ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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下拵え 酒神襲撃

下拵え 酒神襲撃

 

月が雲に覆い隠され、自分達のファミリアの回りを警備している冒険者達が手にしてるカンテラが蛍に見える闇夜の中、俺とカワサキはソーマファミリアの前まで来ていた。

 

「結構警備が厳重だな」

 

「お前が好き勝手したからな」

 

カワサキが大暴れしたせいでオラリオの警備はとても厳重だ。特にソーマファミリアの警備は輪を掛けて厳重であり、正直侵入するのはかなり厳しいと思える。

 

「先にデュオニソスの所へ行くか?」

 

「いや、今日はソーマを潰す。デュオニソスはヘラが完全に黒と言っていたから念入りにやる。ソーマは今のところグレーだからな」

 

ソーマはグレーとカワサキは言ったが、俺的にはソーマは黒だ。

 

「あいつは酒作りに没頭して団長のザニスが私物化している状況だ。そしてザニスは闇派閥へと繋がりがかなり強い完全に黒だぞ」

 

「ザニスは黒でもソーマも黒とは限らないだろ? ま、とにかく侵入してくるわ」

 

軽い感じで侵入してくると言ったカワサキは屋根の上から飛び降りて、闇に隠れてソーマファミリアへと向かい……。

 

「寝てろ」

 

「むぐっ!?あかかかかかかかッ!?」

 

警備の1人の背後に回ってその口の中にマーボーを流し込み、絶叫させないように口を押さえ込み、嚥下させるカワサキ。

 

「げぶ……ッ」

 

白目を剥いて倒れ込み痙攣してるソーマファミリアの団員の後でガッツポーズを作るカワサキにドン引きした。

 

「……あいつやばすぎるだろ」

 

連れてきたのは俺だがカワサキはやっぱりやばすぎる。さっきの動きはどう見てもアサシンにしか見えなかったし、余りにも気配を殺すのに慣れすぎているように見える。

 

「しっ「黙れ」がもッ!?」

 

今も俺の見ている前でソーマファミリアの団員の口の中にマーボーを流し込んで気絶させる。

 

「料理人ってなんなんだ?」

 

料理人は料理人だがカワサキの場合は料理人ではない何かにしか見えない。

 

「あれで普通の麻婆豆腐らしいが……邪神や悪神が喰わされているのは何なんだ?」

 

邪神や悪神を意識不明にしている麻婆豆腐とは別物と聞いているが、それでもやばすぎる何かにしか思えない。

 

「……良くヘルメスの奴平気だったな」

 

ヘルメスも食わされたと聞いていたが……あいつトラウマになってるんじゃないだろうかと心配になりながらソーマファミリアへと侵入していくカワサキの背中を俺は若干の胃痛を感じながら見送り……。

 

「あれ? もしかしてやばくないか?」

 

カワサキは料理に関してはかなり拘りが強い、そしてソーマも酒に関しては拘りが強い、互いが拘りが強い者同士では揉めるか、意気投合するかのどちらかだ。もしかして最悪の結果になるんじゃないかと俺は心配していたのだが……。

 

「ソーマの奴は白だったぜ。これからはちゃんとファミリアも見るってさ」

 

「何があった?」

 

なんかソーマと意気投合したと帰ってきて笑うカワサキに俺は何があったのかと思わず問いかけるのだった……。

 

 

 

酒蔵の扉が吹っ飛びぽきゅぽきゅと間抜けな音を立てて誰かが酒蔵の中に入ってきた。

 

「何者だ。何故私の酒造りを邪魔する」

 

扉が吹き飛んだ事で舞った埃から酒を守る為に慌てて蓋をして侵入してきた何者かへ問いかける。

 

「酒? はは。面白い事をいうな、お前の作ってるのは泥水だろ? ソーマ」

 

「モンスター……いや、亜人か。どうやってここまで来た」

 

一見モンスターに見えたが違う、かつてオラリオが完成する前に地上にいた亜人だと気付いた。

 

「どうやって? 普通に入ってきたさ。邪魔する奴を排除してな」

 

私の作る酒に飲まれている団員が邪魔をするのは当然。それらを排除してきたと聞いても私の心は全く揺らがなかった。神酒を奪い合い、醜い足の引っ張り合いをしている眷族が傷付こうが、倒れようが私には何の関心もない。

 

「泥水と言ったな。亜人よ、ならばお前はこの神酒の力に抗えるのか?」

 

完成している神酒をコップに注ぎ亜人へと向かって突き出すと亜人は躊躇う事無く神酒の入ったコップを受け取り、一気に飲み干した。

 

「不味い、泥水ではなく汚泥だったか」

 

「……馬鹿な」

 

神酒を飲んで尚亜人は揺らぐこと無く、私の酒を汚泥と吐き捨てた。

 

「今度はお前だ。お前が俺の酒を飲め」

 

亜人はそう言うと虚空から1つの酒瓶を取り出し、それを見た私は目を見開いた。

 

「神酒(ソーマ)だと!?」

 

間違いない、あの酒瓶の中身は神酒だ。何故この亜人が神酒を持っているのかと目を見開いた。

 

「さぁ飲め」

 

自分が呑んだコップに酒を注ぎ、差し出し返してくる亜人からコップを受け取りそれを一気に飲み干した瞬間私の目から涙が溢れた。

 

「神酒だ……本当の……神酒だ」

 

天界で私の作っていた神酒がここにある。地上では作れないと諦めていた本物の神酒が私の目の前にあった。

 

「お前は誤解している。人の口にはいる物を作るものとして最もやっていけない事をしている。分かるか?」

 

「……分かる。分かるぞ、この神酒と私の作った神酒は同じだ……同じ物なんだ」

 

材料は私が準備したものと同じ、作り方も同じ……だが完成したものは全くの別物だ。亜人が言った通り私の神酒は汚泥としかいいようのないおぞましい味だった。

 

「何故だ……何故こうも違う……?」

 

「分からないのか? お前は地上に絶望している、眷属について諦めている。その絶望と諦めがお前の酒の味を濁らせている」

 

「……作り手の内面が酒に滲んでいるというのか……」

 

最初は眷属が奮起する為に作って褒美として与えた神酒……それを得る為に眷族同士で争い、足を引っ張り合い、酒に飲まれている眷属に私は諦めていた。

 

「だが眷属が」

 

「それが間違いだと何故分からない? どうして責任転嫁をする? どうして導こうとしない? お前は親ではないのか?」

 

その言葉に私は完全に言葉を失った。主神としての責務、そして眷属達の親として私はちゃんと責務を果したのかと言われると私は違うだろう。

 

「諦めて、絶望して、失望して、そんな気持ちで酒を作って美味いものが作れると思うのか? 俺は料理人だ。食べた相手が喜んでくれるように、美味しいと笑ってくれることを願って料理を作っている。だがお前はどうだ? ソーマ。お前は天界にいた時もそんな気持ちで酒を作っていたのか?」

 

「違う! 違うんだ……」

 

酒とはもっと楽しくて、己の仕事を労う為に……。

 

「忘れていたのか……こんな事すら……」

 

酒を作る上で大事なことすら私は考えていなかった。どうせ眷属達は完成した神酒を巡って争いあうのだと、誰もこの神酒の力に勝てないのだと……ただ惰性で酒を作っていた事に気付いた。こんな状態では美味い酒など作れるわけが無いと気付いた、眷族を言い訳にして曇っている自分から目を逸らしていたことに気付いた。

 

「感謝する。私は私のやるべき事を思い出したよ。もう手遅れかもしれんが」

 

「人間やり直せないこと何て無いだろ? まぁお前は神だが……やろうと思いさえすればなんとでもなる。まぁ本当は骨の一本か二本は貰うつもりだったが、あんな泣きそうな顔で酒を作ってるお前を見てそんな気はなくなっちまったよ」

 

「……そんな顔をしていたのか?」

 

泣きそうな顔と言われて思わず自分の顔を撫でながら問いかけると、亜人は地面を蹴って飛び上がり酒蔵の窓枠に飛び乗った。

 

「悪いがまだやる事もあるんでね。この続きはまた今度だ、いっとくがファミリアを正常化出来なかったら今度こそ骨を貰うぜ、ソーマ。んじゃなッ! 後こいつは餞別だ」

 

窓をぶち破り、外に出る寸前で神酒の瓶を投げてくる亜人。慌ててその酒瓶を受け取りに走り、地面に落ちる前にその酒瓶を両手で受け止めた。

 

「……酒の神として情けない限りだ」

 

酒造りをする上で大事な事を忘れていた、そんな事すら気付けなかった。そしてファミリアを持つ主神としてやるべき事もしていなかった……これで神酒を作る事など出来る訳が無い、酒蔵に走ってくる眷属達の気配を感じながら私は亜人が残していた神酒を一口だけ飲み、大きく息を吐き、許可無く私の酒蔵に入ってきた眷属達に向かって文字通り雷を落とした。今まで主神らしい事など何1つしていない、今更主神らしく振舞った所で私のやり方に反発してファミリアを出て行く眷族もいるだろう……それでも主神として、ファミリアを預かる者としてやらねばならない事がある、疑惑の眼差しを向けてくる眷属達を睨み返しながら私はゆっくりと口を開く、これがソーマファミリアが生まれ変わる最初の一歩だとそう信じて……。

 

 

 

酒造りに迷うソーマは俺の目から見ても白だった。というか作りたいものが作れないで迷走して、どんどん落ち込んで悪い方向に転がっていた感じだ。ああいう奴は進む方向さえ示せば後は自分で修正出来る。自分の作っている物にプライドを持ち、それが思うように作れず、それを絶賛されるのは料理人にとっては屈辱だ。もっと良い物が作れると自分が分かっているのに、失敗作を褒められるのは屈辱であり恥だ。それが何年も続けば人間だって神だってきっと迷走するだろう。だから俺はソーマには手を差し伸べたが、デュオニソスは駄目だった。

 

「てめえからは下種の匂いがする。善人の仮面を被った悪党だ、俺には分かる」

 

「何を言っているんだい? 私は―」

 

「ああ、別に良いんだ。「今」のお前とは話すつもりはないし、本来のお前とも話をするつもりはないんだ。ただてめえを捻じ曲げるぜ、デュオニソス」

 

悪党にも色んな悪党がいるがデュオニソス……こいつは最も唾棄すべき悪党だ。善人の仮面を被り、本質を隠す、そしてその本質を見事に隠し切っている。こいつは野放しにしてはいけない、ヘラに言われていたのもあるが、こいつが悪党と言うのは一目で分かった。

 

「逃がすかッ!」

 

逃げようとしたデュオニソスの背中に蹴りを叩き込み、そのまま背中の上に腰を降ろして動きを拘束する。

 

「くっ! 私の眷属達に何を」

 

「眠らせただけだ、心配ない。2~3日で目を覚ますだろう

さて善神デュオニソス? お前もこれからもっと善人として働かないといけないよな? 気合が入るようにご馳走してやろう」

 

「目が! 目がああッ!!」

 

湯気だけでのた打ち回るデュオニソスの顎の下につっかえ棒を入れて、キャメルクラッチのような姿勢で拘束する。

 

「たんと召し上がれ」

 

「もがもがああああああ!?」

 

まずは1口、1口流し込んでデュオニソスの反意を折り、ひっくり返して白目を剥いているデュオニソスにビンタを入れる。

 

「貴様ぁッ!」

 

「おう、見れる面になったな。あの偽善者の仮面は鬱陶しかったぜ」

 

目を覚ましたデュオニソスはどこからどう見ても悪神という雰囲気をまとっていたので、何かを言おうとした瞬間に麻婆豆腐を口の中に突っ込んで、両手で頭と顎を押さえて無理矢理嚥下させる。

 

「げぶ……」

 

また呻き声を上げて気絶したデュオニソスの頬にビンタを入れる。

 

「ぼ、僕は? おじさんはだぁれ?」

 

「はい、あーん」

 

「がぼおッ!?」

 

なんかショタっぽくなったので麻婆豆腐を再び口に入れる。

 

「うほ、良い男」

 

「駄目だな、外れだ」

 

「ああああああッ!?」

 

なんか今度は青いツナギを着ていそうな男が見えたので即座に麻婆豆腐を捻じ込む。

 

「やめて! 乱暴するつもりでしょう!?」

 

「駄目だなあ、こいつ外ればっかりだな」

 

「いやああああッ!?」

 

今までの悪神は1回か2回でまともな性格が出たんだけど……こいつは全然駄目だなと呟きながらビンタ、麻婆豆腐、ビンタ、麻婆豆腐、ビンタビンタビンタ、麻婆豆腐、ビンタ、グーパンチ、麻婆豆腐、キン○バスター、麻婆豆腐、ガゼルパンチ、デンプシーロール、麻婆豆腐と攻撃と麻婆豆腐を交互に繰り返し、頬が真っ赤に晴れ上がり、元の貴公子のような顔から想像も出来ないくらいくらいボロボロで、骨がいくつか折れているであろう状態になった所で割りとまともそうな人格が表に出てきたので1発頭を叩いて気絶させてから俺は立ち上がった。

 

「麻婆豆腐の鍋が空だな、何回食わしたんだ? 俺」

 

持って来た鍋が空になるほど性格ガチャを行い、3桁になる迫る回数麻婆豆腐を食わせてやっとカルマ値が善になった。デュオニソスを見下ろしながら鍋をアイテムボックスの中へと片付ける。

 

「暫くは大人しくしてるかね」

 

麻婆豆腐は使い切ってしまったので悪神と邪神の性格を変えるのは暫くお預けだなと呟き、俺はデュオニソスファミリアの窓を突き破り、業と目立って注目を集めながら闇夜を駆け出すのだった……。

 

 

メニュー22 ソース焼きそばへ続く

 

 

 




エニュオのフラグがここで消えたと思うでしょう? まだ実は残っていたりするのでエニュオに関しては出る予定があるのでご安心ください。ヘラから危険といわれていたので襲撃、実際目の当たりにしたカワサキさんは多分おせっかい焼きのあの人みたいな顔で叫んでましたね多分、次回は焼き蕎麦をやりますが、その前にちょっとオラリオに野球を広げてみたいかなと思います。これがベートとかの遭遇フラグになるかなって飛んできたボールが顔面直撃とかで、面白いスタートになるんじゃないかなと思うのでやって見たいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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