ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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霧雨クロート過去編続き


第41話「HATE」feet.K

 第1次有志連合戦。誰もが目にした奇跡の光が、世界を滅ぼさんとする妖しい光を浄化した戦い。

 手を伸ばしても届かない光。絶対に敗れることの無い光。その光は、オレの人生を嘲笑っているように錯覚させた。

 

「カスミ」

 

 カグラの呼びかける声が響く。それが強い屈辱と嫉妬に塗れそうになったオレを正気に引き戻してくれた。

 

「あたし達が求めていたのは、あの光じゃないから」

「…………わかってる」

「あの翼に包まれれば、イチカちゃんの記憶が戻るわけじゃないんだからさ」

「…………うん」

「だから、あんまり気負っちゃダメだよ」

「………………大丈夫。わかってるから」

 

 その時はカグラの言葉を反響させて、必死になって自分に言い聞かせた。

 

────────────────────

 

 だが、現実は無為にオレを揺らがせる。

 あの奇跡を引き起こした電子生命体、ELダイバーの保護がGBN内で騒動となった。

 運営曰く、ELダイバーが原因で現在GBNは危機に瀕しており、この危機は修正パッチの配布……つまりELダイバーの削除によって治まるという。

 この発表はユーザーの意見を2つに分かれさせた。『バグの原因は取り除くべき』という削除派と、『自分勝手な理由で命を終わらせるべきじゃない』という保護派。これらの対立は第2次有志連合戦という、アヴァロン率いる有志連合側VSビルドダイバーズ率いるELダイバー救出側という形で決着をつけることになった。

 カグラは「どちらかを贔屓して恨まれるようなことはしたくない」という理由で不参加。そしてオレは、成り行きで有志連合側に参加している。オレ自身どちらがいいのか結論はついてない。発見されたELダイバー、サラはビルドダイバーズに所属していて、きっと彼女の消滅はビルドダイバーズに大きな傷を残すだろう。かといって、GBNが終わってしまえば本末転倒だ。

 

(…………何やってんだろ、オレ)

 

 そんな自分に呆れたような思いを抱きながら、フォース『百鬼』のメンバー、ドージと刃を交えていた。

 

「これでも喰らえっ!!」

「チッ…………!」

 

 煌・ギラーガが繰り出したテイルを左腕で受け、アームドアーマーVNを引っ掛けて逆に引き寄せる。

 

「ドージ!! このっ……!」

「撃てよ。味方ごと落ちるぞ」

「ッ…………!?」

 

 迎撃しようとしたビルドダイバーズのメンバー、ユッキーのジェガンブラストマスターに対して捕まえた煌・ギラーガを盾にして見せつける。

 

「ユッキー! オレごと撃て!!」

「ドージ……!」

 

 どうやらお友達らしい2人のうちドージは自分ごと撃つように言うが、対するユッキーは決意しきれない様子。

 

「御しやすいいい絆だ、なッ!!」

「ぅおっ!?」

「ぐああーッ!!」

 

 煌・ギラーガを投げてジェガンにぶつける。そのまま2人まとめて落ちていくところに容赦無くビームマグナムを構える。

 だが、その一撃を放つ前に放たれたミサイルがビームマグナムを破壊した。圧縮されたメガ粒子が巨大な爆発となってオレに襲い来る。

 

「なっ…………!?」

 

 ちらりと見えたミサイルを放った相手は、煌びやかな装飾と絶大な強化を施された可変MS、リバウだった。

 そのままオレは、撃墜されたかのようにSFS毎墜落していった。

 

 墜落から数分、動きはない。途中エミリアから「隊長機への支援は不要」と連絡が入ったので不干渉のまま警戒を高めている。

 

『──まだ立ち上がるのか』

『たりめぇだ……!』

『諦めない…………!!』

「っ…………?」

 

 突如開かれたオープン回線、クジョウ・キョウヤ、オーガ、そしてリクの声が通信越しに聞こえてくる。

 

『俺、あなたに憧れてガンプラバトルを始めました。その強さに、決して諦めない心に憧れて。俺、ガンプラが、ガンプラバトルが大好きです』

 

 リク自身から語られる本当の思い、きっと誰もが聞き入っていただろう。

 

『ガンプラバトルが大好きだという気持ちで、たくさんの人と繋がり合える。色んな人たちが、色んな目標を持って、自分の歩幅で進んでいける。そんなGBNが大好きで…………そこで出会ったのがサラなんです』

「ッ…………!」

『サラに、いっぱい教えてもらった。一緒に経験した。みんなとの絆、ガンプラとの繋がり、楽しむ気持ち、諦めないこと、前を向いて進むこと、ガンプラを大好きだってこと!』

 

 彼にとってサラがもたらしたものは、きっと末端のオレじゃ辿り着けないぐらい大きなものだった。とても、想像もつかないような…………。

 

(うるさい……! オレは、それよりももっと大きいものを…………!)

 

『だから諦めたくない!! サラに、いっぱい笑顔にしてもらった、大好きって気持ちを教えてもらった! …………俺達の”好き”が生んだ命がサラなら、俺達の手で、サラを消したりしちゃいけない……! 自分たちの”好き”を、自分たちで否定しちゃいけないから!! だから! 俺たちは、俺たちの好きを……諦めない!!』

 

 思わず操縦桿を殴りつけていた。

 眩しすぎた。その想いが、サラを助けるという純粋過ぎる想いが、オレをあまりにも惨めにした。

 

「…………それで、世界がどうなるわけ──」

『チャンピオンが突破された!?』

『誰か、誰かいないのか!!』

「はっ…………!?」

 

 突破、された? あのチャンピオンが?

 城の方に視線を向けると、その先には激しい損傷を負いながら進むダブルオースカイの姿があった。

 今なら、この距離なら追い付ける。オレはさっきのダメージで軋む機体を動かした。

 

「なんで……」

 

 お前は、奇跡を起こせるんだ。

 

「オレは……」

 

 オレは、1度たりとも起こせなかったのに。

 

「お前は……」

 

 お前は、また奇跡を起こしてしまった。

 

「お前が……!」

 

 お前の想いが、誰かを傷つけてしまうと、知りもしないで。

 

「どうして、お前は……!」

 

 どうして、お前は取り戻せるんだよ。

 

「だってオレは……!」

 

 オレは、あの頃のオレを取り戻せなかったのに。

 

「2人を、オレはッ……!」

 

 2人の笑顔を、オレは奪ってしまった。

 

「なのにお前がッ……!」

 

 お前がみんなの笑顔を取り戻そうとしてる。

 

「だから、オレが!!」

 

 お前から笑顔を奪う。

 じゃなきゃ、不公平だろ。

 

「はあああああッ…………!!」

 

 ユニコーンタイプの隠されし機能、『デストロイ・アンチェインド』を起動。解放されたアームドアーマーVNを展開して、奴に向かって突撃する、その瞬間。

 機体は横からの大出力のビームによって焼き払われた。

 

『Battle ended』

『Winner:BUILD DIVERS!!!』

 

────────────────────

 

 それから2年。

 大学での生活も終わりを迎え、高校の頃から続けていた仕事もようやく人気が出てきたところだった。

 あれからGBNにはログインしていない。自分が元気に暮らしているELダイバーを見て、どうなるかわからないから。傷付けてしまうだろうか、それすらもわからない、ただ漠然とした気まずさと恐怖が渦巻いてダイバーギアを触ることも出来ない。

 

「…………カグラから?」

 

 そんなオレにやってきた一通のメール。

 

『GBNにログインしろ。でなければ貴様のパソコンをドボンする』

「…………は?」

 

 パソコンを壊されるのは不味かった。だから、仕方なく2年ぶりにログインすることにした。

 

 更新データのダウンロードが超絶長くて、ログインしたら2年前と全く別物になっていたことが印象深かった。

 前よりもずっと感覚のフィードバックが強かった。道行く人達からはそれぞれ匂いを感じるし、通り過ぎたときの僅かな風すらも感じた。もう、オレの知っているGBNではない。

 

「お、ちゃんと来たね!」

 

 戸惑っているオレに横から声をかけたのは、ピンク色の髪をハーフアップにまとめた女の子、カグラだった。

 

「…………ドボンはやめろ洒落にならないから」

「こうでも言わないとお前来ないと思ってさぁ」

「そうだよ。大体なんで呼んだんだよ、オレはもう……」

「いい加減そういうのにウンザリしてきたから流石に更生させようかなと。というわけでついて来い引きニート!」

「いや引きこもりでもニートでもねーから──ってちょっと待てー!」

 

 そのままカグラに連れ去られていった。

 

 来たのは、何やらお洒落なバー。多分フォースが運営しているところだろう。

 

「いらっしゃ〜い! ご新規様お2人ね?」

 

 秒速で帰りたい欲が出てきた。よりにもよってマギーのオカマバーかよ!

 

「マギー姐さん! シュワッシュワの炭酸水2つ!」

「はーい! 炭酸水2つおねが〜い!」

「…………帰っていい?」

「だめ」

「ええ…………」

 

 勝手にお出しされた炭酸水の泡を見つめながら、カグラとの話を始める。

 

「さてさて、お前が突然やめてから2年だけど。GBNは随分様変わりしましたよー、どこが変わったでしょーか?」

「感覚がリアルに近付いた」

「正解! だがそれで100点が取れるほど甘くはない」

「…………どうせ、ELダイバーがどうこうとかだろ」

「イエスいぇす、80人ぐらいいるんだってー。人間って意外と順応するもんだよねぇ」

「昔と変わらないのはオレだけか……」

「今でもアンチスレではちょっと話題になったりするよ?」

「別に嫌いとかじゃないんだよ。でも……」

「……第2次で何があったのさ」

「別に、ただの八つ当たり」

「ビルドダイバーズへの?」

「そう」

「ああー…………、そりゃあお前気にしてやめるわな」

「あいつは奇跡を3度も起こした。ブレイクデカールを鎮めて、チャンピオンに勝って、ELダイバーとGBNを救い出した。不公平だと、思ったんだ。オレ達にはそんなこと何も起きなかったのに」

「うんうん、ご都合主義ってホント素敵。この世は”主人公”でいられる人のために存在してる。あたし達はその陰でジメジメと暮らす脇役。脇役に出番は、ない」

「……その主人公だって辛い目に遭ってるのはわかってる。リクだってGBNは崩壊させたくなかったはずだ。オレが当たってしまったのは……」

「実現したからでしょ、理想が」

「…………そうだよ。あいつはやり遂げた。オレはイチカちゃんをあんな形で蘇らせてしまったのに」

「あんなとか言わないでよ。今のイチカちゃんは楽しくやってるのに」

「そうだよそれもわかってる!! 理屈とか気持ちとかの問題じゃない、あれはオレの劣等感が反射的にやらかしたことなんだよ! 意志よりももっと強い感情が起こしたただのガキみたいな癇癪だ!!」

 

 立ち上がって怒鳴りつけてしまう。カグラは少しだけ目を丸くしたが、その後座るように軽くなだめられた。

 

「…………お前が言わんとしてるのはわかったよ。整理がついてるのもわかった。精神的にダメなところをピンポイントで貫かれて、それで感情ドロドロのまま走り出しちゃったわけでしょ」

「………………うん」

「じゃあ、あたしからは特に何も出来ないかな」

「は…………?」

「別にELダイバーもガンプラも、このGBNだって嫌いなわけじゃないんでしょ? ただまた何処で地雷踏まれるかわかんないだけじゃん。それなら復帰はできるって」

「……どういうことだよ」

「要は嫌なものに蓋すればいい。徹底的に離しても意味無いだろうし、どっちもいるこの場で元気に遊べばそれでよし! 最初はアレだろうけど、そのうち黒歴史として語れるレベルまで落ち着くって!」

「蓋って、避けるだけだろ。どっかでかち合ったらどうすんだよ」

「そのときはスッキリするまで完膚なきまでにボコせばいい。安心しろお前の方が強いから」

 

 いい加減この笑顔に騙されるのはやめよう、そう思っていた。

 

「ま、安心しな? あたしだけじゃなくてアノマロカリス、あの法学部の狂犬くんもいっしょだしさ!」

「………………は?」

 

 その言葉を、聞くまでは。

 

────────────────────

 

「という、感じです…………」

「重い……」

 

 作戦の内容を話した後。オレの話を聞いたコネコが最初に放った感想はそれだった。

 

「一応、2人とコネコ達のおかげで今楽しくやれてるけど、たまにダメな方のストレス発散法やったり、SNS上で完全に病み切ってたりで最悪の3年間だった」

「それだけ、有志連合戦の自分が嫌いなのですね……」

「うん。あれは、ただのオレのどうしようもないワガママだったから。だから今もビルドダイバーズとは会いたくないし、ぶっちゃけ名前も聞きたくない」

「かなり引きずってるのです……。でも、話してくれてよかったのです」

 

 そう言ってコネコはオレに微笑みかける。

 

「……? なんでだよ」

「それだけ私のこと、受け入れてくれるっていう証拠だからなのです。私のこと、ちゃんと好きなんだなって」

「ッ……、そ、それは拡大解釈じゃないか……? カグラとアノマロも知ってるわけだし」

「2人は幼馴染なのでノーカンなのです。婚約者である私に言うからこそ、意味があるのです!」

「ッ……! こん、やく…………」

「それに、自然体で話してくれるのもなんだか夫婦みたいで嬉しいのです!」

「夫婦って…………! あー、もう!」

 

 毎回毎回手玉に取られるのも癪なので、不意打ち的にコネコの膝に頭を置いて仕返しすることにした。

 

「ふぇっ!? い、一体どうしたのです!?」

「攻められてばっかもアレだからたまにはオレからもいいかなー、と。結構快適」

「…………あの、威厳パラメータの方は……?」

「いいんですー! 今は誰にも見られてないからいいんですー!!」

「アハハ……」

 

 絶対に攻守を逆転させる! そして、カグラから「クロネコってかネコクロじゃんw」とか言われるのを絶対に阻止してやる!!

 そんな意気込みで切磋琢磨していると、いつの間にかバトランダムの時間が迫っていた。

 




次回こそは本当の意味でバトランダムミッション開幕!
ちなみに、クロートはアマネのハンドルネームがアノマロカリスだということは元々知ってます

機体解説ver.3

RX-0-2N バンシィ・ノルン(カスミ搭乗機)
第2次有志連合戦でカスミが使っていたガンプラ。
元のバンシィ・ノルンとは左腕部のアームドアーマーVN以外に差異はない(アームドアーマーDEは右腕部接続)が、その完成度は高い。
また、巨大サイズのガンプラにしか搭載されていないデストロイ・アンチェインドの機構を144分の1サイズに落とし込んでいる。

特殊システム
・インテンションオートマチックシステム:ユニコーンタイプやシナンジュに搭載されている機能。操縦者の思考を取り入れるシステムを前面に押し出している。
・NT-D:ユニコーンタイプやナラティブガンダムに搭載されている機能。サイコミュ機への強力なバフとして機能する他、フルサイコフレームではサイコミュジャックも行える。稼働時間は5分
・デストロイ・アンチェインド:本来ならばPGサイズのユニコーンタイプに搭載されている機能。サイコミュ搭載機に対して絶対的ともいえる性能を発揮するが、装甲が展開されフレームが剥き出しになるという都合上、防御が薄くなるという問題がある。

武装
・頭部60mmバルカン砲2門
・ビームマグナム
・ビームサーベル×4
・リボルビングランチャー×2
・アームドアーマーDE
・アームドアーマーXC
・アームドアーマーVN

chapter.2完結!この段階で一番好きなキャラクターは?

  • レイメイ/紅月ミナ
  • ビリーヴ
  • コネコ/小南ネコ
  • カスミ/霧雨クロート
  • カグラ
  • アノマロカリス
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