ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

28 / 99
幕話

幕話

 

すっぽりとローブを着込んで身体を小さくさせ目立たないようにしているが、横に倍以上膨らんでいる以上それは無駄な抵抗にすぎず、隠れよう隠れようとするたびに余計に目立ってしまうロキの姿を見ていると一応同性としては不憫に思う所もある。

 

(やりすぎ……とは言えないか)

 

カワサキの襲撃によってロキも太る菓子を食わせれ、真ん丸になってる姿に男性の神は笑っているが、私を含めた女神達は引き攣った顔をしていた。

 

「ぷっくくく……ッ! 良かったなロキ。我侭ボデイじゃないか」

 

「まな板。卒業おめでとう。ぶふっ!!」

 

「じゃかやしいッ!! いっとくけどな、うちはまだ良い、ダイエットすれば痩せるからな! だけどな、抜けた髪は戻らんのやぞッ!」

 

抜けた髪は戻らないのは確かにその通りだ。真ん丸になっているロキは頑張ってダイエットすれば元に戻る可能性はある。だが抜けた髪は戻らないというロキのカウンターに男神達は顔面蒼白で己の髪を触る。

 

「いや、神は不変……」

 

「不変の筈のうちがこの様やぞ!?」

 

不変の筈の女神であるロキが肥満体になっている。つまり神は不変であると言うルールはカワサキには適応しないという事をやっと神会に参加している神達も理解し始めたのかその顔が真剣そのものになる。そしてそれに後押しするようにウラノスが口を開いた。

 

「言っておくが明日は我が身ぞ? ロキがこうなったという事は他の神も同じ目に合う可能性があるという事を忘れるな」

 

ウラノスの言葉に笑っていた神は黙り込み、そっと自分の髪や腹を摘んでこの世の終わりのような表情を浮かべた。

 

「ウラノス! あの黄色いモンスターの討伐を「させん。あれはモンスターではない、あれは亜人だ。我ら神がモンスターとして狩りつくした地上の民の生き残り、この報復には正当性がある」亜人……生き残っていたのか……いや、だが」

 

「確かに明確に知性を持ち、言葉を喋る……亜人の生き残りと考えれば確かに今のオラリオに起きている状態も納得出来る」

 

カワサキを亜人にし、亜人でゴリ押すつもりのウラノスだが、私もこれで良いと思っていた。カワサキは確かに強いがザルド達と比べればやはり劣る。囲まれて叩かれればカワサキが危険なので亜人としてしまえば神も強く出れない。

 

「そやけど、オラリオに被害が」

 

「禿と肥満は経験値を獲得すれば解除出来る事が判明している。お前については憐れだと思うが真面目に減量するが良いロキよ」

 

「うぐう……」

 

経験値を取得出来ない神は真面目に減量するしかない。ロキが元の体重に戻れるのはいつになることやらと思いながら話を進める。

 

「それに亜人によってオラリオは大きな転換期を迎えることが出来た」

 

「ダンジョンに向かう冒険者が増えたことですかフェルズ」

 

「いや、違う。ミアハとディアンケヒトの所で隔離されているのだが、闇派閥の主神とその眷属が極めて善良になっている。あの香りだけでも目や鼻がおかしくなる料理、あれを食わせられたことで性格が反転しているようだ」

 

「嘘だろ? そんな事が出来るのか?」

 

「いや、でも亜人は不思議な事が出来るからできるかもしれないけど」

 

これも亜人としたことが生きてくる。不思議な道具と能力を持つ亜人なら出来るかもしれない、そう思わせる事が出来ればカワサキを討伐ではなく、捕縛へ切り替えることが出来る。

 

「ウラノスとフェルズはどうするつもりなんだ?」

 

「あの亜人は捕縛対象とする。それと邪神とその眷族は監視し、問題ないと判断すれば解き放つ事も考えている」

 

「そんな事をしても大丈夫なの?」

 

「ミアハとディアンケヒトには悪いが拘束しておくべきではないのか?」

 

闇派閥の主神とその眷属をどうするかという方向に話が変わって行き。論より証拠ということでディアンケヒトファミリアで監視状態にある邪神と眷族の様子を見に行く事になるのだった……。

 

 

 

 

女性冒険者は肥満、男性冒険者は禿になるとカワサキから聞かされてはいたが実際に目の当たりにすると何ともいえない気持ちになった。

 

「とりあえず身体に異常はない。あの亜人の言うとおり経験値を取得すれば改善される可能性があるとだけ言っておこう」

 

「……はい……分かりました」

 

「受付で全身ローブが買えるぞ」

 

とぼとぼと帰って行く女性冒険者の背中に受付で全身ローブが売っていると声を掛けてカルテを引き出しの中に片付けているとアミッドがノックの後に扉を開いて顔を出した。

 

「ディアンケヒト様。ウラノス様達がおいでです」

 

「分かった。すぐに行くと返事を返してくれ」

 

正直に言えば冒険者よりも邪神とその眷属の問題の方がワシにとっては重要であった。他人に見られては困るものを片付け、ウラノス達と共に地下の隔離病棟へと向かう。

 

「おはようディアンケヒト。今日は良い天気なのかい?」

 

「たまには外でお散歩したいのだけど、もう少し地下にいないと駄目なのかしら?」

 

邪気も悪意も感じさせず、服装も邪神の時の物を拒み、市民と同じ服を着ている邪神達にウラノス達は驚きを隠しきれなかった。

 

「馬鹿な……ここまで変わっているのか?」

 

「振りとかじゃ……」

 

「ない、ワシとミアハで確認したがこやつらは完全に中立の神と同じ状態だ」

 

「邪神としての記憶はあるのか?」

 

「ある。その事は本人も把握しているが、自分がそんな事をしたとはと信じられないと言う様子だ」

 

勿論眷属達も同じ状態だと付け加えるとウラノスとフェルズは少し考え込む素振りを見せた後にデメテルに視線を向けた。

 

「段階的にだがデメテルファミリアを初めとした生産系のファミリアで様子を見てもらえまいか?」

 

「え……う、うーん。暴れたりしないなら良いけど……一応監視としてギルドナイトを派遣してくれるなら」

 

「分かった。その様に手筈を取ろう」

 

他の神はともかく事情を知っているワシ達は邪神達を解放することには前向きで、善神や中立の神よりも善に傾いているのならばオラリオの改善に一役買ってくれるとは思っているのだが……。

 

「タナトス達に会ったら危険ではないか?」

 

「確かに記憶が戻る可能性もある。段階的に外に馴染ませるが、私としては活動的な邪神達が皆性格が変わってからにしようと思う」

 

「それが最善だろうな、何が切っ掛けで元に戻るか分からんからな」

 

「いっておくが面倒を見ている間に発生した金はギルドに請求するからな?」

 

40人近くの生活費を請求するというとフェルズは当たり前だろうと言ってくれて一安心したのだが……翌日……。

 

「おはよう、ディアンケヒト。なんで俺は入院しているんだ?」

 

「きゃあ、なんで私こんな格好してるの!?」

 

「……おはよう~」

 

邪神3人と眷属40名が運び込まれて来てワシは本気でカワサキに苦情を言いに行くべきか、それとも追加でウラノスとフェルズに金を請求するべきかと本気で迷うのと同時に家のファミリアだけでは面倒を見切れないと判断し。

 

「というわけだ。お前の所でも面倒を見てくれ、ミアハ」

 

「……それは構わんが、それよりも先にギルドに場所を借りるべきじゃないか?」

 

「……確かに」

 

カワサキがいるかぎり邪神とその眷属はどんどん浄化されていくわけで、ミアハに指摘され、ホームで面倒を見るよりも別の場所で面倒を見た方が良いのではないかということに気付き、ミアハと連盟でギルドに邪神を収容する広い場所を用意してくれと頼んだのだった……。

 

 

 

黄色いモンスター……いや亜人に何かを口の中に突っ込まれて意識を失った私に待っていたのは受け入れ難い現実だった。

 

「……」

 

腹の肉が摘める……というか鷲づかみできた。体型の維持には気をつけていたし体重管理だってきちんとしていたが、今私の腹の肉は鷲づかみできるレベルになっていた。

 

「……」

 

「……」

 

私だけではなく、他の女性団員もこの世の終わりと言う表情をし、フィンを初めとした男性冒険者は頭頂部の髪が消滅していた。

 

「ちゃんとダンジョンに潜らないからじゃ、馬鹿め」

 

「う、うるさいぞガレスッ! わ、私だってちゃんとダンジョンに潜っていた」

 

「ワシの記憶では4日前だったかの?」

 

ガレスの言葉に呻く事しかできない。ファミリアの経営やギルドナイトとの面談をしていてダンジョンには余り潜っていなかったが、だとしてもこれは余りにもひどいのではないか。

 

「……皆、これ着てダンジョンに行くとええで」

 

「ロキ、この状態でファミ……」

 

ロキの言葉に肥満状態で外に出るのはあまりにも酷じゃないか、せめてもう少し心の準備が出来てからといおうとしたのだが真ん丸になっているロキとその手の中の買ったばかりのローブと頭に被るタイプの防具の数々。

 

「すまない、ロキ。ありがとう」

 

「ああ、べつにええよ。うちはホームで死ぬ気でダイエットするで、リヴェリア達ははよ、経験値稼いでくるとええで」

 

神であるロキは経験値を稼げないので運動してダイエットするしかない。私達は経験値さえ稼げば元に戻れるのでロキが買って来てくれた防具を着込んでダンジョンへ向かうとダンジョンの内部には私達と同じ様な格好をした冒険者で溢れかえっていた。

 

「俺はいつも通り深層に向かうソロアタックをする。お前達はお前達で励め」

 

そう言ってダンジョンの奥へ駆けて行くオッタルの姿であの集団がフレイヤファミリアの団員だと分かった。

 

(流石にアストレアとガネーシャファミリアの姿はないか)

 

今オラリオの守りを一手に引き受けているアストレアとガネーシャファミリアは経験値も稼いでいるし、レベルも上がっているのでダンジョンに団員の姿は無かった。この場にいる全員が経験値を稼いで肥満、あるいは禿を改善したい者ばかりであり、普段は私達に声を掛けて来る冒険者など殆どいないのだが、今回ばかりはそうも言ってられないと思ったのだろう。

 

「あんた達が何者かとか、何をしたとかは追及しない。迷宮の楽園まで一緒に行かないか?」

 

「運が良ければゴライアスを討伐して経験値も稼げるだろうし、どう?」

 

「お言葉に甘えさせてもらう」

 

18階層にあるならず者達の街リヴィラまで同行しないかという誘いを断る理由もなくリヴィラを目指す冒険者達と一時的にパーティを組み、私達はダンジョンの奥へ向かって歩き出すのだった……。

 

 

「……夜な夜な現れる亜人が持ってる紅い料理を食べさせると性格が変わるそうだね」

 

フレイヤが失脚した事で美の女神としての立ち位置を確立させたイシュタルは性格がかなり落ち着き、悪よりの中立から善よりの中立となり歓楽街と風俗街の責任者としてドロップアウトした女の冒険者の受け入れ先となり、ギルドにもかなりの頻度で顔を出していた。

 

「耳が早いな、神会にも出てないのにどこで知った?」

 

「歓楽街の主が情報に疎い訳無いだろ? それでだ。うちの馬鹿を1人性格を変えたいんだ」

 

イシュタルの言葉で誰の性格を変えたいかを即座に理解したフェルズは好きにしろとイシュタルに告げ、イシュタルは満足げに笑ってギルドを後にし、その日の夜から早速イシュタルファミリアは動き出した。

 

「ほどけッ! あたしが何をしたって言うんだよ! 誰でも良い、あたしを解放してくれたらあたしを好きにしても良いぞ!」

 

ヒキガエル……いや、2Mを越える巨漢のおかっぱ頭の「フリュネ・ジャミール」は金属の鎖で拘束されオラリオの広場に放置されていた。その後には「この馬鹿にも性格を変える料理をお願いする」という横断幕がいくつも掛けられ、モンスターと言っても通用するフリュネに情欲を抱く者がいるわけも無く、助けろと喚いているフリュネの周りには誰の姿も無かった。

 

「あれはなんなんだ?」

 

そしてカワサキは喚いているフリュネを見かけたが性格を変えて良いものなのか悩み、その日はフリュネを放置しエレボスに確認を取る事にした。

 

「なんかカエルみたいな大女の性格を変えてくれって横断幕を見つけたんだけどさ、あれ闇派閥なのか?」

 

「……闇派閥では無いが問題児だな、今度性格を変える料理をお見舞いしてやってくれ」

 

「ん、了解」

 

エレボスから許可を得た事でフリュネにも麻婆豆腐をお見舞いする事になったのだが、幸か不幸か、この日から雨が続きフリュネが麻婆豆腐をお見舞いされたのはエレボスから許可が出てから3週間後の事なのだった……。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

  • 間違っている
  • 間違っていない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。