ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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マスダイバー乱入その2


第45話「トライ・アンド・ビリーヴ」feet.B, H

「チャン、ピオン…………?」

 

 誰もがそう呼んでいる人のガンプラが、空中であの黒いガンプラと対峙している。神々しさすらも感じられるこのガンプラが現れたことに、その場の誰もが驚きを隠せなかった。

 

「え、さっきのでほぼやられたの……?」

「シルヴィーのクローみたいなのが、ばーって飛んできて……みんなやられちゃった」

 

 マスダイバーと呼ばれていた人達はあっさり倒されてしまった。わたし達とあの鬼武者は無事みたいだけど。

 

「ってか、なんでチャンピオンが来てるわけ!? そんなにうちと戦いたかったの!?」

「いや、サモネに呼ばせた」

「サモネちゃんが!?」

「偶然の巡り合わせだが、まぁなんとかなったな。まさか初手9割取るとは思わんかったが」

 

 アノマロカリスがサモネに頼んで呼んでもらったそうだ。ここまでするとはさすがに思っていなかったみたいだけど。

 とはいえ、相変わらずシルヴィーが全く動いてくれない。目の前には全身を軋ませながら立ち上がる鬼武者がいるのに。

 

『ッ……、』

「あぁもうこいつ……って、動けないんだけど!」

 

 その事実をレイメイも把握し、声を粗げて苛立ちを表現していた。

 すると、突然空から白黒のガンプラが舞い込んでくる。

 

「ん…………? アノマロカリス、あれもサモネが呼んだの?」

「は? 知らんが?」

「え?」

 

 白黒のガンプラが持っている杭のようなものを地上に向かって打ち込む。杭は強く地面に食い込み、シルヴィーのGNフィールドのようなフィールドを発生させた。

 

『お、おいヒロト……。動けるぞ?』

『あ、あぁ。でも、なんで警備用NPDがいきなり?』

 

 そのフィールドに巻き込まれた機体が次々と制御を取り戻した。もちろんシルヴィーも復活している。

 

『運営からの軽量化プログラムだ。少しの間だけだが動くことはできるだろう』

「うちの社の派遣こき使われてんなぁ……」

「苦言は後々、今は動ける喜びを噛み締めるのです!」

「元気だなコネコ……」

 

 再び動けるようになり、武器を持って鬼武者にターゲットを揃える。鬼武者はじっとこちらを見据えている。

 

『ヒカリ! もう味方がお前しかいない、そいつらをどうにかしろ!』

『………………』

 

 鬼武者は沈黙したまま、太刀を持って戦闘の構えに入る。

 

「まだやる気かこいつ…………!」

「おいバカップル、こいつは俺が絞めとく」

「アノマロ? いいけど、なんで?」

「お前らはチャンプの援護についてろ。どうせ作戦かなんかで使われんだろ」

「んな雑な……」

「アノマロカリス」

「あ? んだよビリーヴ」

「あのガンプラは、泣いてる。多分だけど、あなたじゃあの子を泣き止ませられないと思う」

「…………」

「だから、無茶はしないで」

「……はいはい。わかりましたよ」

 

 わたしの言葉を飲み込んだらしいアノマロカリスは、その背中の大剣を担ぐように持って構えた。

 

「チャンプ! 黙ってねぇでそこのガキ使え!!」

『相変わらずキミは素直じゃないな』

「うるせぇ!」

 

 チャンピオンは黒いガンプラが放つ無数のビームに自身のビームを当てることで軌道を変え、機体への被弾を抑えている。きっとあれはレイメイにも難しい芸当、そう肌で実感するような技術だった。

 

『チャンピオンがいりゃあ、百人力だぜ! 見ろ! スタルの攻撃さっきから全然当たってねぇぞ!』

『いや、キョウヤさん自身も手を出しあぐねてる。それだけ防御が硬いんだろう』

『ヒロト君の言う通り、僕だけでは奴を倒すことはできない。だから、キミ達の星をも穿つ絆の力をお借りしたい』

『絆の力……?』

 

 メイが疑問を持つ。確かに何やらちゅう、しょう…………てき? な言い回しで想像がしづらい。みんなで力を合わせるのは、わかるけど。

 

『もしかして…………リライジングガンダム?』

『いやいや、無理ですよ! リライジングは重力下での使用は想定してないんです!』

『そうだよ! それに本体も俺が急ごしらえで作ったのをどうにかこうにかして形にしてるだけだし!』

『それは元々お前があんな無茶を言ったからだ』

『まぁまぁメイさん……』

『…………やるしかないんですね、キョウヤさん』

 

 ビルドダイバーズの面々が驚きの中で討論する中、ヒロトは冷静にチャンピオンに対して問いかける。

 

『ああ。だがキミ達の懸念する通り、リライジングガンダムは重力圏での使用は厳しいだろう。だから、彼女らの力も借りたいんだ』

「…………え?」

 

 突然わたし達が指名される。レイメイは驚きすぎて逆にリアクションが弱くなっていて、わたしも開いた口が塞がらない…………みたいな気持ちだ。

 チャンピオンから説明された作戦は大まかにこの通り。

 まず、ビルドダイバーズの機体全てがリライジングガンダムという必殺形態へと変形・合体する。しかしリライジングガンダムは4機分のエネルギーと重量を持つためそのままでは自立すらままならないらしい(レイメイが「重すぎて立てないのあるある」と言っていた)。だから、そんなリライジングガンダムをわたし達シルヴィーツヴァイの力で無理やり上空へと打ち上げ、あの黒いガンプラにぶつける…………とのこと。

 

『その間、僕がどうにかして敵の気を引く。後は頼んだ!』

 

 それだけ言ってチャンピオンは黒いガンプラに立ち向かっていった。

 

「流石のシルヴィーでも4機分支えるのは無理が……いや、マスダイバーですら見当違いな理想掲げてるのに私達が弱音吐いてちゃダメだよね、ビリーヴ!」

「うん。でも、大丈夫なの? 例えぶつけられても勝てるかどうか…………」

「いやぁ、それはもうお祈りしかないね」

 

 レイメイは困った顔で笑った。とても綺麗だった。それはもう、大丈夫かもしれないって思えるくらいには。

 作戦は決行に移される。

 

『コアチェンジ、リライジング・ゴー!!』

 

 コアガンダムIIの脚が畳まれて、露出したウォドムポッドの接続部とドッキング。その後、ウォドムポッドはその体型を人型のそれへと変形させる。続いてイージスパラディンの派手な装飾が施された腕や胴体がアーマーとなってコアガンダムにドッキングし、その脚はかかとが手の形に変化して腕にドッキングした。更に、エクスヴァルキランダーの翼と尾がドッキングし、最後にその頭飾りがコアガンダムと追加アンテナとしてドッキング。ここまでの工程を持って完成するのがビルドダイバーズによる究極の必殺形態、リライジングガンダムだ。

 レイメイはシルヴィーを操作して、その巨体の足を持って支える。

 

「一か八か、行っけえええええぇぇぇぇっっ!!!!」

 

 スコア8、トランザム・ドライブを起動。開放された粒子を全て推力に回したことで、シルヴィーツヴァイは4枚の巨大な翼を展開。その翼は、リライジングガンダムを敵にぶつけるために使われる。

 でも、それでもシルヴィーだけでは足りない。

 

「ッ……! レイメイ駄目! このままじゃシルヴィーが!!」

「だったら! 持ってけるとこまで────ッ!?」

 

 突然背後に2つのガンプラが現れる。コネコのオールマイトストライクと、カグラのTR-6バイカスタムだ。

 

「GBNがダメになるかならないか! やってみる価値はあるってもんでしょ!」

「展開が胸アツ過ぎて、見てるだけじゃ勿体ないのです!!」

「2人とも…………! っ、レイメイ!!」

「もちろんだとも!!」

 

 光の翼の範囲を狭め、出力を一点に集中させる。

 

「行って、お願い!!」

「あんな奴らぶっ飛ばすのです!!」

「リライジングはっ、伊達じゃないだろうがぁぁぁッッ!!!!」

 

 8人の思いを乗せ、リライジングは高く飛び上がる。

 

「やああああああァァァァァッッ!!!!」

 

 ついに、黒いガンプラのところまで辿り着く。

 

『この上空に自力で来ただとッ!!?』

『フッ、僕の出番はここまでみたいだ!』

 

 ビームを受け続けていたチャンピオンは、そのビームを防いでわたし達を守りながら離脱する。

機体を運ぶのを手伝ってくれたコネコとカグラの機体はもうエネルギーがすっからかんという様子で、そのまま地上に落下していった。

 

「アイルビィーバァァァーック!!」

「負けたら承知しないのでーす!!」

「だってさ! ぶちかませっ、ビルドダイバァァーズ!!」

 

 最後の力を振り絞って、リライジングガンダムを空中に放り投げる。その巨体はエネルギーによって自立し、例え4機がまとめて合体していたとしても果てしないプレッシャーを放つ黒いガンプラに狙いを定める。

 

『コアガンダムII、フィニックスアロー!!』

 

 突如飛び上がってきたヒナタのコアガンダムIIが変形し、弓状の武器になる。リライジングガンダムはその弓を持ち、小豆色のアーマーとドッキング。

 

『紛い物がヒーロー気取りか!』

『最初は紛い物だったかもしれない、でも、今は違う!!』

 

 リライジングガンダムの機体が黄金に輝き、星のような煌めきと共に巨大な魔法陣を発生させる。

 

「…………きれい……」

「そうだね、ビリーヴ」

 

 魔法陣に重なるように小豆色のアーマーからプレートが円状に展開され、その中心部に矢をくぐらせるように弓を引く。

 

『グランドクロスアローッッ!!!』

 

 弓の弦に相当するビームを離し、光の矢が黒いガンプラに放たれる。魔法陣を潜り、矢が巨大化。1重目のプレートを潜り、圧縮。2重目、3重目とどんどんと圧縮され、最後にプレートを挟み込むように発生したもう1つの魔法陣を潜り、圧縮されたエネルギーが何倍にもなって開放される。

 

『でやあああァァァッ!!!』

『ウオオオオオォォォッッ!!!』

 

 強烈な光の矢に対し、黒いガンプラは黒い光によるバリアで対抗する。両者の激しいぶつかり合いは周辺に激しい衝撃波を巻き起こし、巻き込まれないようわたし達は地上へと降り立った。

 

「負けないで…………!」

 

 今のわたしには祈ることしかできなかった。どうか、どうか勝てますように、と。

 

『────ッッ、クソォッ!!』

 

 突然、スタルのガンプラが飛び出す。ネオ・ジオングと呼ばれていた黒いガンプラは勢いに負け跡形もなく破壊、残ったのはシルヴィーより一回り大きい程度のガンプラだった。

 

『ッッ!!』

『グッ、偽物のチャンピオンが……!!』

 

 待ち構えていたチャンピオンの機体がスタルに襲いかかる。腕から発生したビームサーベルの攻撃を、スタルはビームアックスで受け止める。そして──

 

『──ッ!?』

『キョウヤさんっ!!』

 

 スタルのガンプラは、チャンピオンを巻き込んで爆発した。しかしチャンピオンのガンプラにダメージは少なく、軽い傷がついた状態で煙から出てきた。

 

『…………やれやれ、まさかこれ程までに執念深かったとは』

「逃げられた…………?」

 

 全身をつんざくような悲鳴は聞こえなくなり、嵐の後の静けさだけが残る。

 乱入してきたマスダイバーとの戦いは、終わりを迎えた。

 

────────────────────

 

 戦いを終えた夜、私は母からもらった名刺に書かれている電話番号に、母のスマホで着信をかけた(私のスマホは充電切れということにしている)。

 

『……はい、こちら小泉探偵ですが』

「私です。飯綱ヒカリ、です」

『…………お前か』

 

 貼り付けたようなビジネス調の声から一転、私の名前を聞くなりため息を吐くように口調を元の形に戻した。

 

『昨夜はよくもやってくれたな……とか言いたいけど今はいい。あれがお前の選択ってことでいいのか?』

「早計とだけ言っておきます。それよりも、大事なことを教えたくて」

『そうか。だったらさっさと言え。この通話も傍受されてる可能性があるからな』

「はい。…………新マスダイバーの親玉、スタルの本名は、『(アキラ)ユウヘイ』です」

『ユウヘイ? 随分当たり障りの無い名前だこと』

「調べれば多分経歴は出てきます。調査の役に立てたら、と思って」

 

 戦いを終えた反省会で、私はスタルに対して親交の証として本名を伝えてもらった。あいつは存外話のわかるやつで、ダイバーネームと同じとはいえ私だけが本名を知られているのは不公平だと言えば快く教えてもらった。私が密告するとも知らずに。

 

『なるほどご協力感謝する。でもいいのか? これでお前は立派な裏切り者になったわけだが』

「どっちつかずですよ。もうどうせ私はどこの誰かもわからないような人達から後ろ指を指される人生が確定しているんですから、どうにかして生きる選択肢を増やしたかったんです」

『ハハハ、とんだ悪女だなお前』

「いいです、笑ってくれるだけ」

 

 私は、スタルに逆らうことは出来ない。それは、幼少から刻み込まれた彼への恐怖心がそうさせているから。でも、だとしても、私はどうにかしてこんな間違った道から抜け出したい。誰かに手を取ってもらいたい。

 だから私は、悪魔になってでも生き延びる方法を取りたい。

 

『……じゃ、俺からもひとつ』

「え?」

『あの時、お前の恐怖心を煽って脅したことを謝る。すまなかった』

「っ…………」

『さてと、これで俺も心置き無くテメーらをぶちのめせるな。今フェイクデカール用の修正パッチを作ってる。お前らの死期も近いってわけだ』

「それは、データは足りてるんですか?」

『全然。あちこちでサーバーが落ちたりデータが丸ごと吹っ飛んだりが相次いで難儀してるってGMが愚痴ってたよ』

「そうなんですか…………」

 

 だったら、もしかしたらあれが役立つかもしれない。

 

「…………私のガンプラ、デモニックバルバトスに使われてる新型フェイクデカール」

『は?』

「試作品ですが、その予備を事務所に送っておきます。きっとデータ取りに役立つと思うので」

『はぁ……。そりゃありがてぇがそれでいいのかよ』

「いいんです。私は、きっと何処かでスタルと離反すると思っていますから」

『…………そうかよ、わかった。そういうことにしといてやる。くれぐれも連中には見つからんようにな』

「はい。それでは」

 

 通話が終了し、静寂が訪れる。月夜に照らされるデモニックバルバトスは輝いて見える。というのに。

 

「……ごめんなさい、バル」

 

 私は彼を汚してしまった。私自身の想いと共に。だから私はGBNで、彼と共に死のうと思う。

 




それは、若さ故の過ちを償うため
スタルが徹頭徹尾子供おじさんでアマネが徹頭徹尾大人な構図が作者ながら大好きです
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