ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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chapter3最終回、半分くらい前回のエピローグです


第49話「Q&A セカイの構造と悪魔の正体について」feet.M, A

「なぁ」

 

 ビリレメちゃん達がログアウトした後、アノマロが突然問いかけてきた。

 

「んー?」

「俺バトる意味あったか?」

「知らねー。まぁどうせ無理だろうけどワンチャンあったしね」

「はぁ…………」

 

 適当に返して、アノマロがため息を零す。

 正直言ってこいつに説得は無理だった。なぜならアノマロは、責任感の強さ故にレイメイちゃんの嫌う”大人”の枠組みに入る人間になってしまったから。

 でも、アノマロは人の心の構造がわかっている人間だ。そして、本質的に相手の本音を引き出すのが上手い。だからレイメイちゃんの本音を引き出してビリーヴちゃんが入り込みやすいように誘導させた。ちょっと狡いやり方だけど、レイメイちゃんのためには必要なことだと思ってやった。

 

「ま、結果オーライだしいいじゃないすか」

「そんなんでいいのかよ」

「あたし的にはバッチグー!」

「あっそ」

 

 アノマロは呆れたみたいに言うが、節々からは安堵の表情が見て取れる。こいつもこいつで、なんやかんや不安だったんだろうか。

 

「にしても、まさかビリーヴちゃん学校のこと覚えていたのは驚きだった」

「は?」

「いやさ、あの子記憶のほとんどは飛んでいたけど一部の”知識”だけは残ってたっぽくて。自分の名前とか、学校、その他諸々」

「あー、なんかカスミもシルヴィーのドローンを初見とは思えないくらいぶん回してたとか言ってたな」

「うん。きっと前のビリーヴちゃんは自分なりに足掻いたんだろうね、『せめてこれだけは残しておきたい』的な感じで」

「生後2ヶ月の癖に末恐ろしいな……」

 

 アノマロの言葉に共感するようにため息をつく。これは所詮あたしの希望的観測だったから2人には伝えなかったけど、きっとそういうことなのだろう。

 だからこそ、イチカちゃんの記憶が本当に何もかも消えてしまったのが悔しい。今でこそいい関係でいられてるけど、欲を言えば、学生時代の頃も覚えていてほしかった。

 

「それでだ、馬鹿ピンク」

「誰が馬鹿だ馬鹿ポニテ」

「これでレイメイも無事社会復帰ってとこだが、結局状況は何も変わってねぇじゃねぇか。これからどうすんだよ」

「そりゃレイメイちゃん達が過ごしやすい環境になるよう調整しますよ? 教育委員会……ひいては自治体とか運営とかにもビリーヴちゃんの話は通しておかないとだし」

「その交渉はともかくとして、過ごしやすい環境とかってのは? まさかノープランってことは無いだろうな?」

 

 苛立ちを包み隠さずアノマロが問い詰めてくる。

 

「無論、抜かり無し! この天才美少女カグラちゃんを舐めちゃいけないよ?」

「はよ言えカス」

「口悪ぅ。はぁ……、ま、1番手っ取り早いのは元凶の芽を潰すことだから、ひとまずいじめを先導してたうちの子を退学処分にするとこかな」

「…………エグ」

 

 出来ることならこういう手段は取りたくなかった。自分の教え子を自らの手で蹴落とすのを絶対に避けたいのは、教師として当然の理念だ。

 それでも、この世界には根本的に合わないピースというものは存在する。絵柄も、凹凸も、その何もかもが噛み合わないのであれば、それはパズルのピースとしては使えない。心苦しいけど、そういうものは排除していかなければならない。

 このあまりにも惨い世界の構造には、流石のアノマロも顔を歪めた。

 

「仕方ないよ。あの子は更生するとかの領域じゃない。職務放棄とか言われたらあたしはなんも言えないけど、あの子にはあの子にとっての最高の居場所があるはずだから。パズルとして組み立てられないなら、他所に退けておくしかない」

「まぁ、お前の仕事に口挟むつもりは無いからなんとも言わんが、説得は難航しそうだな」

「だろうね。ふざけんなって噛み付かれるのも、心無い言葉を浴びせられるのも覚悟してる。中学の頃に少しだけ戻るだけだし、規模もあの頃より全然小さいから──」

「カグラ」

 

 言い訳がましいあたしの言葉をアノマロが遮った。

 

「……サモネは良くも悪くも献身的な女だ。胸くらいは借りとけよ」

「っ…………、」

 

 アノマロの言うことは正しい。

 あたしは、もう一度あの時みたいな『自分を受け入れてくれない人間の言葉』を聞いて耐えられる保障ができない。だから、あたしのことを愛してくれる最愛の人を頼るのはとても自然だし、あたしも元よりそうするつもりだ。

 でも、だとしても、ここで素直に頷くのは”あたし達”らしくない。

 

「……なにそれ。セクハラですか?」

「人が折角心配してやってんのになんだお前」

 

 うん。これが1番いい。

 カグラ(あたし)アマネ(こいつ)は、こういうのが1番だ。

 そう思ったあたしは、思う存分アノマロと会話した。

 

────────────────────

 

「晶ユウヘイ…………」

 

 画面をスクロールして、気になった記事をクリック。表示されたのは、とあるブログライターのGPDでの取材記事の様だった。

 カグラの思惑に協力してやってから数日、特に何も無く穏やかな生活が続いている。とはいえ、GBNではブレイクデカール全盛期の頃のようにマスダイバーが依然多くいる状況で、今回はスタルが顧客を絞っている分その暴れ具合は凄まじい。的確にゲームのことを何も考えていないやつを選んで売っている。

 小賢しい真似はさておき、そんなスタルの尻尾を掴むために俺は今情報収集に明け暮れている。飯綱ヒカリから得たスタルの本名と、試作の新型フェイクデカールのデータ。デカールは運営に提出し、修正パッチの開発を急いでもらっている。そして俺はスタルについて調べ上げ正式に逮捕状を作らせるための下準備を行っている。

 

「GPデュエルワールドチャンピオンシップ、第八回優勝晶ユウヘイ……。使用ガンプラはRGサザビー。そのシステムへの深い理解度からなる荒々しい戦い方を好む…………ね」

 

 ログを追うと、サザビーが様々なガンプラと対峙している様子が見て取れる。最初は全塗装だったガンプラも最終戦では塗装がボロボロに剥がれ落ち、下地ごとえぐり取られたズタズタのプラが露出している。そして最後はコクピットが頭部であることをブラフに使った不意打ちで勝利。トロフィーを貰っている青年の顔は喜びに満ち溢れていた。

 

「続く第九回世界杯ではアジア大会にて出場権獲得ならず、彼を抑えて世界杯進出、そして優勝をもぎ取ったのはガンダムAGE-1レイザーを駆る『キスギ・キョウヤ』。その後第十回、最後の大会となった第十一回でも彼に適うことは無かった…………」

 

 続いて表示したログでは、晶ユウヘイのバルギルがガンダムAGE-1相手に手も足も出ず敗北している様子が映し出されている。ファンネルは読み切られ、体格差をものともしないヒットアンドアウェイの立ち回りで撹乱、最後はファンネルの射線にライフルを置いてしまうミスを誘発させられ、一瞬の隙が生まれたところを3枚切りにされさらに一刀両断。6つのブロック状になったバルギルは凄惨な姿のまま爆発した。

 URLの下を見ると、トロフィーを片手に手を振っている様子の制服を見に纏った青年の写真が貼られていた。

 

「なるほど、ここか」

 

 俺は簡単な目星を付け、口元を歪ませた。このキスギ・キョウヤは現在のGBNにおいても絶対王者の名を譲らないクジョウ・キョウヤのこと。つまり、自分を散々負かしておいて別ゲーに逃げたクソ野郎というのがユウヘイ視点でのチャンピオン。そして、そのチャンピオンが移籍した自分の栄光を穢す世界が、ユウヘイ視点でのGBN。

 そりゃあ恨むわ、という気持ちと馬鹿じゃねぇのという気持ちの半々だ。こいつは結局ただの逆恨みだけで動いている。しかもその上、たったそれだけで1人の少女の人格すらも歪めた。

 

(世間的にも、個人的にも、殴りてぇやつだな)

 

 願うことなら一発では足りない、もっと何度も奴を殴りつけてやりたい。とはいっても、物理的にやったところで虚しいだけ。

 この世で誰かを陥れたいとき、または復讐を誓ったとき、最もベストなのはその人間が必死に築き上げた結果や名誉を叩き潰すことだ。金持ちを恨むなら資産を壊せばいい。学校で嫌いな奴がいればそいつよりも成功すればいい。

 

 俺はそうしてきた。親への復讐は、完璧な形で完成した。

 やったことは、妹のイチカをカグラとくっつけたことだけ。そこから雪崩るように親が俺を無視して作り上げたイチカは音もなく崩れていった。イチカはカグラに恋をした。イチカはカグラを第一に考えるようになった。イチカは親よりもカグラを優先した。

 少し共依存が行き過ぎていた気はしたが、寧ろ好都合だった。同性愛なんて非生産的なものをあの親が許すわけが無い。どうせ俺のおこぼれで交流ができたクロートとくっつけるつもりだったんだろう。だから俺はそれをぶっ壊した。

 

 そしてあの日、イチカは記憶を失って目を覚ました。

 

『覚えてることは?』

『…………なにも』

『日本語が話せるなら書けるだろ』

『…………わからない。うで、あんまりうごかないから』

『そうか。なら動けるようになったら試すんだな、それじゃ』

『まって』

『あ?』

『………………かぐらさんのこと、おしえて』

 

 長い眠りから覚めたばかりで呂律の回っていないイチカは、まず最初にカグラに興味を持った。

 あのとき。そう、あのときのイチカは頬が若干赤らんでいたのを覚えている。

 あいつの心は、未だカグラに恋をしていたままだった。例え名前すら忘れても、その想いだけは潰えることの無い不朽のものであった。

 

 ────ざまあみろ。

 

 俺は密かにそう思った。

 両親のことは綺麗さっぱり忘れていて、もうあいつを縛り付けることはない。だがカグラはそうじゃない。どれだけ白紙に戻っても消えることのない極彩色、それがあいつにとってのカグラだった。

 イチカは両親よりもカグラを優先した。カグラの方が強く心を染めていた。その事実は正しく、俺の世界を染め上げた。

 

「お兄ちゃん、入っていい?」

「入ってもいいが手短に済ませろよ」

「うん。お夜食持ってきただけ」

 

 ドアの開く音と共に振り向くと、そこにはおにぎりを乗せた皿を持っているイチカが立っていた。イチカは俺の隣に向かって机にそれを置く。

 

「具、全部違うから何が出るかはお楽しみ」

「3つも用意するとか暇なんだな大学生は」

「だって志望の探偵学校合格圏内だし、それに必要分をキープしてれば誰だって合格できるよ」

「全人類キープできたらこの世に偏差値なんて概念はないんだろうな」

「もう、お兄ちゃんはすぐひねくれたことを言うんだから」

 

 イチカの控えめなお叱りを聞きながら、彼女の作ったおにぎりを齧る。中に入っていたのは昆布で、独特の食感と強い塩味が口に広がった。

 

「──大体、お兄ちゃんはカグラさんに厳しすぎ! 例え兄でも自分の恋人が暴言吐かれてるのを見るのは嫌なんですけど!」

「はあ、そりゃあ小舅なんだし嫌味の1つ言いたくなるだろ」

「え」

 

 俺の発言にいきなりイチカが固まる。

 

「こ、こじゅうと……?」

「あ? 今にも籍入れそうな勢いだろお前ら」

「えっと……お、お兄ちゃんが小舅ってことは、か、カグラさんは、私の…………!」

 

 カグラの花嫁姿でも幻想したのか、イチカの顔がみるみる赤くなる。あいつのドレスとか見たくねぇなと思いつつおにぎりを齧って咀嚼する。

 

「わ、わたっ、私! 勉強してくるね!」

 

 大慌てでそう言いながら、イチカは部屋を出ていった。

 

「…………さっきの発言どこいった」

 

 2つ目のおにぎりを手に取る。食べてみると、中に入っていたのは高菜だった。

 




小悪魔教師と見据える探偵、その2人の物語は、これからも続く

chapter3はこれにて終了、次回からは最終章(になったらいいな)、集大成となるchapter4が開始!

chapter.3完結!この段階で一番好きなキャラクターは?

  • レイメイ/紅月ミナ
  • ビリーヴ
  • コネコ/小南ネコ
  • カスミ/霧雨クロート
  • カグラ/水無月カグラ
  • アノマロカリス/小泉アマネ
  • サモネ/小泉イチカ
  • ヒカリ/飯綱ヒカリ
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