「「パーメットスコア、6!!」」
シルヴィーのシェルユニットが青く輝き、GNドライブが結晶化したGN粒子に包まれる。そして、サイコシャードと呼ばれる結晶が全身を覆うように発生した。
周囲のガンビットが巨大なサイコフィールドを形成し、わたし達とシルヴィーを守る。
『サイコシャードだと……!?』
「さぁ、ぶっ倒すよビリーヴ!」
「うん!」
GNショートピストルにロングクロービットを接続、発生したサイコシャードによってより延長されたバレルから極太のビームが放たれる。
『何ッ!?』
「すご……」
黒いガンプラは、自分が操るガンプラを盾にして防御。それでも防ぎ切れず、自身のバリアによってなんとか食い止めた。
『あれ以上好き勝手させるか!』
『いけ、あいつを止めろぉ!!』
わたし達を倒すために、多くのガンプラが襲いかかってくる。それと同時に強い悲鳴のような声が頭に直接響いてくる。でも、それを苦だとはあまり思わない。
ガンビットを展開して、サイコフィールドを広範囲に拡散する。すると、ガンプラから禍々しいオーラが消え、同時にガンプラが発する悲鳴も聞こえなくなった。
『うおっ、なんだ!?』
『ツールが、無効化されてる……!?』
「ビリーヴ、これって……」
「『オーバーライド』…………だっけ」
人差し指を口に添えて答えるとレイメイは少し目を見開き、その後すぐにいつものように微笑んだ。
「……すごいよ、ビリーヴ」
「正解?」
「正解……かはわかんないけど、おんなじ感じ。とにかく落とすなら今!」
「うん、だよね!」
すぐにガンビットを動かし、フェイクデカールが無くなって混乱している敵を撃ち落とす。
「ごめんね。でも、今はこれしかないから」
「オーバーライドでツールを無効出来るなら、ネオ・ジオング相手でもどうにかなるかも……!」
「わかった、やってみるよ。ガンビッ──」
『図に乗るなよバグ女ァ!!』
「ッ……!?」
黒いガンプラの各部からアームが伸び、黄色いリングが形成される。そして、黒いガンプラからも怨念のようなサイコフィールドが発生しだした。
「しまった、これじゃあサイコフレームの差で負ける……!」
『バグ如きが学習し、我々に歯向かう等ォ!! 己の恥と部を弁えろォッ!!!』
シルヴィーのライフル、ビームサーベル、クロービット、シールドビットのビームガン部分が爆発。また、サイコフィールドの範囲内にいたわたし達の味方のガンプラ全員も同じように武器が爆発し、無防備となる。
「な、なんで武器が!?」
「ネオ・ジオングの力だよ! 今この戦場はアイツのテリトリー……!」
「そんな……!」
そんな、武器がないんじゃ攻撃できない……!
「…………いや、でき……る?」
「え?」
「サイコシャード、あれをもっと自由に出来れば、なんというかその…………”刺せる”、ようになれば……」
「サイコシャードを刺す…………そっか、そういうことか!」
わたしの意思を汲み取ってくれたレイメイが、独自にガンビットを集める。どうやらシルヴィーの力を使って何かするつもりみたいだ。
『何をするつもりだ……!』
「仮称……『サイコ・ガンビット』! サイコシャードで刺突させる特攻兵器!」
ガンビットからサイコシャードが生え、小さい槍のようになる。槍というより…………えーと、あれ……。やじり?
「れ、レイメイ。これどうやってやったの」
「機体とガンビットの親和性を高めた。サイコミュ性能上げるためにサイコフレーム仕込んでたからもしかしたらって思ったけど……これでなんとかやり合える!」
すごい。そんなこともできるんだ!
『そんな小細工などォ!!』
「あっぶな、でも!!」
ネオ・ジオングの砲撃を直前で避け、わたしがガンビットを操って大きい木みたいな脚を攻撃する。切り傷を何箇所かに付けると、すぐに爆発した。
「ぐッ、脚が無くとも貴様らは殺せる!!」
ネオ・ジオングの肩の装甲が開いて、大量の武器が顕になる。サブアームや本体の黒いガンプラがその武器を持ってこちらに一斉に放った。
「弾幕厚すぎ!」
「でも大丈夫! レイメイとシルヴィーは、わたしが守るよ!」
ガンビットのGNフィールドとシルヴィーのサイコフィールドの二重バリアで弾幕を防ぎ切り、どんどん距離を詰める。
絶対に、絶対に一撃でも!
「ウオオオォォッ!!」
『ハアアアァァッ!!』
「レイメイ、敵が!!」
センサーに多数の機影が捕まるのを見遣ってから、レイメイはマルチロックシステムを起動する。
「邪、魔ァッ!!」
さっきよりも規模は小さい。12基のガンビットを向かわせて一斉に切り刻み、撃破する。
「ごめんガンビット使った!」
「大丈夫、このままさっきあの人がやったみたいに武器を壊す!」
敵を切り刻んだそのままの足で、ネオ・ジオングが展開している金色の輪を破壊する。そして更に、ガンビットと本体からサイコフィールドをより強固に発生させて、武器を破壊するように強く念じる。
『なっ、なんだと!?』
ネオ・ジオングの6本の腕、全身の砲口、そして仕込んでいる大量の武器が一斉に爆発。破壊される。
「や、やった!」
「よし、これで攻められる!」
2人で成功を喜んでいると、突然『SOUND ONLY』の文字が浮かび上がってきた。
「こんな時に通信……?」
『今す──退──! 今サー──が──!!』
「なに言ってるのか全然聞き取れないんだけど……」
「私も全然……」
カスミの声。何か強く訴えかけているようだけど、ザーザーとした音が鳴り響いていて全く聞こえない。
『おのれ、忌まわしきELダイバーがァァッッ!!!!』
「ヤバっ、そんな場合じゃなかった!!」
ネオ・ジオングが自らの力を全て使って生み出したサイコフィールドの塊。あれを食らえば多分ひとたまりもないだろう。
12基のサイコ・ガンビット全てを直列で繋ぎ、サイコシャードで巨大な剣を生成する。
「チャンピオンの受け売りだけど……これで!!」
「行こうレイメイ、行こう! シルヴィー!!」
大きく振りかぶり、ネオ・ジオングの上に振り下ろす!!
「うおおおおォォッ!!!」
ネオ・ジオングのサイコフィールドとシルヴィーの剣が激突する。その衝撃が、わたしにも伝わってくる。
あれ、レイメイの身体が、なんか…………?
『ククク、アーハハハハッ!! 俺の、勝ちだッ!!!』
「はっ!? そんなわけな──」
「レイメイ! 身体が、砂みたいになってる……!」
「え……?」
レイメイの身体が所々砂のように崩れかかれ、その声も遠くなっていく。
「レイメイ! なんか、変!」
「これ、もし──て──バーが──!!」
「レイメイ!? レイメイ! レイメ──」
────────────────────
「レイメイ!!」
空だ。
わたしの目の前に、真っ青な空が広がっている。周りには、緑豊かな木と草が生い茂っている。
「…………あれ、どうして? わたし、宇宙で、レイメイとシルヴィーに乗って……?」
どうして、どうしてわたしはここにいるの? さっきまで、レイメイと一緒に戦ってた。なのにどうして。
空を見上げる。もう何回も見た、どこまでも続く青色だ。
「ここ、わたしが生まれた場所だ……」
見たことがある気がした。まだ2か月しか経っていない、けれどもう遥か遠くの記憶だ。
あれから、ずっとレイメイと一緒だった。レイメイと会わなかった日はないし、シルヴィーにも何回も乗ったし、ビルドリバイバルに入ってからも毎日が楽しい。
だから、それが奪われたく無かった。わたしがあの黒いガンプラに乗ってる人を憎んでいたのは、多分そういうこと。
ただのわがままだったんだ。レイメイとの日常を望んだわたしの。
シルヴィーがわたしのわがままを、レイメイの望みを叶えてくれる。そのはずなのに。わたしは今、ここにいる。
「セントラル・ディメンション……あそこに行けば」
セントラル・ディメンションなら何かわかるはず。全てのダイバーが歩くあの場所なら。
セントラル・ディメンションに向かうと、予想に反して人が一人もいなかった。何か、様子がおかしい。
中心に写っているモニターを見ると、赤い文字列が無機質に浮かんでいるだけだった。
「ユーザーからのアクセス……による、サーバーダウンのお知らせ…………?」
所々の漢字は読めないが、不穏な雰囲気だ。
「どういうこと……? サーバーって何、アクセス?」
不穏だということ以外何もわからない。何か良くないことが起きた、それ以外わたしは何もわからない。そして、それを教えてくれる
「ね、ねぇ。どうなったの? 戦いは? レイメイとシルヴィーは? 教えて。教えてよ。ねぇ」
ひたすら画面に話しかける。返事は返ってこない。
ふと、視界が揺らぐ。明確だったものの境界が曖昧になって、頬に熱いものが伝う。
「な、なにこれ。水? 教えて。教えてよレイメイ、レイメイっ……!」
止まらない、どんどん溢れてくる。わけのわからないものが、ぽたぽた。
目元を手で塞ぎ、これ以上溢れてこないようにする。でも、そんなのお構い無しとばかりに水のような何かは流れていく。
「と、とまって…………どうすれば止まるの……? レイメイ、教えてよぉ……!」
結局、止まるまで目元をひたすら抑えたり擦ったりして、何時間もそこにいた。
「レイメイ、レイメイ……レイメイ! 会いたいよ、レイメイ……! レイメイ、レイメイ、レイメイレイメイ…………レイメイッ……!」
────────────────────
『ユーザーからのアクセス過多によるサーバーダウンのお知らせ』
無機質にそう表示されたゴーグルを外し、目の前にある家庭用GBN筐体と、その上に置かれたシルヴィーを見つめる。
「サーバーが、落ちた…………?」
一瞬、シルヴィー・光の結晶体が起こす現承にGBNが耐えきれなくなったのかと思ったが、サーバーダウンの原因として明記されているのがあくまで『ユーザーからのアクセス過多』だから違うと確信する。
「……いや、もしかしたらアクセス過多で弱ってたサーバーに、シルヴィーがトドメを差したってこと…………?」
それは、そんなの、それって私とビリーヴが悪いってことじゃん。というか、ビリーヴと一緒に乗ることを提案した私に非がある。ビリーヴ専用の機体を作るべきだった? それとも、ビリーヴの願いを断って……いや、それは違う。ビリーヴは悪くない。悪いのは私だ。元よりシルヴィーにはサイコミュ搭載機への対策としてNT-Dを積んでいたのに、折角だからとフルサイコフレームにして機体を滅茶苦茶にした、私に責任がある。
「でも! サイコフレームの力が無いとあいつには……!!」
………………無くても、勝てたんじゃないか?
GBNには、私なんかより強い人は沢山いる。天才的な技能を持つカスミや、他のゲームで鍛えた巧みな操縦技術のアノマロカリス。2つのビルドダイバーズ、タイガーウルフやシャフリヤール、フォース『第七機甲師団』、そしてチャンピオン、『クジョウ・キョウヤ』。
あの人達が介入できていれば、私があの場で出しゃばらなければ、全員の力を合わせて討伐出来たんじゃないのか。
「熱っ……!」
GBN筐体に触れると、オーバーヒートしかけなのかとてつもない程に熱い。すぐにシルヴィーを手に取った。
「……良かった。問題なさそう……」
もし足裏とかが溶けていたら大変だったけど、見るからに無事そうで少し安心。
でも、それ以上に安心できない事がある。ビリーヴは、今どうしているのだろうか。
「サーバーダウンなんて、前例がないしログインも出来ないから手の出しようがない…………。これでもしビリーヴが……」
データの海に溶けて、消えてしまっていたら。
一度そう思ってしまえば、その考えがずっと私の脳内を支配してしまう。何より1番恐ろしいのは、それがありえない話でも無いということだ。
もし消えてしまっていたら、私はきっとこの2ヶ月という夢をずっと引きずって生きていくだろう。GBNを、まともに楽しむことなんて以ての外。私の心は、ビリーヴという存在に奪われてしまっていた。
「ビリーヴ…………!」
涙が溢れて、止まらない。もう何時間も座っている椅子の中で蹲り、袖で何度も涙を拭う。でも、止まることは無い。
「…………ビリーヴも、泣いてくれてるのかな」
最低だ私。こんな時ですら、そんなこと考えてるなんて。
でも、仕方ないじゃないか。そう思ってしまったから。ビリーヴには、私のために笑って、泣いて、怒って、楽しんで欲しい。彼女の喜びも悲しみも全部、彼女の喜怒哀楽の全てが私によるものであって欲しい。そんな独占欲を抱いてしまうのは、恋人として当たり前じゃないか。だって、実際に私は感情の全てが、ビリーヴに起因しているのだから。
「会いたいよぉ、ビリーヴ…………」
episode2、主役の2人は次回出てきます
機体解説ver.2
GN-0666P/R ガンダムシルヴィー・リペア
レイメイがビリーヴとの準複座式での操縦を想定し、シルヴィーに改修を加えた姿。
基本的な部分は通常のシルヴィーと同様だが、パーメットが複座型に対応出来るよう調整。ガンビットの制御もビリーヴとレイメイが2人で共同して行えるよう改良されている。
操縦は複座式だが、簡単に言えばガロードとティファのようにニュータイプと共に乗ることでオールドタイプでもニュータイプ専用のシステムを扱えるようになるようなものであり、ビリーヴ専用のコントローラーは設けられていない。そもそもガンビットの制御自体が機械を動かすのでは無くビットの操作パターンをAIが管理し、操縦者の思考によって微調整しながら自動で行うものなのでコントローラーを設ける必要が無い。
そして機体本体の制御をレイメイが行うためにビリーヴはガンビットの制御に集中することが出来、それによってガンビットの増設も可能となった。
良くも悪くも、レイメイとビリーヴが2人で動かすための機体である。
特殊システム(シルヴィーと同様なので割愛)
武装
・GNショートピストル×2
・GNビームサーベル×2
・GNシールドビット(ガンビット)×12
・GNクロービット(ガンビット)×12