インキュバスの一途な恋   作:水性さん

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続きは無い、けど気が向いたら続編できるかも。




そのフラグは恋のフラグ

 

 

 この世界では沢山の魔物と人間が存在しており、昔は剣と魔法のファンタジー世界のように人間と魔物が戦争をしていた時代もあった。だがほとんどの者は魔法を使えず、数だけはあった人間側が降伏し、魔物達が世界の中心として今も回っている。一応人間も居たが、社会的な地位は人間の方が低く、虐げられ、魔物の種族によっては性処理、肉体労働原として扱われていた。

 

なので人間は今やとても数が少ない。その為、魔物達は人間愛護法という法律を作り、ある程度人間を守る事にし、魔物達は人間を一箇所に集め、管理する事にしたのだ。利用価値があるから、という理由で。

 

 

 

 月城 光(ツキシロ ミツル)は服を着ると、未だに先程の行為による余韻から戻ってこれていない女"達"に目を向け、すぐに時間を確認する。普通の男であれば賢者タイムによって動けなくなっていただろうが、光はインキュバスであり、人間ではない。

 

時計は既に夜の11時を回っていて、もうヤる事はヤったのでさっさと帰りたいと思っていたが、このまま放って置く訳にもいかない。かと言って待ちたくないのでさっき吸った魔力を使って魔法で一体一体様々な種族の記憶を読むと、転移魔法で彼女達全員の自宅のベッドの上に寝かせておいた。

 

 ラブホという名の小さなお城から出ると、光はさっさと家に向かうが、家に帰れば未だに家は明かりが点いている。今日はそういう気分だったのだろうなと思いながら玄関のドアを開けてみると、今夜も母親の艶やかな嬌声が聞こえ、サキュバス特有の甘い匂いがするフェロモンが香ってきた。気配からしてどうやら5Pをしているらしい、今夜も母親は絶好調のようだ。

 

 リビングに行き、水を飲みに行こうとすると母親に群がる男達と目が合い、光は話しかけられる。

 

「おっ、光くんおかえり~」

 

「今夜もお母さんを借りてるよ」

 

 いつもの事なので普通に光は受け入れているが、普通の家庭からすると異常な光景だろう。

 

 しかしこれが淫魔、つまりサキュバスとインキュバスの家庭の日常なのである。父親が事故で死ぬ前はそれはもう、毎晩仲良くしていたのだが……今は見ての通り、有り余る性欲を素敵なお友達と共に発散していた。

 

 母親によると光は父親にとても似ており、実際に家族写真を見てみると本当にまるで鏡写しかのようにそっくりだ。母親はこれでも父親を愛していたので、時々自分を懐かしむかのように見つめてくる事がある。欲に浮かされた目をしていたので、父親の代わりに自分が抱かれる日が来るかもしれないと思うと、何とも言えない感情に襲われた。

 

 いくら自分がインキュバスとはいえ、普通に母親をそういう対象として抱く気は起きない為、変な話だが母親の素敵なお友達には感謝をしている。

 

「あ、テーブルにお土産のお菓子持ってきたから」

 

「……こんばんは、お菓子ありがとうございます。明日友人と有難く頂きます」

 

「そうかそうか」

 

 光はそう言うとコップに水道水を流し、一杯分を飲み終えるとお菓子を持って自分の部屋に行き、パジャマに着替えるとその日を終えた。

 

 

 

 

 

「で、それがこの菓子って? よく普通にそんなん貰えんな、お前」

 

「だからお前に毒味をさせてるんだろう?」

 

「うわ、今日もサイテーだな。学校中の女子達が知ったら絶対引かれるぞ」

 

 そんな風に言いながらも横隣でボリボリとクッキーをほうばるのは、友人の朝海 大河(アサミ タイガ)だ。

 

 光にとって唯一友人と呼べる存在であり、気の置けない相手だ。大河は人魚の魔物である。普段から大河は魔法で人間の姿をしているが、本当はミノカサゴという鮮やかな色をした体の人魚だ。なので本来の姿はとても鋭く長い猛毒のトゲを沢山持っている。

 

 人魚なので厳密には魚とは違い、毒は任意で出す事ができ、普通に魚も食べられるらしいが……安全の為に学校のプールで泳げない為、人魚なのにも関わらず夏は泳げないという。

 

 両親が陸に上がり、それに伴って大河が小学生の時に転校してやって来て、同じクラスだった光と出会い、今もなんだかんだ友人として仲がいい。

 

 大河は元々人間を歌と美貌で誘惑する人魚だからか、とても顔が整っている。が……インキュバスである光も同じくらいに、いやそれ以上に顔が良い。なので頭が腐っている女子や男子達からは良いネタやらオカズにされている。

 

「ところでさぁ、気になったんだけど光って恋とかした事あんの?」

 

「無いな」

 

 即答かよ、と光は大河に言われるが、光はそもそも女という生き物は性処理をする対象やら、生物学的に男とは違うもの、エネルギー源という風にしか認識した事がなかったので、考えたことが無い。

 

 例え美女を見たとしても、造形的には綺麗だ、又はやはり性処理としての対象程度にしか思っていない。淫魔というのは大体そんなもので、そもそも性行為というのは淫魔にとって息を吸って吐くことと同じように、無くてはならないものだ。

 

 別に普通の人間と同じように食事をする事でエネルギーを得る事はできるが、それには大量に食べなければならない上、コストがかかる。しかも淫魔は定期的に性行為をしなければ突如として発情した状態で体が全く動けなくなってしまい、周りにフェロモンが撒き散らされ、周りの女達まで発情し、逆に頂かれるという事件が起こる。

 

 なので女というのはそういう目でしか見た事がなく、淫魔としての考え方とそういう体の作り故に恋というものが理解できていないし、したことが無い。しかも光は母親の遺伝でインキュバスの中でも特に絶倫であり、性欲も飛び抜けている。

 

 仕方ない事とはいえ、大河は光に呆れのようなものを感じていた。

 

「まぁ、恋でもしたらちょっとはお前も変わるだろ。沢山の女子達が阿鼻叫喚する光景が見えてくっけど」

 

「……全く、有り得ない話をするな。それともそんな話をするくらいにお前は暇なのか?」

 

「暇、なんか今日起こんねぇかな~」

 

 そう思っていたのがホームルームが始まる数分前であり、大河が何気なくそう言った言葉が現実に起こるとは思ってもみなかったのである。

 

 

 

 

 

「HRを始めるぞ。今日は転入生を紹介するから、手早く説明する。入ってこい」

 

 ホームルームが始まって早々、スケルトンの担任教師がそう言うと「は、はい」という、明らかに緊張した女声が聞こえてきて、ガラッという音を立ててドアを開け、入ってくる。その瞬間、クラス全員が酷く驚いた様子で転入生を見つめた。

 

 何故なら今では珍獣扱いの人間が、しかもその中でもとても珍しい、オッドアイで目の瞳孔が勇者の証である紋章の形になっている者が転入生としてやってきたのだから。

 

 しかも、思わず男子達が思わず見とれてしまう程の可愛らしい女の子だったのだ。美しく長い、輝くような黄金の髪と、まるでサファイアとエメラルドをそのまま埋め込んだかのような碧と翠の眼。

 

 肌もまるで吸血鬼のように白いが、緊張しているのか頬はピンク色に染まっており、視線もあっちこっちに動いていてあまり定まっていない。その上童顔で背も低くて、ちまっこく……男を魅了させる事に特化したかのような体つき。

 

 ……何だ、この小動物は! 可愛いな!! 

 

 クラス中に居る魔物の男たちはまるで雷に打たれたかのような衝撃を受け、まるで子猫や子犬を見ているかのような気持ちになる。いや、だって完全に子猫や子犬が初めて来た新居に慣れず、キョロキョロと周りを見ているのとあまりにも酷似していたのだから。

 

「おー……めっちゃ顔面偏差値と体型のレベル高いな、いくら性欲バケモンでもクラスメイトで本人の許可なく人間に手を出したらダメだかんな~。 ……光?」

 

 大河は小声で光の方に顔を向けずにそう話しかけるが、光は全くの無反応。一体どうしたのかと思い、隣を見ると大河は思わず「マ、マジかよ!!」と心の中で叫び、驚きのあまり思いっきり目を見開いていた。

 

 何故なら、あの光が。

 

 全く恋愛対象として女を見た事がなかった、あの光が。

 

 家族や母の知り合い以外の人前では滅多に出そうとしなかったインキュバスの尻尾、羽にツノをモロに出して、顔や耳を赤くさせながら熱の篭った目をしていたのだ。まさに一目惚れをして、恋に落ちた瞬間を大河は目撃してしまい、思わずニヤニヤしてしまうのも無理は無いだろう。

 

 一方光は今どんな顔をして、どんな状態で彼女を見ているか全く気づいていない。まさに周りが見えておらず、盲目的に彼女を見つめている。

 

「あっ、おい馬鹿! ツノとか羽とか色々と出てんぞ!! そんでフェロモン出して無意識に誘惑しようとすんな!! 女子達が発情しちゃうだろ!!!」

 

「……」

 

「嘘だろ、光が全ッ然聞いてねぇ!!」

 

 大河がペチペチと光の頬を叩き、ようやくハッとした光が鬱陶しいという表情で「何だ」と不機嫌とばかりに見てくる様子に、大河は呆れた様子でため息をつく。そして口では言わずにジェスチャーをしてツノと羽、尻尾が出ていることを伝えると光は有り得ないとばかりに自分自身に驚いていた。

 

 それらを戻した後、もう一度光は彼女の方を見るとしまった物がまた一瞬で出てくる。

 

 淫魔は元々種族的に全員顔が良く、別に羽や尻尾、ツノなどを出して本性を表し誘惑せずとも異性は寄ってくる。ちょっと魔力を込めた淫魔特有の赤い色をした誘惑の魔眼で見つめるだけで誘惑させる事もできるのだが、光はその姿が好きでは無く、むしろ嫌いなので隠している。

 

 淫魔は不浄を司る悪魔だ、ただでさえ生きづらく、差別的対象になったりもする。実際に幼い頃は後ろ指を指されていた事も沢山あった。他の種族の大人達からは嫌な目で見られる事も何度もある。だが仕方ないではないか、そういう種族で本能的に抑えようと思って抑えられるものでもないのだから。

 

 だからセッ○スが好きでも、周りから軽蔑をされるのが嫌な光はインキュバスの身体的特徴を隠し、あまり学校では人と関わらないようにした。

 

 大河は光がインキュバスだと知ってもなお「それがどうしたんだよ、俺なんか人魚の姿だと全身トゲだらけで猛毒も持ってんだぞ。女の子とか抱きしめたら簡単に殺しかねないんだからな!」と割と冗談にしては笑えない事を笑い飛ばして、傍に居る。

 

 だから大人になっても、適当に就職して時々大河と酒を飲みながら世間話をして女を抱く日々を過ごすのだと思っていた。

 

 しかしそれがどうだ、今では人間の女の子に好意全開で無意識に誘惑する為、インキュバスとしての体の一部が勝手に出てきてしまっているではないか。羽はパタパタと動いており、尻尾はブンブンと犬が興奮しているかのように激しく動いている。

 

 そして今2人は席が一番後ろなので周りのクラスメイト達は気づいていないが、彼女の方からでは光の忙しなく動く尻尾や羽はよく見えていた。

 

「天本 勇莉(アマモト ユウリ)です、よろしくお願いします(後ろのあの人、なんだか凄くしっぽと羽が動いてる……何の魔物なんだろ、悪魔っぽいけど)」

 

 勇莉はそう思いながら光を見ながら名前を名乗ると、見つめられた光は尻尾をピーン! と立たせながら顔をこれでもかと赤くさせ、手で顔を覆った。ガチ惚れじゃん……と大河は思いながらも、ようやく恋をして光が本気で欲しいと思った相手を見つける事ができたという事に、友人としてどこか安心していた。

 

「席は月城の隣な」

 

「「?!」」

 

 担任のスケルトン先生はそう言い、淫魔はボッと見るからに顔を赤くして狼狽え「あ、あぁ……あ」と、言葉にならない声を上げ、人魚はチャンスとばかりに茹でダコ状態の淫魔の体を揺らす。

 

「光、良かったじゃん! 隣だから話しかけるタイミングは作ろうと思えばいくらでもあんぞ! いや、今しかチャンスはねぇ!! お前顔は良いんだから、ここで好印象を見せつけて真摯に向き合えば、絶対にイケる!! おとせる!!」

 

「ぼ、僕にいきなりヤれと言うのか?! 」

 

「違ぇ、そういう意味じゃねぇよ馬鹿」

 

「だ、だだだが相手は勇者だ、無視をされるかも分からないというのに……!」

 

 勇者は人間の中でたった1人しか産まれない、とても珍しい強い魔力と体を持った人間。魔物が勇者の体、又は体液の一部などを取り込めば、更なる力をもたらし、勇者との子供を作れば一族は更なる子孫繁栄が見込めるという。

 

 勇者が普通に人間と子供を作れば、勇者の下位互換か上位互換という強さを持った子供が産まれる。なので基本的に勇者は国で選ばれた数人の魔物の異性をあてがわれ、勇者が相手を選んで子供を作るという運命にある。

 

 それ故に勇者である勇莉は、幼い頃から定期的に血を摂取され続けて腕におびただしい注射針の痕がある。そして毎日顔や頭が良く、肉体的にも遺伝子などが優れた別々の男が施設という名の自分の家であり、部屋に手配される。そして気に入った男との子供を一生産み続ける運命にあるのだ。もし気に入った男が見つからずとも、月に一回の排卵で卵子を採取され、知らぬ男の精子と受精され、特別な培養ポッドで子供が育つ。もし男であれば、毎日違う女があてがわれ、種馬のように毎日女を抱き続ける事になるが。

 

 だが母親の魔力に包まれ、しっかりと愛情を受けた勇者の子供の方が勇者自身よりも強い子供が産まれるのだ。しかも女の勇者は何度も子供を産む事になる為、特に体に負担がかかる。それ故に相手を見つけるのは一生に一度の重大な選択、相手を選ぶ事は人生に直結する。

 

 なので女の勇者はまるで一国の姫のように育てられ、管理される。当然性教育もしっかりと施され、男を受け入れる練習として避妊具を付けた状態で経験も積まされる。なので近づいてくる男には、とにかく警戒心を強く持つよう教育される。そういう事情は魔物達の間では一般的な常識であり、主に中学の社会の授業で習うのだ。

 

「し、しかも……匂いからして明らかに処女だ」

 

 だから光は彼女が勇者であるという事、そして未だに純潔であるという事にとても驚いていた。小声でそう言った大河も驚いていた。つまり、彼女が気に入った相手をまだ見つけておらず、とにかく拒み続けていたという事。

 

 誰の物にもなっていない、ユニコーンも泣いて喜ぶ清らかな乙女なのだ。処女という事は余計に警戒心も強いだろう、どうすればお近付きになれるだろうか。

 

 今まで歩いていれば女の方から寄ってきたので、どうやって近づけばいいのか全く分からない。というか、現時点でただ目と目が合っただけでも、心臓が破裂してしまうのではなかろうかと思う程にバクバクと動いている。

 

 話しかけるだと? 僕には絶対に無理だ、と思う反面で彼女の事が欲しくて堪らない。今日初めて会ったばかりだというのに好きすぎて、興奮し過ぎてムラムラし始めている。

 

 恋心の究極版、愛欲が光の体の中からどんどん二つの意味で膨らんでいく。実に本能に忠実である。

 

 しかし一体何故、人間収容所で大切に管理されるべき勇者が、多くの魔物達が通う学校に? 

 

 当然浮上する疑問にクラスメイト達は疑問に思っていたのだが、担任のスケルトン先生はこう説明した。

 

「天本は自ら、自分の意思で相手を見つける為にウチに通う事になった。ほら、まだ人数は少ないが、許可を得て施設から出られた人間も唯一通える学校だろう?

 

 だからこうしてウチに来たんだ。未だに相手が出来ないから、もしかしたら人間と魔物の上位種であるドラゴンじゃなく、それ以外の魔物が対象かもしれないって話も出てるしな」

 

 その話を聞いたクラスメイト、主に男達だが、いくら見た目が良くとも相手は女の勇者だ。相手を選んでいないとはいえ、処女ではない可能性は高い。

 

 なので男の手垢が沢山ついているかもしれないと思うと、どうしても売春婦やら風俗嬢を見るような目で見てしまう。女性陣達に至っては、軽蔑するような目だ。

 

 しかし光はこの学校で唯一の淫魔であり、フェロモンの匂いや誘惑の魔眼から相手の経験人数や回数などの情報をス○ウターか何かのように瞬時で分かってしまうのだ。

 

 そもそも淫魔は一定の相手を作ったとしても快楽を共に楽しむパートナーとしての意味合いで結婚をする為、子供にはあまり興味が無い淫魔が多い。

 

外で知らない相手と行為をして万が一子供ができて問題が起こると面倒なので、淫魔同士で結婚し、マンネリを防ぐ為にお互い合意の上で時々別の相手も交えて行為をするというのが一般的だ。

 

 なので淫魔は結構珍しい種族故に、この学校では淫魔が光しか居らず、例え処女じゃなかったとしても光にとっては全くのモウマンタイ。

 

 ……いや、嘘だ。受け入れる事はできていただろうが、嫉妬で狂いそうだと光は思った。

 

 そして勇莉を本気で狙う相手はほぼ自分一人、都合がいい。そして何より、自分はインキュバスであり顔も良く、淫魔でありながら頭も身体能力もいい。

 

 何故なら光はあのアダムの最初の妻となった女性とも言われるリリスという悪魔の子孫であり、とにかく悪魔としての力が強く、異性を抱き精気を吸えば吸う度に様々なステータスが上がるのだ。もし結婚してニュースになったとしても国にとって、とても有益だろう。

 

そう、つまりこの出会いは運命なのだ。こんな気持ちになるのも、二次創作でのBL御用達設定、オメガバーズにある……いわゆる運命の相手というやつ。

 

「……そうすると僕がいきなり襲えば痛いに決まっている。いや、処女だということはまだ男の味を知らないということだ。なら初めてを僕の○○○で迎え、快楽漬けにした後調教をすれば実質的に身も心も全てが僕の物に──」

 

「お前、マジで捕まったりすんなよ」

 

 勇者の女はまるで姫のように大切に管理されているので、近づくだけでも隠れた護衛の魔物に銃口か魔法を向けられる事があるのだが、いつか犯罪者の仲間入りと同時に刑務所ではなく、あの世に連れていかれないだろうか。

 

「なら合意さえあればいいんだ、人間は他の動物と違って考える脳があり、言葉も使える。だからあの勇者を犯している最中に、勇者自らが僕を求めるようになればそれは合意と言っても過言ではない」

 

「過言だよ、どう考えてもアウトだ!!」

 

 真面目な表情でエロ同人誌的思考を言う光に大河は「コイツマジでやべぇ、いつになく超面白ぇ」と思いながらも、友人が警察に捕まらないかどうか気になっていた。すると担任のスケルトン先生が魔法で光の隣に机と椅子を用意し、勇莉は用意された光の隣に座ろうとする。しかし近づく程に光はまるで氷魔法をくらったかのように固まり始めた。

 

「あ、歩いただけでここからでもとてもいい匂いがした……何だあの匂いは。サキュバスと同じくらい強い、オスを惑わせる甘いフェロモンだ……これでは肉食獣や肉食魚が元になった獣人や人魚に襲われてしまう」

 

「淫魔の嗅覚ってどうなってんだよ……」

 

「僕が(インキュバスの中では比較的に)紳士だから我を失わずに良かったものの、このままでは勇者の純潔な中に滾るオスの欲望と子種を中にぶちまけられてしまう。いや、初めての相手はこの僕だ。絶対に勇者の処女は僕が貰う。だからその為にも、僕が傍で守ってやらねば……」

 

「普通に考えてお前の隣が1番危険だけどな、主に貞操の」

 

 すると勇莉は光の隣に座り、スケルトン担任が色々と報告をした後にホームルームが終わる。そしてホームルームが終わった数秒後、光は勇莉に話しかけられ、ビクリとする。

 

「月城くん、だっけ?」

 

「あ、あぁ……つ、月城 光だ」

 

 話しかけられるとは思っていなかった上、担任が言った自分の名前を聞いてすぐに覚えてくれたということに光は嬉しさのあまりに尻尾と羽が更に激しく動く。やはり犬の尻尾のようにブンブンパタパタと、ちぎれんばかりに激しい。

 

「じゃあ光くん、これからよろしく」

 

 まさかのいきなり下の名前で呼ばれ、光の心の中では断末魔のような絶叫が響き渡る。体温は一気に上昇し、まるでバキューン! と心臓を撃ち抜かれたかのような感覚に陥った。

 

「……よろしく」

 

 話しかけられるだけでこの有様だ。いつものデフォルトが無表情な光が、明らかに意識していると言う様子で勇莉を見つめながらも、手で顔を覆って隠そうとしている。全く隠しきれていない上に、やはりブンブンと尻尾や羽は動いている。

 

「俺もよろしくしたい! っつー事で、俺は朝海 大河! よろしくな~天本!」

 

 横から大河は人好きのする笑顔で勇莉にそう言うと「うん、よろしく大河くん」と、光同様に下の名前で呼んでいた。

 

「……」

 

「お前、普通に話しかけもできない癖に一丁前に妬くなよな」

 

「……五月蝿い」

 

 そしてその後、何故下の名前で呼ぶのかを少し疑問に思い、それと意外に嫉妬深いらしい友人の為に大河は聞いた所、どうやら仲良くなるには苗字ではなく下の名前で呼ぶと良い……という風に教えられているからだそうだ。

 

「つまり天本は俺たちと仲良くなりたいってこと?」

 

「うん、今まで……その、私が勇者だから友達ができた事がなくて」

 

 そう言うと勇莉は施設での暮らしを少し説明し始めた。人間は一人一人、狭い部屋を与えられて囚人のように過ごしており、食事の時間などの食堂や談話室で話をしたり、交流を深める。しかし勇莉は勇者の魂を持つ、れっきとした勇者の生まれ変わりだった。

 

 人間達も一応魔物が受ける義務教育の範囲を勉強するように決められていたので、勇者にどういった義務という名の役目を課せられるのかを知っていた。なので勇莉は人間達に軽蔑されるかのような目で見られることがあり、家族以外は誰も勇莉に近づこうとはしない。

 

「……それに、ここの皆も私を受け入れてくれなさそうだし」

 

 光はそう言った勇莉の憂いを含んだ表情と様子に、身に覚えがあった。立場や種族こそ違うが、元々産まれた時から定まっている事が原因で、周りから拒絶されていた頃の自分と、今の勇莉がまるであの頃の自分とそっくりだったのだ。そして、どれ程辛く寂しいものだったかを思い出す。

 

「環境故に自然と身につけたものだけど、目を見ていると大体その人が何を思っているのかが分かるんだ。私の事が嫌いか、そうじゃないかとか。楽しいとか、そうじゃないとか。クラスの皆は私の事、あんまり好きじゃないみたいだけど……」

 

 寂しそうにそう言う勇莉は正直誰がどう見ても可愛らしく、守ってあげたくなるような儚さを持っている。勇莉の事が気になって見つめていた一部クラスメイトの思春期を迎えた魔物男子生徒達諸くんは、皆思わず勇莉に目を奪われる。光はその事に内心大きく舌打ちをついた。

 

「でも光くんと大河くんは私が人間で勇者で、驚いていても嫌そうな顔と眼はしていなかったから」

 

「そっか、じゃあ俺達似た者同士だな! 俺、こう見えてミノカサゴの人魚なんだけどさ」

 

 そう言いながら大河は魚の方のミノカサゴの写真を見せる。

 

「わっ……トゲトゲで綺麗な色。あ、だから大河くんの髪の色は凄く鮮やかで綺麗なんだね」

 

 満面の笑みで勇莉に大河はそう言われ、思わず顔が赤くなってしまい、光は大河にとても湿度が高めなジトーッとした視線を送る。その視線に大河は「光の奴、思ったよりめっちゃ嫉妬深いな。いつかヤンデレとかになったりしないよな? 頼むからやめてくれよ」と盛大にフラグを建てていく。

 

「で、でもこのトゲには猛毒があるんだよ。だから人魚の俺もそういう特徴があって、今は魔法で姿を変えてるけど、すっげー怖がられてて光に会うまでダチの一人もできなかった」

 

「そっか……そうだったんだ、光くんは? ツノと尻尾と羽の形的に悪魔に似てるけど──」

 

「インキュバスだ」

 

 光は初めて学校で自らの種族をそう言い、話を聞いていたクラスメイト達(特に女子)はギョッとした様子で光を見た。大河も言わずもがな、というかクラスメイト達よりも驚いていた。自分の種族に関して、強いコンプレックスを持っていた光は、学校でいくら何の魔物かと聞かれても何も答えなかった。だからてっきり、大河は秘密にするのかと思っていた。何で第一印象が悪くなるような事を言ったんだ。

 

 しかし数秒後にはもしかすると、光なりの誠意で覚悟だったのだろうということに気が付き、ハラハラした気持ちで大河は勇莉の様子を伺う。

 

「……そうだったんだ、どうりで光くんがクラスの中で1番かっこいいなって思った」

 

 今まで自分がインキュバスだと言った時、大河以外はまるで汚物や穢れたものを見るかのような目で見られてきた。そして光が返されたのは嘘偽りのない表情と明るい声。光は目を見開き、勇莉を見つめる。

 

「……驚かないのか?」

 

「ううん、驚いた」

 

「…………軽蔑しないのか」

 

「うーん、そもそもインキュバスとかサキュバスって生きる為に、必要な事だから……その、エッチとかするんだよね、確か。だから本能というか、そもそもそういう事とか異性が好きな淫魔は多いって聞いた事あるけど……。

 

 光くんは、それで誰かに迷惑をかけたりとか、嫌な事とか、誰かの心を傷つけたり、利用したりした事はある? 私は今日会ったばかりだから本当の所はどうか分からないけど、多分無いと思う。というか、来る人はちゃんと選んで去るもの追わずって感じがするかな」

 

 実際にそれは当たっていた。光は確かに体の関係や人数こそ多いが、自分に好意がある相手とは絶対に関係を持たなかったし、しっかりと魔法で避妊をしていた。

 

 あくまで性処理であり、生きる為に必要な行為だ。だが相手の気持ちを無視して、ただ自分の欲を満たすのは流石に元々セッ○スが好きでも光にはできなかった。何故なら、相手がいつか絶対に傷ついてしまうからだ。光は誰かを傷つけたい訳では無い。

 

 だからいくら光がインキュバスで貞操観念が元々ゆるゆるであろうとも、ただ性欲の為に誰かの心を平気で傷つける、落ちぶれたようなクズではなかった。

 

もしそんな事をしてしまったら、周りの誰かが自分に言っていた「最低で低俗な種族」という言葉の通りの存在になり、自分にそんな心無い言葉を浴びせて傷つけてきた輩と同じになってしまう。

 

「だから私は誰かの心を弄んだりしなければ、別にいいと思うよ。世間からの目はあんまりよくないかもしれないけどね……。

 

 あ、あと流石に相手とかできたら、もちろん誰とでもっていうのはダメだと思う。でも相手も自分と同じ淫魔だったりで、良いって言ってたら大丈夫なのかもしれないけど」

 

「そう、か。てっきり僕は嫌われるのかと思っていた」

 

「……でも言いづらい事の筈なのに、私の為に光くんは勇気出して言ってくれた。だからありがとう、光くん。私、凄く嬉しいよ」

 

「~~~~ッ!!!」

 

 にこりとまるで聖女かのように微笑む勇莉に、光は声にならない声を上げると、尻尾をブンブンと激しく振り、羽はパタパタどころかバサバサ動く。そしてこの様子を見ていた大河は、ある事に気が付いた。

 

 もしかして天本は天然タラシなんじゃねぇの? ……と。そうなるとこれは色々とヤバいと思い、大河は遠くない未来を察して勇者である勇莉にこう言ったのだった。

 

「あのさ、下の名前で呼ぶのは俺達だけとかにした方がいいと思うんだよ。天本とか女子が思ってる以上に男って単純だからさ? いきなり下の名前で呼ばれたり、ちょっと優しくされたら、すぐもしかして俺の事好きなんじゃって勘違いする変な奴も出てくるんだ」

 

「……そうなの?」

 

 確認するように勇莉は光を見ると、顔を赤くさせながら小さく頷く光。

 

「あぁ、その……勇莉は、とても……か、可愛らしいからな。余計に勘違いする男も多いだろう」

 

 湯気が出るのではないかという顔の赤さをしているが、一方勇莉の反応はとても良く、ポッと顔を赤くさせ「そ、そうなんだ! 気を付けるね!」と緊張している様子だ。

 

 どうやら、あんな環境に居たがウブだったらしい。

 

 大河は心の中で「ナイスだみっちゃん! というかこれ、普通に押していけば普通に落とせるぞ、これ!!」と、完全に弟を応援するお兄ちゃんの気持ちになっていた。ちなみに大河には10を軽く超える沢山の弟が居る、まぁ人魚なので卵から産まれるから数が多いのだ。

 

 そして勇莉は小さい頃から知らない者が部屋に来る事が多く、様々な考えを持って来ている事があった。なので段々と身を守る為、そして相手の気持ちを理解する為に、相手の気持ちをなんとなくではあるが、わかるようなスキルを自然と手に入れていた。なので勇莉は人の気持ちに敏感で、今まで光のように正直な気持ちを向けられた事はあまりなかった。

 

 しかも今まで向けられたことの無いタイプの感情をハッキリと向けられている事に気付いた勇莉は、その正体に気付けずに居たが「なんだかちょっと緊張する……」というふうに照れていた。

 

「あっ、そういえば光くんのしっぽと羽、さっきから凄く動いてるけど……ちょっと触ってみてもいい? 気になっちゃって」

 

「あ、あぁ(幼少期にある男女の体の違いに好奇心が湧き、無知ゆえに触るようなものと似ているな……)」

 

 光は自分の隠したい部位ではあったものの、つい勇莉を意識するとインキュバスとしての本能で出てしまう。それに好きな女の子が理由はどうあれ、自ら体を触りたいと言ったのだ。嬉しいに決まっている。

 

 まぁ大河はそんな勇莉に距離が近いな~という心配をして、陰から2人を見守ろうとお兄ちゃんとしての気持ちで決心をした。光はドキドキしながら触れられるのを待っていると、しっぽをきゅっと握られる。

 

「!?」

 

「あっ、ごめんね……痛かった?」

 

「い、いや……痛くはない。気の済むまで触っていい」

 

「本当? ありがとう!」

 

 インキュバスにとってしっぽは獣人族よりもさほど重要な部位ではないものの、一応神経が通っていて性感帯でもある。

 

「っ……」

 

 触り方がとても優しく、撫でているような感じなので段々と気持ちよくなっていく。

 

「意外とスルスルというか、不思議な感触……」

 

 光は経験と知識は豊富ではあったものの、好きな女に体の弱い所を触られると興奮も相まって凄く気持ちいい。という事を、今日初めて知ったのであった。そしてそのままセッ○スをしたら絶対に気持ちいい、とも思った。

 

 

「(絶対に子作りを前提に結婚してやる……)」

 

「お前、絶対変な事考えてるだろ」




初めて短編小説を投稿したな……。


えっ、他の作品とキャラ被りしてる??

作者の作品はキャラの性格とか口調は固定で、別の設定を付けるスタイルなんだよッ!

文句あるかッ!!

無いな、ヨシ!!!
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