ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか? 作:混沌の魔法使い
ちょっと私の認識不足のところもあるかもしれませんが、ゼウスとヘラが出て行ったばかりのオラリオの話になります。
若干矛盾や無理があると思うところもあるかもしれませんが、今作ではこういう設定なのだと思っていただけると嬉しいです。
幕話 その1
本来ならば3ヶ月に1回開催される神会(デナトゥス)だが、神会を理由にアストレアや俺が集められている間に黒竜討伐失敗の傷を癒していたゼウス・ヘラファミリアの両方にロキファミリアとフレイヤファミリアを主軸にし、ロキとフレイヤに賛同したファミリアによって襲撃を受けたゼウスとヘラがオラリオを見限り出て行った事により緊急の神会が開催される事になった。
「ガネーシャ。大変な事になったわね」
「アストレアか、そうだな。まさかギルドのロイマンまで抱き込んでいるとはこの群衆の主たる俺も想像していなかった」
ギルドのロイマンによってオラリオの住民が集められていたらしい、もしもオラリオの住民がいれば破天荒ではあるが地上の人間を愛しているゼウスもヘラも話し合いの余地を残してくれたかもしれないが……それを阻止する為にも住民を集めていたロイマンの罪は重い。
「今回はウラノスが議長を務めるらしいな」
「ウラノスが? それだけ責任を感じているのかもしれないわね」
普段ギルドから出てこないウラノスまで神会に参加するのは正直俺も予想外だった。
「今日の神会は……いや、オラリオはこれから荒れるぞ」
ゼウス・ヘラという抑止力が無くなれば闇派閥は間違いなく動き出す。今回の神会は間違い無く、ロキとフレイヤへの追及とこれからオラリオをどうするのかという話し合いになることだろう。
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「どうしてくれるんだ!? ゼウスとヘラを追い出して何がしたかったんだ!?」
「そんなに自分達の力を誇示したかったの!? べヒーモスとリヴァイアサンにも挑まなかったのにッ!」
神会の会場ではロキとフレイヤを責める声が響いており、想像以上に神会は荒れていた。
「お前達だってゼウスとヘラが目障りだと言っていたじゃないか!」
「1000年もオラリオの最強を独占してるのを何とかしたいって思うのは当然じゃない!」
ロキとフレイヤに賛同していたファミリアの主神とゼウス・ヘラ擁護派の主神達の醜い罵りあいに思わず顔を歪める。
「こんなありさまで何とかできると思っているのか……ッ」
今更ロキとフレイヤを追及してもゼウスとヘラがオラリオを出た事実は変わらない。そしてそれを止める事が出来なかった段階で俺もアストレア達も同罪なのだ。
「静粛に、静粛にッ!」
ウラノスが槌を叩き、自身へ注目を集め、たっぷりと間を取ってから口を開いた。
「ゼウスとヘラがオラリオを出たという事実は変わらない。そしてロキとフレイヤ、彼女達に賛同したファミリアも、そしてその襲撃を止める事も出来なかった我らもまた同罪である。今我らがするべき事はこれからの事を話し合うことだ」
古代からオラリオにいるウラノスが神威を解放した事によりロキとフレイヤを追及していた神も、弁明をしていた神も黙り込んだ。
「まずギルドの主神としてロイマンのギルド長の任を解き、新たなギルド長を召集し、ギルドの正常化を行なう」
「神ウラノス。新たなギルド長はもう決まっているのか」
「ああ。私の個人的な知り合いだ。無論私の知り合いと言う事で大丈夫かと思う者もいるだろう、だが現段階でギルド長を任されるような人物は彼女しかいない、入ってきてくれ」
ウラノスがそう言うとローブを纏った1人の女性が神会の場に入ってきた。
「ガネーシャ、知ってる?」
「いや、見覚えはないな。ウラノスの眷属か?」
ウラノスには眷族がいない筈だが……それともその情報を隠していたかどっちだろうかと悩んでいるとその女性が口を開いた。
「私はオラリオでゴーストと呼ばれた者だ。名はフェルズという、よろしく頼む」
ゴースト……オラリオでの一種の都市伝説であり、黒衣を身に纏った魔道師との事だが、実在していたとは驚きだ。
「私はアルテナ出身のレベル4だ」
嘘は言っていない、彼女は本当にレベル4でアルテナの出身らしい。
「彼女はレベル4だが魔道具の作成に優れた魔導師だ。私の個人的な知り合いではあるが、私の部下ではない。私は今まで通りギルドの主神ではあるが、過度にギルドに干渉するつもりはなく、ギルドを私物化するつもりもない。今まで通りギルドは中立で公平な立場となるように務めたいと思っている。ロイマンに関しては半年の謹慎、その間に考えが変わらないようならばギルドから追放する。ギルドの主神としての決定は以上である」
新しいギルド長の招集と、ロイマンの追放を前提とした謹慎……素早い判断と決定に俺達に口を挟む余地は無かった。
「ギルド長として、ウラノスと話し合った。ロキ、フレイヤファミリア、そして彼女達への今回の襲撃事件への処罰を発表したいと思う。もしも私とウラノスの処罰について思うことがあれば意見を聞かせて欲しい」
これだけの神を前にして堂々と喋るフェルズはギルド長としての素質を十分に見せていた。
「少なくともロイマンとは違うようだな」
相手に応じて態度を変えるロイマンとは違う。ウラノスが選んだギルド長なので少し心配ではあったが……少なくともギルド長としての素質はロイマン以上というのが良く分かる。
「まずギルドとして一部の特例を除き今回の襲撃に関わった冒険者の改宗および脱退の無期限の禁止だ」
改宗の無期限の禁止……思った以上に重い罪だ。
「待ってくれ、特例と言ったが……その特例の条件は?」
「現在特例として考えているのは襲撃の前に団長を解任され、戦いの野に監禁されていたフレイヤファミリアの元団長ミア・グランドのみ特例としての改宗及び脱退を認める。それ以外は原則改宗を一切認めない、主神が送還された場合かよほどの事情がある場合のみ改宗及び脱退を認める物とする」
「そ、それはあまりにも重ないか!?」
想像以上に重い処罰に黙っていられなかったロキが声を上げる。だがフェルズは首を左右に振った。
「これは決定事項である。神達へ問う、私のこの判断は重すぎるか? それとも妥当か、どちらであると思う」
ファミリアを持ち眷族を持つ主神としてはかなり重いと言わざるを得ないが、ロキとフレイヤのやらかしを思えば妥当な線でもある。他の神々も妥当と判断したのか、フェルズの決定を認めた。
「次にロキ・フレイヤファミリアの両ファミリアは今回の件を扇動した罪として団員の新規入団を原則認めないものとする。定期的に仮入団を認めるが、正規入団は希望者及びロキあるいはフレイヤと団長同席の元面談を行い、その上で入団するか否かをギルドにて決定する。またこの仮入団はファミリアとして新規入団の団員の育成力を確認する為の物であり、育成が十分ではないとすれば仮入団も認めない場合もあるという事をロキとフレイヤは十分に理解する事」
入団するかも分からない団員を育成するというのはファミリアとしてもかなり厳しい事になると思うが、だからこそロキ・フレイヤファミリアの育成力を確かめる意図もあるというわけか……。
「それに加えて探索系ファミリア全てにだが定期的に所属団員のステイタスをギルドへと申告してもらう。ステイタスの上昇およびレベルアップした団員によってギルドより報奨金を与える。これはゼウス・ヘラがオラリオを出る前に残した黒竜との交戦記録を元に決定した物である。魔道具によって戦闘が記録されているので、これより全員に見ていただきたいと思う」
スクリーンが展開され、そこに映し出されたゼウス・ヘラファミリアと黒竜とのあまりにも激しい戦いに俺達は絶句すると共に、2度目があれば確実にゼウス・ヘラファミリアならば勝てたが、残された俺達では勝てないと悟り絶望感で満たされた。
「黒竜討伐はオラリオの悲願である。故に黒竜との戦いの記録を公表した、これに奮起し眷族の育成により一層励んでくれる事を望む。では今回の神会はここまでとするが、また後日臨時神会を開催する。その時は参加する事を望む」
ウラノスの言葉を最後に臨時神会は終わりを告げたが、ファミリアへ帰る俺の足取りは言うまでも無く、とても重い物になるのだった……。
俺はゼウスとヘラが何処を目指しているのか分からず、かといってクックマンの姿なので馬車の外に出ることも出来ず基本的に馬車に揺られ、メーテリアと話をし、飯時に外に出て飯を作るというサイクルを繰り返していた。
「メーテリア」
「はいはい、なんですか? 可愛い人」
「俺達は今何処に向かっているんだ?」
マキシムやザルド達に認識阻害の指輪を貸しているので、街道の街で新しい馬車や物資を確保しているので目的地がかなり遠いのは分かっているが、一体何処に向かっているのか分からずメーテリアにそう尋ねる。
「3大秘境を目指しているそうですよ?」
「3大秘境?」
また知らない言葉が出てきたのでそれは何なのかとメーテリアに尋ね返す。
「ダンジョンに並ぶモンスターが出現する地域です。凶悪なモンスターが生息していたり、古代のモンスターが封印されているのでそれらの封印を確認、封印が解けているのならば討伐を目的とした旅です」
黒竜に匹敵するモンスターが暴れだすのを阻止する為の旅という訳か……。
「最初の目的は?」
「さぁ? そこまでは私は分かりませんけど……オラリオから近い事を考えると平原ですかね、竜の谷と呼ばれる地域と隣接しているので、そこの調査が第一目的になると思いますよ」
オラリオを出ることになったが、ゼウスの爺さんもヘラもまだこの世界の住人に絶望した訳ではないようだ。
(そうじゃなかったら危険なモンスターの調査なんかしないか)
オラリオについては思う事はあるが、それとこれとは話が別という訳か、その考え方は俺と同じなので異論を挟む事はない。リアルでは見る事の出来ない自然溢れる世界を見る事が出来ると思えば長時間馬車に揺られているのも悪くはないと思っていると馬車が止まった音がした。
「おーい、カワサキそろそろ人がいなくなるから外に出ても大丈夫だぜ」
外からアルトの呼ぶ声がし、馬車の幌から顔を出す。
「おお……良いじゃないか」
自然に溢れ、大きな湖には自然動物の姿と動物や鳥の鳴声が聞こえて来る。リアルでは見ることの出来ない価千金の素晴しい光景に思わず溜息が零れる。
「カワサキ。食料調達で釣りをするんだが、お前もやるか?」
「やるに決まってるだろ! 俺は釣りは好きなんだよ」
釣竿を作っていたザルドが声を掛けてくるので馬車から飛び降り、アイテムボックスから釣竿を取り出す。
「……カワサキ。なんだその釣竿は?」
「見たことないぞ、そんなの」
一般的なルアー竿だが、オラリオを考えるとノベ竿とかが一般的なのだろう。ルアー竿を珍しそうに見ているアルフィア達の前にしゃがみ込んで仕掛けの準備をする。
「俺の方では一般的な釣竿だ。この疑似餌を使って小魚を食う大型魚を釣るための仕掛け」
「ほー……面白いものがあるんだな。どうやって使うんだ?」
「すぐに見せてやるよ、ザルド」
オラリオでは外に出る事は出来ず、そして人のいる所では外に出れず。メーテリアと話をして暇を潰したり、本を見たりして時間を潰していたがやはりフラストレーションが溜まっていたのは当然の事だ。
「よっしゃ、行くかぁ!」
スピニングリールを釣竿にセットし、ラインを通してスピナーベイトをラインに繋いで、俺は太陽の光を楽しみながらルアーを湖へと投げ込み……。
ザパアアッ!!
「え? うおおおおおッ!?!?」
ルアーが着水する前に湖から飛び出した巨大魚がルアーに食いつき、湖へと引きずり込まれかける。
「なにやってんだ!?」
「カワサキが魚に食われるぞ! 早く捕まえろッ!!」
「本当にお前は面白い奴じゃなあッ!!」
魚に湖に引き込まれそうになっている俺、それを阻止しようとするアルフィア達と地獄絵図を作り出す事になり、俺とゼウスの爺さん、ヘラ達の旅の始まりはとても騒がしい物となったが、何年経っても忘れる事の出来ない素晴らしい旅の始まりなのだった……。
幕話はこんな感じで何があったのかっていう感じで時々話の間に挟んでみようと思います。次の幕話のロキファミリアでの中での話とか、そういう感じの話をしてみたいなと思います。
オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは
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間違っている
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間違っていない