続航宙軍 3章 戦艦イーリスの復活 016
聖地テラ・サーンクタに修理のために引き上げて、漸く1年になろうとしています。そう、もうすぐ、念願の戦艦イーリスが復活するんです。
◇ ◇ ◇
ここは、戦艦イーリスのメインブリッジ(第一艦橋)のコントロールセクションのメインパネルの前でのやり取りです。艦長席に座ったアラン様が、コントロールパネルを見ながら指示を飛ばします。各セクションとの連絡は、宙に浮かんでいる仮想モニターに各担当用の専用ボットが対応しています。
最初に艦長から、コントロールパネルに指示されたフロー図を見ながら指示します。
第一声です。アラン艦長が最初のコマンドを唱えます。
『補助リアクター起動確認』
『補助リアクター起動異常なし』
と、担当ボットから、音声で返答があります。以下同様。
『魔導リアクター起動確認』
『魔導リアクター起動異常なし』
『メインリアクター起動確認』
『メインリアクター起動異常なし』
『外部補強支柱及びサポータ切り離し確認』
『外部補強支柱及びサポータ切り離し完了』
『ドック上部開口』
『ドック上部開口完了』
『状態バランサー補助動力始動』
『状態バランサー補助動力正常起動確認完了』
『垂直上昇、微速レベル1』
『垂直上昇、微速レベル1にて上昇開始』
(本当なら、この場面には、あの宇宙戦艦ヤ〇トの音楽が、、流したいですよ)
今、新たに生まれ変わった戦艦イーリスが飛び立とうとしています。新しい装備と補強したリアクターに魔素エネルギー変換リアクターを搭載し、空に浮かび始めています。
内部操作には、今回新たに採用した各セクションの担当者と専用ボットを配備しているため、今までは50人程度の人員が必要だったが、今は、わずか10名程度で動かせるようになっている。イーリスのメインフレームも増強しているため今まで以上の艦の制御が可能になっています。
第一艦橋には、アランを筆頭に、《かみさんズ》、ダルシム元帥、ロベルト相談役、サーシャ女子近衛兵隊隊長が初めての宇宙空間というか、惑星アレスの周回軌道までの体験ツアーです。
『高度、300m メインリアクターに接続。機首傾斜角30度にします。総員シートベルト着用願います』
とイーリスより、艦内アナウンスが流れています。これから大気圏外に上がるため機首を傾けていきます。
『さらに、機首角度を15度にセット。速度マッハ2』
段々、速度があがり、遂には音速を越しました。一瞬音の壁を超える衝撃音がわずかに聞こえました。
『重力制御機能起動開始。現在、高度10000m』
このイーリス艦には、内部のGを和らげる重力制御機能が備わっています。こうして、数分後に高度30000mまで上昇しました。
『もうすぐ、周回軌道36000mに達します。速度減衰。水平飛行に移行します』
『総員、シートベルトの着用を解除します』
とアナウンスされました。
『今、艦橋窓のシールドを解除します。外の景色をご堪能下さい』
上昇時の衝撃を耐えるため、艦橋窓にはシールドが施されていました。今、まさに眼下にはこの惑星アレスが、そして上部は真っ黒な大宇宙が広がっています。
「ロベルトさん。大丈夫ですか?気持ち悪くないですか?」
「いやぁ、このような神の御業に立ち会えるなど、、感無量です。もう、冥土の土産になりまする」
「いやいや、まだ、色々ご指導願わなくてはなりませんので、精霊の加護もありますからね。とわ言っても、今までご無理をお掛けしましたから。本当は、ゆっくり養生してもらわないといけなんですけど。すいません、国政とか、ほんと分からない事だらけでしたから、助かってます」
そうです。アラン自身、国政のこの字も分からないものですからね。ロベルト相談役に随分教えてもらっています。
「しかし、このような大きな船とは、、もう神の領域ですぞ」
「そうですね。でも、バグスもギャラクシー級は、前は無かったですが、今度来る部隊にないとは言えません。さらにスター級の船のその数も半端なく多いんですよ。大抵、物量では約10倍以上と戦うことになります。こちらの戦力でギャラクシー級はタイタンとイーリスだけですからね他にサテライト級が数十隻ですからね」
「スター級の船が数千ですか。確かにそれでは、簡単には対抗できませぬな」
ダルシムさんが少し、難しい顔しています。
「それでも、こちらには、神機がありますからね。その1機でこのギャラクシー級を凌ぐ強さですから。勿論、過信は禁物です。後、数十年でしっかり対抗出来るよう、この星の全ての人達の努力と協力が必要なんです」
「そうですな。アラン様ばかりに頼ってはいけない話です。むしろ、我らの星なのですから」
「想像すらできないです。そんな敵が大量にくるんでしょう」
とサーシャさんが不安がってます。
「そのための、我ら【使徒】が呼ばれたんですから」
エルナが昔の事を思い出したようです。
「セリーナと初めて会った時、クレリア様に不敬な態度で、”たかが一国の王女”って言って貶されていたのを思い出したわ。でも、この広い世界で、アラン様がそう、比べるに値しないほどの存在だったってよく分かったわ。
この宇宙のこの領域での最高司令官って思ったら、そう、眼下に見える我々の世界が如何に小さいか実感できました」
「そういう自分がまさかのこの宙域の司令官になったのも、【使徒】になったのも、後からだからね。元は、一介の航宙軍の兵士だったんだ。その自分が一番驚いているんだよ」
「でも、そんな存在でも、この星の為に尽力を注がれて我らの為に奮起してくれたのじゃ。本当に頭が下がる思いじゃ。つまらない権力闘争をしていたのだからな。ただ、スターヴェークを奪還すれば良いと思って居ったが、アラン様はこの星の全ての人間の為に、、、本当に我らの不甲斐なさを痛感致しました」
とロベルト卿が恐縮しています。
「そうね。私も、スターヴェークや、ルドヴィークの事しか考えてなかったんですもの。本当にただの一国の、、、」
そう言いかけて涙ぐんでしまった。
「リアが嘆くことはないんだよ。そのために俺や、そう、イーリスも、そう、ルミナス様もいるんだから、そして多くの協力者も、一人じゃないからね」
「これが、イーリス様が見られていた世界なんですね」
とクレリアが感想を述べてます。
「精霊様より伺ってはおったが、我らの大地は丸かったんですな」
とダルシム元帥
「ここの空は、ずっと夜空なんですね。青い空にならないなんて」
そう、この世界にいた人からは、不思議な光景です。
『イーリス。そういえば、FLT通信の状況って何か分かった?』
とアランさんが尋ねています。
『はい、この宙域が我々がいた宙域から数千光年から下手をすると数憶光年離れている可能性があります。人類銀河帝国の範囲宙域外なのは確かです。
そのためFTL通信だとタキオン粒子の加速性能を加味しても光の速度の数100倍ですから、数100年かかると思います。そのため、サイアン帝国が開発した多次元通信の技術で通信を試みている途中です。
しかし、360度の全方位通信だと多次元通信でも不連続構成の次元なので、相手がその信号を探知できない可能性があります。
そのため、今までのFTL通信の仕様に人類銀河帝国の暗号システムとIDを組み込みここの位置を相対的位置座標に変換する必要があります。
ようは、相手がどこから送られているかが分からないのです。場合によっては、無人の高速連絡艇を飛ばして連絡する方が早いかも知れません。
但しその場合は人類銀河帝国の場所が明確に分からないとだめなんです、アテーナからの情報は、約4000年前の宇宙座標で、今の時代の位置座標を計算中ですが、我々の持っていた宇宙海図と異なっているため解析に時間がかかっています』
『そうなんだ。確かにこの宇宙が拡大しているんだっけ。この場所は全く異なる宙域だからな。人類銀河帝国の宙域なら人類に連なる種族の大発見騒ぎになるからね。以前の地球みたいにね。でも、バグスの方が早く来そうだよね』
『はい、そう思います』