ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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ガンプラそっちのけで重い女の話してるの何?


第35話「FRONTLINE」feet.M

 現実とは残酷なものである。

 否、その残酷さこそが現実なのだろう。人が救いに喘ぐことなど、神からしたらおこがましいにも程があることなのだ。

 

 あたしの両親は死んだ。

 一癖も二癖もある人達だったけど、家族仲は良好だったと思う。産んでくれたこと、育ててくれたこと、両方とも感謝している。

 でも、死んだのだ。

 事故によって、彼らは帰らぬ肉片となってしまった。そして、その事実を知ったのは彼らの死から半年後のことだった。

 あたしは事故によって全身打撲や骨折等の重傷を負った。内蔵へのダメージはほとんどなかったが、女としては耐え難いような傷跡がいくつも残った。

 そして…………。

 

「もうあれから2年だよ。イチカちゃん」

 

「最近先生が進路進路ってうるさくてさ〜……」

 

「そういえばもう10月なのにあっついよね〜! 夏全然終わってないし!」

 

 何を話しかけても返事は返ってこない。

 そりゃそうだ、だって寝たきりなんだもん。

 

(ほんと、心にくるなぁ…………)

 

 無機質な機械音だけが鳴る病室を出ると、目の前にアマネがいた。小泉アマネ、イチカちゃんのお兄さんで、あたしの幼馴染。

 

「……なんだよ」

「いい加減やめたらどうだ。無意味に語りかけんのは」

「ッ…………!!」

 

 激情に駆られたままアマネの襟を掴んでから、ここが病院であると気付いて離す。

 

「……黙ってよ。こうでもしないとあたしは……」

「バカ言ってんじゃねぇぞお前。わかってんのに話しかけてたら、受け入れてるようなもんだろ」

「えっ…………?」

 

 そう言ってアマネは去っていった。あたしには、その言葉の意味がわからなかった。

 いや、言いたいことはわかる。目覚めないことを受け入れてるのに、それでも語りかけるのは未練タラタラの情けないやつがやることだって。

 あたしがわからないのは、その言葉を投げかけた意味。そんなことを忠告するほど、イチカちゃんに対する好感度は高くなかったはずだ。

 

(あいつ、変わったな…………)

 

 とりあえず、そう思うようにしておいた。

 

────────────────────

 

 ある日のこと、突然クロートに呼び出された。

 そして、クロートの家のリビングで、あたしは大金の入ったアタッシュケースを見せられている。

 

「なに、このお金……?」

「イチカちゃんの手術費と渡米費。親父に無理言って貯めてもらった」

「はぁ……!?」

「親父の友達の、世界でも有名な医師がいるんだ。その人が丁度今、予定が空いてる」

「それで、そのお金でイチカちゃんを手術して意識を回復させようってこと? そんなこと出来るの?」

「出来るかはわからないけど、海外で確立した手術に携わった第一人者だ。やってみる価値はあると思う」

 

 そう言ってのけるクロートは、明らかに不安を隠しきれないといった様子だった。どいつもこいつも言葉の裏に本音を隠しすぎだ、もう少しわかりやすく本心を語ってくれてもいいじゃないか。

 第一、脳手術なんて……あたし達の意思だけで決められるわけがない。家族の承認が絶対に必要だ。

 

「アマネには? そのお祖父さんには、ちゃんと話したの?」

「アマネには、まだ。アマネのお祖父さんには言ってて、後日話がしたいらしい」

「じゃあまだ未定じゃん! あたしに話す必要あった!?」

「お前がイチカちゃんの恋人だからだ。実質家族みたいなもんだろ」

「そう言われるのは嬉しいけど…………」

 

 なんだか腑に落ちない。イチカちゃんが戻ってくるワンチャンに賭けたいのはあたしもそうだし、これは勝手だけどあのまま一生目覚めないぐらいなら終わってくれた方がまだマシだとは思う。

 でも、安心して頷くことは出来ない。あたしの頭を、許容できないデジャヴが駆け巡っているから。

 もし、あの事故みたいなことが起きたら。その人がたまたま不調で、手術が思うようにいかなかったら。もし、イチカちゃんが死んでしまうようなことがあったら。

 やっぱり、イチカちゃんが死ぬのは嫌だ。こんな形で終わるなんてあんまりにも程がある。

 

「ッ…………。あたしは──」

「逃げるな」

「え……?」

 

 彼は呟く。

 

「逃げれば1つ、進めば2つ。今逃げれば寝たきりの生活は続く。いつ死ぬかもわからない、いつ目覚めるかもわからない中、永遠みたいな時間、カグラは恋人を待つことになる。でも進めば、もしかしたらイチカちゃんは目覚めて、また中学の頃みたいな生活ができるかもしれない。もし死んじゃっても、人としての尊厳は守られる。カグラはイチカちゃんの最後の人になれる」

「は…………? 今になって、ガンダム?」

「アニメは哲学の延長だ。影響されることは山ほどある。オレは富野由悠季の、宮崎駿の、哲学をアニメで見せる彼らを信じて進みたい」

 

 不安を拭いきれてない、それでも進もうという、決意に満ちた目。その目は、あの時のイチカちゃんにそっくりで…………!

 

「何、言ってんの……。アニメとか人に夢を見せるだけのフィクションじゃん。ここは現実なんだよ? 今更、こんな状況でッ、フィクションに夢見てんじゃねぇよッ!!!」

「夢見るからフィクションなんだろうが!! オレはカグラと、アマネとイチカちゃんも加えて、4人でずっと一緒に! そんなフィクションに囚われてる!! 檻の鍵がどこにもあるかもわからない……! だから、夢見た世界(フィクション)確定した未来(ノンフィクション)にしないとオレは進めない!!!」

「うるさい!! そんなんに縋って何になるの!? 実現しなきゃ意味ないじゃん! あたしはそんなのに縋りたくな──」

「カグラ!!!」

 

 突然名前を叫ばれたので、声が止まる。

 

「後ろ、振り返っていいから…………休憩とっても、いいから……! 立って、前向いて進めよ!!!」

「ッ…………!!」

 

 思えば、その気迫に思いきり騙されてしまったのだと思う。

 その先の未来は、思い通りの未来じゃなかったけど、なんとなくそれでもいいとか思ってしまった。

 何度も後ろを見た。何度も休憩をとった。でも、それでも、確実に前に進んだ。まだ決定的じゃないけど、それでも、「それでも」って言い続ける。頑張る。

 

 いつか見た夢を、現実にするために。

 

────────────────────

 

 そして、今。

 

 教え子の恋人が記憶喪失になった。

 その報せを聞いたとき、頭が真っ白になってしまった。二度とない事だと思っていたのに、起きてしまったから。

 仕事はなんとかやれている。でも、家に帰ったらベッドで物言わぬ死体のようになっている。こんなことでは前に進めない。

 

 進め。進んでよ。ねぇ。

 

「動け、って…………」

 

 自分を鼓舞する。端から見れば実に滑稽な絵面だ、動く気配も見せないのにひたすら動け動けって。

 

「お前の呪いはそんなもんかよ、クロート…………!」

 

 なんとか身体を起き上がらせる。心労で疲れた体は、こんなことにも一苦労だ。

 

「そんなんで、コネコちゃんに、レイメイちゃんに、ビリーヴちゃんに顔向け出来るわけないだろ…………!」

 

 あたしの可愛い教え子を、辛い現実に寄り添ってあげるんだ。手助けしてあげるんだ。だから、だから──!!

 

「ちゃんとあたしの心を、目を、脚を! 前に向かせてみろッ!!」

 

 

 うわはず、家で叫ぶとか酔っててもやらないし。

 

「マジ、ふざけんなよ…………あたし」

 

 そう言って、あたしは棚からダイバーギアとガンプラを取り出した。

 

────────────────────

 

 GBNにて。

 フォースネストの扉を開けると、部屋にいたのは鮮やかな小豆色の髪を1本にまとめた少女、レイメイちゃんと、白いドレス風の衣装に銀色に輝く長髪の少女、ビリーヴちゃん。そして、ブラウンを基調とした上品な格好をしている黒髪ストレートの猫耳少女。こっちは送られてきた自撮り写真からして、コネコちゃんだろう。

 

「…………や、やぁ皆の衆。元気にしてた?」

 

 目を見てわかった。

 ビリーヴちゃんは、完全にあたしを忘れている。他人を、知らない人を見る目で見てくるから。それだけで結構胸が締め付けられた。

 

「え、と…………」

 

 言葉を紡ごうとしたビリーヴちゃんに、レイメイちゃんがすかさず耳打ちをする。きっとあたしを教えてるのだろう。レイメイちゃんの表情は、哀愁を感じる程に暗いものだった。

 

「元気にしてたって、こっちの台詞なのです!」

「すまぬすまぬ、読んでた漫画の推しが死んじゃって……」

 

 明らかに不機嫌な様子のコネコちゃんに対して手を擦り合わせて謝意を述べる。

 嘘では無いけど、特にダメージが強いわけではなかった。

 

「嘘。だよね」

「っ……、」

「ビリーヴ先輩……」

 

 適当なことを言っていると、突然ビリーヴちゃんから声をかけられる。手で探るような、か細い声だった。

 

「わたしに会うのが後ろめたくて、会えなかっただけなんだよね。記憶はないけど、それくらいなら、わかる」

「……………………うん、それで合ってる」

 

 今更図星を突かれても特に何も思わなかった。だけど、まるで他人行儀な優しさが心に突き刺さるようだ。

 

「わたしも、記憶がなくなってから会ったことない人のこと、気まずくて……」

「そうだよね。あたしもそうだから」

「でも、今ここで会った」

「え……?」

「今ここで、また知り合えたから。だからこれからは元通り……だと思う」

 

 ビリーヴちゃんがあたしの方へ手を差し伸べる。

 似てるなぁ、この構図。ちょっと色々違うけど、あの時みたい。

 

「だからまた、一緒にフォースやろ。カグラ」

「………………」

 

 だから、返しはあの時みたいに。

 まぁこの子達はそんなこと知らないんだけど。

 

「…………あ〜あ、来て損しちゃったなぁ。せっかく絶望の淵にいる3人を助けてあげようと思ってたのにもう立ち直ってるなんて」

「………………ツンデレ?」

「初めて言われたよそんなこと」

「昔のわたしにも、言われたことなかったの?」

「だよ」

「そっか」

 

 ビリーヴちゃんの手を握り返す。後ろの2人にも目配せして…………。

 

「……ってわけで、これにてカグラちゃん完全復活です!!」

 

 そう宣言してやった。

 

「今度から来れなくなる時は1報してくださいなのです」

「わかってますよぉ。これでも社会人だからね! 報連相はしっかりせんと!」

「別に気にしなくても、ビリーヴと私の愛は本物だからね! 立ち直るぐらい当然!」

「1週間会ってくれなかったよね」

「………………」

 

 レイメイちゃんが自信ありげに胸を叩くと、次いでビリーヴちゃんが釘を刺してきた。あれは痛い。というか、やっぱりレイメイちゃんも結構ダメージあったんだ。

 レイメイちゃんはしばらく黙りこくった後、突然ビリーヴちゃんに抱き着いた。

 

「ぅえっ!?」

「もう離さない!! からぁ!!」

「あわ、あわわわわ…………!?」

 

 突然抱き着かれて真っ赤になっているビリーヴちゃんを見て、異変に気付いた。

 あれ、これはもしや記憶を失ってからスキンシップが恥ずかしくなったやつ…………?

 

「ほーん…………?」

「ん? どったのカグラ」

「いやいや、新しい一面が見れて嬉しいだけだよ」

「え? どゆこと?」

 

 下を見ろ下を。今君が抱き着いた相手が今にもノックアウト寸前だぞ。

 

「あの……」

「おおうっ!?」

 

 背後から突然話しかけられたので、まるでオットセイみたいな声が出てしまった。

 後ろを振り返ると、そこにいたのは恐ろしいくらい気まずそうにしていたカスミだった。

 

「そろそろ入っていいですか…………?」

「「「あ、どうぞ……」」」

 

 声のトーンから伸ばし具合まで、全てがハモってしまった。

 

────────────────────

 

「いやー、気まずかったねー」

『知らんわボケ』

 

 GBNからログアウトした後、アマネから着信が入った。近況報告だそうで、こいつからかけてくるのはかなり珍しいので通話することにした。

 

「久々にみんなでやるミッション楽しかったなー。なんかシルヴィー非番だったけど」

「非番? あいつら観戦だったのか?」

「いやいや、なんか改造してるらしくって。代理にダブルオーライザー持ってきてたね」

「ああ、あの量子化のチート野郎か」

「チートとか言わんでよ」

 

 確かにそう言いたくなる気持ちもわかるけど、理不尽な挙動ばっかするからってすぐチート呼ばわりは酷いんじゃないか。ガンダムを超越した存在なんだからそれくらいは許される…………と思う。

 

「にしても呑気だなお前」

「呑気って……。今まで死にかけてたのに今はしゃげてるんだからそれでよくない? それとも何? 自分は忙しいからって嫌味ですか? だったらお前もログインしろって──」

「ちげぇよボケナス」

 

 呆れたような声で否定されたので、少しだけきょとんとした。あとボケナスとはなんだ引っこ抜くぞそのポニーテール。

 

「んな呑気に遊んでていいのかよ。明日、イチカ合コン行くらしいぞ」

「………………………………………………は?」

 

 合……コン?

 イチカちゃん、が……?

 

「ラボ連中に誘われて断りきれなかったんだと」

「は、はあああぁぁぁぁぁぁぁああッッ!!!!!?!?!!?」

 

 エマージェンシー! エマージェンシー!

 早急に阻止、しなくてはっ!!!

 




安心も束の間、意中の人の貞操がピンチ!!

キャラ解説ver.3

レイメイ/紅月(アカツキノ)ミナ
フォース『ビルドリバイバル』に所属するSSランクダイバー。
ランクの通りクロート=カスミやアマネ=アノマロカリスと並ぶ実力を持ち、特に近接戦と空中戦で高いアドバンテージを得ている。
リアルでは不登校ということもあり、性格は少しドライ。だが無類のガンダム好き故にはしゃいだり、意外とノリが良かったり、見栄を張ったりと愛嬌がある。記憶を失ったビリーヴとも、現在は上手くやれている。
綺麗な小豆色の髪を1本にまとめ、カッターシャツにミニスカートの制服風の衣装に鉄華団のアウターを着ている。
使用する機体はGNドライブ×GUNDフォーマットの白兵戦特化ガンダム、『ガンダムシルヴィー』。現在改修中。

ビリーヴ
フォース『ビルドリバイバル』に所属するELダイバー。
かつてはレイメイと恋人関係にあり、自分から甘えに行く程仲が良かったものの、記憶を失ってからは距離感がまるでわからなくなった。
レイメイ自身が自分と復縁したと思ってるためか異様に距離が近く、スキンシップも激しいので落ち着かない日々を送っている。なお、知識欲から生まれたELダイバーなので知りたい症候群は健在であり、むしろ記憶がリセットされたため拍車がかかっている様子。
容姿が純白に青を足したドレスに美しい銀色のロングヘアというのもあってどことなくELダイバー・サラを想起させるが、本人との関連性は薄いと思われる。
モビルドールは戦闘向けでは無いため使わない(というより存在を知らない)が、レイメイのサポートとしてガンビットを操る能力に長けている。

コネコ/小南ネコ
フォース『ビルドリバイバル』に所属する初心者ダイバー。
リアルは超有名な財閥、『コナミグループ』の令嬢で、実質的なフォースリーダー、カスミとは婚約者関係にある。
黒く長い髪に気品溢れる衣装、猫耳と凄まじいまでのお嬢様オーラを出しているが、中身はただのアニメオタク。見た目もクロート=カスミの好みに合わせただけでそれ以前は金髪のショートだった。(カスミの見た目と似ているように感じていたのもダイバールックを変えた要因の1つ)
アニメオタクらしくノリが良く、号に入っては郷に従えのスタンスでありつつも自らの欲求を惜しみなく出せる性格。カスミに対し最初は憧れの念を抱いていたが、次第に庇護欲と恋心を感じるようになった。
使用機体はパーフェクトストライクに核エンジンを載せ自分好みに調整した機体、『オールマイトストライクガンダム』。

カスミ/霧雨クロート
フォース『ビルドリバイバル』の実質的なリーダー。
G-tubeで動画を投稿するG-tuberでイラストレーター、作曲家、最近は新作ガンダムシリーズのキャラデザにも携わる大物クリエイターで、その才能は留まるところを知らない。
しかし、一度に多くのことを考え込む性質であるが故抜けており、その癖ファンサだけは欠かさないのでファンの情緒は滅茶苦茶。そしてコネコ同様の適応力の高さを持っている。
輝く黄金色の髪に白いコート、そして翡翠色の瞳と絶対リアルじゃありえないようなイケメンだが、なんとビックリリアルでも同じような容姿をしている。リアルでは逆に黒を基調とした服を好む。
使用機体は幻のユニコーン4人目の兄弟、『フルアーマー・ルシファー』。

chapter.2完結!この段階で一番好きなキャラクターは?

  • レイメイ/紅月ミナ
  • ビリーヴ
  • コネコ/小南ネコ
  • カスミ/霧雨クロート
  • カグラ
  • アノマロカリス
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