続航宙軍 2章 アラム聖国の憂鬱 007
あのベルタ軍との戦いにて、あの衝撃を忘れることの出来ない一人の人物がいます。
アラム聖国内で、法王の次に位の高い、12人の大司教の一人、ペテロ大司教です。
アロイス国より逆賊のスターヴェークの暴徒がアロイス国を攻めてくるので援助を願いしたと懇願書が届いた。正直、この願いを私は反対したのだが、法王様が、勝手に了承してしまった。
その理由は、ここ最近の法王様の夜のお相手の奴隷が、このアロイス国からの奴隷で、それを大層喜んでいるためだ。
アラム聖国の信者にというか一部権力者に、アロイス国から多くの奴隷それも、若い女子の奴隷をもらい受けるために、法王自ら私にこの戦いの指揮官に任命された。
そう、実は、私は若き法王に対して、今のようなルミナス様の教えとは真逆の行為をたびたびお諫めしていたため、疎まれていた。そう、厄介払いに、この戦いに駆り出された。
しかし、ある意味幸運な出会いだった。本物のルミナス様の御姿と御業をまじかに見ることが出来たので、その思いが確信と変わっていた。そう、秘匿されている聖典に記載されていた
『見よ【大いなる災い】の時、天より【使徒】が降臨する』
という聖句を知っていたからである。
まさに、今、この時、懺悔し悔い改めなければその命を失うと。だが、どうやってこの真実を伝えられるだろうか。
多くの聖職者は、ルミナス様の教えに反して私利私欲に走ってしまった。その結果が今の教会本部の実態なのだ。勿論、全部の信徒がこのような状態ではない。そうだ、信頼出来るメンバーを招集し、レジスタンスを結成し、革命をおこそう。今は、使徒様に誰か使いを出そう。直接、自分が動き見つかると面倒になるからな。
そういって、自分の配下の信頼できる司祭の一人を呼びつけた。名をシモンという。
アラム聖国には、法王の下に大司教(12人)、司教(144人)、司祭(1728人)、助祭(20736人)これは、一人の大司教に12人の司教がおり、その司教にもそれぞれ12人の司祭がいて、その司祭にも12人の助祭がいるためこのような数字になっている。
兎に角、選民意識が高く、特に血族を重んじ選民以外は代々奴隷としてこき使っていた。人口もセリーヌ大陸のこの時代の総人口が約10億人に対して、アラム聖国だけで4億人の人口がある。
そのうち、約一割の4000万人は奴隷である。他国から買い付けたり、無償で提供されてきている。その殆どが、過酷な労働を強いられている。但し、中には犯罪者もいるが、実は冤罪で疎まれた聖職者もその中にいるのである。
「シモンよ。実は、お主に大事な使者の任務をお願いしたい。このことを他の聖職者には一切知られてはない。ただ、大変重要な任務だ。受けて貰えないでしょうか」
「ペテロ大司教様、むしろ、このシモンに重要な任務のため、召命されたことを心より感謝致します。自分のような身分の低い出の者でも、分け隔てなく接してくださり、司祭にまで任命された御恩をこの命で良ければ喜んで捧げ申し上げます」
と大司教の前で跪き頭を垂れています。
「本当に、そなたのような弟子を持てたことを、ルミナス様に感謝致します。これから話す内容は、私自身も一命を掛けて臨むつもりだ」
「そのような大仕事にこのような者を選んで頂き誠、恐悦至極でございます」
「私は、先のアロイス国応援の闘いに出向いた時に、本物のルミナス様の御姿と御業を拝見する幸運に出会えた。30万の兵士だけでなく、その騎馬も家畜も周辺にた魔物さえ動きを止めて、聖句にある「生きとし生けるもの」全てが見前にひれ伏した。そして、その御業に【裁きの槍】が、我らの【聖なる盾】を一瞬で灰に替えられた。さらに、そこには黄金の羽を広げた【聖なる翼】の神機と【使徒】様が顕現された」
「なんという、奇跡。あぁ、ルミナス様の御姿を私も見とうございまする」
「そなたは、これから、ベルタ国の北に新たな国「人類銀河帝国」に出向き、この信書を【使徒】様に届けて欲しい。但し、この任務では、家族も含め知人にも知らせる事を禁ずる」
「はっ、その任務、我が命を懸けて必ずや成し遂げて見せまする」
「頼んだぞ、シモン」
こうして、一人の密偵がこの任務のため旅立ちました。
ここは、法王ユダの執務室です。
「何故、アロイス国からの捧げものがこないのじゃ。どうなっておる」
と凄い剣幕で怒鳴り散らしています。
「はっ、法王聖下。お答え致しまする。アロイスは、数か月前に滅亡し、ロートリゲン・アゴスティーニは、民衆の前で処刑されました。そのため、それ以降捧げものが途絶えております」
「何!、うちから応援の軍を送ったではないか。その軍はどうしたのじゃ」
「はっ、これに関しては、そちらにある出兵報告書にて記載していますが」
「はぁ~、そんなものは余は知らんぞ」
そうです。この法王さん、殆ど自分の仕事を行っていません。
「ペテロを呼べ。直に内容を報告してもらうぞ。よいか、直ちにペテロを呼び出せ」
「はっ、畏まりました」
とそこにいた執務官が部屋を飛び出していかれました。
法王の執務室を出て行った執務官の呟き
「まったく、あの、クソガキ。散々こき使って、そのうち【天罰】に遭うじゃねぇ」
とぶつぶつ言いながらペテロ大司教の執務室に向かいました。
「ペテロ大司教様は、お部屋におられるでしょうか?」
と執務室の外から尋ねています。
「はい。どちら様でしょうか?」
とペテロ執務室の執務官から問われました。
「はい、法王聖下の執務室のシメオンです」
「どうぞ、お入りください」
「ありがとうございます。失礼致します」
「おぉ、シメオンか、また、法王聖下様から面倒事ですか」
「はい、仰せの通り、法王聖下様が先日の出兵の報告を直に聞きたいと仰せであります」
「あい分かり申した。今から、伺います」
「はぁ、もう最近は夜のお相手が新しい方がおられず、うっぷんが溜まっておいでです。正直このままではアラム聖国は、、大丈夫なんでしょうか?」
「そうですね。シメオンの心配はごもっともです。でも、天は必ずや我らの祈りをお聞き下さるでしょう」
「はい、そうですね。わかりました。ご面倒おかけいたします」
こうして、大司教が法王の元に向かわれました。