ぬらりひょんは異世界でも百鬼夜行を作る様です   作:雑食で節操なし

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左遷先が村と思ったら町だった

乗り合い馬車に揺られながら本日何度目になるか分からないタメ息を吐く。

一緒に乗り合わせた他の乗客たちも関り合いに成りたくないのか皆顔を合わせようとしない、私も彼らの立場だったら同様の対応をしていたと思うから特に文句もない。

また一つタメ息をつき何故こうなったのかと思い返す。

 

半年前、私は王都にある冒険者ギルドの受付嬢をしていた。

そう、していた、だ。

ある日ギルド長に呼び出された私は突然移動を告げられた、移動場所はこの王都から馬車を乗り継いで2か月と半月の場所にある田舎の村。

ハッキリと左遷なら左遷と言って下さい。

全力で抵抗しますから。

 

無駄だった。

大貴族にも顔が利くギルド長の決定に私の様な新人が抵抗しても無意味だというのが良く分かった。

 

くそう、私には夢があると言うのに。

私の夢は冒険者をサポートする事だ。

昔から物語が好きだった私だが特に心引かれたのは英雄譚と呼ばれる昔から読み次がれている話だ。

 

古今東西の英雄たちの活躍に胸を躍らせた、残念な事に私には冒険者としての才能は無かったが。

その為、彼ら彼女らの活躍をサポートする事を決めた。

その為に依頼内容、実力なんかを良く吟味してから手配をしていた程だ。

まあ彼らが活躍してその陰には私が居て、そして私がいなければこの活躍は無かったと書かれないかなぁなんて思って良くアピールしていたけれど。

 

そんな私が何故左遷されなければいけないのか。

あれか、陰でギルド長の事をハゲジジイ呼ばわりしていたのがいけなかったのかな。

謝りますからどうかこの左遷を取り消して下さい!

 

ダメだった、ちくしょう。

こうなればその村で英雄の卵を発見して育てるしかない。

そう決意して王都を後にした、そしてつい先程私の赴任先である村に到着した。

 

村、これが村?

下手な町より大きく栄えている。

多分村人たちで構成された守備兵たちの士気も高い。

なにこの村。

 

呆然としていると村長がやって来た。

あっどうも、今日付けでこの村?のギルドで受付嬢をやらせてもらうメレルと申します、ヨロシクお願いします。

そう言って頭を下げると朗らかに笑いながら握手を求められた。

 

ところでこの村の発展具合は凄いですね、そう伝えると凄いのは大将様のおかげだと言われた。

大将?村長である貴方がこの場所で一番偉いのでは?

その疑問が顔に出ていたのだろう、笑いながらこの村で一番偉いのは大将ですよっと言っていた。

 

ではその大将に挨拶をしたいと伝えると困り顔で今この村を離れているとの事だ。

一番偉いのに出歩いているの?普通偉い人はどっしりと構えていて気軽に出歩かないものなのでは?

 

そう思いながらもしばらく談笑を続けていると、ズシンズシンと何やら大きな物音が聞こえて来た。

それに続くように門番から「鬼熊殿が帰って気たぞー!」という声が上がった。

 

鬼熊ってあの鬼熊?

危険度が高く、ひと度現れるとギルドでもトップレベルで対処するあの災害認定されてる鬼熊?

そう思っていると門からニュッと顔を出した、腕足にはトゲトゲの装甲を身に纏った全身を赤毛に覆われた巨大な熊がそこにいた。

悲鳴を上げなかった私は偉いと思う、その鬼熊の背中には何かを背負っている。

何だろう、そう思って良く見てみるとグレートボアだった。

高級食材であり強い事で有名なイノシシ、ギルドに依頼が来てもこなせる人材が少なく達成しても貴族たちしか食べられない。

むしろ貴族たちもグレートボアを食べれる事が一種のステータスみたいなそんな感じのイノシシ。

 

そんなグレートボアが荷車の上に十数体が雑に積まれている。

そうだよね、グレートボアは群れで行動する魔物で一体一体が強い上に連携して攻撃してくる。

だから厄介、そんなグレートボアを相手取るには群れの全員を相手にしなければならないからこそ有名なんだから。

そんなグレートボアをあんなに大量に仕留める鬼熊って強い、流石災害認定されてるだけあると思う。

少なくても、子供たちが「くまちゃん」なんて呼びながらよじ登る様な魔物では無い事は確か。

 

そう考えていると黄色い悲鳴が聞こえて来た。

今度はそちらに目を向ける、すると村の女性たちが騎士鎧に身を包んだ男性に声を掛けていた。

他にも村の男性たちが何やらアドバイスを求めている。

おそらく彼がこの村で一番強いのだろう、頭を脇に抱えて無かったら私も話を聞きに行っていたと思う。

 

デュラハンだと一目見て理解した。

デュラハンとは拭いきれない強大な怨み辛みを抱え、死して尚その本懐を成し遂げんと甦ったアンデッド型の魔物だ。

高名な騎士が名誉を傷つけ処刑され、死後もその名誉を取り戻されなかった時に発生する魔物だと考えられている。

そう、いるだ。

 

つまりどのようにして生まれてくる魔物かまだ分かって無い事が多い魔物だ、だが確実に分かっていることはとてつもなく強いという事だけ。

生前は騎士だっただけあって剣士の上級職パラディンのスキルも使える上に、デュラハンとしての死霊系のスキルも使える。

そんなとんでもない魔物。

首から上が外れた状態で微笑みながら女性たちの相手をしてるけど、その魔物は単体で城一つ落とせるレベルなんだけど理解しているのだろうか。

 

アゴが外れそうなくらい驚いていた私の耳に先程のデュラハンから訓練をつけてもらっていたであろう男衆の野太い声が届いてきた。

そちらの方では黒のローブに、鍔が広く黒のとんがり帽子をかぶったグラマラスな女性がキズだらけ泥まみれの兵士たちの治療をしていた。

 

………魔女だぁぁぁぁ!!

 

落ち着け私、英雄たちのサポートをする女はクールでなければいけない。

ほら深呼吸してもう一度見てみれば……魔女の中でも特級にヤバいメーテレアだった。

金の髪を肩で切り揃え、三角形を上下逆にして合わせその中央には目を配置した特徴的な模様。

見間違えじゃなかった、メーテレア本人だ。

 

ヤバいヤバいヤバい!魔女の時点でヤバいのにその上メーテレアなんて。

魔女とは冒険者にもいる魔術師や魔導師とは比べ物にならない。

そもそも魔術師とは、魔族が扱う魔法を解析して人間でも使える様にした魔術を扱う者の総称だ。

そして魔導師とは、解析が完了していない魔法を駆使し、魔術師たちを導く者の事である。

 

ではそれらに当てはまらない魔女とは一体なんなのか、それは魔そのものである。

魔法を扱い、新たな魔法を生み出し、理すらも手掛けるそんな連中。

魔女としての高い素質を持ち、魔導を極めた末に行き着く魔の極致それが魔女。

特にメーテレアは北方諸国を荒らし回り、国を3つも潰した存在である。

彼女が現れたと知れた瞬間に各国は戦争を即座に中断し彼女に対する為に協定を結ぶ様なそんな伝説級の存在だ。

彼女がこの村に居ると分かれば聖人教会が大量の兵士と共に攻め込んでくるだろう。

鼻の下を伸ばしてる場合じゃないんだよ、分かってるのか兵士諸君。

 

カチカチと歯が噛み合わない、ギルド長なんで私をこんな地獄の鬼も真っ青な村に送り込んだんですか。

恨みますよ、ギルド長。

そう恨み言を内心呟いていると誰かが私の肩に手を置いてきた。

誰だろう?そう思いながら振り向く。

アイリーンさんだった。

アイリーンさんはギルドでもトップランクの凄腕。

 

アイリーンさんは雷の魔術を全身と剣に纏わせ、凄まじい速度で移動して相手の武器や鎧事切り裂くその様から雷豪剣のアイリーンと呼ばれている。

私の最推しの冒険者。

 

そんなアイリーンさんがなんでこの村に?

そう思っているのが顔に出ていたのだろう。

 

「君をギルド長に推薦したのは私だからな、様子でも見ていこうと思ってな。

ああ、それと暫くは私もこの村でお世話になるからよろしく頼む」

 

え?

……えっ?

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