ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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生々しい心理描写ってどうすりゃいいかわからんね……


第52話「災禍の終点」feet.R

 朝起きて、朝食を食べ、お風呂に入り、制服の袖に腕を通す。

 日常のはずなのに、なんだか慣れない。それはやっぱり、私が不登校だったから。

 今日の登校は、名前も思い出したくもない、私をいじめた奴らの主犯格と話をするため。どうせあいつは転校するから、和解とかはしなくていいとカグラは言っていた。

 

(とは言ったって、不安ではある)

 

 もしも学校に着いてすぐにあんなことがまた起こったら、そういう不安は絶えず頭の中を駆け回っている。こんなもの、いっそバターにでもなってしまえばいいのに。

 

「ミナ」

「あ、ビリーヴ」

 

 玄関で靴を履いていると、ビリーヴを手のひらに乗せたお母さんがやってくる。何故か涙目だ。

 

「グス、まさかあなたがまた学校に行くなんて…………」

「泣きすぎでしょ。先生来たときも泣いてなかった?」

「うぅ、だってぇ…………」

「もぉ、お義母さんはわたしがなんとかするから、ミナは早く行っちゃってよ」

「う、うん」

 

 後ろで泣いてる声を聞きながら行くのはなんか、嫌だな。

 にしても、意外というかそうでもないというか、ビリーヴが思ったよりも乗り気だ。

 

「……ビリーヴは、不安じゃないの?」

「そういうことを聞かれると不安になっちゃうでしょ。できるだけ、考えないようにしてる。だって良い結果を得るためにミナは勇気を出してるんだし。わたしがそんな弱気になったらミナに失礼」

「そっか。ありがとね、ビリーヴ」

「えへへ」

 

 人差し指で少し撫でてから家を出る。学校への道は覚えているけど、久々の日光と一気に増した寒気が足取りを悪くする。

 

 冬の寒さと太陽の眩しさに耐えながら、なんとか学校までやってくる。どこかのタイミングかで回収した上履きに履き替えて、教室へと向かう。

 3階まで登って、『1ーB』の教室を探す。見つけて、その扉に手をかけようとして踏み止まる。

 

 怖い。

 

 あいつが待ち構えていたら、全員グルになっていたら、どうしよう。カグラの前ではどんな優等生でも、私の前ではただのいじめっ子の1人なやつがいたらどうしよう。

 ………………ダメだ。ビリーヴがああ言ってくれたんだ。私に勇気があるって言ってくれた、与えてくれたんだ。それを今使わないで、どうする!

 扉に手をかけ、開ける。恐る恐る歩を進めて、教室の中に、入る。

 

「……………………」

 

 一瞬誰かと視線が合って、慌てて下を向く。でも周りは気にも留めていないようで、私に構わず騒がしい談笑を繰り広げている。

 そして、1つ問題を思い出した。

 私の席がわからない。

 

「………………、あ、あの。私の席って──」

 

 とりあえず、人の良さそうな人を探して声をかける。席を聞こうと顔を上げると、そこには信じられない光景があった。

 

「はい……………………え?」

 

「……………………え?」

 

そこにいたのは、私が話しかけたのは、時間にして大体1ヶ月ぶりぐらいの、小南ネコだった。

 

────────────────────

 

「小南さーん! 今日こそお昼一緒に食べよー!」

「すみません、今日は先約が入ってしまってて」

「ありゃ珍しい」

「でもどの道お昼無理じゃん。先越されたー!」

 

 先約とは私のことである。それは視線で理解した。

 そして、今は人知れない屋上のドアの前に腰掛けて、2人でお弁当を食べている。

 

「ま、まさか同い年だったとは……」

「まさか同じクラスだったとは…………って、今さらっと失礼なこと言わなかった? 私の年齢がなんだって?」

「いやだって、ミナ先輩背高いしてっきり大学生くらいなものかと思ったのです」

「私も大概だけどさ、優等生優等生って慕われてるならクラスメイトの顔ぐらい覚えててよ」

「ほとんど学校来てないのにどうやって覚えろって言うのです?」

「ぐっ…………」

 

 痛いところを突かれた。

 にしてもまさか、カグラが担任どころかコネコがクラスメイトだとは思わなかった。思うわけないじゃん、ネトゲで近所のやつに遭遇するとかどこのラノベだよ。

 

「…………はぁ、私は学級委員失格なのです。クラス内のいじめに気付けないなんて……」

「あいつら無駄に隠蔽上手いし、ネコに飛び火したら嫌だから気にしないでいいよ」

 

 ネコには一応、私の事情について軽く話している。私が不登校だった理由と、今日学校に来た理由。

 

「なんだか、複雑なのです」

「複雑って?」

「ミナ先輩がいじめに遭わなかったら不登校にならず、私達は知り合わなかった。ミナ先輩に会えたから今の私があると思ってるのです」

「運命とでも言いたいわけ? だったら私は、それを決めたやつを殴りたい」

「あ、ごめんなさいなのです……」

「謝らなくていいよ。大事なのは今、でしょ?」

「……はい、なのです!」

 

 過去までの出来事と、これから起こること。それらを誰がどうやって決めているのかわからないけど、とにかく今できることをするべきだと思う。

 空になった弁当を仕舞って立ち上がり、軽く伸びをする。

 

「ん〜! ふぅ。じゃ、行ってくる」

「は、はい。気をつけてなのです」

「うん。ビリーヴにいい土産話作らないとね」

 

 そう言って私は、階段を降り始めた。

 

────────────────────

 

 多目的室。別名空き教室、物置。

 2つ机を跨いで私達は微妙な表情で見つめ合っている。

 

「ハイ、というわけで! チキチキお別れ前の懺悔会を始めまーす!」

 

 カグラ、どう考えてもそのテンションで行ける空気じゃない。

 私の目の前にいる人物、倉星ノゾミは私を標的にしていじめを続けていたグループのリーダー、主犯格だ。私はこいつを許すつもりは無い。絶対にどんな弁明をされたところでアレを肯定できるわけがない。

 

「倉星ちゃーん? まずは社交辞令だよ頭下げて謝りなよー」

「えぇ…………?」

 

 大体の教師が面倒な話をさっさと終わらせるための謝罪の言葉をただの社交辞令で済ませる。それがうちの担任、水無月カグラ先生だ。どこをどう考えても変人という他ない。

 

「…………」

「………………ご、ごめんなさい。その、酷いことして」

「ハイよくできました〜!!」

 

 多分倉星は今1番この担任のことを殴りたいと思っている。私もすごいイラついた。

 

「…………言っとくけど、私はお前のこと許すつもりなんて毛頭ないから。お前も私のこと嫌いでしょ? 付き合い悪くて趣味合わなくて、こんな根暗なオタク女のことなんか」

「……当然でしょ。アタシは綺麗なのが好きなの。毎日毎日スマホ見てるし指とかなんか汚れてるし、不潔」

「とりあえず倉星ちゃんに反省の色が毛ほども見られないことがわかったねぇ」

「先生は黙ってて」

「はーい」

 

 私だって嫌いだ、こいつのことなんか。自分さえ良ければそれでいいと思ってる。それはある意味人間としては正しいのかもしれないけど、よりによって陥れる対象が私だったのが嫌いだ。私も自分勝手だけど、私は周りとは関わらないって形で節度を持って暮らしていた。なのにこいつがズケズケと入り込んで、追い出そうとしたら勝手にキレて八つ当たりして、いじめて、本当に最悪。二度と会いたくない。

 

「お前って転校するんでしょ? そこでもまた私みたいなやついじめんの?」

「ッ……、うっさい」

「そういうとこだよ。勝手に関わろうとして勝手にキレて壊そうとして迷惑なの。私はお前みたいなのに人生めちゃくちゃにされたのがたまらなく嫌だった」

「逃げた癖によく言う」

「は? お前──」

「ストップ。2人ともここは喧嘩するとこじゃないよ」

 

 席から身を乗り出そうとしてしまい、カグラが止めに入った。はぁ、つい頭に血が上りすぎてしまった。

 

「倉星ちゃんもそれはダメだよ。逃げることを悪く言うのはいけません。逃げるってことはつまり身の危険を感じたからで、紅月ちゃん視点での倉星ちゃんは少なくとも他人を傷付ける全身トゲトゲ人間に見えたってことだよ」

「…………ハイハイ、わかりました」

「やっぱダメだね、2人は根本から合わない。クラス割り振った人にはキツく言っておくし、倉星ちゃんの転校先にも口酸っぱく言っといてあげるから、二度とこんな真似はしないように。これはあたしからの最後の指導だよ」

「………………はい」

 

 カグラの言葉を聞いた倉星は萎縮するように返事をした。

 

「……それで、この話はどうやって決着つけるわけ? アタシがいなくなってもアタシの友達がお前のこといじめるかもでしょ」

「その点は大丈夫、あの子達は学級委員の小南ちゃんに見張らせて、次紅月ちゃんに関わろうものなら問答無用で退学にするって言っといたから」

「うわ、エグ……」

「私が頼んだ。そうでもしないとまたやるでしょ、お前ら全員学習できないただの馬鹿なんだから」

「馬鹿って──」

「倉星ちゃーん?」

「ッ…………、はぁ、セッコ」

 

 やられた側としては当然の権利だ。セコいとか言われる筋合いはないし、こいつらがやってきたことの方がよっぽど陰湿で小狡い。

 

「もう、お前らのこと考えて生きるのは疲れる。だからってこの話を忘れてしまえばまた同じことが起こるかもしれない。だから、この話はここで完全に終わらせて、”黒歴史”って形で葬ることにしたい。お前も、それでいい?」

「…………確かに、言えてる」

「じゃあ、それで」

「うん」

 

 話はそこで途切れる。少し間を置いてからカグラが手を叩き、話を打ち切った。

 

「じゃ、これにて閉廷! 2人ともこれからの新生活を楽しむように!」

 

────────────────────

 

 どっと疲れが出た気がする。それと同時に、ほっとした感覚を強く感じている。

 あいつとの話に決着がついた。転校は冬休み入ってからだけど、逆に言えば冬休み明けから私は何の気兼ねなく学校に行けるようになった。だから安心したけど、私の背中にあった重いものが一気に剥ぎ落とされて、体の一部が抜け落ちたような気分になる。

 

「……ただい──」

「あ、ミナ!」

 

 家に帰ると、玄関すぐでビリーヴが待っていてくれた。健気で可愛いけど、そんなことを感じているような雰囲気じゃなさそうだ。

 

「ど、どうかした? そんな切羽詰まって」

「え、えっとね、アノマロカリスから連絡が来て……」

「え、アノマロが?」

「ここの公園に来て、だって。えっと、ここ」

 

 ビリーヴがダイバーギアを操作して、私に位置情報を送ってくる。ここは、行けなくはないけど電車を使う距離にある。

 

「遠くない? なんでこんなところ……」

「わかんない。けど、いいから来いって急かしてくる」

「はぁ、そういえばリアルで会ってなかったな。あいつ一体何のつもりで…………」

 

 訳がわからないけど、なんだかんだでメンバーからの好感度は高い奴だ。下手なことはしないはず。

 

「…………わかった。行こう」

「うん。あ、わたしにも来て欲しいって言ってた」

「そっか。じゃあ行こ」

「うん、わかった。それと……」

「それと?」

「……おかえり」

「っ、……ただいま」

 

 最愛の恋人と、何気ないような一言を交わす。

 お母さんに一言言って、ビリーヴに外出用のポーチに入ってもらってから家を出た。

 

────────────────────

 

 目的の公園に着くと、空はすっかり夕焼け空になっていた。

 少し辺りを見渡すと、まだ点いてはいない街灯のすぐ下に見慣れた格好の人がいるのが見えたので、そこに向かう。よく見ると傍らのベンチにはセーラー服を着た中学生くらいの女の子が座っていた。

 

「…………ん、ほら来たぞ」

 

 私達を見るや否や、アノマロと思しき人物が口を開き、女の子の肩がビクリと震える。声のトーンからしてGBNで聞いた通りだった。けれど、本当に見た目までダイバールックそっくりだ。黒いコートに白く長い、1本に束ねられた髪。そのまま飛び出してきたかのようにそっくりで、どこか非日常的に感じる。だが、あの白い髪は染めてるようには見えない。

 

「こんばんは、アノマロカリス」

「改め、こっちではアマネだ」

 

 ポーチから顔を出したビリーヴが挨拶をすると、アマネが自分の呼び名を訂正した。体つきは男性のそれだが、上げた顔は中性的で整っていて、正しく美青年という風貌。でも、荒々しい口調がどこかチグハグに感じる。

 

「お前らを呼んだのはこいつに会わせるため。ま、話を聞きゃわかるさ」

「その子、中学生ぐらいだよね?」

「聞きゃわかるっつったろ」

 

 彼女はゆっくりと立ち上がり、暗い表情でこちらを見る。顎が引いていて、私の機嫌を伺っているみたいだ。警戒されているらしくて少し体が強ばる。

 

「……飯綱ヒカリ、マスダイバー……です」

「マスダイバー…………!?」

「あなた方の言う鬼武者、ガンダムデモニックバルバトスを使っていたのは私です。あれは、私のガンプラに使われている新型フェイクデカールの試験運用でした」

「鬼武者、デモニックバルバトスって言うんだ……」

 

 彼女の衝撃的な自己紹介に対して言葉を失う。あの鬼武者を使っていたかはともかくとして、まさか私と1つぐらいしか違わないような子がマスダイバーになっているなんて、にわかには信じられない。

 

「…………で、何? 宣戦布告か何かでも?」

「初っ端から喧嘩腰かよ、礼儀のなってねぇやつだな」

 

 いやお前が言うなチンピラが。

 

「宣戦布告…………捉えようによっては、そうなりますね」

 

 ヒカリちゃんは、肯定とも自虐とも取れるような口調で言った。マスダイバーだからって気が立っちゃったけど、嫌な思いをさせてしまった。

 

「私が聞きたいのは、1つです。あなた方にとって、”ガンプラバトル”はなんなんですか?」

「ガンプラバトル…………?」

 

 彼女の問いかけは、哲学的なものだった。

 私にとっての、ガンプラバトル。ビリーヴにとっての、ガンプラバトル。

 それが何か考えるように、私は口を固く閉じた。

 




次回、飯綱ヒカリの問いかけを前に、ビリーヴが動く!
今回のハイライトはさらっとミナの母親を「お義母さん」呼びしてるビリーヴです

キャラ解説ver.4
レイメイ/紅月ミナ
フォース『ビルドリバイバル』のメンバー。
小豆色の髪、鉄華団を思わせるオーバーサイズのジャンパー、一見少しばかり飄々とした性格をした強者感溢れる風貌の女性。
その実態はいじめによって不登校となったただの女子高生であり、ELダイバーのビリーヴとは生命体としての垣根を越えた恋人関係にある。
父親を失っていたりと壮絶な人生経験から余裕綽々の姿勢を崩さないが、ガンダムネタには真正面から乗っかったり、意外と奥手など可愛い一面もある。

ビリーヴ
フォース『ビルドリバイバル』に所属するELダイバー。
生後3ヶ月だがマスダイバー達によって一度メモリーデータが消去されており、本人の感覚としては生まれて1ヶ月半程度である。
ダイバー達の知識欲から生まれたためかそれが人一倍強く、知りたいことは山積み。リアルでの生活は知らないことばかりで、毎日がワクワクに包まれているらしい。
レイメイとは恋人関係にあり、毎日毎日その愛は更新され強くなっている。また、嫉妬心も人一倍強い。

chapter.3完結!この段階で一番好きなキャラクターは?

  • レイメイ/紅月ミナ
  • ビリーヴ
  • コネコ/小南ネコ
  • カスミ/霧雨クロート
  • カグラ/水無月カグラ
  • アノマロカリス/小泉アマネ
  • サモネ/小泉イチカ
  • ヒカリ/飯綱ヒカリ
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