今朝天狗の会合に行った文さんがいつもは揶揄ってくるはずだった。
だけど揶揄いもせず、元気のない表情でとぼとぼ歩いていた。
「どうしたんですか、文さん。元気ないですね。まるで薄羽蜉蝣の死に際みたいですね」
いつものように毒を吐く。
が
「椛は辛辣ですね…」
と、作り笑いで会釈した。
いつもと違う。
いつもなら「私は忙しいんですよ。貴方と違ってね」などと、毒を吐き返してくる。
作り笑いで私に接することなど無かった。
私は何故かモヤッとした。
「…厄災…彼女が…」
今日は久し振りの休暇だった。
友人のにとりと私の家で将棋をする約束をしていた。
だが、いつまでたっても彼女は来ない。
痺れを切らし、彼女がいる河童の里に行った。
紅く染まる河童の里。
里は炎で燃えていた。
「にとり!にとり!」
私は探した。
彼女を、私の友人の…にとりを…。
そして見つけた。
「にとり!大丈夫ですか!?」
彼女は屋根と地面に挟まれていた。
手が出ていた。
「今引っ張り出します!」
そして引っ張り出した。
「…え?」
それは彼女の腕だった。
彼女ではない。
「うわぁぁぁぁぁ!!!」
思わず手を離してしまった。
その時、何かに語りかけられた。
『食べないなら、私に頂戴。』
「ッ!誰だ!」
『…私?私は莉乃。元々八雲紫の式鬼だった者よ。』
「…そんな話を聞いたことはない。」
私は敵対する事を決めた。
彼女から溢れ出るほどの殺気と威圧を感じていた。
獣の本能が言っている。
彼女は危険だ、排除しろ…と。
「椛…どうしたんですか!?」
ハッとして横を見ると文さんが居た。
「河童の里はあそこに居る
文さんは彼女を見て呆然としていた。
「…嘘…何で…彼女が…」
「文さん!早く天魔様にご報告を!」
「…椛」
文さんは私を見るとこう言った。
「私が食い止めます。…いえ、
「無茶です!そんなことが出来る訳が…」
「いいえ、するんです。だって…」
「私の最愛の人ですから」
「え?…いま、何て…」
「頼みましたよ。椛!」
そう言って彼女は走り去っていった。
「…あぁもう!」
そう言って私は天魔様の館に走った。
椛side out
射命丸 文side
「…さて、漸く壊してくれましたね。
私は彼女が好きだった。
幻想郷の厄災と呼ばれる名を聞いた時、心のしこりがとれた気がした。
ずぅっと、ずぅっと引っ掛かっていたナニカ。
私が初めて恋をし、告白した彼女。
そして、フッてくれた彼女。
その彼女を…犯罪者になどさせない。
絶対に止めて見せる。
射命丸 文side out
椛side
天魔さまを連れてきた時にはもう遅かった。
一人の烏天狗は、一つの肉塊へと変化していた。
何故文さんか分かったかと言うと臭いだ。
文さんからはいつも
『風見幽香さんに作っていただいたんです!』
『何でそれを着けてるんですか?』
『着けないといけないと思ったからですね。何故かは分からないですけど』
そう言って私があげた香水を一度も使わなかった。
「ぁぁあ…」
自然と涙が溢れてくる。
「そっか…私は…」
「
そして、文さんは…
「あのバケモノが好きだったんだ…」
『何で泣いてるの?』
声がした気がした。
その感じた方向を見るとまだその少女が居た。
「…貴女は…貴女は辛くないんですか!?」
私は泣き叫びながら言った。
「貴女の事を愛していた…文さんを殺したんですよ!」
『…』
「なんとか言ったらどうなんですか!」
『…私には記憶がない…ただ…何故か分からないけど…』
『
「…」
『だから…破壊した…だから壊した…』
「…っ!!」
『でも…それが私のやりたいことなのかは…分からない…むしろ…やりたくないと思ってる。』
「…なら!!」
『でも…やらないと…何かが起きる。』
「…」
『でも…あの女の子を殺すのは…一番やりたくなかったかもしれない。』
「…じゃあ何で…!」
「分からない…」
私は黙ってしまった。
彼女はやりたくなかった
でもやらないと何かが起きる。
何かがおかしいと感じた。
だけど…その言葉は…何故か…
信じたいと思った。