ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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メニュー29 海鮮焼き

 

メニュー29 海鮮焼き

 

 

ガネーシャファミリアは現在のオラリオでは上位の規模を持つファミリアだとエレボスから聞いていたが……。

 

「なんとも個性的なホームだ」

 

「はっはっは!! 良いだろう!」

 

上機嫌なガネーシャには悪いが、あちこちに象の置物と象の仮面をつけている男の団員ばかりなのは正直言って変だ。

 

「良いんじゃないか、個性的で」

 

当たり障りのない言葉で返事をするとガネーシャは上機嫌で俺の背中をバシバシと叩く。

 

「さぁ、俺の方でもそれなりの準備をしておいたぞ。どうだ」

 

「へえ……割と本格的だな」

 

レンガを積んで簡易的な竃を作り、その上に網や鉄板が用意されている。BBQ会場として見ても全く問題のない準備がされていた。

 

「カレーを作って振舞ったりしているのでな! こういうのは慣れている!」

 

「はは、それは良いな。で、良いのか? 俺があれやこれやと準備しても?」

 

「全く構わない! 俺の方でも肉等は準備をしているから、カワサキはカワサキで好きに準備をしてくれ! ではな!!」

 

ボデイビルダーのようなポーズをして駆けていくガネーシャを見送り、好きに使っていいと言われた区画に置かれていた机に鞄を下ろす。

 

「何を作るんですか?」

 

「今のオラリオじゃ食べれないもの」

 

ひょこっと顔を出したアーディにそう返事をし、無限の背負い袋を開けてその中から使う食材を取り出す。

 

「えっ!? か、カワサキさん……海鮮じゃないですか!?」

 

「そう、海鮮だ。しかも鮮度もバッチリだ。俺の魔法でしっかりと鮮度は保ってるぞ」

 

オラリオはニョルズファミリアのあるメレンやポセイドンファミリアから運ばれてくる海産物のが唯一の海産物の入手経路だが、闇派閥が幅を利かせているので中々流通しないらしい。まぁそれも当然でオラリオにはいるのに4~5時間掛かるのでは海産物はどう考えても全滅するからだ。

 

「海産物だと!?」

 

「うお!? マジだ!」

 

「これを焼くのか!! 良いな!!」

 

男連中が海鮮を見て声を上げるのを見て、俺は笑いながら鞄から箱を取り出した。

 

「これにとっておきのブツがあるんだ」

 

そう言ってから箱を開けて、氷の中から鮮度の良い烏賊を取り出す。

 

「こいつをぶつ切りにして焼く」

 

「「「おおおーッ!!」」」

 

「この貝にバターを乗せて焼く」

 

「「「おおおーーーッ!!!」」」

 

「このでかい海老を半分に割って豪快に焼く」

 

「「「うおおおおおおーーッ!!」」」

 

徐々に上がっていく歓声に俺も楽しくなってくるが、ここで1度蓋を閉める。

 

「仕事の後に振舞うからな。ちゃんと別で保存してあるから頑張ってくれ、労いでこれも出すぞ」

 

日本酒……こっちでは極東酒か、極東酒の酒瓶をドンと机の上に乗せるとガネーシャファミリアの団員たちは気合満点な様子で駆けていった。

 

「面白い奴らだな」

 

「……わたしは恥ずかしいですけどね」

 

「そうか? あれくらい素直なほうが分かりやすくて良いだろ」

 

美味いものを喰いたいと思うのは当然な事だし、素直に反応されるのを見るのは料理をする側としても楽しいものだ。

 

「まぁアーディも頑張ってきな、美味いものを準備しておくからさ」

 

「はーい、行って来まーす」

 

「あいよー」

 

アーディを見送り、俺は海鮮焼きの準備を始める。と言ってもやる事は簡単で料理と呼べる物では残念ながらなく、烏賊は良く洗って内臓や墨袋を取り除いて塩を振る、蟹の足は鋏と包丁を使ってからの一部を削いで身を露出させる。車えびなどの普通の海老は背腸を取り除いてよく洗う、さっきガネーシャファミリアの面子に見せた巨大な海老……伊勢海老などは豪快に半分に割り、帆立は貝殻にナイフを差込、まずは貝の端から中央へ向かうように一周させ貝柱と貝が切り離され貝が開くので良く身を洗って、サザエと共に常温に戻す。

 

「……ま、1つくらいは料理らしいものをな」

 

2重にしたアルミホイルにサーモンの半身と玉葱、オリーブオイルと塩を振り少し空洞が出来るようにアルミホイルを包む。

 

「後はバター焼きと茸も一緒に包んだりしても良いな」

 

派手でないがホイル焼きはバーベキューでは割と目立つ一品だ。これも適当な数を作って準備をしガネーシャが巨大な肉塊を運んで来たのを見て、俺も釜戸に火を入れて海鮮焼きの準備を始めるのだった……。

 

 

 

 

リリに先導されながら歩く痩せぎすの男……いや、神ソーマはふらふらと今にも倒れそうだった。

 

「ほら、しゃんとしてください、しゃんと」

 

そんなソーマを見たリリは振り返りソーマにしゃんとしろと声を掛ける。

 

「……暑い」

 

ボサボサだった髪を適当に整え、清潔な衣服に身を包んではいるが、バリバリのインドア派のソーマには日中に出掛けるのは些かハードルが高かったようだ。

 

「暑いじゃないんですよ、暑いじゃ、ソーマさまが自分で行くとおっしゃったのですよ。リリは本当なら皆と一緒に来ようと思っていたのに……」

 

「すまん」

 

「別に良いですけど、カワサキさんがチケットをくれてますし……」

 

カワサキ……私に神酒をくれた亜人、それがガネーシャと共にイベントをやると聞いていてもたってもいられず、たまたま目に付いたリリに頼み込んで一緒にガネーシャファミリアに付いて来て貰った。

 

「盛況だな」

 

「ただで食べれるとなれば盛況ですよ、さ、こっちですよ」

 

ガネーシャ本人も肉を焼き、団員達がそれを配り、笑顔が広がっていく光景は見ていて楽しくなってくる。

 

(今の私には必要だからな)

 

私のファミリアの団員の多くは闇派閥へと流れてしまった。それだけ私が馬鹿にされていたというのもあるが、私が神酒作りに没頭している間にザニスに運営権を任せたのが全ての失敗だった。それを取り戻したとしてもザニスに付き従う闇派閥予備軍は全員闇派閥に流れてしまい、私はフェルズにすぐに連絡を取ったが、既にザニス達は改宗を終えていたので私に出来る事は何もなくなってしまった。

 

「カワサキさん! こんにちわー!」

 

「おう、リリ。元気そうだな!」

 

「はい! リリは元気です!」

 

カワサキと楽しそうに話すリリを見ているとカワサキと目が合った。

 

「あんたは「初めまして」だな。カワサキだ、ダイダロス通りで炊き出しをしながらガキの面倒を見ている」

 

「あ、ああ。初めまして。ソーマだ」

 

初めまして、つまり互いに初見という事を貫けというカワサキの言葉に頷いているとリリが鞄からチケットを2枚取り出した。

 

「はい! カワサキさん!」

 

「おう、確かにな」

 

チケットを受け取ったカワサキはプレートの上に焼きたての海鮮をこれでもかと盛り付け、私を手招きした。

 

「リリが運んだら落とすかもしれないだろ? 持って行ってやれよ」

 

「そうだな。ああ、そうしよう。行こうか、リリ」

 

「はい!」

 

2人分の皿を持って空いている机に皿を置いて椅子の上に腰を降ろす。

 

「疲れた」

 

「少し歩いただけですよ、ソーマさま」

 

「……そうだな、少し身体を動かすべきか」

 

ファミリアの正常化のためにも変えれる所から変えていこうと思って最初は服装を改善したが、次はもう少し活動的になるか……。

 

「何をすれば良いと思う?」

 

「……リリと一緒にカワサキさんの所に行きますか?」

 

「そうだな、それも良いかもしれないな」

 

炊き出しの手伝いとかをして見るのも良いかもしれないなと呟きながら料理の盛り付けられた皿に手を伸ばすが、その手をリリに叩かれた。

 

「いただきますです」

 

「あ、ああ。いただきます」

 

「はい、食べましょう。ソーマさま」

 

少し見ない間というかカワサキの所に通ってるうちにリリがめちゃくちゃたくましくなっていた。

 

「……海鮮か、まずは……そうだな、烏賊だ」

 

烏賊、帆立、海老を網焼きにしたものと銀色の何かに包まれた料理に蟹と豪華な品の中、1番最初に目に付いた輪切りにされた烏賊にフォークを刺して持ち上げ頬張る。

 

「あふっ! あつっ!?」

 

「ちゃんと冷まさないからですよ。ふーふー」

 

焼きたての烏賊に舌を火傷する私の隣でリリは烏賊に良く息を吹きかけてから頬張る。

 

「んんん~♪ 美味しいです!」

 

「あ、ああ。美味い」

 

烏賊の鮮度が良いのか塩だけで十分に美味い。サクサクとした食感と烏賊の旨みだけで美味い。

 

「この大きな貝も美味しそうです!」

 

「間違いなく美味いだろうな」

 

リリの拳よりも尚大きい帆立は間違いなく美味い、見るだけで美味いと確信出来る。

 

(本当は酒が欲しいが、今は禁酒だ。我慢我慢)

 

カワサキと酒を酌み交わすまでは酒を我慢すると決めていたので酒をグッと我慢し帆立の巨大な貝柱にかぶりついた。その瞬間に口の中に広がる海の香りと肉に負けない肉厚の貝柱のジューシーさには流石に禁酒の誓いを揺るがされかけたが、それをぐっと堪える。

 

「これものすごく美味しいです!」

 

「そうか、良かったな。リリ」

 

「はいです!」

 

本当に嬉しそうなリリの笑顔を見て神酒に拘っていれば、この笑顔を失っていたと気付き、あの時カワサキに出会えて良かったと心の底から思うのだった……。

 

 

「禁酒するんじゃないですか!?」

 

「1杯、1杯だけだ」

 

「駄目ですー!」

 

「後生だ! 1杯だけ目を瞑ってくれ、リリ!」

 

ただ海鮮焼きの美味さに負け、禁酒の誓いを破りそうになった私とそんな私を止めようとするリリとリリに助けを求められやってきたカワサキと余りにも混沌としたその光景は今思い返しても、恥ずかしくもあったが面白く楽しい瞬間であった。

 

 

 

アイズとベートがどうしてもガネーシャファミリアの催し物に行くと聞かず、2人だけで行かせるのは不安だったのでついてきたが……そこで私はベートの意外な側面を見ることになった。

 

「なぁーカワサキさんよ。俺にも稽古を付けてくれよ、オッタルを鍛えてるんだろ? 俺だって良いじゃねえかよ」

 

「……わたしも」

 

「ベートはともかくお前は駄目だ、アイズ」

 

「なんで」

 

「子供の時に身体を鍛えすぎると背が伸びなくなるぞ? 何時までも小さいままでいいのか?」

 

「……それはちょっと困る」

 

「だろ。今は飯を食って遊んで寝ろ。良いな? という訳で食え」

 

「あい」

 

偏食家のアイズがカワサキと名乗った男に差し出された料理を受け取り、椅子に座って食べ始める姿に驚かされた。

 

(ホームではあんなに苦労しているのに)

 

嫌だと言って逃げ回るアイズを追いかけ、食事をさせるのにどれだけ苦労するか、しかもじゃが丸くんじゃないといやそうな顔をして少ししか食べないのに……。

 

「これ、美味しい」

 

「じゃあもっと食べるか?」

 

「食べる」

 

自分から食事をして、おかわりまで……ッ! 

 

「ベートも食うか。美味いぞ、新鮮な海鮮は」

 

「……貰う」

 

口は悪いが、優しく求心力のあるベートまでもが素直にカワサキのいう事を聞いている。

 

「うめえ」

 

「美味しい」

 

「そうか、そうか、どんどん食え、で? そこで見てるあんたは食わないのか?」

 

私に声を掛けてくるカワサキに私は小さく頭を下げた。

 

「エルフだから肉や魚は余り好きではなくてな」

 

「ふーん……まあ無理に食えとは言わないさ。食いたくなったら声を掛けてくれ「おかわり」おー、今日は良く食うな、アイズ。何が美味い?」

 

「これ、それとこれ」

 

「はっははははは! そうかそうか、蟹と帆立が美味いか! はっははははッ!! 良いぞ良いぞ、どんどん食え」

 

「うん……」

 

超がつく高級食材である蟹と海老をゆっくりだが、確実に食べているアイズは幸せそうに笑っていて、その笑顔はどれだけ見ようと思ってもロキファミリアでは見れないものだった。

 

「んで稽古付けてくれるのか?」

 

「あー別にかまやしないが……何処でやるんだ?」

 

「うちのホーム。アイズに料理とか教えてくれてるんだろ? それの礼も言いたいってリヴェリアも言ってるし、それを兼ねて1回来てくれよ」

 

ベートが熱心にカワサキをロキファミリアに来てくれと誘っている。フレイヤファミリアの猛者オッタルを鍛え上げ、闇派閥のヴァレッタ達を一蹴した恩恵も持たない料理人に訓練を見てもらいたいというベートに何を馬鹿なと思いはしたが……。

 

(私でも、いやガレスでも勝てんかもしれん……)

 

オッタルの真似をした訳ではないが、最近深層までのソロアタックを始めたガレスでも勝てないかもしれないと思うほどにカワサキの姿に隙は無かった。例えば今料理をしている中でも攻撃を受ければ即座に反撃に出れると確信出来るほどにカワサキには隙が無かった。

 

「遅れて申し訳ない。私はリヴェリア・リヨス・アールヴ、ロキファミリアの3人の団長の1人だ」

 

「ほーで?」

 

興味が無いというのがひしひしと伝わってくる。敵意ではなく、本当に私という存在に興味が無いのだろう。

 

「アイズに関しては私も、ロキファミリアのメンバーもとても感謝している」

 

「その割には挨拶に来るの遅くないか?」

 

すぐに飛んで来る皮肉に思わず顔が引き攣るとベートが小さく耳打ちして来た。

 

(カワサキは優しいけどめちゃくちゃ怖いぜ。今のオラリオの情勢の原因の片割れってことは知ってるんだしよ)

 

ぐうの音も出ない正論だ。フレイヤファミリアは既に復興の兆しはあるが、それに対してロキファミリアはベート達が頑張ってくれているだけで古参のメンバーはどうにもぱっとしない状況が続いている。

 

「俺は見ての通り忙しい、飯も食わねぇ、話もしないならとっとと帰ってくれ」

 

「おかわりくださーい」

 

「こっちもお願いします」

 

「あいよーッ!」

 

汗を流しながら料理を配っているカワサキをこれ以上足止めしては迷惑だ。

 

「そちらの都合の良い時間で良い、1度ロキファミリアへ来てくれないだろうか?」

 

「……気が向いたらな。ほら、食わないならあっち行け、邪魔だから」

 

シッシと追い払われ、まだ海鮮焼きを食べているベートとアイズだけを残して私はホームへと足を向けたのだが、その道中でどうしても気になることがあった。

 

「おかしいな、どこかで会ったような気がする」

 

初めて会う筈なのにカワサキを知っているような気がしてならず、一体何処であったのかと首を傾げながらホームへと帰った。

 

「なんか明後日には来るってさ、よっしゃあ。気合入るぜッ」

 

土産までちゃっかり持ち帰ってきたベートから明後日に来ると聞いて、私は慌ててロキの部屋へと走るのだった……。

 

「美味い美味い!!」

 

「うわ、美味しい……これこれで包んで焼くだけなんですよね?」

 

「そうだ。簡単で美味いだろう?」

 

「はい! 凄く美味しいです!」

 

「カワサキ! これもっと焼いて良いか!?」

 

「どんどん焼いて良いぞ!」」

 

「「「おおおおーッ!!!」」」

 

リヴェリアがロキ達にカワサキが来ると話をしている頃、カワサキは完全にガネーシャファミリアに馴染み海鮮焼きをしながら酒盛りを楽しみ、完全にガネーシャファミリアに溶け込んでいるのだった……。

 

 

 

下拵え カワサキさんロキファミリアへ行く その1 へ続く

 

 




海鮮焼きは他の作品でもやっているので今回はシナリオメインにしてみました。リヴェリアへの塩対応で分かると思いますが、アイズの状態を見てカワサキさんはロキファミリアの評価が更に下がっているのでこうなりました。次回はタイトル通りロキファミリアへ向かうカワサキさんですが、メインはベートとアマゾネス姉妹でやって行こうと思いますので、次回の更新もどうかよろしくお願いします。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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