ガンダムビルドダイバーズ:BR   作:レイメイミナ

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第9話「純愛泥沼殺陣合戦」feet.R

「パーメットスコア3……!」

 

 シルヴィー胸部のシェルユニットが光を灯す。バックパックと脚部に接続された各ガンビットが独立稼動するようになるスコア3の状態では、機体の追尾性、機動力を大幅に引き上げるスコア2よりも高い空間認識能力が求められる。

 分離したガンビットの砲門を目の前のルシファーに向けて連射する。しかし、この距離では当たらない。

 ルシファーは様々なオプションを選択可で、ミッション毎に装備を変更しあらゆる局面に対応出来るようになっている。今回のルシファーは、サイコフレームでの優位性を取るために増加サイコフレームユニットであるアームドアーマーXCを装備している。

 

『当たるかよ!』

「くっ……!!」

 

 ビームの弾幕網を躱しながら進み、ビームマグナムからメガ粒子の塊を放つカスミのルシファー。それをガンビットと共に避け、GNマシンピストルで応戦する。両腕のアームドアーマーDEのIフィールドが容易く防ぎ、本体にダメージは入っていない。

 

「ビームが効かない、なら! パーメットスコア4!!」

『なっ……、こっちが引っ張られる!』

 

 スコア4、『NT-D』の起動によりルシファー側のものも起動させ、継戦能力の低いデストロイモードへと移行させる。これで持久戦に持ち込むのと、近接戦に持ち込むのが私の狙いだ。

 その意図を直に伝えるため、ガンビットでマグナムを正確に射撃、爆発させる。

 

『なるほど、射的じゃなくてチャンバラがお望みか……』

 

 クロービットとGNマシンピストルを接続、GNビームソードにしてルシファーに突貫。ルシファーも腕部のビームサーベルを展開、ビームトンファーで打ち払う。負けじと再び突っ込み、お互い2対の剣がぶつかり合う拮抗状態に。

 

「潰す倒す殺す……!」

『チッ……!!』

 

 拮抗状態もルシファーが出力を上げて打ち破る。形勢逆転し、今度はこちらが受ける形に。

 

『ビリーヴがお前の何なのかを考えた事はあるか!?』

「はぁっ!? 何言って──!」

『そこに愛はあるのかっつってんだよッ!!』

 

 スラスターを全開で吹かし、こちらが押し返される。そして鍔迫りの状態を打ち切り、蹴りで私を突き放す。

 

「きゃあっ!!」

『ハァ…………。それで、どうなんだ?』

「……勝ったら答える、約束でしょ!」

『お前はそうやって答えることから逃げるだけだ。逃げてれば負けない、代わりに勝ちもない。勝ち負けが存在しない戦いで得るものは何一つとして無い。お前は負けて何か失うのが怖いだけだ』

「なっ……!」

『だったらもういっそ、豪快に負けて何もかも持っていかれろ。踏ん切りはつくんじゃないか?』

 

 …………は?

 こいつ、この野郎。何言ってんだよ。私にはもう失うものなんてないのに、これ以上何を失えばいいんだ。家族? ガンプラ? 才能? それとも、このGBNを?

 ふざけんな、ふざけんな、ふざけんな。私からGBNを奪ったら、何も残らない。GBNでの(レイメイ)は、(ミナ)の全部だ。空っぽの私が、存在を保つ唯一の方法。それを、失えだって?

 

「うる、さァァァァいッッ!!」

 

 怒りに任せてルシファーに突貫をかける。相手の反撃には充電中のビット4基で対応するつもりだ。

 

『残念』

「はッ…………!」

 

 大きく振り被ったビームブレイドの軌道は軽やかに避けられた…………のは想定内。バックパックのガンビットで迎え撃つ。

 ……と思った瞬間、私のシルヴィーは大きく前へ吹き飛ばされた。

 

「がアッ!!?」

 

 その瞬間に何が起きたのか、これでもSランの端くれたる私にはすぐにわかった。

 

「こいつ、マグナムパックぶん投げてきやがった…………!!」

 

 マグナムパックはビームマグナム専用にチューンされた特注のエネルギーパック。通常は多くても2つで充分なものが5つも連結されているのだ。そんなものを投げられ、誘爆されてしまえば拡散するとはいえ圧縮されたメガ粒子が一気に解き放たれてしまい、周囲のMSは一溜りも無い。無論、このシルヴィーも例外ではなかった。

 咄嗟にGNフィールドで防御したもののGNドライブは損傷し、機体性能は60%にまで低下した。ここまで来ればさしものシルヴィーも地上に落とされたも同然だ。そして、天を支配しているのはあの堕天使、ルシファー。

 

「こンのッ…………!!」

『かった……マジかよ、即で貼りやがった……! ならッ!!』

「ッ……、くッ!!」

 

 ルシファーの投擲したビームサーベルをガンビットのフィールドで防ぐ。真横のアラームの先にあったビームガトリングもGNフィールドで防ぎ切る。実力は拮抗状態だ。

 

「……はっ、いない!?」

 

 ……相手のファンネルに気を取られていた、いつの間にかルシファーの影は無く、それに気付くと同時に真後ろの危険を伝えるアラームが鳴り響く。

 

『ドシッと、バンッ!!』

 

 真後ろからルシファーがビームトンファーを展開して突っ込んでくる。不味い、今後ろはダメージを喰らってエラーまみれのカオス状態。そんな時にサーベルをぶっ刺されたら、確実にドカンだ。

 

「ぐッ、ハアァァ!!」

『なっ、サブアーム!?』

 

 辛うじて生きているサブアームに接続されているサーベルを展開。相手のトンファーを横から押し退ける形で防ぐ。

 

「私に(コイツ)を、抜かせたなァッ!!」

 

 パーメットスコア5、トランザム。使用可能時間、2セコンド。

 たったの2秒という短い時間内に脱出。相手の横腹目掛け、ビームブレイドを振りかざす。

 

「はあああァァッ!!」

『あぁクッソ!!』

 

 ビームブレイドはルシファーの右腕関節部にクリーンヒット、そのまま圧縮GN粒子の熱で両断するが、数瞬の抵抗の間に機体を一回転し、離脱された。

 

「カスミ、お前は私に無いものを沢山持ってる」

『戦い続けてきたから』

「土俵にすら立てない私はなんなんだよ」

『戦う勇気も、戦ってくれる相手もいないひとりぼっちの人間だ』

「ッ……、ホンット! 有名人ってムカつく…………!!」

 

 その言葉を最後に再び突撃を仕掛ける。相手のファンネルの相手はガンビットがこなしてるから問題は無い。

 

「これで、終わりだあああぁぁッ!! ────ッッ!!?」

『……っし』

 

 ビームブレイドの突きは相手の強烈なサイコフィールドによって弾き返された。

 いや、それどころじゃない。ルシファーの機体全面を照らすサイコフレームが、緑に輝いている。この状態は、ヤバい。強い共鳴状態にあり、シルヴィーも反応している。つまり…………不味い。そうとしか言えない。早く、逃げ───!

 

 逃げようとした私とシルヴィーは、突如降り注いだ膨大な光に包まれ、瞬く間に蒸発した。

 

────────────────────

 

「あっら〜カスミちゃん! いらっしゃ〜い!」

「オレは紅茶。コイツのはおまかせで」

「わかったわ〜!」

 

 ……カスミに負けた。のはいいんだけど、なんで私、マギーが経営してるオカマバーにいるの?

 とりあえず、カウンター席に2人して座る。

 

「……はぁ、あのビーム何」

「コロニーレーザー」

「どこにあったのそんなもの」

「必殺技で、オレが召喚した」

「馬鹿じゃないの」

「馬鹿だよカグラ考案だもん」

 

 バトルの反省会もひとしお、カスミには紅茶が、私には何故かホットミルクが出された。なんでホットミルク?

 

「じゃあ、色々聞こうか。お前とビリーヴについて」

「…………やっぱり恥ずかしい」

「乙女の葛藤はいらん」

「むぅ…………」

 

 素顔も知らない赤の他人、それもさっきまであんなに殺意を向けていた相手に、自分の恋路を話すのはかなり気が引ける。何よりこいつ、本気モードになると目がガン開きになって怖いし、そのせいで何考えてるかわかんないんだよね。

 

「…………私は、ビリーヴのことが好き。そういう意味で」

「ふーん」

「軽いなぁ……。人間が、ELダイバー相手にだよ?」

「別にいいだろ。世の中動物に欲情するやつなんて普通にいるぞ」

 

 ……そういう話じゃないと思う。

 

「それで、ビリーヴも私のことが好き」

「なるほど、じゃあそんなにネガティブになることないだろ。わかってんなら」

「はぁ……。さっきも言ったけど、私は人間で、ビリーヴはELダイバー。GBNのシステム上そういう行為は出来ないし、サルベージしても色々困るじゃん」

「撥水塗料なら問題な──」

「オイ」

「ごめん」

 

 ナチュラルにデリカシーない発言しやがって……。あと色々ってそれで解決するわけじゃないから。

 

「それに、私みたいなのがビリーヴとなんて…………釣り合わないよ」

「……お前がリアルでどういうやつなのか、薄々わかるけどな」

「言ってみてよ」

「クソ陰キャ」

「よく言ったな」

「だってそうだろ、お前のノリがリアルで通じるわけないし」

「ストレートに言われると傷付く…………」

 

 心傷を癒すようにホットミルクをゆっくり流し込む。仄かな甘みと暖かさが全身に染み渡る。

 

「んで、どう釣り合わないんだ? 教育係みたいなもんだろ、お前」

「……私と違ってビリーヴは、他人を引き付ける力があるから」

「それで、根暗陰キャの自分より相性いいやつがいるだろって」

「それもあるんだけど…………」

「だけど?」

「咄嗟に、そう無意識に………………キス、してしまいまして」

「ぶふぉっ」

 

 私の発言にカスミは飲んでいた紅茶を吹き出した。あれ、こいつ結構面白いな? ……じゃなくて。

 

「あらあらあら〜! あなた結構大胆ねぇ〜!」

「ちょっとした独占欲が出たというかなんというか…………」

「ケホッ、ケホッ、それしかねぇだろ……」

 

 いつの間にか真ん前に立っていたマギーも会話に加わってきて、この3人で恋バナすることになる。ひっでぇな絵面が。

 

「それでぇ、ちょっと顔を出しづらいってことなのね〜」

「まぁ、そんなとこ」

「相思相愛でキスして…………いや、もうウイニングランだろ」

「会うのが…………恥ずかしいって言ったら?」

「勇気持てよヘタレ」

「殺すぞ」

 

 じゃれ合いも束の間、すぐに話題は戻る。

 

「はぁぁ…………、あまつさえリアルじゃ周りと馴染めない社会不適合者なのにこんな奥手なヘタレとか迷惑しかかけない。てかもう顔向けとか出来ない」

「じゃあオレが脚引きづってでもビリーヴのとこに連れて行ってやるよ」

「あらまぁアグレッシブ」

「アグレッシブというかバイオレンスでは?」

「どうでもいいよ」

「それで…………このヘタレクソ陰キャはどうすればいいんだよ」

「そんなの自分で考えろよ……。オレは他人の色恋沙汰には干渉しない主義だ。どっかのピンクとは違って」

 

 カグラがくしゃみしてる姿が見える。

 

「あぁもうほんっと…………馬鹿だなぁ私。かないっこないというか、叶えても不適合率が増すだけなのにデータに恋なんてさ」

「別に、相手も自分のこと想ってて想いを返せたならそれでいいんじゃないか。データに恋とか日本じゃ日常」

「そうよ! せっかく両想いになれてるんだから、ちゃんとリードしないとダ・メ・よ♡」

「………………」

 

 わかってる。わかってるけど…………口には出せない気まずさがある。

 想いは伝わって、キスもして、それなのに私は何が何だかで逃げて…………今更戻るのはなんかこう、あんまり気が乗らないというか、なんというか…………。

 とにかく言語化出来ない心のしこりがあるのだ。わかってほしい。

 

「…………マギー、ちょっと出てくれないか。プライベートに障る話するから」

「あらそぉ? わかったわ」

 

 カスミに言われる通り、マギーは厨房の方へと戻っていく。

 

「…………プライベートに障る話って?」

「いや、ちょっとした実体験のお話だ」

「誰の」

「カグラ」

「カグラの………なんで?」

「あいつが同性愛者ってことで、参考になるかと思ってな」

「ふーん、何?」

 

 ホットミルクを飲み干しながら相手の話を促す。

 

「カグラは昔、ある人を好きになった。クラスメイトのカースト上位の女子だ」

「うん」

「勇気を出して告白したが断られた。『同性とは流石に無理』って言われてな。そっからすぐにクラスメイトに笑い話にされるぐらいになって、カグラが学校で虐められる原因にもなった」

「……へ、へぇ。カグラって虐められてたのに教師やってるんだ」

「まぁそこは本人に…………で、だ。そっから数年経ったある日、カグラはその告白した相手と再び知り合った。当時カグラは未練はあるが引きづってはなかったし、別に好きな相手がいたからあんまり意識はしてなかった。だがその人には…………同性の恋人がいた」

「同性の……?」

「後々考えたら同性でもいいんじゃね? って思ったらしい。カグラは自分自身が誰かに影響を残せたって喜んでたよ。はい、終わり」

「…………何を伝えたいのか全然わかんないんだけど」

「断ったところで影響は残るってことだ。今後一切お前は人間を好きにならないかもな」

「怖いこと言わないでよ……」

 

 ホントにそうなったらどうすんだ。

 でも、カスミの言葉には一理ある。一見自分には無いだろうと思うことも、誰かに言われることであるんじゃないかと疑ってしまい、最終的にソレを持ってしまうことは偶にあるものだ。

 

「まぁもしそうなったらもう一生恋人なんて出来ない。欲しいチャンスは掴めるうちに掴んでおいた方が自分のためになるぞ」

「…………まぁ、それはあるかもね」

 

 単に絆されたとかじゃない。こいつの言葉に感化されたとかじゃない。なんというか、馬鹿馬鹿しくなった。こいつらと会話して、カグラの実体談を聞いて、自分が釣り合うどうこうでものを言ってるのが惨めに思えただけだ。

 「愛してる」とか「大好き」とか……そんな言葉でいい。「あなたの事しか考えられない」って、そういう理由でいい。心を強く蝕まれる事が恋なら、それを受け入れるのが愛なんだ。受け入れてからうじうじ考えるのは本っ当にクソダサい。そんなんじゃ本当に…………それこそビリーヴと付き合うなんて以ての外だ、私なら殴ってから谷に突き落としてる。

 

「…………じゃ、行ってくる」

「そうか。あんま見せつけるみたいにイチャつくなとは言っておくよ」

「保証はしかねる」

「ハァ…………」

 

 自分で自分を谷に突き落とす。這い上がってみろよ、私。どっち選んでも地獄なら、せいぜい後悔の無い方を選べ。

 

 私は、もう昔の受け身だった自分とは、違うんだ。

 




ただの地獄より、見たい地獄
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