続航宙軍 3章 クレリア王女の憂鬱 003
クレリア王女の執務室(帝都ポラリス)
「王妃様、また、ルドヴィーク近辺の領土から元南部の貴族の方々の懇願書が来てますよ」
「えぇ、分かったわ。サーシャもありがとうね。何度も、スターヴェークの揉め事に巻き込んで、本当ならこっちでの近衛兵の訓練の指導があるのにね」
「いえ、そんなことはありません。むしろ、私が育った町でしたからね。でも、南部の出の者は、今も待遇に不満をもっている元貴族が多いです」
いざ、国を取り戻したから良いってわけでなく、今まで元アロイス王だったロートリゲンに甘い汁を吸っていた者達が、今では見向きもされず、さらに領民は新しいルドヴィーク領や、スターヴァイン領に逃げてしまい。地元の領地に領民が激減する。そのための対抗手段として、傭兵団による脅しをかけ、領民を苦しめている。
当然、ドローンによる偵察にて状況を知らされたスターヴェーク軍のダルシム元帥以下の選抜隊にて、鎮圧し領民を解放させた。
また、一方では、アロイス軍に雇われていた半農半兵のもと領民は、早々にポラリス領に移住を要望したので、受け入れたが、元居た領主が返還の要請をしてきた。
正直、呆れかえったが、これにはさすがに業を煮やしたダルシム元帥が、激怒し兵を率いてその領主を追放した。
「クレリア王妃様、もう、今宵も遅い時間ですので、もう、お休みください」
と執務官の女官に声をかけられました。
「ええ、わかったわ。もう、こんな時間なのね。むしろ、あなた方に迷惑をかけたわ。ありがとう、今日はここまでね」
と言われ、部屋を退出した。
そう、自分がいつまでもいると執務官の子たちが帰れないのよね。
「そうだ、屋上のテラスに行って見よう」
と重い足取りで屋上に出る階段を上っていった。
「えっ、アラン? そこにいるのはアランなの」
そうです。屋上のテラスにあるベンチに腰かけて項垂れていた人影を発見しました。この屋上は基本アラン、クレリア、セリーナ、シャロン、カリナ、と最近増えたエルナだけが行ける場所なんです。ドローンの発着場にもなっています。結構広い屋上で、その隅にガラス張りで出来たちょっとした休憩所が作ってありました。観葉植物と小さなテーブルに椅子が6脚あります。
「アラン、、どうしたの?返事がないけど、、」
と言いかけたクレリアが見たアランの姿は、肩を震わせて咽び泣きしているアランの姿でした。
そんなアランが独り言のように呟いていました。
「なぜ、、同じ人間同士でいがみ合い、争うのだろう。あれほど、ルミナス様の奇跡を見せているのに、ルミナス様の気持ちも分からずに人間同士で殺し合いや強奪がおこるのだろう。
人間ってなんなんだ。バグスが、もう目のまえに来るという時に、、なぜ、一つになれないんだろうか。自分の欲望を満たすために他を傷つけ、苦しめてもなんとも思わない。バグスと変わらないよ」
先ほどまで、ダルシム元帥から、現状のスターヴェークや、近隣諸国の不平不満の状況の報告を受けたようです。
そうです。アランのいた世界。特に軍隊の中では、多少の喧嘩程度はありますが、最後はお互いに信じあい、助け合ってあのバグスと死闘を繰り返していました。それが、どれほど壮絶な戦いだったか。それに比べればオークキングや、ドラゴンでも恐れずに戦えたんです。
そして、あの惨劇をもう二度と見たくないんです。目の前に数えきれない人間の食いちぎられた戦場の中で戦うのが、どれだけ苦しいか。
この惑星アレスでは、バグスとの戦闘経験があるのはアランただ一人ですから、、
そんなアランのそばにクレリアが近づいてこう伝えました。
「アラン、、あなたは、縁もゆかりもない私をいえ、この星の全ての人類に連なる者を守るために多くの苦労を背負っているのね。
本来なら、イーリスで元の国にも戻れるのに、、あなたの苦労を少しでも、私に、いえ、私たち妻になった者達にもお分けください。私も、さっきまで、自分の国での些末な出来事で嫌気が指していました。
でも、アランの苦しみに比べれば、本当に些末事でした。もう、一人で苦しまないで下さい。お願いです。わたしにも、、、」
と言いかけながらも、クレリアも大粒の涙を流しながら、アランの肩越しから、抱き着いていました。
「リ、リア、ありがとう、、そうだったね。もう、一人じゃなかったんだよね」
『私もですよ』とイーリスから、通信が入った。
『私も、、力不足ですが、、』とエリス
『私も、、、、』セリーナ、そして、シャロン、カリナさんが皆、アランへその思いを伝えています。
『ありがとう、、みんな、、ありがとう』
まだ、改革は始まったばかりです。そんな簡単に、人は変われないんです。でも、確かな事もあります。そう、こうして助け合う仲間がいるんです。
この星に降り立った、一人の航宙軍士が、、冒険者を経て、貴族、そして『使徒』なった
物語は、これから佳境に向かいます。