「なんで、ここにいるの。ビリーヴ……!」
群雄割拠の上空に降り立った、ガンダムシルヴィー。レイメイは、わたしに向かってそう言い放った。
「お前らもお前らで、なんで連れてきてんの! なんでコクピットに入ってないの!」
「オレ達に聞くな!! こいつがどうしても行きたいって聞かなかったんだよ!」
「…………わかった。とりあえずシルヴィーに乗って、ビリーヴ」
「うん」
ウィンドウを操作して、シルヴィーの方に乗り込む。転送された先にいたのは、赤髪を1本に纏め、白いYシャツの上に大きい上着を着た1人の女性。間違いない、レイメイだ。
「ね、レイメイ……」
「ごめん、話は後で。今はそれどころじゃないし」
「……うん、そうだね」
話したいことは沢山ある。避けてる理由とか、レイメイ自身のこととか、記憶を失う前のわたしのこととか。
でも、今は緊急事態だから仕方がない。
『久しぶりだねぇ……。GNドライブのGUND-ARM』
「その声……フォースフェスの、Ξ-G……?」
『そうだよ……見な! アタシの意のままに動く、アタシだけの
見せびらかすように、灰色のガンプラ達の黒い胸部を赤く光らせる。
「もう何機もやられてるでしょ。群が強くて個が弱い、弱い軍隊のテンプレート!」
ライフルにクロービットを接続し、粒子を吹かせて突撃する。真っ直ぐに突っ込むガンヴォルヴァの攻撃を華麗に避け、反撃とばかりにガンビットからビームを放つ。
「た、単身で突撃なんて無茶なのです!」
「お前もさっきやりかけただろうが!」
「え、えへへ……」
『お黙りっ!!』
緑のガンプラの怒りを買ったコネコに強力なビームが撃たれるが、カスミのシールドがそれを阻む。
『よ、よぉし! 師範代のお仲間さんも到着したみたいだし、ここはあの人に任せて俺達は──』
「いや助けに行けよ」
『い、いや〜、あの人めっちゃ強そうじゃないすか? 噂のビットを操る機体かもしれないし……』
「ふーん…………」
この期に紛れて逃げ出そうとした白紫のガンプラをカスミが引き止める。彼の言い訳を聞いてから、ルシファーのライフルが白紫のガンプラに向けられる。
『ひぃっ!?』
「敵前逃亡とか、お前らにプライドはないのか? こっちは普通に援護するつもりなんだけど」
『だ、だってぇ! あんな化け物相手に俺らが立ち向かっても足手まといになるだけですよぉ! 師範代は強いからそんなこと言えるんです!』
「とんだ根性無しなのです……」
弱音を次々と言い放つ白紫のガンプラに、コネコが容赦のない一言を言う。
「……わかった。テメーらだけ逃げればいい」
『よかった……。と、とりあえず銃下ろしてくれませんか……?』
「わかった」
了承を意味する言葉のあと、ライフルから放たれたビームが白紫のガンプラを跡形もなく破壊する。
『なっ、何やってんすか!!?』
「おっと悪い。ボタンを押し間違えた」
『インテンションオートマチックに限ってそんなこと──!』
銀色のガンプラが反抗しようとしたところ、コネコがビーム砲を突き立てて静止する。
「はい、大人しくするのです」
『なっ……!?』
「『無差別にビットで攻撃する機体』と『マスダイバー狩り』……矛盾してるよな。それにお前らとあいつ、どっちも同じ方向から来たのも不自然だ」
『か、考えすぎじゃ……』
「そうだな考えすぎだな。でも、噂を流してたやつも含めで『お前ら全員グル』だったら?」
『ッ……!』
「コネコ撃て。いてもいなくても変わらん」
「了解なのです」
『まっ、待て──!』
銀色のガンプラが、コネコのビーム砲によって爆散する。
「わ、容赦ない」
「こっちも容赦ないっぽいよ!」
あっちに気を取られているうちに、灰色のガンプラの弾幕が厚くなる。
『ほらほらよそ見はいけないよォ!』
「ぐっ……! 邪、魔ァ!!」
シルヴィーに取り付いた1体のガンプラを振りほどき、ガンビットの集中砲火で撃破。続いて緑のガンプラが放つビームもガンビットで防ぐが、拡散されたビームが後ろにいる2人のガンプラに降りかかる。
「まずッ…………!」
「大丈夫なのです! ガンヴォルヴァ達は私達が相手するので、レイメイ先輩達は本体を!!」
「ファンネル間に合ってよかった……」
拡散されたビームは無事防がれていたみたい。よかった。
「じゃあ、頼んだ!!」
2人の無事を確認してから、緑のガンプラに狙いを定める。
「……ビリーヴは覚えてない、よね。あいつ」
「うん」
「そっか……」
「…………ごめんね。何も覚えてなくて」
「ビリーヴが謝ることじゃない。あれはただの事故、そう割り切ってるから」
そう言う割には、表情は暗い。照明のせいか、余計に陰りが見えるみたいだ。
苦しい。セントラルディメンションで辛い顔をしていた人は何人か見たけど、この人がそういう顔をしていると特に胸が締め付けられる。
「…………揺れるよ。気をつけて」
「……うん」
全身に圧力がかかり、緑のガンプラとの距離が近くなる。
『チッ……! パーメットスコア、4!』
「逃がすか、パーメットスコア4!」
緑のガンプラの背部にある武装が展開し、それと同時に緑のガンプラの速度が上がる。そして、それを追いかけるようにシルヴィーの機体胸部も赤く光り、速度を増して突き進む。
「ッ……!」
『あの日からずっと考えてたんだよ……。お前に復讐する方法……!』
「は……!?」
『ちぃっとばかし不格好にはなったけどねぇ、それで勝てるなら上々だよッ!!』
「うぐッ、がああッ!!」
「きゃあっ!?」
お互いの刃が交わり、その競り合いに負けたシルヴィーが突き飛ばされる。
強い圧力と風圧、グラつきが頭痛と共に襲いかかってくる。
「レイメイ先輩!」
「心配してる暇ねぇぞ!! 今はあいつらを信じて前を見ろ!」
遥か先の地上まで叩き落とされ、目の前にシルヴィーのエラーを示すアラートがそこら中に響き渡る。
「…………ごめん、ビリーヴ」
「え……?」
「私、ビリーヴの記憶がなくなって……ショックで……自分勝手に逃げ出して、ビリーヴのこと避けてた。本当にごめん……。それに、こんな八つ当たりみたいなこと……」
「八つ当たりかどうかなんて関係ないよ。わたしは、レイメイに会えただけでも満足だから」
「私が!! 納得できなくて……! ビリーヴのことなんも考えずに! フォースのみんなにも心配かけて、きっと、シルヴィーもこんな私に怒ってる…………!」
「…………」
涙を流しながら、それを堪えようとして、それが出来ていない声。目元が真っ赤になって、深海の中に沈んで溺れそうになって……苦しくて、助けを求めるような声。
わたしが、救わなきゃいけない。彼女を苦しませる原因になってしまった、わたしが。
「怒ってもいいんだよ、ビリーヴ。こんな私のこと。嫌いだって、言ってくれてもいい」
「嫌いだなんて……」
「……だってこんな私、私も嫌いだから。いつもウジウジして、得意気になって調子に乗って、それで全部瓦解して逆戻り……。こんな酷い人生送ってる自分が、大嫌い」
「レイメイ……」
「好かれてるのなんて慣れてなくて、お母さんも放任気味で、ビリーヴと一緒にいた時間は夢みたいだった。でもあの日、その夢が覚めた気がして、辛い現実に戻ったの。ビリーヴと出会って変われたと思ったのに……何もっ、変わってなかった……!!」
辛い。苦しい。灰色のガンプラ達の悲鳴が、なんだかどうでもよくなるくらい、この人の感じる痛みが伝わってくる。響いてくる。辛いって気持ち、悲しいって気持ち、悔しいって気持ちが、全部。全部。全部。
重いよ、こんなの。重すぎるよ…………!
「…………現実、だよ。ここも」
「え……?」
「わたし達ELダイバーにとっては、ここが現実。辛いことも楽しいことも、全部」
「ビリーヴ……?」
「わたしもね、ずっと辛かった。自分は何も覚えてなくて、でも見える景色全部に変な既視感があって、正直気持ち悪かった。わたしは知らない人達はみんなわたしのことを、わたしの知らない分も知っていて、怖かった。でも、どんなに気持ち悪くても、怖くても、レイメイに会いたいって気持ちは変わらなかった。
「ッ…………!」
「ずっと会えなかったことが、一番辛かった……! それは、わたしも同じだよ……? だからわかる、こんな気持ちは1人が背負うには重すぎるって」
「そんなのわかってる……! でも、こんなものを背負えるのは私しか──!」
「わたしが、いるよ?」
「…………!」
彼女の手を取って、自分の胸の辺りまで持ってくる。そして、大丈夫だと、怖くないと安心させるように、なだめるようにその手を撫でる。
「わたしが、背負うよ。一緒に。ねぇ、レイメイ」
「な、なに……」
「一緒に辛くなろ? 一緒に、笑お? 一緒に泣いて、一緒に遊んで、24時間365日ずっとずっとずーっと、一緒にいよ? 失った分も、これから築くはずだった分も、全部一緒に。わたしが忘れた分を、またレイメイで満たしてほしいの」
「ビリーヴ…………でも、私は……!」
「それに、シルヴィーは怒ってなんかないよ」
「……え?」
「辛いって。苦しいって。悲しくって、悔しいって。わたし達の想いは、一緒なんだよ?」
「シルヴィーが、そう言ってるの……?」
「うん。だから…………」
身を乗り出して、自分の唇を、レイメイの唇に重ね合わせる。
「ッ……!?」
2秒くらい留まってから離れて、一言。
「一緒に行こう、レイメイ」
「ッ……!! …………うん、行こう……。ビリーヴ……!」
初めて見た、この人の笑顔は、
まるで、朝日のように眩しかった。
わたし達の想いに呼応するように、シルヴィーの瞳も、力強く輝き始める。
『お喋りはそれで終わりかい?』
「へぇ、待っててくれたんだ」
遅れて降りてきた緑のガンプラに対し、レイメイは挑発するように呼びかける。
『アタシもそこまで外道じゃないさ。ムードくらいは守ってあげるよ』
「チートは使う癖に、よく言うね」
シルヴィーの胸部が赤く輝き、呼応する。
「レイメイ、その……」
「どうしたの、ビリーヴ」
「ビットの使い方、なんとか思い出しながら、やってみる」
「ッ……、わかった。死角をカバーするように、私が指示したら攻撃にも使って」
「うん!」
パネルを操作して、ビットの感覚を掴んで…………難しい。けど、がんばる。
『何やらさっきと違う動きだけど……フフ、上等だよォ!!』
「パーメットスコア5、トランザム!!」
シルヴィーの機体表面が赤く光り、粒子がさっきの比ではないほど放出される。そして、残像ができるぐらいの速度で緑のガンプラに攻撃を仕掛ける。
『ぐぅッ……!』
「ハアアアアアッ!!」
『ッ…………クフッ』
「ッ……! ディフューザー!?」
ビームブレードを受け止めた緑のガンプラが、持っていたライフルをシルヴィーに突き付ける。さっきまでは背部に回していて、見えなかった。
『これで終わりだよッ!!』
「ッ……、ビリーヴ!!」
「わかった!!」
レイメイの要望に応え、ガンプラ同士の隙間を狙ってビットのビームを緑のガンプラのライフルに当てる。
ライフルが爆散した衝撃でお互い吹っ飛び、ある程度の距離ができる。
『1度だけならず2度までもコケにして……! やっちまいな、ガンヴォルヴァ!!』
「なッ!?」
コネコ達が相手していたはずの灰色のガンプラが3機、こちらに降りてくる。その3機がサーベルを構えて、こちらを狙う。
「れ、レイメイっ!」
「わかってる!! 封印しろって言われたけど、スコアを上げて奪い取るッ!! パーメットスコア、6!」
シルヴィーの表面から赤い輝きが失われ、その代わりに青い光が拡散し、フィールドを生み出す。その光に巻き込まれた灰色のガンプラは、胸部全面に青い光を灯す。
『オーバーライド!? ガンヴォルヴァが、奪われたっていうのかい……!?』
「うわあっ!?」
わたし達の目の前に、灰色のガンプラの図解を示す表示が3機、同時に出現する。
名前は、ガンヴォルヴァ。
「ガンヴォルヴァってオーバーライドするとこうなるんだ……。ビリーヴには流石にキャパオーバーだろうし、シルヴィーのAIに任せる!」
「味方になったの?」
「うん、あのルブリスウルじゃスコア6まで追い付けないからね!」
ガンヴォルヴァ達がパターンに沿った動きで、緑のガンプラ……ルブリスウルに襲いかかる。
『このッ、妖精気取りィッ!!』
「ビリーヴお願い、防御!」
「わかった!」
ルブリスウルの肩のキャノンがガンヴォルヴァ達を薙ぎ払い、その流れ弾をビットでなんとか耐え凌ぐ。
攻撃を免れようと上昇し、追いかけるようにルブリスウルも上がってくる。
『待ちなァ!!』
「ッ、しつこい……!」
ビーム同士の撃ち合い、鍔迫り合い。ぶつかって、弾いて、弾かれて、またぶつかり合う。
状況は互角に見えたけど、形勢は1度逆転する。相手がワンテンポ速く接近し、シルヴィーのライフルを斬られてしまった。
「しまっ……!」
『落ちろォーッ!!!』
そしてその勢いのまま、ルブリスウルの巨体に物言わせたキックが炸裂。再び地面に叩きつけられてしまう。
「あぐッ…………! やられた……!」
「うう……!」
ライフルを斬られた時と、ぶつかった時の衝撃で、右腕はサブアームごと破壊。
このままじゃ、負ける。それなのに、このガンプラは、シルヴィーは。
ものすごく昂っているように、感じた。
「…………そっか。シルヴィーは、もっと強くなりたいんだね」
「ビリーヴ?」
「まだやれるって、あいつを倒してもっと強くなるって、シルヴィーはそう言ってる」
「……そっか、わかった。じゃあその願い、叶えてあげないとね!!」
左腕のビームソードを構え、上空のルブリスウルに突き立てる。ルブリスウルはそれをあざ笑うかのようにビームサーベルを持って突撃してきた。
『随分しぶといね……。だけど、これで息の根を止めてあげるよォッ!!』
「飛べッ、シルヴィー!!!」
残り少ない粒子を振り絞り、飛び立つシルヴィー。ルブリスウルの2本のサーベルと、シルヴィーのビームソードが激突する。
「行っけぇぇぇ!!」
その隙を狙って、ビームサーベルを展開したサブアームをわたしが動かして、シルヴィーの脇から刺し貫く。
「ビリーヴ……!」
『そんな、馬鹿な……!?』
ビームサーベルは確実にコクピットを貫き、ルブリスウルは爆散する。
わたし達の新しい初陣は、辛くの勝利が着飾った。
チャプター2が終わら…………ない!!
chapter.2完結!この段階で一番好きなキャラクターは?
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レイメイ/紅月ミナ
-
ビリーヴ
-
コネコ/小南ネコ
-
カスミ/霧雨クロート
-
カグラ
-
アノマロカリス