ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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あつすぎてやる気が出ねえ
お久しぶりです


Chapter.4「電子世界と鬼武者、その行方」
第50話「新たなる剣、なのです!」feet.N


 着替えを終えて、廊下を歩く。

 今日はもうさっさと寝てしまいたい。定期試験があるけど、有志連合戦が控えているから勉強は気分が乗らなくて、結局授業内容を軽く見返したまま問題集に手をつけられていない。ゲームに気を取られて勉強が出来ないとは私も地に落ちたものだと思う。

 

「あれ、開いてる……?」

 

 ふと、とある空き室のドアが開けられているのに気付いた。この時間帯は使用人はもう帰ってるはずだし、部屋の掃除は使用人が頻繁に行うけど毎日ではないし、大概は私が学校に行っている間に済ませられているはずだ。

 興味本位で中を覗いてみると、お母さんが誰かと電話しているのが見えた。

 

「……ええ、頼まれた分はちゃんと送っておくわ。だからGBN? っていうのかしら? あんなゲームさっさと滅ぼしてしまいなさい」

「え…………?」

 

 思わず声が漏れた。慌てて口を塞ぐが、聞こえていないようで話は続いていた。塞ぐ手を下ろしてから、お母さんの言葉を振り返る。

 

 GBNを、滅ぼす。

 

 要約すれば、お母さんはそう言っていた。ありえない話ではないと思っていたけど、自分の親だからか勝手にありえないと割り切っていた。

 お母さんは、マスダイバーに加担している。

 スマホを見なきゃわからないけど、GBNを滅ぼすためにはそれが1番手っ取り早い。でもまさか、お母さんが。そういう思いは絶えず湧き出てくる。

 

「そう、わかったわ。それじゃ」

 

 お母さんが電話を切った。そのタイミングで、私は開きかけのドアを開けて部屋に入る。

 

「お母さん」

「っ……、ネコ? 一体、どうしたのかしら」

「今誰と話してたんですか? GBNを滅ぼすとかなんとか、聞こえてきたのですけど」

 

 こういうのは、普通、尻すぼみして黙ってしまうものだろう。でも、私は違う。進まなきゃいけない。だから、踏み込む。

 

「一体どういうことなんですか。私がGBNをやってることを承知で、どうして──」

「貴女が悪いのよ」

「ッ……!」

 

 本当に自分の母の声とは思えないような、低く冷たい声が響く。私は思わず息を飲んだ。

 

「貴女がゲームなんかにうつつを抜かして勉強を怠るから、私がわざわざこんなことにお金を使わなくちゃいけないの」

「そ、それって、どういう……」

「フフ、全く馬鹿よねぇ。大人になってもロクに仕事もしないでゲームゲームって……笑っちゃうわ。でも馬鹿には馬鹿なりの使い方があるものよ」

 

 お母さんはニヤリと笑って私を見てくる。その邪悪とも言える笑みがたまらなく怖かった。肉親であることを忘れてしまう、それくらいには。

 

「GBNさえなければ、貴女はまた勉強してくれる。将来に役立つことをしてくれる。生産性のないものを捨てさせて、自分の未来のために進んでくれると思ったの。だからあんなもの壊してやるのよ」

「…………間違ってます。あれにはみんなの希望が詰まってる。生産性とか、将来とか、そういうものの話じゃなくて、あれはみんなの”大好き”だって思いを実現するものなんです! だから、こんなことやめて──」

「それで貴女は未来をより良いものにできると思ってるの?」

「ッ…………!」

 

 私が、恐怖に支配された脳を必死に動かして出した渾身の反論。それを今、否定された。

 理想と、現実、その擦り合わせ。脆いのは、理想の方。

 何も言葉が出てこない。何を言えばいいのかわからない。

 

 だから私は、その場から走り去った。

 

────────────────────

 

「ガンダム、ベース…………」

 

 家にあった教科書とノート、制服、少しの着替えは買い足すとして、問題はどこに泊まるか。宛もなく飛び出してきてしまった私は、いつの間にか横浜ベースに来ていた。

 財布はあるから何か買えるけど、今はガンプラよりも寝泊まりするところだ。ホテルは近くにあるだろうけど、そう何度も泊まる訳にはいかないし、誰か知り合いの家にでも…………。

 

「ネコ?」

 

 聞き覚えのある声がした。振り返ってみると、ガンダムマークIIの箱を持ったクロートさんが立っていた。

 

「……なんか探してる?」

「あ、いえそういうわけでは…………クロートさんは、ガンプラを買いに来たのです?」

「まぁ、そんなところだけど……」

 

 き、気まずい。

 いつもは遠慮なく会話できるけど、今回はここにいる理由が理由なのでなんとなく意識してしまう。

 

(でも、頼れる人なんてこの人しかいない!)

 

「く、クロートさん!」

「なっ、なに?」

「あの、その……」

 

 1歩、踏み出す。

 さっきしたように、突き進む。

 

「と、泊めて、ください!」

「………………え!?」

 

────────────────────

 

「ど、どうぞ」

「お、おじゃまするのです…………」

 

 勢いで言ってしまったけど、クロートさんなら匿ってくれると思ったのは本当だ。それに、こうして受け入れてくれたから、結果的には万々歳。

 クロートさんの家は一人暮らしにしては結構大きい気がしたけど、とても1大企業の御曹司とは思えない質素な一軒家だった。それなのに管理が行き届いているのか、それとも新築なのか、綺麗な外観と内装だった。

 

「ひ、広くないのです?」

「んまぁ、4LDKだし」

「広っ!?」

「持て余してるわけじゃないから。ビニール敷いてる塗装部屋、防音冷暖房バッチリの仕事部屋、寝たり読書したりの寝室と、あとはお客用の空き部屋。ネコはそこで寝泊まりしてもらうけどいい?」

「大丈夫なのです。けど、本当によかったのです?」

 

 受け入れてくれたのは嬉しいけど、なんとなく不安は残る。迷惑じゃないか……とか、そういうことを感じてしまう。

 

「よかったって?」

「だってクロートさん忙しそうだし、それに私…………女だし」

「ッ……、そういう意識させるようなこと言うな」

 

 私だって我慢してる。でも、好きな人同士が同じ屋根の下……なんて、否が応でも意識してしまう。

 

「……とりあえず、リビングへどうぞ」

「は、はいなのです」

 

 リビングのソファに座って、大きく息をつく。

 今日はなんだか疲れた。学校は毎日疲れるものだけど、まさかお母さんがマスダイバーと繋がっていたなんて思わなかったし、家出した先でこの人の家に来ることになるとも思わなかった。

 早く寝てしまいたいけど、睡魔は全く来ない。とりあえず、肩の力を抜いてゆっくりできる時間が欲しい。

 

「それで、泊まるのっていつまで? 整理ついてから?」

「うーん……、それでもなんだか帰りづらいのです」

「そっか。同棲はまだだけど、いつでもいていいから」

「ありがとうなのです」

 

 ソファに備えられているテーブルに麦茶を置いたクロートさんが話しかけてきた。

 この人はすごく優しい。優しいから、きっと多くのことを抱えてしまう。この人の支えになれたら、どんなにいいことか。

 

「学校は? 制服とか教材とか」

「それは持ってきたのです。学校はここから通おうと思ってて」

「ふ、服とかは?」

「…………どこかで買うつもりなのです」

「ならいいけど、あの、アレとかソレとか見るのちょっとアレなので…………教えるから洗濯は自分でして欲しい……です。干すのも、部屋でお願いします」

「わ、わかったのです」

 

 まぁ、クロートさんも現役女子高生の下着を見るのは抵抗があるだろうし、それくらいは弁えてるつもりだ。それに洗濯ぐらい1人でもできる。

 

「最後にひとつ」

「はい、何なのです?」

「ガンプラは?」

「…………………………あ」

 

 すっかり忘れてた!!

 確かに、オールマイトストライクはそのままだったのです! ダイバーギアは新しいのでログインすれば大丈夫だけどガンプラがないと有志連合戦に出られない!!

 

「ど、どどっ、どうしましょう…………!」

「落ち着け。まずは素数を数えて心を鎮めよう」

「え、えっと、2、3、5、7、11…………!」

「よし落ち着いたな」

「はいなのです!」

「じゃあ次は夕飯を食べよう。せっかくだし、ネコが好きなの作るよ」

「え、作るのです!?」

「金かかる趣味と仕事してるから生活費切り詰めてんの。フリーだから経費なんて概念無いし」

「た、大変なのですね……」

「超大変だけど、オレ自身料理作るのは好きだし。というか、なんかを作るのが好き」

 

 そう言ったクロートさんはまな板と包丁を用意して、食べたいものを聞いてくる。

 特に好き嫌いはないけど、強いて言うなら今日はお肉を食べたい。

 

「じゃあ、ローストビーフで」

「そんな高級品を!?」

 

 驚かれた。

 

「え……? 結構頻繁に出てくるのです」

「金銭感覚!! …………悪いけど、今ローストビーフとか作れそうな肉無くて、というか買い物行かなきゃならなくて……」

「え、じゃあなんで横浜ベースにいたのです?」

「今日も食材買うつもりだったんだよ。でも、いつの間にか、野菜じゃなくてガンプラを吟味してたんだよ……!」

「わあ…………」

 

 この人、今日もって言った。じゃあ何回もやってるってこと? それはなんというか、こう、重症だ。

 

「んー…………じゃあ、今日は手軽にパスタ作ろう」

「手軽な割には肯定多くないのです……?」

「え、パスタって手軽な部類じゃない?」

「え?」

「え?」

 

 もしかして、私がおかしいのだろうか。

 

────────────────────

 

 プロ並だった。

 クロートさんの作るパスタは、絶品という他なかった。ナポリタンなのに気品があるというか、隠された名店のような味がした。

 それで現在は、ガンプラの塗装部屋に置かれている積みプラから私のガンプラを選んでいるところだ。

 

「どれがいい?」

「うん、やっぱり、ストライクの次といえばフリーダムなのです!」

「やっぱり?」

「はいなのです!」

 

 クロートさんは確認を取ってからガンプラの山からフリーダムを取り出そうとして、崩れかけたところを私が支える。悪戦苦闘しながらもフリーダムをなんとか取り出して、制作開始。

 

「本当は、ストライクよりフリーダムの方が好きなのです」

「そうなの? どっちも甲乙つけ難い、みたいだと思ってたんだけど」

「もちろんストライクも好きですけど、なんというか、自分1人が何も出来ないと、言われているような気がして」

「…………オールマイトストライクのコンセプトはそこから?」

 

 私は頷いて、組み立てながら話を続ける。

 

「……フリーダムは、沢山悩んで、嫌なことも沢山あって、その果てで辿り着いた、守りたいもののために戦うキラにとっての自由の翼。私はそう思ってるのです」

「なるほど…………」

「私も、沢山悩んでます。嫌なこともあるし、自由になれてるとも思ってません。でもいつか、羽根を伸ばせたらって、あなたとなら、それが叶うかもしれないって思ったのです」

「お、おう…………」

 

 隣に座っているクロートさんの横顔を見ると、手で口元を抑えて耳が赤くなっていた。こういう瞬間がたまらなく可愛いのだけど、あえて言わないでおく。

 

「さてオレも何かつく…………あ、ネコ電話鳴ってる」

「え?」

 

 スマホを取って、電話の相手を確認する。

 

「お、お父さん……?」

「ネコの?」

「は、はいなのです。出張で家を空けてたのですけど…………」

 

 出るのには抵抗がある。家出した身である以上、ここであっさり電話に出てしまえば面目が丸潰れ。だからといって出ないわけにもいかない。お母さんはともかく、お父さんを不安にさせたくはない。

 

「…………」

「ネコ。出たら」

「でも…………」

「事情をちゃんと話せばいい。ネコは理由もなく家を飛び出したりしないってわかってるはずだから」

「…………わかったのです」

 

 重い指を動かして、着信ボタンを押す。耳に当てると、お父さんの『もしもし?』という声が聞こえた。

 

『今出張から帰ってきたんだが、こんな遅くまでどこに行っているんだ?』

「……もしもし、お父さん、あのですね──」

 

 今日あったこと、お母さんがマスダイバーと繋がっていて、GBNを壊そうとしていたこと。彼らに資金を供与していたこと。そして家を飛び出した先で、クロートさんに保護されたこと。それら全てをクロートさんにも聞こえるように話す。一瞬チラリと見た彼の表情は、複雑にしかめていた。

 

『そんな、あいつが……!?』

「私も、そう思いました。でもお母さんはもう認めちゃってて……」

『……わかった。お父さんがどうにかする。霧雨さんにもよろしく伝えておいてくれ』

「どうにかって、どうするんですか……?」

『正直、妻の罪からは目を背けたい気持ちはある。だがそれで娘が苦しむのは耐えられん。だから、俺なりに調べ上げてきちんとした理屈をつけて、あいつに反省してもらうしかない』

「…………お父さんは、それでいいんですか?」

『さぁね。だが俺ももう歳だからな、俺のわがままよりお前ら若者の幸せを取りたいんだよ』

「っ……、ありがとう、ございます」

 

 お別れの言葉を言ってから電話を切る。

 よかった、お父さんは私の味方をしてくれるみたいだ。それだけで私は安堵の気持ちで満たされた。

 クロートさんも、この事に安心しているみたい。本当に、よかった。

 

「大丈夫そう?」

 

 改めてクロートさんが確認を取ってくる。

 

「はい、お母さんのこと、調査してくれるって」

「そうか。じゃあアノマロ辺りでも紹介しておくかな」

「え、いいのですか? アノマロ先輩も忙しそうなのに」

「依頼3つ掛け持ちしてても余裕の表情でゲーセン行ってたし平気だろ」

「そ、それはどうなのです…………?」

 

 あの人の勤務態度が少し気になったけど、今はとりあえずほっとした。私は放置されていたフリーダムの制作に取りかかる。

 

「よし、じゃあ続き、やるのです!」

 




次回、煩悩と優しさが熾烈な戦いを繰り広げる!
chapter4はほぼっほぼ全員視点でお送りします

キャラ解説ver.4

コネコ/小南ネコ
フォース『ビルドリバイバル』のメンバー。
始めたばかりの初心者だが、スピード上達術によってメキメキ実力を付けている将来有望株。
クロートとはリアルで婚約者の関係だが、本人がまだ高校生なので恋のABCは差し止め中。
黒を基調とした上物のドレスを着ており、髪は黒く長い清楚系。そして猫耳。お嬢様な見た目だが中身はオタクで「なのです」が語尾につく特殊なキャラ。

カスミ/霧雨クロート
フォース『ビルドリバイバル』のメンバー。
リアルではイラストレーター兼ソングライターとして活躍中で、現在はガンダムの新作アニメシリーズのキャラデザや主題歌の作曲を担当している。GBNはインフルエンサーとして、バトルに勝てるガンプラの制作術など様々な企画を行っている。
過去の学生時代や有志連合戦での出来事から自己評価がかなり低く、それでも周りに支えてもらって持ち直した。そしてコネコと出会ってからは日に日にメンタルが回復しつつある。
金髪のショートカットで緑色の眼を持ち、白く丈の長いパーカーを着ている。あまりのイケメンにリアルでの容姿を疑われるが、髪が若干長い以外の差異はない。

chapter.3完結!この段階で一番好きなキャラクターは?

  • レイメイ/紅月ミナ
  • ビリーヴ
  • コネコ/小南ネコ
  • カスミ/霧雨クロート
  • カグラ/水無月カグラ
  • アノマロカリス/小泉アマネ
  • サモネ/小泉イチカ
  • ヒカリ/飯綱ヒカリ
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