ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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メニュー30 カワサキさんロキファミリアへ行く その2

 

メニュー30 カワサキさんロキファミリアへ行く その2

 

カワサキがロキの執務室に来ていると聞いて私も大急ぎで執務室へと向かったのだが……そこで待っていたのはカワサキの説教だった。

 

「ネグレクトって知ってるか? おう、アホ女。子供を引き取って育てる環境かこれが?」

 

「……面倒は見てます」

 

「面倒見てるだけだろうが、子どもを育てる環境じゃねぇって言ってるんだよ。アホ女」

 

ロキと並んで正座させられ、かれこれ1時間近くカワサキに説教されていた。

 

「良いか、子供の時の情操教育は大事なんだ。同い年くらいの子供達との触れ合いや動物との触れ合い、それに適度な運動に勉強。そのどれかでも十分だったとお前は言えるのか? アホ女、馬鹿女」

 

これでもエルフの王族なのだからそう何度も馬鹿女というなと思ったのだが、カワサキに言われた子供の教育に必要な物がホームにあるかと言われると……無い。

 

「そもそもお前ら子供育てた事あるのか?」

 

「「……ない」」

 

「根底から駄目じゃねえか、フェルズの奴は何してるんだ」

 

未婚なので子育ての経験なぞあるわけが無いし、ロキは眷属こそ多いが当然子供も産んだ経験も無いだろう。

 

「いや、でもアイズたんの面倒は見てたで、それなりにアイズたんもうちらに懐いてくれてると思うし」

 

「じゃあその懐いてくれているアイズがダイダロス通りから帰ってきた時暗い顔をしてるの気付いたか?」

 

「……気付いてたけどどうすれば良いのか分からなかったな「だからお前は馬鹿なんだ」あいだッ!?」

 

頭にカワサキのチョップが叩き込まれ、痛いと呻きながら倒れると足の痺れと相まって私とロキは揃って執務室の床に転がり悶えることになった。

 

「なんで子供がいる眷属とか、団員に相談しなかったんだ?」

 

「「あ……」」

 

確かに私を慕っているエルフには子供を持つ者もいるので彼女達に話を聞いて子育ての参考にするという手も合った。

 

「んでロキはデメテルとかに話を聞こうと思わなかったのか?」

 

「……いや、全然「アホ女」いったあッ! あ、足が痺れ……」

 

ロキに神友が少ないのは知っていたが、それでも子供を産んだ経験のある女神もいるのだから話を聞くというのは十分に出来たはずだ。

 

「はぁ……まぁ偉そうな事を言える立場じゃないけどよ、もう少し子供を育てるってことを真剣に考えたほうが良いぞ、お前ら」

 

「「……はい」」

 

最終的に呆れが勝ったカワサキの言葉に私とロキは声を揃えて返事をし、アイズが望む日はダイダロス通りに連れて行き、カワサキの学校に通わせるという約束を最終的にカワサキと私達の間で交わすことになったのだが、女としての全てを否定された私とロキはカワサキの姿が見えなくなった後も床に座り込んでいた。

 

「リヴェリアママ、なんもかんも間違ってたんかな?」

 

「……情操教育なんて考えたことも無かったな」

 

「……まだやり直せるかなあ」

 

「……ファミリアの立て直しもだが、アイズの母としてもっと己を見直す必要がある……な」

 

ファミリアの立て直しだけではなく、仮にもアイズの母としてやるべきことがあることをカワサキと話をすることで私とロキは再認識するのだった……。

 

 

 

 

ロキもリヴェリアもアイズの事を心配し、色んなことを考えていただろうが2人とも根本的な部分が駄目だった。子供を育てた経験もないのに5歳くらいの子供を預かって育てようっていうのが土台無理な話だ。

 

(フェルズもフェルズなりに考えたんだろうけどなぁ……)

 

子供を育てる事でロキファミリアの印象を変えようとしたんだろうが、それをするなら子育ての経験が豊富な人間を補助としてつけるべきだった。

 

「……まだ間に合うと良いが」

 

アイズの中に燃えている黒い炎……復讐かあるいは報復か、アイズの目はリアルで腐るほど見てきた。世の中へ、あるいは自分の家族を壊した物に向ける憎悪。アイズに何があったのかは知らないが、まだ7歳くらいの子供がして良い眼ではないので、出来る事ならばもう少し子供らしいことに興味を持たせることが出来たら少しはアイズが自分の生に執着してくれるのではないかと考えながら俺はファミリア用の巨大フライパンを前後に振りながら牛肉の切り落としを炒めていた。

 

「なあーカワサキさん。もう出来るか?」

 

「もう少し待ってろベート。すぐ出来る」

 

牛肉に少し焼き色がついてきたら1度フライパンから取り出して、そのままフライパンの中にサラダ油小さじ1を加えて玉葱と塩を1摘みいれ、生姜を入れて玉葱と共に炒め、しょうがの香りが出てきたら、味付けだ。

 

(2人まえで濃口醤油と酒が大さじ2、みりん大さじ1、砂糖大さじ1.5、水250ml……だから……)

 

「まぁ、良いか、大体こんなもんだろ」

 

途中まで考えていたが、なんかどんどん増えてきているのを見て自分の勘を信じて作った割り下をフライパンの中に入れると甘辛い食欲を誘う香りが食堂中に広がる。

 

「ああ~腹減ったぁ」

 

「私も……もう出来ますか?」

 

「もう少しだな、もうちょい待て」

 

割り下を加えて一煮立ちさせたら火を弱めて、1分ほど煮詰めたら取り出しておいた牛肉を戻し火を強くする。煮汁が沸騰してきたらたまり醤油を回し入れてもう1度沸騰させる。

 

(普段より濃い目だけどまぁ、しょうがねえな)

 

あれだけ熱心に訓練をしたベートとガレスに引かれて全員かなり力を入れた鍛錬をしていたので普段より少し濃い目の味付けにして塩分を取れるようにしてある。

 

「よし、出来たぞ。ベートどうする?」

 

「大盛り!」

 

「私も大盛りでお願いします!」

 

「大盛り汁だく!」

 

「じゃあワシも大盛り」

 

ベートとティオネ達の注文にガレスが続き、若い団員達が俺も、俺もっと駆けてくるのを見ながら丼に炊き立ての米をよそり、肉と玉ねぎ、そして汁を均等になるように米の上に盛り付けて、ティオナは汁だく希望だったので汁を大目にして厨房に1番近い席で待っていたベート達の所へ牛丼を運ぶ。

 

「特製牛丼だ。熱いから気をつけて食えよ」

 

本当はすき焼き風牛丼だが、それを言ってすき焼きってなんだとなるとベートは絶対食べるって騒ぎ出しそうだし、とりあえず今回は前にベート達が食べたことがある牛丼で押し通そうと思う。

 

「あ、あの私も欲しいです!」

 

「僕も良いですか?」

 

「おう、良いぞ。今よそってやるからな」

 

牛丼の香りに吊られて食べたいと声を掛けてくるロキファミリアの団員達で一気に忙しくなるが、その忙しさはそう悪いものではなく俺は次々に丼に米よそり、その上にたっぷりと牛肉を乗せてやって次々やってくる腹ペコ共に次々と牛丼を渡していくのだった……。

 

 

 

 

 

丼から上がる湯気と食欲を誘う甘い香りに口の中に唾が込み上げてくるのが分かる。今すぐにもかき込みたいのを我慢して手を合わせる。

 

「いただきますッ!」

 

「おう! 食え、おかわりもあるぞ」

 

いただきますを言わないとカワサキが怒るのは1ヶ月カワサキが村にいたときに把握済みだ。いただきますとしっかり叫んでから丼を持ち上げて米の上に乗っている薄切りの牛肉を口の中に入れる。匂い通りの甘さとほんの少しの辛さ、甘くて辛いというカワサキの料理特有の味が口の中一杯に広がる。

味が口の中一杯に広がる。

 

「うめえっ!」

 

「美味しい、はー……カワサキさんの料理久しぶりだけどやっぱり美味しい~!」

 

「んー幸せの味がする~♪」

 

かなり濃い目の味付けだが、その濃い目の味付けが汗をかいた今の俺達には丁度良い。濃い牛肉の味の後は炊きたての熱々の白米を口の中に放り込んだ。濃い味付けと炊き立てご飯の組み合わせは暴力的な美味さであり、夢中で牛丼を口の中へかき込む。

 

「美味い! なんじゃこれはめちゃくちゃ美味いではないか!?」

 

「美味しいっ!」

 

「はぐはぐっ!! うんうん! うめええッ!!」

 

俺とガレスとカワサキとの組手を見ていて、熱が伝播した団員達も牛丼を勢いよくかきこみ、美味い、美味しいと口々にしている。

 

「んぐんぐ、カワサキおかわり!」

 

「今度は?」

 

「大盛り!!」

 

1杯目をノンストップで食べ終え、2杯目を頼むとすぐに2杯目が俺の前に置かれ、今度はドロドロの卵もセットだった。

 

「温泉卵か、懐かしいな」

 

「それ好きだろ?」

 

「ああ、好きだ!」

 

とろりとした白身も濃厚な黄身の旨みも好きなので、それを牛丼の上に乗せて黄身を崩すと牛肉と米に黄身が絡まっていく……。

 

(こんなの不味い訳がねぇ!)

 

見ただけで美味いと分かる牛丼の丼を持ち上げ、黄身としっかり絡めた牛肉を頬張る。

 

「うめえッ! これは最高に美味いなッ!」

 

牛肉の濃い味に半熟卵の濃厚な旨み。2杯目でも手が止まる所か、むしろ早くなるのを感じる。

 

(この卵、本当にどうやって作ってるんだ?)

 

火が通っているのに生卵のようにトロトロという不思議な食感のこの卵はどうやって作っているのかいつも気になる。作ろうとするがいつもゆで卵になってしまうし、料理人の中でもカワサキのような一握りの人間しか作れないきっと特別なゆで卵なのだろう。

 

「私もください!」

 

「私も」

 

「ワシも貰うかの」

 

「はいはいっと、ほい温泉卵お待ち同様」

 

牛丼の茶色に温泉卵の黄身の鮮やかな黄色が良く栄える。そして卵のまろやかな味が牛肉を包み込み、その味を大きく変化して舌を楽しませてくれる。

 

「ふーッ! ご馳走様! めちゃくちゃ美味かったッ!」

 

カワサキとの組手で俺に足りない物の一欠けらを掴めた上に、美味いメシを腹一杯食った俺は上機嫌でご馳走様と言いながらカワサキに向かって頭を下げるのだった……。

 

「こう、か?」

 

「カワサキの蹴りはもう少し、ズシンと芯に響く感じじゃったな」

 

「だよなあ? おかしいな、蹴りの速さは俺の方が上のはずなんだが……」

 

「それより交代じゃ、ほれベート持て」

 

「おう。来い、ガレス」

 

「おおおッ!!」

 

カワサキが訪れてからロキファミリアの自己鍛錬の熱は弱まる所か強さをまし、ホームで鍛錬し、ダンジョンでそれを試すという事を繰り返しガレスとベートを始めとし、実働部隊はメキメキとその実力を増していたのだが、その中でもフィンだけは今だ前に踏み出すという事が出来ずにいるのだった……。

 

 

メニュー31 お手軽酒のつまみ へ続く

 

 




ベートには牛丼とか、カツ丼とかの丼がよく似合うと思います。異論は当然認めますが、冒険者にはこういうのがよく似合うと思うんですよね。次回は酒のつまみということでソーマを絡めて、ザニスに制裁を加える下拵えに進めて行こうと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

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