続航宙軍 3章 地獄の訓練 006
あの壮絶な講習の後、隊員たちの目つきが変わっていました。その後行われるバグスとの戦闘シミュレーションが開始されます。
この訓練の前に、アラン様からの注意事項を述べられた。
「これから、行う訓練は、今までの物とは全く異なる。痛みも感じ、匂いや周りの状況も実践とほぼ同じだ、只違うのは、死ぬことはない。しかし、自分が負けた場合は、かなり精神的ダメージを受けるだろう。10人一組で、バグスの精鋭部隊の装甲虫兵に対戦する。その外皮は我らの特殊合金以上の強度だ、さらに動きが素早く、過去の航宙軍でもパワードスーツの加速機能を全開でやっと追えるレベルだった。
さらに彼らは、会うたびに強くなっていたので、現時点で自分が戦っていた時よりもさらにアップした強さに設定してある。まずは1匹から始まり最大10匹の部隊と対戦する」
そう説明されたのち、
「まずは、俺、一人で戦ってみる。どのように戦うのかまずは参考にして欲しい。自分は、過去は銃のみでの戦いだったが、接近戦がかなり不利だった。そのためこの新しい装備を考案したんだ」
そう言われて、シミュレーションルームに入られた。外にいるメンバーは、仮想空間の映像をモニター越しに見学出来る。
「レディー、ゴー」という合図とともに、戦闘が始まった。
まずは、1匹モード
バグスが現れた瞬間、アラン様は、最速の加速モード5倍で敵に近づき弱点である関節の付け根に対して、剣で連続コンボを電磁モードで炸裂。当然、それだけでは倒せていない頭と胸の甲殻の隙間から、剣を差し込み、魔法「ファイヤーグルネード」X5をその体内に向けて刺さった剣先から発動した。そしてゆっくりバグスが倒れこんだ。
「おお~流石です。アラン様」と周りのもの達が賛美していました。けれど、アラン様の表情が何か、不満そうでした。
『イーリス。少し良いかい』
『はい、何でしょうか?』
『今回のバグスのデータはイーリスが修正したんだよね』
『はい、そうです。過去の戦闘データから、予想される防御力や攻撃力の増加率を算出しました』
『そうか。外装の強度は上がっているけど、関節の付け根やその回避動作時間がそのままのようだ。また、内部の火力に対する防御力も変わらないように感じた』
『確かに、言われるとそうですが、それも上げた方が良いのでしょうか?』
『ああ、やつらの機敏さや、回避能力は凄まじった。あのM151レーザーパルスの2発目を避けていた。0.5秒で5発の連射に対して約0.1秒の間隔より反射神経が上回った。
自分の連続コンボが一発目は当たっても、2発目は多分避けられていたと思う。それに、内部の強度があのサンバーボルトを受けて1秒以上かかって内部破損出来たので、さらに内部強度を2倍に上げて欲しい』
『了解しました。直ちに修正します』
『パラメータ修正後、5匹のバグスでお願いする』
『了解しました』
こうして、次の戦闘が始まった。
結果は、凄まじいものだった。5匹に囲まれながら、何度も、アラン様が彼らの攻撃を受けて吹き飛ばされ、その都度攻撃パターンを変えながら、約30分もの間戦闘が行われ、かろうじて勝利なされました。
終わったときには、あのアラン様が息絶え絶えになる姿を初めて目にしたのです。今ですら精霊様の加護にてアラン様の姿を目に追えられたけど、昔ならその姿さえ見ることが出来ないほどのスピードで、さらにバグスも同様にその一体一体の姿を視認出来なかったと思われます。
ここにいる、全ての者が、その驚愕の戦いに絶句しています。
アラン様がシミュレーショルームから出てこられました。
「見てのとおりだ。本来なら聖魔法なら、瞬時で倒せるだろうけど、それでは意味がないからな君たちが戦える技術で対応した。おそらくだが、今の君たちが、一対一では勝てないだろう。 チームで相手を囲みながら戦うしかない。特に攻守をそれぞれ分担して対応しながら対処してみてくれ。ふぅ~俺でも5匹が限界だな」
「これが、バグス、我らに倒せるのだろうか」と次に控えていたメンバーが呟いていました。
こうして我らの訓練が始まった。10人でそれこそ2匹が限界だった。持久力も攻撃回避能力も攻撃力も全てが足りなかった。殆どが魔石と銃のエネルギーパックを使い切り、何人かで抑え込んで漸く仕留められた。それに10人中3名は途中離脱している。
各人がシミュレーションルームから出てきたときは、ほぼ全員が倒れこんだ。戦闘終了後には、「ヒール」が照射され傷は癒えているが、体力が限界だった。
過信していた。今までの訓練でそれなりに戦えると思っていた者達だったが、ずたずたに叩かれた。
この世界での魔物ならこの装備ならドラゴンとも渡り合えると思っていた。しかし、結果は惨憺たるものだった。
この様子をご覧になられていたアラン様が、一言語られました。
「無様だな。これが、今の君たちの実力だ。特に、攻撃を食らった後の対応が、怯えきっていて、防御もまともに出来ていない。この中で、戦場経験者は何人いるんだ」
その横で見ておられたダルシムが答えました。
「この中では、5名だけです」
「そうか、人間同士での戦場では、こんな展開にはならないからな。味方も守れないし、攻撃も出来ない。基本的な戦いが全く出来ていないんだよ。
奴らは特に殺戮を楽しんでいる。怯えた時点でその者に対して執拗に襲い掛かってくる。まずは痛さに耐えて、平然とすることが大事だ。吹き飛ばされても、直ぐに立ちあがり何でもないかったかのように振舞う事が大事なんだ」
今、戦ったメンバーは、そのまま返された。その後に続いたメンバーは、すでに怯えている者がいた。そしてある者がアラン様に質問した。
「ア、アラン様は、怖くないのですか?」
即答されました。
「怖いさ、いつも、バグスを目の前にいると思うと手が震えるんだ。だけど、あのバグスに襲われて、ずたずたにされた人間の死体を見たら、自分が戦わなかったら自分の愛する者が同じ目に遭うんだ。
そう自分に言い聞かせて自身を鼓舞するんだ。あとは、何度もこの戦闘を繰り返し、頭で動くのでなく体で感じて動くようにしている。戦っている間は無心だ」
「そうなんですね。この戦いを何度も、、、」もう、これ以上の言葉は出ませんでした。
こうした、白兵戦は最後の闘いです。出来れば、宇宙空間内で撃破出来ればそれに越したことはないんです。でも最悪のケースも考えて行動しなくてはなりません。また、敵が艦に乗り込んでくる可能性もあります。そう、タウ・ベガス2星系でのイーリス・コンラート准将が遭遇したケースもあるのでこうした訓練が必要です。
今日の訓練に参加したメンバーの殆どが夕食もまともに取れないほど憔悴しきっていたそうです。でも、これを毎日繰り返すんです。こうした地獄の訓練が始まりました。