユニットは青く輝き始める。
そしてGNドライブのカバーユニットが破壊され、”結晶化したGN粒子”が飛び出す。そして、それに呼応するように全身各所のサイコフレームが過剰に反応し、全身のありとあらゆる部位から、サイコシャードが結晶となって出現し始めた。
「かっカスミさん、あれってシルヴィーなのです!?」
「あれは、光の結晶体……? シルヴィーのサイコフレームがGUNDフォーマットのスコア6に到達した事で強い感応が起き、サイコシャードが…………いや、そんなことがGBNのシステムで可能なのか……?」
「すっげ…………。これがゲームかよ……」
まるでシルヴィーと1つになった感じだ。自分の思い通りに動く。
そしてそれは、ビリーヴも同じ。そう、今私達はこのシルヴィーと一心同体になっている。
「凄い、今ならなんでも出来る気がする……」
「わたしも……。よし、行こう。レイメイ!」
「うん!」
一瞬、自分の腕が砂塵になるように見えた。多分気の所為、このシルヴィーに少し処理が遅れてるだけだ。
さぁ、シルヴィー。私達の暮らす世界を、一緒に守ろう!
次回、スコア6に到達したシルヴィーが鉄槌を下す……!
キャラ解説
カルナ(初出:『ガンダムビルドダイバーズ』)
最強のフォース、『AVALON』に所属するダイバー。
明るい好青年は今も昔も変わらず、フォースにおけるムードメーカーや運営と協力しての初心者やキッズユーザーへの案内も行っている。
使用機体はインパルスの分離機能を兄弟機のアルクとの連携を前提に活かした『インパルスガンダムランシエ』。改良が加わり、槍の片刃がビーム刃となった。
ヒロト/クガ・ヒロト(初出:『ガンダムビルドダイバーズRE:RISE』)
フォース『BUILD_DiVERS』のメンバー。万能ラブコメ担当。
エルドラの一件以来、また昔のような笑顔が戻ってきている。またフォースに幼馴染のヒナタが加わったことで、日常さながらの会話もするようになった。
フォースの仲間との関係は良好、『BUILD_DIVERS』のメンバーや元々所属していた『AVALON』とも交流を続けている。
使用機体はプラネッツシステムを活かした万能の機体、『コアガンダムII』。