続航宙軍 3章 帝国軍入軍試験 007
今日は、他国も含め、この人類銀河帝国軍の入軍試験の日です。参加者は約1万人で書類選考にはじまり、一次試験を通過したものだけです。応募は20万人以上ありましたがその殆どが半農半兵していたもので、碌に剣術や体術を取得していないので、そのため、その殆どが書類選考で振り落とされています。
この場にいる者は少なくともある程度冒険者でいうB級以上、または、他国での近衛兵クラスのものばかりです。また、剣術や体術の免許皆伝や、魔法技能のA級クラスのもの達です。
最初は、体力測定を実施し、持久走、短距離走、基礎反射能力試験などを実施し魔法での実演試験を実施しました。
魔法に関しては、ヒール系の神官や治療師の組と、宮廷魔術師での攻撃魔法部隊とで別れて試験しています。当然、配属先が異なるからです。
そんな中、アラン様が持久走のトップを走る若い青年に目を向けています。そう、見覚えのある顔なんです。
(ナノム、望遠モードで先頭を走る青年の顔に見覚えがないかい?)
[はい、あれは、タラス村、いまでは市ですが、黒斑のビックボアに父親を殺された子供の顔に似ています]
(そうか、やっぱり、そんな感じがしたんだ。ありがとう。多分、ここの警備をしてる中にベック達がいたはずだけど)
[この会場の入り口の警備をしています]
(おぉ、分かった。ちょっと聞いてみるよ)
とナノムとの会話も終わり、早速、会場入り口に向かいました。といっても簡単にいかず、直ぐに護衛の者に止められましたよ。
あははは、くそっ。
横にいたクレリアさんには
「もう、勝手に出歩かないでくださいね。護衛の方々に迷惑がかかりますよ」
って怒られてます。
「ちゃんと、護衛の方にお願いすれば連絡してもらえます」
「は、はい」とただ、頷くしかないアランでした。そう、最近はこのパターンが多いです。
暫くして、息の上がったベックがやって来ました。
「はぁ、はぁ、ア、アラン様がお呼びだと聞いてすぐに駆け付けました」
「急がして悪かった。なぁ、ベック。今あそこで、持久走の先頭を走っている青年って、タラス市の出身者じゃないかい」
「は、はい、そうです。よく覚えていらしゃいましたね。そうです。彼はダイといってあの黒斑に父親を殺された子ですよ。時々、帰省したときに、剣術や、魔法を教えていました。彼の父親は当時の村一番の猟師でしたから、小さい時から山の中を駆けずり回っていたって言ってました」
「そうなんだ。あの持久力は大したものだ。俺とでもいい勝負になりそうだよ。もう、次走者を1周遅れにしているよ」
「はい、彼は本当に我慢強く、決して諦めないで鍛錬してましたよ。自分たちがアラン様のコリント領を開拓している時、直ぐに親父に言って、ここに来る許可を取った時、ダイも行きたがってました。親の仇をとってくれたアラン様にいつか恩返ししたいって、、そんなやつです」
「そうなんだ。律儀な性格なんだな」
「いえ、多分、自分たちと同じで、アラン様に憧れているんです。俺たちにとってアラン様やクレリア様はヒーローなんです」
「俺よりかは、お前たちは、クレリアに憧れていたんじゃないか、俺はあの時は大して何もしてなかったぞ」
と横目で隣を見ると、リアがにやにやしてますよ。
「えっ、い、いや、ち、違いますよ。もう、アラン様の活躍は、来る商人が口をそろえて賛美してました。特にグローリア様の事なんか、自分たちにはおとぎ話に出てくるヒーローそのものなんですよ」
とちょっと焦ってますよね。まぁ、あの時は、「師匠」ってリアが呼ばれてたっけ。
また、横目でリアをみたら、ちょっと残念そうにしています。ほんと、わっかりやすい性格ですよね。
「そ、そっか~」と今後は、アランさんが照れてます。
[似た者、夫婦ですね]とナノムが突っ込んできました。
「それにしても、凄い走りだな」(有名な、サッカー選手で、ロ〇ルト・カ〇ロスみたいだな)
「そうですね。精霊様の加護無しで、あれですからね。」
「もう、終了だな。少し挨拶しにいくかな」
「えっ、アラン様直々ですか?」
「あぁ、あれ以来会ってないんだから、、優秀な人材には声を掛けておきたいからな」
「今、行ったら、会場がパニックになります」と護衛の方々が必死に止めています。
「後ほど、入軍式にてお声を掛けて貰えばいいと思います。今言って、緊張してそのあとの試験にも動揺して満足な成績を残せないかも知れません」
「そ、そうだな。分かったよ。多分、試験合格するだろうからな。今いって取り乱したりしたら悪いものな」
と横目でみたら、リアがうんうんと頷いてます。あははは、
[うちのだんなっていつもこうなのよ]ってナノムさん、、解説は要らないです。
こうして、他の試験も終わり、結果発表になった。1万人のうち、合格したのは100名の者だけだった。勿論、タラス市のダイ君は合格していましたよ。
そして、入軍の式典にて、漸くダイ君と合う機会がありました。アラン様からの入軍の記章を一人一人に渡す時です。
「合格おめでとう。ダイ君。よくここまで鍛錬したね。たった一夜だけだったけど、あの黒斑で宴会したときにお礼に来た子だよね」
「は、はい、こんなおれをお、覚えていてくれたんですか?、、うぅ~。光栄です。アラン様」
と泣き出してしまいました。
そんなダイ君をそっと肩に手を添えて、
「これからも、宜しくな。きっとお父さんも喜んでいると思うよ」
と言って、軍の記章を手渡されました。
本編で出てきた登場人物にも、こうした出会いも良いかなって書いてみました。