ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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チャプター3は今に繋がる過去と未来へと繋がる今の話。ガンプラ要素はどっか行きました


Chapter.3「小悪魔教師と見据える探偵」
第33話「Q&A 家族について」feet.A


 親ってのは人を生み出した男女一組のことで。

 子どもってのは親が生み出した新しい人間のことで。

 家族ってのは親と子どもが1つ屋根の下で飯を共にする仲ってことで。

 

 じゃあつまりだ。

 あの枠組みに入れない、あのテーブルに飯が置かれていない俺は家族じゃないってわけだ。

 

「そういえば、お兄ちゃんは?」

「あぁ、アマネなら友達のところで食べるそうだ」

「そうなんだ。あ、唐揚げおかわりしていい?」

「いいわよ。沢山食べてすくすく育ちなさい」

 

「………………あれ、俺によこせよ」

 

 胃に胃酸しか詰まってなくてつい言ってしまった。どうせ薬膳みたいな味しかしないクソ料理なのに。

 

(今日も給食だけか……)

 

 当たり前のことを思って自室に戻る。

 

 変わらない布団。変わらない机。変わらないおもちゃ。

 変わらない、生まれた頃から変わらない俺の部屋。

 

「これが長男の扱いかよ、クソ」

 

 ぶっ壊れたと勘違いした親が捨てたスマホを起こして、アプリゲームを起動する。

 ありふれた課金制のソーシャルゲームだ。

 

(ストーリーはいいや。周回してから対人潜って……お知らせ? 10時からメンテか、夜勤とはご苦労なこった)

 

 時計の時刻は7時過ぎを指している。少しぐらいは潜れるか。

 タンタンと子気味良いリズムで画面を叩き、画面上のキャラクターに指示を出していく。1人は攻撃、1人は援護、そしてもう1人は取りこぼした分の追撃だ。

 

 ある日天然な俺の友達から、「そんな生活送ってて大丈夫なのか?」と尋ねられたことがある。

 ……大丈夫なわけねぇだろ。

 今も俺の精神はすり減り続けているのを感じている。俺の手足は日々痺れ、朝は弱く、加えて髪は白くなっている。

 ある日馬鹿な俺の友達から、「非行少年極まりすぎじゃない?」と言われたことがある。

 ……うるせぇ。黙ってろ。

 非行少年でいいんだよ俺は。あの奴隷(いもうと)が親に媚び売ってりゃ俺は好き勝手できる。なにせあいつらは面子だけ気にする本物のカス、なんかの拍子に俺を殺すつもりはなく、ただ馬鹿で無知なガキのまま勝手に自滅することを望んでいる。だが俺はそうはならない。

 あいつらは俺が妹と比べて出来損ないの馬鹿だと思ってるようだが、成績は断然俺の方がいい。テストはほとんど満点だし、偏差値は79。対して妹は偏差値70。

 こんなもので比べるのもアホらしいが、数字は人を裏切らない。値が示した圧倒的な実力差を、親は知らない。

 

 時刻は午後10時。

 メンテに入ったゲームを閉じて、クタクタの布団に寝転がった。

 

(…………喉乾いたな)

 

 起き上がってドアノブを捻る。

 狭い階段を降り、リビングのドアを開ける。そこに待っていたのは母親だった。

 

「……また酒か? ヒモ女」

「黙りなさい。それよりも貴方、また私のお金盗んだわよね?」

「テメーが本来俺に渡すべき金をネコババしてたのが悪いんだろうが」

「子供のお金は親のものなのよ」

 

 テーブルに手のひらを叩きつけて苛立ちを抑え込む。やはりこいつに話は通じない。

 

「散々ネグレストしといてよく言うなぁ。俺はハナからテメーらのことなんざ親だなんて思っちゃいねぇよ」

「ッ、貴方が出来損ないだからでしょう!! 子供の頃から本ばかり読んで、どうしてお母さんの言うこともお父さんの言うことも聞かないの!」

「テメーがそんなザマだからだろうが! どうせイチカには『読書も大切ね』とか言うんだろ? 俺はサンドバッグでもなけりゃテメーらの金稼ぎの道具でもねぇんだよ」

「親に向かってなんて口を!! 霧雨くんの家に知られたらどうするのよ!」

「知るか勝手に破滅してろ!」

 

 世間的に親と呼ばれるこのパチスロ女を散々罵倒してから冷蔵庫を開け、中にある保存用水のペットボトルを飲み干す。乱雑にその辺に投げて振り返り、家を後にした。後ろにいる妹の影に気付かずに。

 

────────────────────

 

「昨日もネカフェで寝泊まりしたのか?」

 

 横浜の街でクロートと遭遇した。

 飲み終えたペットボトルのジュースをゴミ箱に入れてから言葉を返す。

 

「あんなクソみたいな家にいてたまるかよ」

「流石に不健康もいいとこだろ。オレの家でも、カグラのとこでもいいから頼れって。どっちの親もわかってくれる──」

「バラすのはまだ先だ。交友関係を破壊するのは、個人的に追い詰めてからの方がいい」

 

 俺の言葉に少し顔を歪め、やがて諦めるかのようにクロートは呟いた。

 

「……別にお前の復讐にとやかく言う気は無いけど、心配なんだよ。お前中学上がってからずっとそんなだし」

「…………」

 

 こいつはこういうところがある。

 学校では成績優秀で運動はあんまりだがそこも愛嬌のある人気者、なのに俺みたいなどうしようもない不良にも手を差し伸べる。「幼馴染で親友だから」って。

 別にウザいとも思ってないし、こいつの思いやりに救われたことは何回かある。でも、だからこそ、俺がこれからしようとしてることのくだらなさに視界が霞む。

 母親の不倫現場を掴み、父親に突き付ける。そして妹より早くトップの大学に受かって、あの2人を自暴自棄にさせる。そして最終的には離婚、家庭崩壊。そしてネグレストの損害賠償で一生分の負債とまでは行かずとも、絶対に泡を吹いてぶっ倒れるだけの分を請求する…………それが俺の復讐。

 考えてみれば馬鹿げてる話だ。実現するには俺がアホみたいに努力しなければならないし、したところでリターンは金だけ。打算もクソもないただの八つ当たりだ。

 

「……勝手に心配してろ。協力する気がないなら口出しすんな」

「復讐には手を貸さない。でももしお前が辛くなったら、オレ達はほっとけないと思うから」

 

 …………だから、そういうところだって。

 何度言ってもこいつには意味が無い。わかっていても、そういうものだって受け入れるから。軽率に巻き込まれるカグラの気持ちにもなってくれ。

 

「そういやお前、なんでここにいんの?」

「ガンプラ」

「あっそ」

 

 この頃の俺にとってガンプラは、単なるクロートの趣味だとしか思っていなかった。

 

────────────────────

 

 帰ったら両親の姿は無く、テーブルには妹のイチカが座っていた。

 

「……あ、お兄ちゃんおかえり」

「11時だ、良い子はもう寝る時間だろ」

「私、言うほど良い子ってわけでもないんだけどなぁ」

「あの馬鹿共にとっちゃ良い娘だろ?」

 

 嘲笑混じりに言ってみた言葉は妹には響かなかった。こいつも存外打たれ強いタイプらしい。

 思えばこいつとはロクに会話したことがない。親が露骨に避けさせようとしてくるし、どっちからも進んで関わろうとはしなかった。とはいえ、こいつはカグラやクロートとは今も交流があるみたいだが。

 

「……で、なんの用だよ」

「お兄ちゃんに私の手料理を食べてもらおうと思って」

「は? あの女の飯ばっか食ってるお前の飯とか薄味でクソ不味いに決まって──」

「確かに美味しくないよね、あれ」

「ッ…………」

 

 意外な言葉だと思った。てっきりこいつは本気で美味い美味いって食っていたものかと。

 

「まるで病人に食べさせるおかゆみたい。1回熱出したことあって、その時におかゆ食べてからずっとそう思うようになったんだ」

「…………ハァ、皮肉のつもりがマジだったってわけかよ」

「塾の帰りいつも遅くてお金渡されるんだけど、その時に食べたラーメンがすっごく美味しくて! お兄ちゃんもよく行ってたってカグラさんから聞いたんだ」

 

 あいつ要らんことを…………。

 まぁいい、こいつがそんなこと言うやつだとわかった今、こいつの作った料理にも少し興味が湧いてきた。

 

「そうかよ。で、その飯とやらは?」

「クロートさんに教わって作った餃子、2人に食べさせた分とは別にお兄ちゃん用のがあるから今から焼くね」

 

 それからイチカは、手際良くフライパンに冷蔵庫から取り出した餃子を並べ、火をかけて蒸し始めた。途中途中鼻歌を歌ったり、スマホを覗き見たりして待つこと数分、出来上がった餃子を皿に盛り付け、茶碗いっぱいに入った白米と共にテーブルに並べられた。

 

「……多くね?」

「お兄ちゃんいつもご飯抜かれてるでしょ。だからその分」

「…………」

 

 餃子を箸で掴み取り、小皿にとった醤油に漬けて口に入れる。

 ……ちょっと悔しいけど、味は良かった。少し濃いめの味付けで、蒸し時間が長かった分タネが多く入っていた。…………少し辛い?

 

「あ、気付いた? お兄ちゃん辛いの好きだって聞いたから、隠し味に七味入れたの」

「それもカグラ情報か」

「うん」

 

 程よい七味の刺激が食欲を促進させ、思っていたより早く完食してしまった。

 

「…………ご馳走様」

「お粗末さまでした。食器片付けるね」

「あ、おい──」

 

 俺の静止も聞かずイチカは食器をまとめ、軽く水ですすいでから桶の中に丁寧に置いた。

 

「お前、なんでここまですんだよ」

「私のお兄ちゃんだから」

「意味がわからねぇ。俺にとってお前は妹でもなんでもない、あのクズ共の奴隷だ。奴隷が他人に飯与える理由がない」

 

 俺の言葉が少し効いたのか、イチカは少し言い淀んだ。

 

「…………奴隷、か。そうだね、そうだよね。そう思っちゃうよね」

「なんだよ」

「否定、できないな。私はお兄ちゃんと違って、あの2人に愛されて生きてきた……っていう事実があるから」

 

 何やら回りくどい言い方をしているのが引っかかった。こいつは何が言いたいんだ。

 

「つまり、つまりね……私は、お兄ちゃんを愛してくれないあの2人が嫌なの。私ばっかり愛されて、本来愛されるべき人がほっぽり出されて、そんなの許しちゃダメだよ。第一、私はもうあの2人に愛されてるつもりなんかない」

 

 意識的に両親というフレーズではなく、あの2人と呼ぶ理由はすぐにわかった。こいつもこいつで、あのクズ共を親だとは思っていないらしい。

 

(…………似た者同士、ってことか)

 

「お兄ちゃんがあの2人のことどう思ってるかはわかんないけど、私は復讐とか意味のないことしないでなんて言わないよ。お兄ちゃんは、お兄ちゃんらしく生きて欲しいの」

「……上から目線で、わかった口聞いてんじゃねぇよ」

「上から目線に”なっちゃった”んだよ。私達は家族、対等なはずなのに。兄妹らしく口喧嘩したり愚痴言い合ったりしながら生きていたかったのに…………!」

「じゃあ変えられんのか? 今から。あの2人必死に説得出来るとでも思ってんのかよ、お前は所詮金の成る木でしかねぇんだ」

「そうだよ、だから────」

 

 イチカは俺の方に寄って、手を差し伸べる。握ってくれと言わんばかりに。

 

「お兄ちゃん達が卒業したら、箱根に旅行に行こうってカグラさんが誘ってくれたの。お兄ちゃんにも来て欲しい」

「…………は?」

「お泊まりだからあの2人も来ちゃうけど、それでもいいの。私とお兄ちゃんだけが家族になれれば、私がお兄ちゃんの『妹』でいられれば、きっとそれだけで復讐になる」

「…………んな、こと言われても」

 

 反応に困るだけだ。さっきは関与しません好きにしてくださいみたいなこと言ってきたのに、途端にこんなことを言い出した。

 …………こいつは、『イチカ』としてじゃなく『妹』として兄である俺の手助けがしたいのか。回りくどい言い方しやがって。

 

「お願い。クロートさんも、2人の家族も一緒に来るから…………私のワガママ、聞いて欲しい」

「…………」

 

 ワガママ…………か。こいつなら絶対言わない事だと思ってた。

 でも今、イチカはそう言った。言ったのだ。そしてこんなにも澄んだ瞳をしている。まるで俺とは大違いだ。そのはずなのに、密かに宿している底知れなさは、俺の妹だと知らしめてるかのようだった。

 

「…………仕方ねぇな」

「ッ……!! ありがとっ、お兄ちゃん!」

 

────────────────────

 

 そっから8年、あの事故から8年経った。

 イチカはその記憶を全て失った。とは言っても形質は何も変わっていない、相変わらず俺と家族でいることに拘ってるみたいだ。

 

「はいお兄ちゃん、スタミナ回復キット」

「ただの回鍋肉だろ」

「えへへ」

 

 立派な兄の背中を追う、それがこいつの今の夢らしい。こいつらしいと言えばらしいが、裏を返せばそれはあの最悪の家庭環境の名残とも言える。この拘り具合は、異常に他ならない。

 

「心配だよ、お兄ちゃんこんな遅い時間まで仕事して」

「立て込んでんだよ。個人名から犯人の居場所を突き止めろなんて無茶振りもいいとこだ」

「GBNのアクセス場所は探したの?」

「試しに追跡したら逆探食らってPC1個オシャカになったそうだ。アナログに探すしかねぇ」

「そっか、それはご愁傷様」

 

 そうだ、絶対に『飯綱ヒカリ』の居場所を突き止めなくてはならない。この横浜にいることはわかった、後は詳細な場所を特定して直接訪問するだけだ。無論サイバー犯罪も関与しているため警察の協力も取り付けている。

 

「……俺が言うのもなんだが、俺達って家族でいられてんのかね」

「……? どうしたの急に」

「お前ばっか俺に献身的に働いて、もっと妹らしくワガママに振舞ったらどうだ? これじゃまるで俺がヒモみたいじゃねぇか」

「私の手料理バクバク食べてる癖によく言うね」

「うるせぇ」

 

 そこは突っ込むな。

 

「…………うーん、確かにブラコン気味かも。でもそれでいいと思うよ? 家族なんて定義してもし切れない話なんだし、私はお兄ちゃんのこと、大好きだし!」

「…………はぁ、どっかの誰かに似てきたなぁ」

 

 特にそういうことを恥ずかしげもなく言えるのは、誰かさんにそっくりだ。

 

「うーん、ワガママかぁ…………。ないって訳でもないんだよねぇ」

「そうなのか? 言ってみろよ」

「GBNやってみたいんだ。3人ともやってるうちに興味出てきちゃって」

「………………ダメだ」

「え?」

「お前はネットリテラシーがなっちゃいない。最悪トラウマだけ持って帰ることになるぞ」

「いやならないし! 私だってSNSを使いこなす現代人だよ! というか何その心配!? お兄ちゃん人のこと言えないくらいシスコンじゃん!!」

「はぁ!!? 違ぇしシスコンじゃねぇし!!」

 

 俺達のそんな言い合いはしばらく続いた。この時の俺達は知る由もなかったが、その姿は正しく家族のそれだと、誰もが思うのは確かだった。

 




家族でいられると思えたら、それでいい。

キャラ解説ver.3

小泉アマネ/アノマロカリス
フォース『ビルドリバイバル』に所属する凄腕ダイバー。
ビルダーでは無く、ゲーマーとしてランクインしてきた電撃ランカーで、特にランキングの近いタイガーウルフやシドとはよくフリーバトルでシノギを削り合っている間柄。
過去のネグレストが影響してか皮肉屋な一面が強く、その上歯に絹着せない正直な物言いから嫌われることも多いがなんだかんだ情に厚い人物。
意外にもリアルでは探偵業を営んでおり、運営から直々にフェイクデカールの調査依頼を頼まれる程の腕前を持っている。
使用する機体は万能なる骸の騎士、『スカルライダー』。
リアルでは真っ白な長髪を1本に束ね、黒シャツに黒コート、黒ズボンと白い髪と合わせたモノトーンスタイル。GBNでは銀のハロの姿をとっている。

小泉イチカ
アマネの妹。
8年前の事故で昏睡状態に陥り、それから3年後の脳手術時の後遺症で、記憶を失ってしまった。本人はその事について苦悩することもあったが、今は乗り越えている。
ただ記憶喪失とはいえ家庭環境の影響が完全に消えてるわけではなく、家族というものに対して強い執着心を覚えているファミリーコンプレックス。
現在は大学を2年生から編入し、法学部として勉学に励んでいる。また、最近はガンプラやGBNについても興味を持っているらしい。
髪は兄よりも短いセミロングで、兄よりも暗い白銀になっている。実年齢よりも少し幼い印象。
記憶を失う前、カグラとは何やら深い関係があったが──?

chapter.2完結!この段階で一番好きなキャラクターは?

  • レイメイ/紅月ミナ
  • ビリーヴ
  • コネコ/小南ネコ
  • カスミ/霧雨クロート
  • カグラ
  • アノマロカリス
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