ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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すっっっっっっっごい濁してますけどそういう描写あるので注意!!!
あと今回もガンプラ要素は皆無です。前回みたいにワードだけの出演すらありません


第34話「少女イチカ」feet.M

 人にはなぜ違いがあるのだろう。

 人にはなぜ性別なんてものがあるのだろう。

 

 そう思ったことは何度もある。違いが作る隔たりが、あたしにはとても窮屈に感じたから。

 上履きには3個程度の画鋲。隠されなかっただけマシだ。どうせ入れたやつの検討なんてついてるんだし、あいつの靴に入れてやろう。

 

 自分の机には罵詈雑言が色々並べられている。仕方ない、これは入れ替えてもあたしが悪者になるだけだ。我慢しよう。

 

 ひそひそと聞こえる陰口。よくもまぁネタが尽きないものだ。

 

(なるほど、まだ花瓶を置いたりするフェーズではないと……)

 

 ハッキリ言ってこんなことは異常だ。でも、異常が日常になることなんてよくあることで。

 それだけあたしの学校生活というものには、いじめが根付いていたのだった。

 

 ボロボロの教科書を広げ、しわくちゃのノートを開けて授業を受ける。無論こんなノート使い捨てでしかなく本物は家にあるのだが、ノートを広げていないと意欲の評価でマイナスを取られるので仕方なく使っている。

 あたしがいじめられる要因になったのは1つ、初恋の人に告白してしまったことだろう。

 初恋が同性だった、なんていうのは子どもの段階では割とあることだと思う。でも今は中学生、女子はみんな理想の男に思いを馳せるものなのだ。そんな中で、あたしは女に告白した。

 異端もいいところだ。あたしの周りには霧雨クロートとかいう超絶ハイスペイケメン男と、小泉アマネっていうダウナーハイスペイケメン男がいる。ぶっちゃけあの2人に彼女が出来ないのはあたしのせいかとも思っていたのだ。でも、あたしはあいつらにソッチの好意はない。

 だから幾らでも叩いていい、そういう考えが同学年の女子に広まってしまった。あたしは所謂おじゃま虫。叩いて叩いて、あの2人から遠ざけようと必死になっている。

 

「んん〜……! 今日もおつかれあたし様〜……!」

 

 伸びをして近所の公園のベンチに腰掛ける。今日は塾もないし帰ったらゆっくりできるかな。ま、帰り道把握されてない限りは大丈夫だと思うけど。

 

「あいつらも流石にストーキングはしてこないけど、塾は調べられてるんだよなぁ……。どうしようか」

 

 誰に問いかけてるのかわからないが、とにかくどうすればいいのかわからない。

 いじめの解決方法は色々あるが、1番理想なのが警察とかも絡めたでかい問題にしてやることだ。ただの暇潰しがお縄問題になってしまえばいじめはぱたんと止むだろう。

 もう1つは純粋にやり返すこと。加害者が被害者に裏返った瞬間ペースはあたしのものになる。ただこれは相手側の身も心も被害者にさせなくてはならないという問題がある。被害者面をするのはいつだって加害者なのだ。

 

「はぁ、むっず。もうクロートに投げちゃおっかな……。いや、火に油注ぐだけか」

 

 クロートに止めさせようとしたところで構いはしないだろう。なにせ止めるイコール意識してるになってしまうから。

 あいつはあいつで、あたしが同性愛者だってことは受け入れてるし、応援もしてる。振られた時だって励ましてくれたし、持ち前の人脈スキルを介してあたしにアドバイスもくれたりした、まさに最高の親友だと思う。

 

(………………なんでこうなったんだろ)

 

 心あたる節は何個かあるけど、それにしてもこんな扱いはあんまりじゃないだろうか。

 ただ1人、自分達にとってはどうでもいいような1人の女が異端ってだけで、こんなのは理不尽じゃないか。

 

「ストップ。…………ダメになってきた」

 

 心が疲弊してる。ネガティブな考えはあたしらしくない。無理やりでも『らしさ』を強調しないと、弱さの渦に呑まれてどこまでも落ちていってしまう。

 

「あれ……? カグラ、さん?」

 

 悶々と考え事をしていたら、目の前に1人の少女が立っていた。

 小泉イチカ、最近見ないアマネの妹さんだ。思考から抜け出せず、ワンターン遅れて反応した。

 

「…………イチカちゃん? 奇遇だね」

「何か考えごとをしてたみたいでなんだか気になって……」

「……まぁ、ちょっと色々あってね」

 

 色々、の部分は濁しておく。この子に言ったらきっとこの子は庇うだろう。それが最後、あいつらの標的はイチカちゃんに変わってしまう。あいつらはもう、自分を満足させられるおもちゃがあればいいのだ。

 

「大丈夫ですか? 顔色、悪いですけど」

「昨日雨だったからね! 低気圧で頭痛くてさ……」

「それでここで休んでたんですか」

「うんうん! そんな感じ!」

 

 イチカちゃんは少し怪訝な顔をして、一言。

 

「やっぱり怪しいです。何があったか話してください」

「いやいや大丈夫! ホント、家にゴキブリが出たとかそれくらいの悩みだから!」

「心配なんです!」

 

 いきなり声が強くなったので思わず気圧されてしまった。

 

「……あ、ごめんなさい。大声出しちゃって……」

「…………いいよ。気持ちは伝わったから」

 

 正直、話したくないかと言えば嘘になる。誰かに話したい、何もかもさらけ出したい、それで慰めてもらって、大丈夫だって安心させてほしい。

 こんな子供じみた欲望をイチカちゃんに見せるのは、駄目だ。

 

「どうして、そんな心配するの。あたしは大丈夫だって言ってるのに」

「それは…………わかんないです。でも、カグラさんには昔からすごくお世話になってるから」

「恩返しがしたい、ってことか」

 

 それで、力になりたいと。

 イチカちゃんの意思を汲み取ったあたしは、ベンチの隣を空けてそこに手を置く。

 

「とりあえず、座ったら? 立ったままは疲れるし」

「……はい」

 

 あたしの隣に汚れを知らぬ少女が座る。ふわりと柔軟剤と彼女自身の香りが舞って、雨の匂いが残っているせいかとりわけその香りを強く感じる。

 身体が疼いた気がした。あたしは身も心も、どうしようもなく女の子が好きらしい。隣に座らせたのはミスだったかな。どこかカフェにでも寄って対面の方がよかったかもしれない。

 

「…………話す流れ、だよね」

「教えてください。何に悩んでるのか、カグラさんは今何と戦ってるのか」

 

 …………やっぱり駄目だ。話せない。

 どうしても話した後にいい結果になるビジョンが浮かばない。このままじゃ、絶対にどちらかが損をしてしまう。

 だったらあたしが損を被る。この子にのびのびと生きて欲しいから。あんな親なんか放り投げて、イチカちゃんの、自由に。

 

「…………そんなに、話すのを躊躇うくらいのことなんですか」

「……そう、だね。そうなるね」

「だったら尚更、話して欲しいです。カグラさんには、辛そうな顔をして欲しくない」

 

 イチカちゃんは決意に満ちた表情であたしの方を向いた。綺麗な顔立ちだった。兄譲りの美貌、きっとアマネが女だったら美人姉妹だとかで名を馳せていただろう。それに、きっと親からあんな扱いも受けなくて済んだだろう。本当、なんで性別が人を蝕むのだろうか。

 …………話さなきゃ、ならない。どんなに不利益なことになっても、じゃないとこの子を裏切ってしまう。

 

「…………あたしさ、………………いじめ、られてるんだよ、ね」

「ッ…………!」

 

 その言葉を聞いた瞬間、イチカちゃんは突然立ち上がって怒りと悲しみに包まれたような顔になった。

 あぁ、だから話したくなかったのに。

 

「あたしがクロートと一緒にいるの、相当嫌だったらしくて。ちょっとした悪乗りが段々過激になっていって──」

「なんでもっと早く言わなかったんですか!!」

「最初はあたし1人でどうにかなる問題だと思ったから! 全部解決してから笑い話にして打ち明けようかなとか思ってたの。でもなんか手に負えなくなって、大人達の力も借りてるけど、色々苦戦してる」

「……私だったら、カグラさんの役に立てるのに」

「駄目だよ。イチカちゃんを盾にはできない。アマネの妹だからじゃなくて、イチカちゃんを好意的に思ってるからだよ。君にはそういうのとは無縁に生きて欲しい」

「ッ、勝手なこと言わないで、私を頼ってください!! いじめられて平気な人なんていない!!」

 

 段々と、違和感があることに気付いた。

 この子は、この子は家族に拘りがあるはずなのに。何故だかこんなにもあたしに頼ってもらいたがっているのだ。

 イチカちゃんの両親は、愛なんてものは名ばかりで、利己的な利益しか考えていない真性のクズだ。そして兄の方は、そんな両親に嫌気が差して半分家出状態。1人取り残された彼女は、愛されることに、家族に飢えている。そのはずなのに。

 

「……なんで、なんでそんなに構うんだよ! あたしは大丈夫だって、平気だって言ってる!! ただの他人にどうしてそこまで尽くすんだよ!!」

 

 あー、言った。最低過ぎるな、この言葉。相手は善意で言ってくれてるのに、まるで突き放すみたい。どの口が……あたしクズ過ぎるだろ。

 

「…………わかんないです。どうして、こんなにカグラさんにこだわってるのか」

「え…………?」

「でもこの気持ちは本当だから。カグラさんの為になりたいって思ってるから。だから、だからとりあえず結論付けたんです」

 

 そう言うとイチカちゃんは、突然あたしに抱き着いてきた。全身から発するいい匂いがあたしの鼻を突き抜ける。

 

「ちょ、イチカちゃ──!?」

「愛されたいくらい、愛してる!!──そう思うように、しました!」

 

 衝撃の言葉が、あたしの耳元で叫ばれた。そして、その言葉はもう1つ。イチカちゃんは1度離れ、あたしの目を見て言った。

 

「カグラさん、好きです」

「ッ…………!」

「私と、付き合ってください」

 

 単純な2文。これ以上ないくらい真剣な瞳で見つめられて、ただあたしのためだけに綴られた言葉。

 その言葉に、その瞳に、イチカちゃんに、あたしは心奪われてしまった。

 新しい恋は意外と早かった。この顔はホントズルいでしょ、こんなの、誰だって好きになるに決まってるじゃん。

 

「…………や、や〜い、女たらし。意中の女堕として楽しい……?」

「はい、すごく」

 

 耳、いや多分首まで真っ赤になったあたしのささやかな抵抗は、目の前の女たらしちゃんに容易くいなされてしまった。

 かくしてあたし達は、お付き合いすることになったのである。

 

────────────────────

 

 あたしは侮っていた。未来の可能性というものを。

 そんな最期に希望を取り戻した魔王みたいなことを思ってしまうくらい、それから起きたことは衝撃の連続だった。

 まず、常から連絡を取り合っていた教育委員会の動き。あまりにも迅速だった。すぐにでもいじめを行っていた連中の両親共々連れてこさせられ、目の前で頭を下げられたのだ。いじめっ子の皆さんは流石に自分の親が頭を下げる姿には耐えられなかったようで、その後いじめはぱたりと止んだ。

 まぁその時のあたしは予想外ながら理想が叶ってハッピーだったので、

 

『頭下げるだけで帰れるわけないでしょ。母親なら母親らしく、お子さんを教育し直してください』

 

 とか言っといてやったけど。

 次にアマネの話。今まで学校でもあんまり見なかったのに、出席日数が危ないといきなり顔を出すようになった。どうやら両親への復讐計画の準備が佳境らしく、めちゃくちゃ悪い顔をしていた。本人は知る由もないが、妹のイチカちゃんも兄が楽しそうで喜んでいた。

 そして最後、イチカちゃんとの進展について。

 音速だった。

 

『え!? 2人とも付き合ったの!!?』

 

 とクロートに暴露した直後、あたしの唇はイチカちゃんにズキューンと奪われてしまった。

 本当に気の毒だった。いやキスは気持ちいいし嬉しいんだけどね? 童貞に百合キスはちょっと刺激が強すぎるのよ。バラす前のデートでは散々リードされて先輩の面目丸潰れだったし、デート終わりは必ず夜も眠れないようなキスをされた。あの子絶対舌でさくらんぼ結べる。

 そしてあたしの家にて。

 彼女は勉強の手をやめて突然両親に電話したかと思えば、

 

『もしもし、お母さん? 連絡遅くなってごめんね。今日カグラさんとお勉強会で、せっかくだから止まっていってって言われたの。うん、明日には帰るから、それじゃ』

 

 とお泊まりの報告を済ませてしまった。そしてあたしは見事に押し倒されてその後…………これ以上はやめておこう。

 とりあえず、直前に蠱惑的な舌なめずりをしていたことと、めっっっっっちゃ気持ちよかったことだけは言っておく。

 そして今、全裸しかも汗だくで2人してベッドに横たわっているところである。

 

「私、もしかしたらカグラさんにお姉ちゃんになってほしかったのかもしれません」

「お姉ちゃんを散々抱き潰しといてよく言うね」

 

 いつの間にか最中に散々呼ばれていた呼び捨てから再びさん付けに戻っていた。少し残念だけど、これはこれで”癖”を感じからよし。

 

「カグラさん優しいし、包容力もあって、甘えたかったのかなって」

「全然、そんなことありませんって。イチカちゃんにはリードされっぱなしだもん」

 

 何回好きなようにされたかわからない。

 

「そうですよね。今はもう、私に縋り付いてたカグラさんが可愛くて可愛くて仕方ないですし」

「年上の威厳とは……うごご」

 

 もう今更過ぎる話であった。

 

「……抱き締めてもらって、いいですか?」

「断るとでも?」

 

 なんとか威厳を取り戻そうと余裕の表情で受け入れ体勢を作ってみるが、いざ抱き締めたらその後すぐに吸い付かれたので不覚だった。

 

「ッ……、は、はかったな!」

「はあ……いい匂い」

「とても優等生の姿には見えないなー」

「今日は優等生おやすみなんですー」

 

 その後も冗談を言い合って笑い合っていた。イチカちゃんと付き合ううちにこの子が存外生意気なことがわかったけど、それと同時に危ういこと、この子はこの子で”狂っている”こともわかった。

 だからあたしの心を守ってくれた分、守りたいと思った。そう思うのが、彼女にお姉ちゃんと呼ばれる所以かもしれない。

 

「カグラ」

「ッ…………!」

 

 突然呼び捨てで呼ばれて、身体が臨戦態勢に入ってしまう。さっきやったでしょうが。

 

「ずっと、こんな毎日だったらいいね」

「…………イチカちゃ──」

「イチカって呼んで。ね」

「イチ、カ────」

 

 眼前に広がる恋人の顔。それからあったことはご想像通り。

 そうだ、確かにこんな毎日が続けばいい。できれば残っている色んな障害を乗り越えていったらベストだ。あたし達は心の底からそう思っていた。

 

 でも、あの日全てが壊された。

 




「辛さ」に1本線を足すと「幸せ」になる。
しかし、ただの1本線は永遠には続かない。

キャラ解説ver.3

水無月カグラ/カグラ
フォース『ビルドリバイバル』に所属するカジュアルダイバー。
あっけらかんとした性格で、日常においてネットスラングを多用する節があるのほほんとした人物。特にアマネ=アノマロカリスは彼女の絶好の的。
しかしその軽薄さとは裏腹に心に深い闇を抱いており、教師として働く理由にはいじめ等を無くすことも含まれている。
小泉イチカとは恋人関係だったが、彼女が記憶喪失になってからはその関係に折り合いをつけられずにいる。
容姿はロングをハーフアップにまとめており、リアルでも髪を染めているためGBNのアバターとはあまり違わない。GBNの方では、衣替えとして服装をアイドルの衣装のような煌びやかかつ動きやすいものに変更した。

chapter.2完結!この段階で一番好きなキャラクターは?

  • レイメイ/紅月ミナ
  • ビリーヴ
  • コネコ/小南ネコ
  • カスミ/霧雨クロート
  • カグラ
  • アノマロカリス
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