ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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ストックという概念が無いせいで執筆難航してます
水星の魔女はその…………嫌な、事件だったね


第5話「ビルディングお嬢様」feet.R

 まだ少し残る夏の残暑。

 熱気と寒気の混じった心地良い秋の風に私は打たれる。太陽に煌めく海を見ながら、私は待ち人を待っている。

 そう、この引きこもり1歩手前の私を外に連れ出そうとする不届き者がいるのだ。今、私はそいつを待っている。

 

「ユニコーンは相変わらずでかいなぁ」

 

 ここ、お台場海浜公園に佇む巨大なショッピングモール。その名も『ダイバーシティ東京』。

 その傍らには、私がついこの前戦った銀色のガンダムの原型、ユニコーンガンダムの等身大立像が置かれていた。そのサイズ、まさに21メートル。

 私達矮小な一般人はその巨大なマシーンを見上げるしかない。だというのに、リアルでは無いとはいえ、そんなものを自分の意のままに操れるGBNは本当に凄い。流石は最大規模のVRMMOだと思う。

 

「にしても遅いなぁ……」

 

 そう、遅い。あまりにも遅い。

 陽キャ溢れる外界を最も嫌う私を呼び出しておいて、時間になっても来やしないとはどういうことだ。来たら文句言ってやる。

 そうブツブツと項垂れていたら、駅の方からブンブンと手を振り回して走ってくる1人の少女が来た。

 

「せーんぱーい!!」

「先輩……?」

 

 なんだ人違いか。ふいっと顔の向きをユニコーンに戻しながらもその視線を少女の方に移すと、どうやらこっちに向かってきているらしかった。え、先輩って私?

 

「ごめんなさい、電車に乗り遅れちゃいました!」

「え、え? 先輩って何?」

「あぁ、GBNで色々良くしてもらったので」

 

 この子がコネコ、だよね。

 髪は黒く短いショートボブで、その服装は白く淡いピンクのかかったワンピースにジャケット。年は私とそんなに変わらなさそう、そんな清楚なお嬢様スタイルだが、その顔立ちはGBNで出会ったコネコそのものだった。

 

「レイメイ先輩、ですよね! やっぱりGBNのダイバールックは本人の特徴が出てくるものなんですね!」

「あ、うん。そっちこそ……コネコ、でいいの?」

「はい! コネコ改め、『コナミ ネコ』です!」

「私はアカツキノ ミナ。で……あの語尾は?」

 

 普通であるはずのその話し方に妙な違和感があるのは恐らく語尾のせいだ。めちゃくちゃ強調してきた「なのです」がついていない。

 

「いやいやぁ、流石にリアルでは……」

「あぁ、やっぱり」

 

 ですよねー。リアルでなのですとか言ってる人なんているわけないし、なんならリアルで頑なに語尾を固定してる人なんていない。いるはずがないのだ。

 

「アニメキャラになりたくて語尾を付け始めたので、リアルで付けても煙たがれるだけなのです。…………時々不意についちゃったりしますけどね」

「今ついたね」

「はい…………」

 

 気恥ずかしそうに目を逸らすネコ。これは将来黒歴史になりそうだ。月光蝶でも撒いておけ。

 

「でも、あの様子じゃ昨日始めたばっかー、って感じだったけど?」

「いえ、アカウントを作って始めたのは1ヶ月ぐらい前です。ただガンプラを持ってダイブしたのは昨日が初めてで……」

「EGとかならすぐ手に入ったんじゃない?」

「いや、今までは親が許してくれなかったのです。今日だってこっそり抜け出してきました」

「あー……なんかワケアリっぽそうだから深くは聞かないでおくよ」

 

 触らぬ神に祟りなし。こういう面倒事には関わらず、障害になった時だけ対処するのが1番だ。

 2人でダイバーシティ内に入ると、早めに冬仕様へと切り替わっている暖房と人々の活気に満ちた声が響くフードコートが出迎えてくれた。この時期の暖房は暑くて嫌なんだよね……。

 

「これが、ここがダイバーシティ! 新鮮なのです…………!」

「どういう反応……?」

 

 語尾復活してるし。

 私は最初に来た時は特に何も思わなかった。「あぁ東京だなー」としか。それは私が元々かなり都会の横浜暮らしだというのもあるし、私自体にそういう頓着がないのもある。きっと私は外国を訪れても、「外国だなー」としか思わないだろう。だからこう、初めて来た場所にオーバーリアクションを起こすのはなんか新鮮だな。そんな感じする。

 

「ガンダムベースは上の階にあるから。行こ」

「はい!」

 

 服やアクセサリーが立ち並ぶ綺麗な屋内を歩き、エスカレーターで上まで登る。エレベーターもあるんだけど、探すのが面倒なのでエスカレーターにした。

 

「ビームサーベル! ビームサーベルなのです!」

「はいはいはしゃがない」

 

 私の憶測では、この子は結構お金持ち、いやそれこそ豪邸に住むようなガチのお嬢様だろう。服とか凄く高そうなの身につけてるし。ガンプラを買ってあげるどころか、自分の金で買うのすら許さないとか、そんな厳しいところはガラスみたいに脆い過大評価を守りたがるセレブの親のしそうな事だ。私の親は、呆れつつも勝手にしろと許可はくれた。

 だからこの子にとって、こうやって自分の足でこういう場所に来て、自分の行きたい場所に自分の足で向かうというのは初めてだろう。このダイバーシティは、彼女にとってはテーマパークのようなものだ。

 

「はい、着いたよ。ここがガンダムベース東京」

「おお……! な、なんか仰々しいのです」

「無料だよ。さ、入ろ」

「あっは、はいなのです!」

 

 普通に語尾ついてるけど、喜んでると見て良さそうかな。なんというか、ネコというよりはイヌみたい。

 

「おぉ、新作ガンプラのサンプルだ……!」

「発売1ヶ月切ったからそのうち撤去されて新しいのが来るだろうね」

「あ、あっちの白いお部屋は何があるんですか?」

「ファクトリーゾーン。ガンプラの製造工場の模型とか、技術の軌跡とかだよ」

「見てみたいのです!」

 

 あぁ、なんかこういう好奇心に満ちた目、ビリーヴにすっごく似てる。だからかな。嫌いだった人付き合いもこの子となら良いと思えてしまう。

 ガンプラの歴史を、どうやって作るかの図解を見る彼女はとても楽しそうだった。私は何度か訪れているけど、こういう子がいるとついつい眺めてしまうものだ。模型を、目を輝かせる彼女を。

 ………………うん? あれ、本題は?

 

「多色成型とはこのようにして出来ていたのですね…………!」

「あの、ネコさん。ガンプラの改造の件なんですけど…………」

「……あ、そうだった」

 

 全くこの野郎……! このお嬢様め……!

 

「えへへへへ、初めての場所なのでついテンションが上がっちゃって……」

「いつまでもそうしてたら日が暮れるでしょうが。ガンプラの改造ってかなり時間かかるんだよ? それに君、お忍びでしょ」

「う、滅相も無いのです……」

 

 使い方合ってるのそれ? まぁいいや、そんなこと。

 気を取り直して、オレンジの暖かい証明に照らされたビルドスペースの席に座ると、ネコが取り出したのは大剣を持ったストライクガンダムだった。

 

「これ、EGストライク?」

「はい。対艦刀グランドスラムを装備したストライクなのです!」

 

 確か入浴剤と小さいザフトの水陸両用MSがセットになったやつだよね? 見たところタッチゲートをそのままちぎってるみたいだし、トップコートも墨入れもされてない素組みの状態。なるほど、苦肉の策でそれだけ与えたということか。それがセレブのやることか?

 

「ふーむ……改造以前に元の手直しから始めないとだね」

「元の、手直しなのです?」

「ゲートから切り離したところがささくれてるでしょ? これはバリっていって、位置によってはパーツが噛み合わなくなる原因になる」

「なるほど、確かにGBNだと見慣れない隙間がチラホラあったのです」

「うん。だからヤスリで整えないといけない。予め私が持ってきてあげたから貸してあげる」

「いいのです!?」

「いいよ。元々これが目的なんだし」

「ありがとうなのです! じゃあ、ヤスリを使う方法から教えて欲しいのです!」

 

 あぁ、そこからね…………。

 それからはまぁ、分解してストライクのバリを取ってから、サンドスティックで表面を削って成型時に出るプラの濃淡、ウェルドラインっていうのを無くした。加えてブレードアンテナやグランドスラムも尖らせて、素組みの状態からは見違えるほどになったのだ。

 

「おぉ、プラスチックの粉で汚れてるはずなのに、なんだか輝いて見えるのです……!」

「分解しやすかったから早めに終わったね。これだけで5時間はかかるかもと思ってたんだけど」

「そ、そんなにかかるのです!?」

「パーツ数多いとどうもね……」

 

 シルヴィーを作る時は苦労したなぁ。何せガンビットとかフルスクラッチだもん。一体どれ程のタコが潰れたことか。

 

「じゃあ、素体はいいとして。改造コンセプトは?」

「コンセプトは既に決めてます。ズバリ! 『1人でなんでも出来るストライク』なのです!」

「なんでも、か」

 

 なんでも出来るストライカーパックは、あるにはある。

 例えばマルチプルアサルトストライカー。あれは中遠近全距離に対応できる。燃費は終わってるけど。他にはノワールストライカー、複合兵装I.W.S.Pの発展型にして完成形。こちらは中近距離に限定されるが、高い戦闘能力を持つ。

 だが、それらを差し置いて『なんでも出来るストライカーパック』をお望みなのだ。つまり…………。

 

「城でも落とせるようなストライクってこと?」

「城どころかジャブロー1つ単騎で滅ぼせるような機体なのです」

「えぇ…………」

 

 大きく出たな、望みが高いのはいいことだけど。にしてもそんな大規模なものをご所望か。

 

「それ、バッテリー足りる? パーフェクトの比較にならないような追加バッテリー付けることになると思うけど」

「ニュートロンジャマーキャンセラー搭載型核エンジンを採用している設定にするのです。これなら理論上パワーダウンは起きないのです!」

「デスティニーは起こしたけど?」

「あの話はしない方がいいです」

 

 あっはい。すみませんでした。

 

「まぁそれはそれとして、なんでも出来る為に何を使うか決めないと。宙ぶらりんじゃ困るでしょ?」

「それもそうなのです……。でもどうすればいいかなんて……」

「大丈夫。ここはあらゆるガンプラが置いてある聖地、ガンダムベース。無いものは買えばいいんだよ」

 

 本当はリサイクルショップとかにあるパーツ単体でのバラ売りとかが1番コスパいいんだろうけどね。この際色んなガンプラに触らせるのもいい機会だと思うし。

 

「それで、今出せるお金ってどれくらいかな? 私はあんまり……」

 

 なんせ毎日GBN三昧のGBN廃人だ。バイトなど行ってるわけがない。

 

「あぁ、ざっと500万なら……」

「ごひゃくまん!?」

「あ、少なかったのです……?」

「いやいや十分過ぎるくらいだって!」

 

 セレブ舐めてた。マジか、このお嬢様。

 

「じ、じゃあ、パーツの買い足しは問題無さそう。よし、じゃあ制作開始!」

「おー! なのです!」

 

 もう隠す気ないね君。

 それからというもの、思いつく限りのことをした。腕にメガキャノンくっつけたり、かと思えばシールド(HGストライクから拝借。いやもう素体変えろ)に内蔵したり。1番驚いたのは、対艦刀は標準装備とか言い出したことだ。

 

「バッサバッサと薙ぎ倒す快感……! 忘れられないのです!」

「はぁ……」

 

 ということで、9.1m対艦刀はエールストライカーのような翼みたいな形でマウント。他にもアグニ(RGスカイグラスパー付属のもの)をつけたり、肩にガトリングとかビームブーメランとかつけたり、ブリッツの肩とかつけたり。はめようとしたらアンダーゲートだった、なんていうあるあるもあった。

 意外にも本体の改造はせいぜいモールドを追加したり肉抜きを埋めたりした程度で、私達のアイディアのほぼ全てはストライカーパックに集約された。

 そうして出来上がったのがこの…………。

 

「……『オールマイトストライク』、なのです」

「オールマイト、か」

 

 きっと何処ぞの少年漫画からつけたのだろう。安直だけどわかりやすくなんでも出来る感が出ていて、コンセプトに沿った良い名前だと思う。

 

「いいじゃん。私はこういうの好きだよ」

「……ふふ、ありがとうなのです」

 

 あぁ、ニヤけてるニヤけてる。私もなるわ、そういう顔。ネコ、すっごくいい顔してる気がするな。

 そういえば、配色はどうする気なんだろう。これから考えるとはいえ、もう5時前だ。そろそろ私も帰らないと親がやばい。

 

「あとは塗装だけだけど、もう遅いからサフだけ吹いて切り上げよっか」

「サフ、なのです?」

「サフっていうのはサーフェイサーのことで、主にガンプラについてる傷を確認したり、埋めたり、その上に塗る塗料が乗りやすくするための下地になる塗料のこと」

「へぇ、なんだか職人みたいでかっこいいのです!」

「えへへ、そうかな」

 

 ……なぜ私が照れるんだ?

 改造を済ませたオールマイトストライクをブロック毎に分解し、ペインティングスペースを借りてサーフェイサーを吹きかける。

 

「たったの200円で借りられるのは意外だったのです。てっきり1000円とか使うものかと……」

「私も格安だと思ってるよ。ほら、強く吹いて。無料だからって出し惜しみは無し!」

「わかったのです!」

 

 元のバラバラだった色がサーフェイサーのグレーで統一されていく。塗装する前のバラバラだった色も、改造したという手応えを感じて私は好きだ。そしてサフを吹いた後の色も、これからどんな色になるのかというワクワクが止まらなくなる。そして、塗装を済ませた後の理想の姿は、私の心を強く締め付けて離さないのだ。これがガンプラの本懐、ガンプラが取るあらゆる過程を主人である自分が何よりも楽しむ。それがガンプラへの敬意であり、憧れであり、最も尊ぶべきことなんだ。

 そのことを、煌めきに満ちたネコの瞳が証明している。

 

「じゃあ、塗装はまた後日。私の力が無くてもいいなら1人で、って感じで」

「はい、なのです。今日はとっても楽しかったのです! 今度はGBNで、完成したオールマイトストライクを見て欲しいのです!」

「うん。楽しみにしてるよ」

「じゃあ、また明日!」

「また明日」

 

 別れの言葉を返してから駅の改札を通る私は、後ろでダイバーシティの方へ、何個ものガンプラの箱が入った紙袋を揺らしながら走って行くネコの後ろ姿に気付かないフリをした。

 ここからは1人で、いや、2人だけの特別な時間が始まるのだから。

 

「……ゆっくり楽しんでくれたら、先輩も鼻が高いよ」

 




楽しむことこそが誇り。
次回はオールマイトストライクお披露目回!
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