ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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最終回、全編エピローグですが最後までお付き合いください!


第67話(終)「Build Rivival」feet.R, K, A

 第4次有志連合戦から数日。

 あの熾烈な戦いは終わりを迎え、GBNは半ばお祭りムードとなっていた。

 そんな中、1人だけ空気に合わない複雑な表情をしている少女がいた。

 

「……本当に、やめちゃうんだ」

「アカウントは凍結処分ですし、それに私自身を許すことができませんから」

「それでも、またアカウントを作り直せば……」

「いえ、いいんです」

「でも…………」

「大丈夫です。また会いましょう、ビリーヴさん」

 

 ヒカリは、他のマスダイバーと共に違法ツールの使用によりアカウントが凍結……削除されることになった。彼女は未練も見せず、ただ苦い笑顔をしていた。

 

「………………」

 

 彼女の姿が消えるのを見届ける。できることなら、彼女もビルドリバイバルに誘って、一緒にGBNで遊びたかった。

 でも、彼女はそれを望んでいなかった。

 

『誰かに裁かれるのを待つのではなく、自分で自分の罪を清算して、贖罪できるようになるまで、GBNはしない』

 

 それが彼女の中で決めたことで、わたしに介入する余地はない。

 わたし達ではヒカリを救うことはできなかったのかもしれない。でも、少しでもヒカリの心が軽くなったのなら、それでいいと思う。

 

 きっと彼女の、ガンプラを想う気持ちが良いものになっていますように。

 

────────────────────

 

 戦いのあと、ネコの母親は余罪多数により逮捕された。今日、有罪判決が下されたところだ。

 ネコは重要参考人として色々駆り出され、覚えのあるものからないものまで根掘り葉掘り質問責めにされ、ぐったりとしている。オレは聴衆だったが、見ているだけで胃が痛くなった。

 

「……お疲れ」

「ありがとう、なのです……」

「なんというか、想像してたよりずっとエグかったな」

「確かに、なのです。やらかした本人とはいえ、自分の母親があれだけズバズバ言われるとこう…………複雑なのです」

「それは、オレにもグサッと来る」

 

 元はと言えば、オレが良かれと思って有能過ぎる探偵(アマネ)を紹介したからだ。いや、結果はいいんだが、なんというか罪悪感がすごい。あいつは死にゲーのやりすぎで人の心っていうものが欠落してるから何も感じてなさそうだが、オレはあいつと同じじゃない。

 今回の1件はお国で有名なコナミグループ関連ということで、もちろん大々的に取り上げられたし、もちろんネコの父親はこれまで以上に多忙になったし、急激とまではいかずともグループの株価は少し下がり気味だそうで、ネコの父親はそれでも『これから建て直すさ』と憑き物の取れたような顔で言っていた。強かだよ、本当。

 

「…………、……」

「……ん? どうかしたのです?」

「あ、いや……」

 

 …………こういう時、普通寄り添ってやるもんだけど、どうやってやればいいんだ。こういうときカグラがいれば……………………参考にならねぇな。絶対ただの惚気話聞かせられる。

 と来れば…………男なのに需要があるかどうかは知らんが、1番メジャーなアレをやろう。

 

「…………ネコがよかったらで、いいんだけど、よかったら膝枕するけど」

「え、いいのです?」

「まぁ、減るもんでもないし……」

「じ、じゃあ、お邪魔するのです」

「お、おう……」

 

 のそりのそりと、ネコの頭が自分の膝に乗りかかる。頭は大体ボウリングボールぐらいの重さだと言うが、意外と平気だ。運動しといてよかった。

 

「……ど、どうですか。お客さん」

「んー、もてなす側が緊張しててどうなのです?」

「うぐっ」

「ふふ、ほんと……クロートさんは奥手なのですねー」

「…………」

 

 ごろんと寝転がった状態からネコが手を伸ばし、オレの顔に触れてくる。先程の発言も合わせて、触れたところから文字通り手当り次第に火照ってくる。最近寒いからありがたいけど、こういう暖の取り方は心臓に悪い。

 

「……ま、まぁ! これでネコは安心してGBNやれるわけだし、オレも将来安泰だし、フリーダムガンダムリベリオンならぬコナミグループリベリオンってことで!」

 

 誤魔化すようにそう言うと、少し間を置いてネコに脇腹をつままれる。

 

「いたっ!」

「肉全然ないのです!? ちゃんと食べてるのです!?」

「食べてるよ! てか仕掛けておいて驚くな!」

 

 失礼な……他人と比べて筋肉が付きづらくて太らないっていう特殊な体質をしているからって、そう言われるのは心外だ。オレは人より食う方だと自負している。

 

「……なんで腹つまんだの」

「えー? なんというか、コナミグループリベリオンよりコナミグループリバイバルの方がしっくり来るなーって、思ったのです」

「そんなことで……?」

 

 あまりにも酷すぎる。仮にも元推しで現婚約者に対する仕打ちなのだろうか。

 いや、でも…………。

 

「…………確かに、そっちのがいいかも」

「納得しちゃうのです……?」

「うーん、ビルリバのこと気に入ってくれてんなら、まぁ嬉しいし」

「っ……」

 

 ネコがオレの顔から手を離し、頭をごろんとさせてそっぽを向く。

 

「え? どした?」

 

 返事はない。が、耳が赤くなっている辺り、照れているのだとわかる。どうして照れてるのかはわからないが。

 しばらく間を置いて、ネコがようやく口を開いた。

 

「……今のクロートさん、物語中盤で楽しみを覚えるけどその後すぐ死ぬ強化人間キャラの顔してたのです」

「縁起悪っ!?」

 

────────────────────

 

 修正パッチの配布によってマスダイバーの危機が去り、GBNは再び平穏な日々を取り戻した。

 だが、課題は山ほど残っている。

 まず依然存在が確認されるチーターの存在。軒並みフェイクデカールに流れたことで数は減ったとはいえ、ネットゲームとしての宿命からは逃れられていない。

 そして、今回のフェイクデカール騒動の主犯、スタルの所在。

 

 奴はまだ、捕まっていない。

 

「……まぁ、国外逃亡が安牌か」

 

 逃げ足だけは速い奴だ。

 いつまたフェイクデカールに並ぶチートツールを背負って来るかわかったもんじゃない。さっさと豚箱に突っ込みたいが、俺も警察も捜査に難航している。俺としてはすぐにでも国際指名手配にして速攻で捕まえたいんだが、警察及び国のクソジジイ共はわざわざネットゲーム如きにそんなリソースは割きたくないらしい。

 結局俺は今後の業務への支障も加味して、捜査を警察に投げて打ち切ることにした。まぁ、どっかで寝首搔いてやろうとは思ってるが。

 とりあえず…………。

 

「……お前らさ、イチャつくなら他所行けよ」

「カグラさーん」

「なーに、イチカちゃん」

「聞いてねぇ…………」

 

 目の前でくっつきまくってるこの2人をどうにかしたい。ここ、俺の事務所なんだけど。

 

「んふー、ふふふ」

「うへへー」

「イチカお前、勉強はどうした」

「えー? ちゃんとやってるよ?」

「探偵学校だっけ?」

「うん」

 

 イチカはまず探偵学校で基礎力を鍛えてからうちの事務所に行くつもりだそうだ。まぁ合格はほぼ確実だろうが、今はそういうことではない。さっさとどっか行ってくれ。

 

「元々お兄ちゃんの仕事の手伝いとかで色々鍛えられてるし、大丈夫だと思う」

「そっかー! イチカちゃんは賢いねー!」

「えへへ、そんなことないですよぉ」

 

 カグラが抱き着いた体勢のままイチカの頭をわしゃわしゃと撫でている。

 ……余計にイチャつかせてしまった。これはプレミ。次だ次。

 

「で、カグラは? お前仕事は?」

「テスト明けなんでもう授業やるしかないのん。おかげでイチカちゃんといっぱい遊べてベリーラッキー!」

「そしてベリーハッピー、ですかね?」

「いえーす!」

「………………」

 

 もう言葉も出ない。ダメだこいつら。

 世間的にカップルと呼ばれる2人組は、過剰な対ストレス成分の分泌により羞恥心が麻痺しており、いつでもどこでも人目を気にせずイチャコラし出すらしい。馬鹿みたいな研究だが今ここに証明されているので文句のつけようもない。

 どうしたものか。こいつら、さっさとラブホにでも行ってくんないかな。うちに居座るのやめてくんないかな。ここ一応客間なんだけど。

 

「はぁ…………、帰る。勝手にしてろ」

「いやお前が帰ったらここ出てかなきゃじゃん」

「じゃあ出てけよ! 大体なんでここいるんだよ他所でやれっつってんだろ!!」

「えー? だって家行ったらすぐ始めちゃうし……」

「体力持たないですもんね……」

「やんなきゃいいじゃん」

「匂いが、その、アレで…………」

 

 イチカがそうもじもじしながら言うので、秒で理解した俺は天を仰いで深呼吸した。

 もう、ダメだ。終わってんだろこの2人。色ボケもここまで来たら呆れる。

 

「いいじゃーん、別にここでイチャついてもさー。減るもんでもなし」

「ここ俺の職場ってわかってる? なぁ? お前からしたら学校なんだぞここは」

「しかしだねぇ、あたしは学校のトイレで致してるカップルを見逃したこともあるのだから」

「いやカグラさんそれは止めといた方が……」

「咳払いで遠回しにやってもダメだったから諦めた。まぁその後しっかり遅れてきたけど」

「しっかりしてねぇだろそれは」

 

 もういい、もう帰る。絶対帰る。こいつらなんか知らん。家でも一応仕事はできるからな。こいつらはとりあえずラブホにでも行ってればいい。

 

「……俺マジで帰るからな? わかったらテメーらはさっさとホテル行け」

「いいけど……その場合お兄ちゃんの部屋の隣がそうなっちゃうよ?」

「他所行けっつってんだろ!!!!!」

 

────────────────────

 

 有志連合戦から3ヶ月と少し。

 私は進級して、2年生となった。正直言って勉強とか全然で、それに1年の大半は学校に行ってなかったこともあってか、2年生の自覚はあまりない。

 ただ、配布されたクラス表にすごく馴染みのある名前が2つ並んでいることに冷や汗が流れるのを感じる。

 

「まさか、また同じクラスとは」

「なのです……」

 

 どうやらネコとは今年も同じクラスで、今年の担任も変わらずカグラらしい。なんとなく、苦労しそうな気がする。

 嫌なわけではない。知ってる人というか、仲良い人がいるのは寧ろ、少し嬉しい。ただ、ネトゲで一緒に遊んでる人が2人もいるとなんか、気まずい。そういうの、あると思う。

 

「………………、っ……!」

 

 一瞬、見覚えのある顔がすれ違った気がして、振り返る。

 右目が隠れるくらい伸びていた髪は少し短くなっていて、綺麗な黒い直毛はボブカットに切られている。

 あの時公園で会った、あの子だ。

 

「来てたんだ……」

「どうかしたのです?」

「ああいや、なんでも…………そっちこそどうかした?」

 

 ネコに話しかけられたので返事をすると、ネコはネコで何故か顎に手を当てて考え事をしていた。

 

「ああいえ、なんかデジャブだったので……」

「デジャブ?」

「なんでもないのです」

「はぁ……」

 

 なにはともあれお互い鉢合わせてしまったので、仕方なく並んで廊下を歩き、新しい教室に向かう。今年から2階だった教室は3階になって、行くのが少し面倒になった。新しいクラスメイト達もそれを愚痴っている人が何人かいる。

 

「ハイおはようございまーす! 今年から君達生徒諸君の担任教師になった水無月カグラ先生です! 今年もお前らをネイティブ英語メンに仕立て上げるべく徹底的にしごくんでよろしくお願いしまーす!」

 

 最初はいじめやらなんやらで神経が回っておらず気付かなかったが、この人のHRはとにかくうるさい。やかましい。にも関わらず、この人の授業はわかりやすくて好評だ。私の絶望的な成績がなんとか持ち直したのも、この人の授業のおかげと言っていい。

 

「まぁ今日は授業やんないんだけどね? 始業式だし当たり前だもんねー。ってわけでこれから体育館に向かうので廊下にレッツゴー! の前に…………」

 

 始業式に向かう指示をする前に、カグラが私の方を見る。それに釣られるように他の人達の視線もこちらを向くので、なんだか気まずい。

 

「大丈夫?」

「う、うん……ビリーヴこそ大丈夫? 揺れてなかった?」

「大丈夫。自己紹介、だよね」

「お願いね……」

 

 自分の持っているポーチにこっそり話しかけてから、恐る恐る教卓の前に立つ。「ささ、どぞどぞー」とカグラが気の抜けることを言うので、なんか緊張が解かれたような余計に固まるような複雑な感覚に陥る。

 …………視線が痛い。

 

「え、えっとぉ…………」

 

 ポーチを開けて、手のひらを差し伸べる。手のひらに小さな手が乗りかかり、少しずつその全身が現れる。

 周りからは「なになに?」「人形?」「動いてるぞ?」とざわざわとした声が聞こえる。ネコは私と同じく緊張している様子で、カグラはニコニコしている。おい。

 手のひらに乗っている彼女がゆっくりと立ち上がる。手のひらというのは人が思っているよりもでこぼこしていて、立ちづらい。彼女がよろけて、私は慌ててバランスを取った。

 

「おっとと……」

「だ、だ、大丈夫? ほんとに大丈夫?」

「もー、大丈夫だって。GBNでいっぱい練習したもん」

 

 彼女はそう言って前を向く。その背中はとても小さいのに、私よりもずっと誇らしげだ。

 彼女が立ち上がるのを見て、周りは余計にざわざわし始める。女子は「かわいい」だとか「人形?」とか、男子は特段興味が無さげだ。

 

「わたしはビリーヴ。今日からこの学校でみんなとお勉強することになった、ELダイバーです」

 

 ビリーヴは大きな声で自己紹介をする。けれど、ELダイバーという名前を言ったところで、ここにいる多くの人は知っているわけがない。

 

「……えっと、ELダイバーっていうのは……色んなデータの蓄積で生まれた電子生命体……? のことで……」

「まだ生まれて半年だし、こんな身体ですが、みんなと学びたいという気持ちは本物です。どうぞ、よろしくお願いします!」

 

 ぺこりとビリーヴが頭を下げる。重心が前に行って少し不安になったけど、意外と落ちなくてほっとした。

 さて、これでビリーヴの自己紹介は終わった。あとはクラスの出方を伺うだけ…………。

 周りを見ると、みんな少し困惑した様子でビリーヴを見ている。鼓動が少し早くなって、不安が大きくなってくる。

 でも、1人が手を叩き始めてから、ぶわっと拍手が舞い起こる。

 

「えっ?」

「かわいいじゃんその子!」

「髪きれー」

「その制服って誰が作ったの? まさか自分?」

「あ、いや、これはミナが作ったやつで……」

「えーすご!? そんなちっちゃいの作れるんだ!」

「ど、どうも……」

 

 歓迎してくれているのは主に女子だ。男子は適当に周りに合わせているだけ。それでも、みんなから好意的に受け入れてもらえるのは、とても嬉しい。

 

「というわけで男子諸君、ちっちゃい学友ができたのでくれぐれも教室でドッジボールとかやらないようにね? もし壊れちゃっても直せるらしいけど”絵面”がよろしくないからね?」

「う……」

「うぃす……」

 

 カグラに釘を刺された男子は途端にげんなりとした顔になる。やるつもりだったのか、許さんぞ貴様ら。

 

 さて、それはともかく。

 ビリーヴがひたすらに驚いた顔でこっちを見つめてくる。まさかこんなに歓迎してくれるとは思ってなかったみたいだし、私も思ってなかった。

 これから、新しい生活が始まる。これまでのような、辛い辛い現実じゃない。ビリーヴとの、楽しいリアルの生活だ。

 

「うん、じゃあ自己紹介も済んだし始業式行くぞー!」

「だって、ビリーヴ」

「うん。行こう、ミナ」

「うん!」

 

 これが、(わたし)達の、ビルドリバイバル。

 

(完)




Believeと、Reimeiで、BR。Build Rivivalで、BR。そんなダブルミーニングです。
いかがだったでしょうか、今回で『ガンダムビルドダイバーズ:BR』は完結となります。
年始から始まり、ちょっと失踪したり、路線変更したり、そんなグダグダな序盤でしたが、第3次の辺りから路線が固まりここまで駆け抜けることが出来ました。
この作品を完結させることが出来たのは、ここまで読んでくれた皆さんのおかげに他なりません。本当にご愛読、ありがとうございました!
私、レイメイミナの次回作にご期待ください!

ガンダムビルドダイバーズ:BR完結!好きなキャラは?

  • レイメイ/紅月ミナ
  • ビリーヴ
  • コネコ/小南ネコ
  • カスミ/霧雨クロート
  • カグラ/水無月カグラ
  • アノマロカリス/小泉アマネ
  • サモネ/小泉イチカ
  • ヒカリ/飯綱ヒカリ
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