ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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今日は童貞かわいいクロートくんとイケメンカッコいいクロートくんが両方見れる神回だぞ


第51話「VIVID」feet.K

 小南ネコが家にいる。

 ネコが家にいる。

 コネコが、家にいる。

 

(失せろ、失せろ煩悩……! 児ポで逮捕は洒落にならん!!)

 

 オレは今、必死に自分自身の邪な気持ちと格闘していた。

 勿論そのつもりはないし、無論そのつもりはない。大事なことだから2回言った。合意の上ならOKとか、バレなきゃ犯罪じゃねぇとかそんなことではない。やった時点が心の中の何かが音を立てて崩れる気がするのだ。

 

 落ち着け、落ち着く。

 とりあえずなんかちょっとアレなASMRを聞いて心を2次元に変換して落ち着くんだ。

 よし、落ち着いた。寝よう。

 別にさ、そういうわけじゃないんだよ。そういうことをしたくないって言えばまぁ人間の生理的欲求的に考えて嘘になるんだけどね? そうじゃねぇだろ。愛だのなんだのってのは身体の関係じゃなくて心の関係なわけで。決してそういう邪な気持ちで擦り寄っていいものじゃ────

 

────────────────────

 

 午前、朝5時30分。

 どう足掻いてもオレはこの時間帯に起きる。

 

「んあ…………」

 

 小さく欠伸をしてから身体を起こす。洗面台に行って、顔を洗い、歯磨きをして、台所に立つ。

 

(今日は、うーむ…………コッペパンにレタスとウインナー置いてホットドッグ風にしよう)

 

 我ながらナイスアイディア。その思いと共にウインナーを2本取って油を敷いたフライパンに並べる。

 ネコの分も作ってから一足早く食べ、Tシャツとスウェットを洗濯機に放り投げてジャージに着替える。外に出て、目標を指差す。

 

(駅まで走って、スーパーで買い物して帰ろう)

 

 よし、固まった。

 軽いステップを踏んで走る。

 時刻は朝6時30分。起きてから1時間。駅まで歩いて10分だから、走れば大体5,6分といったところ。

 

(…………開いてなくね?)

 

 もし開いていなかったらそのまま帰ろう。元より健康維持と自律神経の安定と、仕事のアイディア出しのためのランニングだし。

 

 予想通り、スーパーは開いていなかった。なのでコンビニに寄ってコネコの分と一緒にジュースを買ってきた。無難にりんごジュースにしてしまったが、大丈夫だっただろうか(ちなみにオレはメロンソーダ)。

 

「ただい、ま────」

 

 リビングのドアを開けたその瞬間、目に映ったのは…………。

 

 ネコの、下着姿だった。

 

「あ…………、え、えっと、これはその、着る服がなかったから借りようと思ったけど勝手に借りる訳にはいかなくて……その──!」

 

 できるだけの力を込めてドアを閉じる。そして足元にジュースを置いてから壁に手をつけ、思いっきり額を打ち付ける。

 

「ひぃっ!!?」

 

 ネコの悲鳴が上がった。でも申し訳ない、こうでもしないと本当にもうどうにかなっちゃうから。釘を打ち付けるように、理性を打って本能を抑えつけなければ、手遅れになってしまう。

 

(畜生、畜生!!)

 

────────────────────

 

 着る服がなかったとのことで、とりあえず予備のジャージを貸した。オレが170cmでネコが156cmらしいので全くサイズは合っていないが、ないよりはいい。

 

 ………………いや、これは逆によろしくないかもしれない。もしかしなくてもこれ彼シャツならぬ彼ジャージじゃねぇか!!! 誰だよこれ選んだやつオレだよ!! どう足掻いてもこんなんだよちきしょうめ!!!

 という心の叫びはため息として吐き出して、現在はネコと共に仕事部屋に来ている。

 

「すごいのです。機材とか楽器とか、色々あって……!」

「まぁ、仕事する部屋だし機能性重視だよ」

「私達が見聞きしてきたものは、ここで作られるって考えると、ワクワクが止まらないのです!」

「ど、どうも…………」

 

 賞賛の言葉はSNSのリプライで沢山頂くけど、直接言われるのはあまり慣れてない。流石にカグラは付き合いが長いから慣れてるけど、ネコに褒められるのはなんというか、滅茶苦茶照れる。

 

「それよりほら、ここ座って」

「え!? いいのです!?」

「いいから」

 

 ペンタブが置かれている机にネコを誘導して、ゲーミングチェアに座らせる。のそのそと預かった猫のような動きで近付いて、座れば最後、心ゆくまでリラックスしていた。

 

「おお、家のソファがこのサイズに凝縮したみたいな……!」

「それ固くならない?」

「確かに、なのです」

 

 閑話休題。

 パソコンを点けて、ささっとペイントソフトを起動。フリーダムのガンプラの画像をキャプチャして、ペンをネコに渡す。

 

「はい。フリーダム、改造するならその案をここに描いて。自由に使っていいから」

「座らせてもらうだけでも有難いのに、機材まで使わせてくれるなんて……!」

「やってよ」

「は、はいなのです!」

 

 恐る恐るという様子でペンを握り、ゆっくりと線を引いていく。イメージは固まっていたっぽいけど、緊張で筆が進んでいない。

 少しでも和らぐように、ネコの頭を軽く撫でる。

 

「っ……、ふぇ…………?」

 

 あ。

 これは、不味いのでは…………!?

 

「……あっ、ごめん! 嫌だった!?」

「い、いえ、そういうわけじゃなくてビックリしたというか…………」

 

 ネコの顔は茹でダコみたいに真っ赤で、耳まで染まっている。

 アカン、マジでアカン。自分から煩悩を払おうとかやっといてこのザマかよ!?

 

「あー、えっと…………続けてください」

「は、はい…………」

 

 7年ずっと苦楽を共にしてきたこの部屋に、初めて居心地の悪さを感じた。

 

 数時間後。

 

「で、できたのです」

「……できた? ちょっと見せて」

 

 さっきのことは互いに棚へと叩きつけ、彼女の描いた理想のフリーダムを見てみる。

 機体カラーリングはワントーン落とされていて、サイドアーマーのレールガンが脚部に移動されている。そしてメモ書きで砲身からビームサーベルが発生すると書かれているので、レールガンではなくビーム砲になっているのだろう。

 そしてパラエーナ砲がウィングユニットから外され、背部にヴェスパーのように取り付けられている。

 

「……なんでパラエーナの位置変えたの?」

「翼に格納したところでハイマットモードだと意味無いし、なにより可動域的に考えてこの位置にしたのです」

「なるほど百里ある」

 

 何度考えてもあの配置おかしいだろって思ってたし、これは初心者なりに生存力を上げるための手法かな。

 

「それで、空いた翼の間には武装ラックを設けて、対艦刀やビームバズーカを付けるのです。そしてオールマイトストライクに合わせて赤青を反転させれば…………!」

「………………デスティニーだな、これ」

「デスティニー、なのです…………」

 

 ネコが描いたフリーダムは総評すると、なんというか、フリーダム版デスティニーというか、SEEDという作品のガンダムをいい感じに混ぜたみたいな、そんな感じに見える。脚サーベルとか、カラーリングとか。

 

「…………いいじゃん、自由と運命のマリアージュ。正義の要素も入ってるし、そういうのアニメ好きっぽくていいと思う」

「本当なのです!?」

「うん。オレはこういうの好きだけど」

「じゃあ、こんな感じで行くのです!」

 

 フリーダムの改造案がこれで決まったが、最後に決めるべきことが1つある。

 

「それで、名前は?」

「名前、なのです?」

「こいつの名前、ネコの自由に付けなよ。ネコのガンプラなんだし」

「わかったのです。でも、簡単に思い浮かばないのです……」

「そんな時はこいつに秘めた思いとか、作る要因とか、きっかけとか、関連することを名前にしてみればいい」

「なるほど…………」

 

 ネコはしばらくうんうんと唸って考え始めた。画面を凝視したり、加筆しようとしてやめたり、色々とアイディアを考えている。

 

「…………リベリオン。『フリーダムガンダムリベリオン』」

「リベリオン」

「ガンプラを作るようになったのも、オタク趣味にハマったのも、なんとなくお母さんへの反抗だったのかなって、思ったのです。だから、リベリオン」

「フリーダムリベリオンじゃなくて、あくまでもガンダムがつくんだな」

「コズミック・イラの世界では、ガンダムは戦いを引き起こす引き金にも、止める鍵にもなった存在なのです。不条理に包まれた世界を変革する存在……リベリオンと同じような意味で、ガンダムの名を付けたのです」

「…………そうか、いいセンスしてる」

「ありがとうなのです! それで、聞きたいことがあるのですけど……」

「え?」

「クロートさんは有志連合戦、変わらずルシファーで行くのです?」

 

 唐突にオレに問いかけてきた。

 別にルシファーを投入しても戦う上で不足は無いと思う。でも、答えはNOだ。

 

「……いや、新しいので行く。これ」

 

 スマホを点けて、とある映像を映す。

 

「これ、新作アニメのPV、なのです?」

「情報公開されてたはず。この主役機を作ろうかなって」

「確かに頑張れば作れなくもなさそうですけど、オリジナルをこんな短期間で作るのです!?」

「いや、もうほとんどできてる。あとは塗装して仕上げるだけ」

「す、凄すぎるのです……!」

 

 遥か未来、外宇宙へと移民した人類の話を描いた新作アニメシリーズ、『機動戦士ガンダムARK』。その主役機、ビビッドガンダムは、初代ガンダムの要素を踏襲しながら、外宇宙の民が捕縛したフェネクスから得た技術であるサイコフレームを解析・発展させた、『コスモフレーム』を全身に採用した機体。加えてストライクやGセルフのような換装ギミックを有しており、様々なオプションを換装して戦うのが主戦法だ。

 BEYOND GLOBALのガンダムをベースに色々とビビッドガンダムの要素を加え入れて再現している。今は一通り出来上がって仮サフの状態で、やりかけの傷埋めが終わったら本塗装して仕上げるだけ。簡単に言うけど、割と時間がかかる。

 フリーダムの改造案を写真に納めてから塗装部屋に行き、未完成のビビッドガンダムを見せる。ネコは齧り付くように見て時々感嘆するようにため息をついている。

 

「…………本当に凄いのです。けど……」

「けど?」

「なんか、物足りない気が」

「そう? 確かにアタッチメントは何も無いけど」

「そうじゃないのです。なんというか…………”カスミさんらしさ”がないというか」

「え?」

 

 反射的に声が漏れた。

 ネコはオレのペンネームを出して違和感の正体を説明しようとしている。でも、何処かアバウトで全然わからない。

 

「オレらしさ…………たって、もうほとんど出来ちゃってるし」

「……カラーリングだけでも、オリジナルにしてみたらどうなのです?」

「うーん…………となるとサフの段階から変えないと」

 

 自分自身を表現するクリエイターとしては致命的だが、オレには”自分らしさ”というのがよくわかっていない。

 絵を描くときは、そのイメージに合わせて。

 曲を作るときは、コンセプトに合わせて。

 ガンプラを作るときは、設定に忠実に。

 そうやってやってきたから、そのうちのどこに”自分らしさ”が潜んでいるのかわからない。わからないけど、それが個性であるならとそのままにしている。

 

(…………自分らしさに囚われても意味ないしな)

 

 だから難しい。何かを作るということは。

 

「クロートさん」

「な、なに?」

 

 ビビッドガンダムを見つめていると、ネコから声をかけられた。ネコの方を向くと、彼女の顔がすぐそこにあった。

 

 その唇が、オレの左頬に触れる。

 小さくリップ音が鳴って、離れる。

 

「………………!?」

 

 声を失った。

 対してネコも、その顔が赤い。

 

「……き、キスはキスですけど、頬のキスは挨拶の意味なのです! だからセーフ! セーフなのです!!」

「い、いや何も言って──」

「クロートさんはいつもいつも考えすぎなのです! もっと好きにやっていいと思うのです!!」

「ね、ネコ……?」

「これはビビッドガンダムであって違う! カスミさんの、クロートさんのガンプラなのです! だから私に言ったみたいに、クロートさんはクロートさんらしく、自由にガンプラを作ってください!!」

 

 頭を打たれたような思いだった。

 耳が痛くなるような言葉なのに、柔らかく包み込まれて、確かな感覚と共に同化していくような、そんな言葉。

 一度唾を飲み込み、キスされていない方の頬を叩く。

 

「…………、わかった。急ごしらえだけど、こいつをただの再現じゃないオレ専用機にする」

「クロートさん……!」

「将来の嫁の言葉だし、優先したい。それに、これで自分の凝り固まった何かが取り出せるなら、って」

「ッ…………、フリーダム作りながら、応援するのです!」

「うん。オレも」

 

 2人でジャンクボックスを漁る。思い思いのパーツを探して、無ければ作って、気付けばオレのはほぼフルスクラッチ。

 そんな行き当たりばったりだけど悪くない、寧ろ良いとも思える時間。それを注ぎ込まれて生まれた2つのガンプラは、とても輝いて見えた。

 

「…………フリーダムガンダムリベリオン」

「…………ビビッドガンダム・ゼノ」

 

 赤い翼と大剣を持った機体と、6つのコンテナを持つ黒い機体。

 第4次有志連合戦、そのリベンジ戦に挑むには、あまりにも頼もしい顔付きをしている。

 




次回、ネコとクロートが備える一方、ビリーヴとミナは……?
2人の機体の詳細は、また後ほど!

chapter.3完結!この段階で一番好きなキャラクターは?

  • レイメイ/紅月ミナ
  • ビリーヴ
  • コネコ/小南ネコ
  • カスミ/霧雨クロート
  • カグラ/水無月カグラ
  • アノマロカリス/小泉アマネ
  • サモネ/小泉イチカ
  • ヒカリ/飯綱ヒカリ
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