ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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メニュー25 ロールアイス

メニュー25 ロールアイス

 

今日は孤児達を連れて市場ではなく、デメテルファミリアにやって来ていた。パン作りも確かに良いが、デメテルが折角困ったら力を貸してくれるといっているのだ、パンだけではなく栽培が出来るようになるのも子供達には良い経験になると思ったのだ。

 

「あの帽子可愛いわね」

 

「まだあるぞ、デメテル。いるか?」

 

「本当? じゃあ貰おうかしら」

 

麦藁帽子を被りデメテルファミリアの団員に教えてもらいながら収穫をしている子供達を見ているとデメテルが麦藁帽子が欲しいというのでアイテムボックスを開いて麦藁帽子をダース単位で取り出す。

 

「……それはなに?」

 

「これか? アイテムボックスという。俺が住んでいた場所では皆使える魔法みたいな物だ」

 

「貴方ってどこで暮らしたの?」

 

「天国のような地獄」

 

リアルは表向きは理想郷だが、その理想郷の維持の為に何人も泣いていたことを考えれば地獄としか表現の仕様が無いだろう。

 

「しかし外は寒いのに、ここは温かいんだな」

 

「神威で気候を調節してるのよ、野菜とか、果物の為にね」

 

神威でビニールハウスみたいなのを作っているのか、神威は地上では制限が掛けられていると聞いているが、こういう使い方も出来るのかと正直感心する。

 

「そう言えばなんか明らかにやさぐれてる奴らもいるが何でだ?」

 

やさぐれてるっていうか落ち込んでる連中がちらほらと見えるのは何でだ? とデメテルに尋ねる。

 

「自分は強いと思ってオラリオに来て闇派閥とか、ダンジョンのモンスターに叩きのめされて冒険者としての自信を失った子達なのよ。とりあえずリハビリ先として引き受けてるんだけど……どう? カワサキも面倒を見ない?」

 

「俺か? まぁ別に良いけど、フェルズを間に挟んでくれよ? 後で文句を言われるのは俺だ」

 

「ん、了解よ。フェルズには私から伝えておくわね」

 

俺からフェルズに話に行くと絶対説教されるからな、デメテルが引き受けてくれるならありがたい事だ。

 

「あ。出来れば冒険者と再起を希望する奴だとなお嬉しい」

 

「それは何故?」

 

「いやなあ、子供だけだと危ないだろ? 引退した冒険者は付いててくれるけど、あいつらを守れるだけの能力を持ってる相手だと俺としても安心出来るし、フェルズとデメテルが間に入るなら人格面も問題ないだろ?」

 

ヴァリスを大分稼げるようになったから行き返りに不安があるという話を聞いているので、どうせ引き受けるなら子供を守れるくらい能力を持った相手が欲しいのである。

 

(どうせギルドナイトの候補生の面倒も見るし、ついでだ。ついで)

 

フェルズからギルドナイトの候補生を預けるという話もあったし、1人教えるのも10人教えるのも大差ないので再起を希望する相手を受け入れるのも問題はない。

 

「私としては別に良いけれど、良いの?」

 

「なにが?」

 

「フレイヤから聞いたけどオッタルのほかにも面倒を見る予定なんでしょ? 大丈夫なの?」

 

フレイヤの名前がデメテルの口から出たことには驚いたが、オッタルと一緒だった事を考えれば友人関係だったとしてもおかしくはないかと納得する。

 

「別に対人の素人なら何人預かっても問題ない、怪我をすることも疲れることも無いし」

 

まずはプライドを圧し折って、ヘロヘロに成るまで投げ飛ばして話はそこからだし、モンスターに特化してる冒険者ならなおの事簡単なので心配することはないとデメテルに返事をしながら鉄板の確認をする。

 

「気になってたんだけど、さっきから何をしているの?」

 

「ん? ガキ達が収穫を終えたら甘い菓子を作ってやるって約束したからな、それの準備だな。あ、悪いけど牛乳とか分けてもらえるか?」

 

「貴方ってマイペースねぇ。まぁ良いけれど、出来ればうちの眷族にもお願いできる?」

 

「元からそのつもりだ。出来れば鮮度の良い牛乳を頼む」

 

はいはいっと笑うデメテルに背を向けて鉄板をフリーズでどんどん冷やす。

 

(うん、できる。多分出来るだろ。うん)

 

仮に失敗してもそういうものでゴリ押せば大丈夫と思い、俺は自分なりのロールアイス製造機の作成を続けるのだった……。

 

 

 

 

カワサキが孤児達を連れてきて収穫の手伝いをしに来たと聞いた時は驚きながら引き受けたが、今は引き受けてよかったと思ってる。

 

「んしょ、んしょ」

 

「見て見てー、上手に切れた!」

 

「そうだな、上手に出来てるぞ」

 

「えへへ~」

 

あの荒んだ孤児達が歳相応の笑みを浮かべている。その姿を見るだけで胸が温かくなり、自然と私も笑みを浮かべてしまう。

 

(多分……いえ。黒だけど……)

 

多分というか確実にカワサキと黄色い亜人に繋がりはあると思う。これは私の直感だが、多分間違いない。だけど孤児達を救っていることを考えればそれを態々口にすることはないだろう。

 

「良し、これで終わりだ。皆手を洗いに行くぞ」

 

「「「「はーい!!」」」」

 

私の眷属に先導されて手を洗いに行く孤児達を見て、地面に座り込んでいるカワサキに視線を向ける。

 

「収穫は終わったみたいだけど間に合うのかしら?」

 

「もう準備は出来てる、後はガキ共が来るのを待つだけだ」

 

「あら? 作っておくんじゃないの?」

 

作っておいたのを渡すんじゃないのと尋ねるとカワサキはニッと笑った。

 

「これは目の前で作るから良いのさ。ま、驚く事を約束するぜ」

 

驚く事ね……一体どんな菓子を作るのかとカワサキが準備している材料に視線を向ける。

 

(収穫した果実と熟成させてたバナナ……それと牛乳とクリームチーズに冷えた鉄板……何になるのかしら?)

 

苺とバナナ、ブルーベリーに林檎とうちの果樹園で取れた果物に牛乳で何を作るのだろうかと見ていると手を洗い終えた眷属達と孤児達がやってくる。

 

「よーし、お疲れ様。今から甘くて冷たいお菓子を作ってやるからな。よーっく見てろよ」

 

カワサキはそう言うと冷気を放つ鉄板の上に苺を乗せると両手に持ったヘラで苺を細かくスライスし、その上クリームチーズと砂糖を混ぜた牛乳を回し掛ける。

 

「なに作るの?」

 

「甘くて冷たいお菓子さ。見てろよ」

 

カワサキは孤児の質問にそう返事をするとヘラを勢いよく動かし始めた。

 

「「「おお~」」」

 

「見事な物ですね」

 

軽やかな音を立てて苺とクリームチーズが凍り始めた牛乳と共に潰される。それをまた広げて潰して、広げて潰してを何度も繰り返す。

 

「よっと」

 

ある程度潰し終えたそれを鉄板の上に広げ、それを何度も繰り返し鉄板の上に平たくされる。

 

「これで仕上げ」

 

手にしたヘラを鉄板の上で滑らせると平たく伸ばされていた物があっという間に円柱のようになる。

 

「おおお~」

 

「凄い!」

 

「おじさんどうやったの?」

 

「はっは、俺もわかんね! ただこういうもんだって事を知ってるだけさ。よっと」

 

円柱状になったそれをカワサキは器にいれるとスプーンを刺して孤児達に差し出す。

 

「苺のロールアイスだ。ほれ、食べてみろ」

 

カワサキはそう笑って完成したお菓子を子供達に差し出す。

 

「あまーい!」

 

「それに冷たくて美味しい!」

 

「んん~」

 

アイスをスプーンで掬って口をもごもごとさせてる孤児達の顔には輝かんばかりの笑みが浮かべられている。

 

「よーし、次はバナナか?それともブルーベリー?」

 

「「「バナナー!」」」

 

「よっしゃバナナだな。すぐに作るからな」

 

皮を剥いたバナナを先ほどの苺と同じ様に鮮やかな手並みでアイスへと加工するカワサキを眷属は勿論、孤児達もキラキラとした目で見つめている。

 

「良し出来た。ほら」

 

「「「わーい!」」」

 

「すいません、ありがとうございます」

 

「アイス……知らないお菓子ですね」

 

「デメテルもほれ」

 

「ありがとう」

 

アイスとは知らないお菓子だけど……どんな味がするのかしらとスプーンで1口掬って頬張る。

 

「甘い……それに冷たい」

 

牛乳とクリームチーズのまろやかさと果実の程よい甘みのある冷たいアイスが口の中で溶けて消える。

 

「美味いだろ?」

 

「ええ、とても美味しいわね。オラリオには無い物よ」

 

間違いなくこれはオラリオにない物だ。冷たく、甘い、まろやかなお菓子。ケーキやクッキーはあるが、それとはまた別のジャンルのお菓子と言えるだろう。

 

「あ、無くなっちゃったな」

 

「おじさん、まだ作れる?」

 

「勿論、これは味見だからな。今度はスペシャルなのを作るぞ」

 

カワサキはそう言うとさっきと同じ様にアイスを作り始めるが、今度はそこにクッキーを加え、先程よりも素早くヘラを動かすカワサキ。

 

「完成したアイスをこうする」

 

苺、林檎、バナナ、ブルーベリーのロールアイスを器に入れ、その上に生クリームを絞り、クッキーを差込み、カットした果実を手早く盛り付ける。

 

「すごーい!」

 

「きれーいッ!!」

 

「カワサキ特製ロールアイスの完成ってね。ほれ、零さないように食べろよー?」

 

「「「「はーい!」」」」

 

沢山のロールアイスの入った器を持って駆けて行く孤児達を見送ったカワサキはどこか悪戯小僧のような笑みを浮かべながら振り返った。

 

「それでデメテルたちはどうする? 作ろうか?」

 

神である私まで子供扱いである。確かにそれは無礼ではあるのだが……。

 

「私もスペシャルを……」

 

「あの私も……」

 

ただ冷たくて甘い菓子の魅力と誘惑には勝てず、そして女神であっても特別視しないカワサキの言葉はどこか心地よく、カワサキに勧められるまま子供達と同じロールアイスを頬張るのだった……。

 

 

 

~7年後~

 

「ベル様、ベル様。オラリオの名物のお菓子なんですよ」

 

「へー。オラリオの名物。どんなお菓子なの?」

 

「それは見てからのお楽しみですよ」

 

にこにこと笑うリリにデメテルファミリアまで案内されたベル。

 

「オラリオの名物のロールアイスですよ。どうですか、ベル様」

 

「え、あ。うん、真ん丸いね。これはどんなお菓子なの?」

 

「冷たくて甘いんですよ」

 

にこにことロールアイスを教えてくれるリリだったが、暑い時期にカワサキがロールアイスを作ってくれていたベルにロールアイスは初見という訳ではなく、驚かせようとしていたリリが期待している通りの反応をベルは出来なかったのだが……。

 

「美味しいですね」

 

「うん、甘くて美味しいね」

 

「はい!」

 

ベルと並んで座ってロールアイスを食べてるだけで満足なリリは微妙な顔をしているベルに気付く事は無く、上機嫌でロールアイスを頬張っていた。

 

 

メニュー26 じゃがまる君(コロッケ) へ続く

 

 




というわけでロールアイスの作り方を教わったデメテルファミリアに名物としてロールアイスが追加されました。

後はデメテルから心折れた冒険者を引き取る約束とカワサキさんの仕事が順調に増えていますね。

次回じゃが丸くんということでロリアイズとカワサキさんをエンカウントさせて見たいと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。


オルガマリークエスト攻略

これちょっと難易度おかしい

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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