幕間というよりはチャプター3への繋ぎのようなものなので、チャプター2を全部見てから見るのをおすすめします
「おっはよーなのですー!!」
フォースネストに繋がる扉を勢いよく開け、勢いよく挨拶の言葉をかける。
目の前には呆気にとられた様子のレイメイ先輩とビリーヴ先輩。そして特に何も感じてなさそうなカスミさんの、透き通るような翡翠の瞳が私を見つめていた。
「…………誰?」
「コネコなのです!?」
呆気にとられた様子から脱したレイメイ先輩が一言。あまりにも失礼過ぎる。
確かに金髪ショートから黒髪ロングに変わったし、衣装だってビルドコイン奮発してそこそこ良いお値段のするお嬢様チックなものにしたけど昨日も髪型は見ていたはず! それは酷くないのです!?
「いやー、だって印象めちゃくちゃ変わってるし」
「完全に別の人」
「ビリーヴ先輩はともかくとしてレイメイ先輩はリアルでも会ってるし大体2人とも昨日のイメチェンした私見てますよね!?」
助けを求めてカスミさんに目を向けると、どうやらエゴサをしている様子。いや、助けて。
「……本当にコネコだよね? なりすましとかじゃないよね?」
「本当なのです! 搭乗機体はオールマイトストライク! 好きなガンダムキャラは、アイーナ・スルガンなのです!」
「意外とミーハー……」
さらに失礼な言葉を華麗にスルーし、メニューを操作してとある画面を3人に見せる。
「なにそれ?」
「カスミさんが上げてる動画、及びクリエイトミッションの1つなのです!」
ビリーヴ先輩が反応したので簡単に説明する。続けて表示された画面を操作して、動画の再生ボタンをタップする。
OPで流れる音楽に、カスミさんの肩がピクリと反応した。
「げ、オレの動画……」
複雑そうな心境の花婿さんは無視。再生が始まると、荒野を背景に、金髪の青年の顔がドアップで映し出されていた。
『やほ、見えてる? カスミだよー』
「やめて、その動画大衆受け狙って超クサい感じになったから……!」
カットが入り、両手で右足首を掴み胡座を崩しているような体勢で座っているカスミさんの姿が引きで映される。
…………何度見てもこの体勢は誘っている。男ながらにそんなエッチさを表現できるなんて……!
『今日はオレが作ったクリエイトミッション、ハシュマル討伐RTAのデモプレイ動画になるよ。じゃ、簡単に説明しまーす』
「あ゛あ゛あ゛……!!」
横でダメージを受けているカスミさんをよそに、レイメイ先輩とビリーヴ先輩は説明を聞いている。
説明と言ってもミッション内容は至極簡単なもので、鉄華団の基地から出発し、暴れるハシュマルを単騎で撃破すればクリアというもの。獲得称号は『厄祭戦を終わらせた力』、ハシュマルのテイルブレードが報酬となっている。動画では『ビルドコインはこっち負担だけどパーツなら運営負担だしみんなも得するから……』と手の平を合わせていた。
『ちなみにハシュマルの強さは原作準拠のバカスペックだから、がんばって』
その言葉を最後に、映像はアノマロ先輩のスカルライダーがハシュマル相手に悪戦苦闘しているものに変わった。
「灰色のガンプラ?」
「あーっと、スカルライダー。作ったのはカスミだけど、アノマロカリスが使ってる」
「そうなんだ。なんか苦戦してるね」
「まぁ、反応的に初見だろうし……」
動画内では、「この害鳥がァ!!」とか「ビーム弾くんじゃねぇ焼かれてろチキン!!」とか、度々ハシュマルに対する罵声や怒りの言葉が飛んできており、あまりにアウトな発言だったのか一部にはピー音が入れられている。これもエンタメの一種だろう。
動画の再生を一時停止し、2人が私の方に向き直る。
「で、コネコはこのミッションやりたいの?」
「はいなのです!」
「アノマロでもこのザマになってるんだよ?やめといた方が……」
「大丈夫なのです! 推奨ランクはAで私はBですけど、今の私の実力なら!」
私の言葉と意思を汲み取ったレイメイ先輩が、若干苦い顔をしてカスミさんに話しかける。
「……って言ってますけど、あなたの花嫁さん」
「推奨はAってだけで参加条件はフリーだし、止める理由もないよ」
「はぁ………」
レイメイ先輩は呆れたような顔をしてため息をついた。
「よし! じゃあ早速、火星に向かうのです!!」
今の私ならやれる、倒せる。
そんな風に調子に乗っていた。
その言葉が、盛大な前振りとなることにも気付かずに。
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そして、フラグ回収の時は来た。
「クリア失敗……12回目……!?」
タイムがどうこう以前に、勝てないのだった。
ハシュマルはその巨体からは信じられないほどに素早く、加えてプルーマを無尽蔵に生成してくる。それらを乗り越えても尚相手はナノラミネートアーマー、ビームによる攻撃は意味を成さない。
「カスミさぁん! いくらなんでも強すぎなのです!!」
「超上級者向けのソロミッションなんだからそりゃそうだろ……。あれレイドミッションのハシュマル移植してるんだぞ」
これ、どう考えても並のダイバーがやるやつじゃない……! 絶対に日々研鑽を重ねているRTA走者専用のやつだ……!
「第一にビームを避けるのが難し過ぎるのです! なんですかあの極太ビーム!」
「施設1個蒸発させるレベルなんだから当たり前だろ」
「次にテイルブレード! 速すぎて目で追えないのです!」
「原作もよく見ないと挙動よくわからんし」
「そしてビーム無効! これがクソゲー必至すぎるのです!」
「鉄血では常識」
「だああーッ!!」
原作準拠ってこんなに強いのです!? 私のオールマイトストライクじゃ明らかに性能不足……!
「コネコが負けるのって単純に動き方の問題だと思う」
「え?」
途方に暮れる私に、ビリーヴ先輩が一言。それから続けて指摘点を出す。
「ハシュマルって、近付いてくるんだよね。コネコはそれに反応して距離を取ろうとする、でもその前に近付かれるから……結果的に、ハシュマルにペースを握られて負けてるんだと思う」
ぐ、ぐうの音も出ない正論だ……!
胸の中にあった『なぜ勝てないのか』のピースがパチリとハマった感覚がする。それは、全然奥まで入らなかったパーツが何かの拍子にパチッとハマった時のような。
「れ、レイメイ先輩……」
「概ね同意。だけどがむしゃらに近付いても勝てるような相手じゃないから、いい感じにコネコのペースで戦えるようにする必要があるね。そこは要調整」
正論に少し傷心気味になったので助けを求めたら、さらに正論が出てきた。
「か、カスミさぁん……!」
「みぎに……じゃないな今左だ。あー…………以下同文」
グダって適当に返されたぁ!?
み、味方がいない……! これが四面楚歌というやつなのです……!?
「くうっ…………!」
「うーん、1回私がやってみていい?」
私が絶望に打ちひしがれていると、レイメイ先輩が突然そんなことを言った。
「いや、別に許可取らなくていいから」
「了解。じゃ、ミッション開始っと」
レイメイ先輩がメニューのボタンを押すと、今いる鉄華団基地の向こう側の、さっき私がぶっ壊していったプルーマが消滅。削れた岩や瓦礫も元の位置に戻っていった。
「わ、わたしもやる」
「ごめんビリーヴ、これはソロミッション。個人の力を試すミッションだから」
「……わかった」
「…………うぐっ! 心が痛い……!」
苦しみに悶えながらシルヴィーを出現、先輩がそれに乗り込んだ。昨日の話によればシルヴィーは改造する予定らしいけど、まだ解体されていなかったらしい。
「シルヴィーはいいのに……」
「レイメイのガンプラなんだからそりゃそうだろ」
「むう…………」
自分と心を通わせているシルヴィーにすら嫉妬を見せているのは、ある種可愛いことなのだろう。
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5分42秒72。
ハシュマルの身体を12本のクロービットが突き刺すまでにかかった時間だ。
「なんで勝ってるのですーっ!?」
「つっっっよ……。片腕持ってかれたんですけど……!」
レイメイ先輩の言う通り、シルヴィーの腕はテイルブレードによって肩の基部から切断されていた。だとしてもさっきまで私が何分かけても倒せなかったハシュマルを、6分弱で討伐したのは事実だ。
「お疲れ。大体中堅ぐらいのタイムだから、初見にしちゃいい動きだったと思う」
「あれで中堅なのです!?」
「その手のダイバー達はあいつ倒す為に最適化したMAキラーな機体持ってくるから。ただの汎用機でそれくらいに立てるのって結構すごいぞ」
「やった!」
「ちなみにアノマロの初見クリア時のタイムは4分30秒ジャストな」
「よしもう1回やってくる」
ガソリン注がないで!? 私がやる時間は!?
「……てのは冗談、大体のパターンはわかった」
「え? どういうことなのです?」
「あいつ、良くも悪くも原作準拠の『人を殺す動き』をしてるから異様にコクピット狙ってくるね。だからとりあえずそこに防御集中すれば耐えられるよ。ストライクのPS装甲なら尚更」
「な、なるほど……」
「あとこれはAIの限界かもだけど、プルーマは前進しかできないからスルーしてもよさげ。テイルブレードも隙がないように見えてただ補足的な役割だからコネコでも落ち着いて立ち位置を見直せば読み切れると思う」
ぺらぺらと綴られるハシュマルの行動パターンの真実、そしてそれに付け加えられる私向けの対策方法。
あの一戦でここまでわかるなんて、やっぱりレイメイ先輩は歴戦の猛者なのだとわかる。
「とはいえやっぱ速いし硬いしビーム効かないしでかなりヤバいね! 私も相当神経使った!」
「いや、すごいのです! 勝つだけじゃなくて相手の動きを観測して、それであのタイムだなんて!」
「いやいやそんな……へへへ」
言葉では謙遜したように言うが、その口角はわかりやすくつり上がっており、見るからに嬉しいですという感じ。
などと脳内レビューしていると、背後にゾクリとする感覚を覚えた。
「コネコ…………」
「ひっ……!?」
さっきといい、ビリーヴ先輩の嫉妬心がMAXになっている……!
や、やばい! どうにかしなければ!
「ご、ごめんビリーヴ! 久々に先輩風吹かせられるかなぁって……」
ビリーヴ先輩の嫉妬を察するようにレイメイ先輩が駆け寄り、どうにかなだめようと優しい声で話しかける。
「わたしのことは気まずいからって避けてたのに、コネコにはそういうことするんだ」
「ホントごめ……って言うの本人に失礼だ……。と、とにかく! 私の1番はビリーヴだから! ね!?」
ご機嫌取りのためにレイメイ先輩がビリーヴ先輩の頭を撫でると、ビリーヴ先輩の顔は一瞬でボッと茹でダコのようになり、前髪で目が見えなくなるほど俯いてしまった。
…………あれ? ビリーヴ先輩ってこういう照れ方する人だったっけ……。
「………………う、ん」
…………まぁいいや。とりあえずここでもイチャつかないで欲しいのです。
「バカップルはともかく、コネコはどう? さっきのアドバイスで」
「制作者に聞くのもアレですけど、あの攻略方法って合ってるのです?」
「GBNは機体を本物さながらに動かせる柔軟なゲームだから、一概に最適解って訳じゃないかな。時にはレイメイのアドバイスも正しくない時だってあるよ、勿論オレのも。ま、とりあえずやってみたり先駆者達のログを見たりして参考にすればいい。中には全く参考にならんのもあるけど」
「なるほど……、わかったのです。とりあえずはレイメイ先輩のアドバイスを参考に、戦法を見直してみるのです!」
「うん。まぁまず近づかれたら引く悪癖直してからだけどね」
「うぐ……!」
そして、私とハシュマルの激闘は始まった。
やっていく度に有効打を与えることが出来ていって、勝てるようにもなった。それでも今の私と、オールマイトストライクでは、奮った成績を叩き出すことは難しかった。
だが、転機は訪れる。
私と、「新たなる剣」との出会いは、ハシュマルどころかそこから先の苦難を乗り越える重要な転換点となった。
でも、それはまだ先のお話。
未来へと進むためには、過去との決着をつけなければならない。
ここから先は、そんな話なのだ。
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おまけ
レコードタイム:24秒55
記録保持者:クジョウ・キョウヤ/ガンダムTRYAGE-マグナム
ログには、開始直後に上空へ飛び立ち、すぐさま召喚したAGE-1タイタスの巨大な腕をハシュマルに振り下ろしている映像が残されている。
チャンプはさぁ……
chapter.2完結!この段階で一番好きなキャラクターは?
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レイメイ/紅月ミナ
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ビリーヴ
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コネコ/小南ネコ
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カスミ/霧雨クロート
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カグラ
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アノマロカリス