続航宙軍 3章 新しい武具での訓練と壮絶な講習 005
帝国軍の訓練場での様子です。
「ダルシムさん、この新しい剣ですが、電磁モードの切り替えのタイミングが難しいです」
「あぁ、俺も、同じだよ、それに、相手の剣まで切ってしまうので、今までの剣術ではさばききれず体勢を崩してしまう。フェイントもかけずらいし、どうしても、過去の戦い方の癖が出て使い切れないんだ」
「そうですね。そもそも対人とバグスとでは違いますね。そのために今回アラン様がその一端を見せて、さらに仮想訓練(シミュレーションバトル)といったものを行うということです」
「ああ、これから本格的にバグスに対抗する訓練になると言われてた。唯一この世界でバグスと直接戦ったことがある方が、アラン様だけだからな。
あのアラン様でも生身では一対一で勝てないそうだ。なんでもパワースーツというものを装備して漸く倒せる相手との事だ。そして、今回のこの装備がそれを上回る性能なので、使いこなすよう言われてました。特にこの魔法力との併用が必須だと言われてましたな」
「そうですね。その前に、実際のバグスとはどういものかの映像による公開講習が明日行われるようです。それも、午前中に、なんでも、朝飯は少なく取れという指示でした」
「あぁ、聞いている。この映像は、3D映像でその場の匂いも再現すると言われていたぞ。なんでも、座席そばには、吐物を入れる専用の袋を用意しているそうだ」
「ええ、聞きました。相当、ショッキングな映像だそうです。ある程度は軽減しているとは言ってましたが、アラン様は、その闘い後、極度の睡眠障害になられ何日も寝られなかったと聞いています。そのため専用の精神治療も行ったそうです」
「ああ、過去にその話をされたことがあって、その時も、途端に顔が青ざめて、涙が止まらなくなり嘔吐しかけたほどだ」
「そうなんですね。どれほどなのか、正直、自分は怖いです。でも、その敵といつか必ず相まみえるんですよね。もし、我らが負ければこの星の全ての人類が滅ぼされてしまうんですよね」
「ああ、そうだ、だからこそ、この星に『使徒』様を使わされたのだ。だけど、そのお方一人では
そう、アラン様だけに重荷を背負わせてはならぬ。少しでも我らが、そのお力添えが出来るよう鍛錬せねばならないのだ」
「はい、勿論です」
◇ ◇ ◇
今、特別講習が開らかれようとしています。この講堂には、3Dプロジェクタと音響及び振動、周囲の匂いも再現できる施設です。
約200名の隊長クラスのメンバー達で、さらに希望者のみ限定でした。
予め、その凄惨な体験が無理な人には辞退する権利も与えました。 にも拘わらず、一人も欠けることなく全員が参加しています。
始まる前に、アラン様から一言がありました。
「今日、この講習に全員が参加してくれたことを誇りに思う。ただ、これを見た後も、この戦いに参加したくないものは、遠慮なく申し出て欲しい。
正直、この映像は、、出来るなら誰にも見せたくないんだ。この俺が体験した映像だ。俺自身ももう、出来るならこの映像を見たくないんだよ。でも、60年後にはこの悪魔がこの星にやってくる。それは変えられない事実だ」
と述べられた後、この場の最正面の席に座られました。
横には、クレリア、セリーナ、シャロン、エルナ、カリナ王妃が座られています。最初は王妃たちには出ないようにとアラン様が気遣っておられましたが、むしろ、アラン様の通られた苦難を知らずに妻の資格がないと言い張り、断固として拒否されたそうです。
スター級重巡洋艦[テオⅡ]勤務時代でのある植民星に救援に行ったときの映像です。約7割の住民がバグスに殺された内容です。
上映が始まりました。ところどころ、戦況報告の通信が流れています。
「ガー、、、ガー、、こっちの街は、、、、うぅ、、ぜ、全滅です、、、、なんだ、、人が、、ガー」
ノイズまじりの通信に、報告者が嘔吐をこらえて、報告しています。
「いたぞ、、バグスだ、、、全員、直ちに攻撃、、、、バババババ、、、ギーーババババ」
激しい、戦闘音が飛び交い、バグスを倒していますが、その足もとには、人の頭がぐちゃぐちゃに潰れて、内臓が飛び出しています。周囲には異臭が充満していて、いくらパワードスーツのマスクがあっても、その異臭が少しならず、匂っています。隊員たちは嗚咽と自分の胃液の混じった口の中で、、それでも、バグスを倒すため懸命に戦ったいます。
中には、さっきまで、息のあった少女の死体が、、無残に食いちぎられた姿が、、その先にいるバグスは、殺すのを楽しむように、人を生きながら叫び声をあげている人間の手足を食べています。その残虐性は、異常としか言いようがありません。
放映が約10分ほどで終了しました。
この講堂の中では、至る所で、泣き声と、嘔吐する音、、あまりの光景に言葉を失い呆然するもの、、そう、まともに見られていたものはいませんでした。只一人、握った手から血が滴った後が残ったアラン様がおられました。もし、あの時、もっと早くここにこれたら、そして自分の力のなさに後悔した自分がいたんです。
放映が終わったあとには、無言で項垂れた人が殆どです。席を立とうにも、足が震えてまともに立ち上がることが出来ない人もいます。
最後にアラン様が
「これが、バグスだ、、」
「ア、アラン、、これが、あなたが通って来た闘いなのね、、うぅ、」とむせび泣きするクレリア。
アラン様が、ここにいる全ての人に向かいこう叫んだ。
「俺は、愛する者のため、ここにいるみんなの為、そしてこの星の人類を、必ず守って見せる。夫として、指揮官として、『使徒』として、ルミナス様の下、必ず勝利する。そして、一緒にこの戦いに挑む戦士を俺は待っている」
その言葉を聞き、すぐそばにいたダルシム元帥が、涙しながら近づき
「アラン様、このダルシム、共に修羅の道を歩むことを女神ルミナス様とアラン様に誓います」
と、その場で跪きました。
その後、その周りに一人、また一人と人が集まりだし
「私も」「俺も」と段々と声が広がり、この講堂にいる全ての者が、アラン様の元に集まり、跪いています。
「アラン、私たちも勿論あなたと一緒よ」
といいながら、妻たち全員ががアランのそばに集まりその手を取って皆の手が重なった。
「ありがとう、うぅ、ほんとうに、ありがとう、、」
その後に待ち構えている、地獄の訓練が始まります。