「優勝は、ツカサ選手・コウイチ選手ペアだぁー!!」
『ワアアアァァー!!!』
「………………!!」
今でも忘れることはない。
あの日の熱を、歓声を、血湧き肉躍るような激しい戦いを。
私を一瞬で魅了してしまった。
”ガンプラバトル”、それが私にとってどれだけ重いものなのか。
この人は知らない。そのはずなのに。
どうしてだろう。この人ならわかってもらえると思っているのは。
「あなた方にとって、ガンプラバトルとはなんですか?」
問いかける。
彼女は口を固く結び、少し考えるような動作をしてから、返事をした。
「…………逆に聞くけど、あなたにとっては?」
「私にとって?」
「揺らいでるんでしょ。自分の信念が正しいのか」
「っ…………」
思わず後退りしようとして、膝の裏がベンチに当たる。
自分にとってのガンプラバトル。そんなもの、決まりきっている。
「…………この前も言った通り、私にとってガンプラバトルはスポーツです。手ずから作ったガンプラを自らが動かして、戦って、何度壊れようと立ち上がる、そんな熱い信念のぶつかり合い。実機を使うからこそ、宿る想いは計り知れない」
「じゃあ、あなたはGPDをやったことがあるの?」
「っ……、ありません、けど、その情熱は、誰よりも覚えているつもりです」
「だったらそれは、ただの理想の押し付けだよ。この世には、妥協しなきゃいけないこともある」
「妥協したものが理想であるはずがありません。最上の要求であるからこそ理想なのです」
「最上だから、叶わないと知ったときの絶望は計り知れない。私は少なくともそう思うよ」
「………………」
私も、この人も、自分の意見を全く譲ろうとしない。この人は、理想を追い求めて潰れたのだろうか。
「……めんどくせぇなぁ、さっさと結論言えよ。紅月ミナ」
話が泥沼と化すのを見越して、小泉さんが催促する。
「…………楽しかったんでしょ、あのときのガンプラバトル」
「え……?」
「私にはわかるよ。憎んでても、悲しくても、ガンプラバトルをすることへの感動が伝わってきた」
「私が、GBNを…………?」
「素直になりなよ。今ならまだ、やり直せる」
彼女が手を差し伸べてくれる。
あのバトルを楽しんでいたのか、そうでもなかったのか、私にはわからない。訳がわからなくなって、感情に身を任せて、そのまま殴りつけるように言葉を発していた。そんな状態だったのに、わかるわけがない。
そうだ、わかるわけがない。
「…………私のこと知りもしないで、そんなこと──!」
「あなたのガンプラは、泣いてた」
「っ……!」
「あのとき泣いてたのは、痛かったからじゃなくて、あなたを心配しているからって、あの時は言った。自分を必死に言い聞かせて、自分を殺しているようなあなたを見て、すっこぐ辛かったんだと思う」
突然彼女の手の上に乗っていたELダイバーが口を開く。
彼女は、ELダイバーはマスダイバーにとっては運営の脆弱性を示すための存在であって、ただのバグでしかない。それなのに私は、彼女の言葉に胸を打たれていた。
(私はバルに、そんな思いをして欲しかった訳じゃない)
ただバルといつか、楽しくガンプラバトルができればいいと思っていた。だけどいつの間にか、こんな形ですることになっていて、どうしてこうなったんだろうと何度も思った。
揺らいでいるというのは、完全に図星だ。
「ねぇ、あなたは、あのガンプラにどんな想いを込めて作ったの?」
「…………私は」
私は、バルと、デモニックバルバトスと、一緒に………………!
「私は…………私は、ただ」
「うん」
「一緒に、ガンプラバトルが、したくて」
「そうなんだね」
「壊れても、何度も直すって、私の初めてのガンプラだから、って…………でも」
引き出されるように胸の奥底が明らかになっていく。純粋な想いを、ただそのままの姿で、少しずつ露わにしていく。
でももう、私は、マスダイバーという輪の中にいて、逃げ道が見つからない。だから、
「もう、引き返せない!」
「ッ…………」
紅月さんの肩を掴んで、突き放す。
「そんなに私のことを止めたいんだったら、次の戦いで、かかってくればいい! 私は逃げも隠れもしません!!」
「ヒカリ…………」
「私はもう、マスダイバーとしてしか生きられません。あの世界において私は排除するべき敵…………なら、その役目を、あなた方が担ってください」
「は……? 待ってよ、私そんなこと──」
「やろう。ミナ」
「ビリーヴ……?」
「一緒にやろう、ガンプラバトル。ミナのガンプラと、私のガンプラで」
「………………え?」
立ち上がったELダイバーがそう宣言する。それに対し、紅月さんは驚いたような声を上げた。
「戦うよ、あなたの言う通り。だからお話はそのときにしよ。ね?」
「…………ELダイバーが、ガンプラを作るんですか」
「うん。やってみせるよ」
「そうですか…………、なら、そのときはそのときで」
私は踵を返してベンチに置いてあった鞄を持つ。
ELダイバーがガンプラを作る…………そんな奇なことが起これば、マスダイバー達の認識も変わるかもしれない。勿論、私も。
この2人に期待してみてもいいのかもしれない。この2人なら、今の私を”断罪”してくれるって。
……時計の針は6時を指している。今の時期ではもう真っ暗だ。
「では、これで解散にしましょう。あんまり遅いといけないので」
「わかった。じゃあね」
「また、GBNで」
「…………はい」
振り返って2人を見ると、駅の方に向かって歩き出していた。今日は家に帰っても誰もいないけれど、中学生だし、夜が更けるまでには帰っておいた方がいい。
「話は済んだか?」
「はい、一応」
話している間、ベンチにずっと座っていた小泉さんが口を開く。
「なら良かった……が、もし自傷行為みてぇな真似でも考えてるんだったら
「ッ…………」
「わかったならもう帰れ」
「………………わかりました」
小泉さんが駅とは違う方向へと向かっていく。私も、鞄を持って家に帰った。
次回、ビリーヴの才能開花!
アマネくんが良い兄貴分過ぎて我ながら推せる
キャラ解説ver.4
ヒカリ/飯綱ヒカリ
フェイクデカールを使用する中学生のマスダイバー。
幼少期に見たGPDの試合に憧れる1人の少女だが、GBNへの世代交代やスタルの介入などが重なり、その憧れは歪んだ執着とGBNへの強い恨みへと変貌してしまった。
現在は自身の正しさや罪悪感から迷いが強く出ており、精神的に危険な状態。
chapter.3完結!この段階で一番好きなキャラクターは?
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レイメイ/紅月ミナ
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ビリーヴ
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コネコ/小南ネコ
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カスミ/霧雨クロート
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カグラ/水無月カグラ
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アノマロカリス/小泉アマネ
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サモネ/小泉イチカ
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ヒカリ/飯綱ヒカリ