ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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クリスマス番外編 それはもしもの未来

それはもしもの未来

 

 

世界には色んなもしもの未来がある。ほんの僅かなすれちがい、ほんの僅かの行動によって未来は変わる。それはそんなもしもの未来のお話……。

 

「いやあ、悪いねぇ、カワサキ君。僕に付き合ってもらっちゃって」

 

艶やかな黒髪をリボンで結びツインテールにし、背中が丸見えで超ミニのワンピース、そしてその背丈の割りに豊かな胸を持つ少女……いや、ヘスティアファミリアの主神へスティアが隣に立つ筋肉質で強面の男……カワサキへ声を掛ける。

 

「別に構わないぞ、少し行き詰っていたしな」

 

「あー聖夜祭の……しかしマメだねぇ、僕達を模したお菓子をケーキに飾り付けしたいとか」

 

「記念に良いだろ?」

 

ヘスティアファミリアでのクリスマスパーテイに振舞われるケーキにヘスティアファミリアのメンバーを模したアイシングクッキーを飾りつけようとしているカワサキだが、お菓子は専門外なので試行錯誤の繰り返しであり行き詰っていたカワサキは気分転換にヘスティアの買い物に付き合っていた。

 

「ベル君は何なら喜んでくれると思う?」

 

「ベルは何でも喜ぶと思うけどな……お守りなんてどうだ?」

 

「お守り……指輪とか? あ、でも婚約指輪は早いかなー?」

 

「まぁそれは俺がどうこういうことじゃないが、指輪は割りといいんじゃないか」

 

自分で言っていやんいやんと身を捩っているヘスティアにやれやれと肩を竦めたカワサキはその視線の先に露天商が売っている新鮮な果物発見した。

 

「ちょっと見てくるわ」

 

「ん、了解。僕もちょっと見てくるよ」

 

カワサキとヘスティアの2人は露天商の売っている品を見て回る為に1度別れた。

 

「ね、ね! ちょっとで良いからお茶に付き合って!」

 

「いや僕は人を待ってるから」

 

「ちょっと、ちょっとだけで良いから」

 

そして果物を買い終えたカワサキはヘスティアをナンパしている茶髪のちゃらい雰囲気の男に眉を細めた。

 

「おうこら、てめえなにしてんだ」

 

「げはっ!?」

 

その男の後ろに回ったカワサキは容赦なくその男の背中に蹴りを叩き込み、蹴られた男は呻き声を上げながら吹っ飛び、せなかをおさえてうごごごごっと呻いていた。

 

「しつこい野郎は股間を蹴り上げろって言っただろ?」

 

「君は優しいのに何でこういう時の対応は暴力的なんだい?」

 

「調子に乗るからだな、ギルドナイトに……ん?「ん?」」

 

ナンパ男をギルドナイトに引き渡そうとカワサキはまだ呻いている男を爪先で小突き、正面を向かせその顔をしっかりと見たカワサキとナンパ男の視線があった。

 

「か、カワサキさぁぁんッ!「あぶねぇ!?」げぼろおっ!?」

 

号泣しながら抱きついて来た男にカワサキは反射的に蹴りを叩き込み、再び蹴られた男は市場の壁に叩きつけられ崩れ落ちる。

 

「カワサキさん、大丈夫かい? ギルドナイト呼ぶか?」

 

「なんだなんだ。カワサキに喧嘩を売ってる馬鹿がいるのか?」

 

カワサキが揉めているのを見てあちこちの市場の店主が顔を出す中、カワサキは腹を押さえて悶絶している男の前にしゃがみ込んだ。

 

「ちょっとカワサキ君。危ないよ?」

 

「いや……こいつの顔に見覚えがあってな……お前……ペロロンチーノか?」

 

カワサキの問いかけに2発蹴られた男……ペロロンチーノは脂汗を流し腹に手を当てながら小さく2度頷いた。

 

「怖がらないで、僕はただちょっと君達に聞きたいことがあるだけなんだ。いまカワサキって言ったよね? それってもしかして料理が上手で優しいけどちょっと暴力的で、目付きが悪いけど優しそうな男の人じゃないかな? かな?」

 

そしてカワサキがペロロンチーノ(?)に遭遇している頃、パーティの買出しに来ていたベル達は目が完全に逝っている眼鏡の女性に詰め寄られていたりする……。

 

 

 

 

クリスマスにお祝いをするからとカワサキさんに渡されたメモ用紙を手に、リリとヴェルフと買い物に来ていた僕は1人の鬼気迫る表情の女性に詰め寄られていた。

 

「いやあごめんごめん、ちょっと頭に血が昇って、それで君達はカワサキを知ってるのかな? かな?」

 

もう大丈夫と言っている割には全然大丈夫そうに見えない黒髪、眼鏡でどことなくエイナさんに似ている女性はもう1度僕達にそう問いかけていた。

 

(やばいですよ、この人絶対やばいですよ)

 

(俺もリリ介に同意だ。逃げたほうが良い)

 

確かに僕も基本的にはリリ達と同じ意見なんだけど、何故そこまでカワサキさんを気にするのか知りたかった。

 

「あーうん、僕も自分でやばいって思うんだけどさ、僕、いや僕もそうなんだけどカワサキを探してここまで来たんだ。昔の、いや、今も仲間だと思っているし、大事な人なんだけど……教えてくれないかな?」

 

大事な仲間という目の前の女性に僕はずっと前、カワサキさんが寝る前に話していた昔話を思い出した。

 

「あの、その、ファミリアの名前を言えますか?」

 

「……アインズ・ウール・ゴウン」

 

アインズ・ウール・ゴウン。カワサキさんが昔所属していたファミリアのような物の名前を口にした女性に僕はやっと警戒を緩めることが出来た。

 

「ベル様? アインズ・ウール……なんですか?」

 

「カワサキさんが昔所属していたファミリアみたいなものかな?」

 

「あん? そんな話聞いたことがないぜ?」

 

「あんまり話す事じゃないって言ってたし、それじゃないかな? えっと……」

 

「僕はやまいこ。よろしくね」

 

「じゃあやまいこさん。オラリオに来たばかりならまずはギルドに行きましょうか? その後にカワサキさんの所に案内しますから」

 

「うん、よろしく!」

 

ちょっと気持ちに余裕が出て来たのか柔らかく微笑むやまいこさんをギルドまで案内したんだけど……。

 

「なんか騒がしいね」

 

「確かに、なんかあったのか?」

 

普段も騒がしいギルドだが、今日は普段よりもずっと騒がしかった。何があったのだろうかと思っているとソファーに腰掛けていた全身真っ黒の男の人が立ち上がり僕達のほうへ……いや、やまいこさんの方へ歩いてきた。

 

「やまいこ、なんだ。そのガキ達は? カワサキを探しに行くと飛び出して行ってなぜこんなガキを連れて帰ってきた?」

 

女性に見間違えるほどに美しい男性だったが、その口調は刺々しかった。それに加えてその紫の瞳から放たれるその鋭い視線と周りを拒絶するような冷たい雰囲気に思わず怯んでしまう。

 

「ウルベルト~もう少し柔らかい口調で喋れない?」

 

「俺は元からこういう口調だ。で? このガキはなんだ?」

 

「カワサキの居場所を知ってるんだってさ、ね?」

 

「え、あ。はい、というか僕の先生です」

 

やまいこさんに話を振られ思わず反射的に頷きながら、リリ達を庇うように半歩前に出る。

 

「ほう? カワサキの教え子……ふうむ」

 

ウルベルトと呼ばれた男性は僕をジロジロと観察し、納得したように頷いた。

 

「なるほど、確かにカワサキに教わっているな」

 

「でしょー? こんな風に身体を鍛えてる子って全然見なかったしね~」

 

身体の鍛え方で僕がカワサキさんに鍛えられてるって分るのだろうか……でもカワサキさんも分かる人は分かるって言ってたし……多分分かる人は分るんだろう。

 

「ギルドの方で登録を済ませればオラリオを……あれ? やまいこさん、ウルベルトさん。そちらの少年達は?」

 

ギルドの受付のほうから歩いてきた1人の男性が僕達に気付いて柔和な笑みを浮かべながらやまいこさんにそう問いかける。

 

「モモンガさん。なんとカワサキの弟子を発見したんだ。登録を済ませたらカワサキの所に案内してくれるって」

 

「本当ですか! いやあ探すのに苦戦すると思ってただけにありがたいですね。あ、初めまして私はモモンガ。君の名前は?」

 

「ベル、ベル・クラネルです」

 

やまいこさん、ウルベルトさんと違って柔和で友好的な様子のモモンガさんに安堵の溜息を吐いた時だった。ギルドの扉が開き騒がしい男の声が響いて来た。

 

「いたい! 痛いです! カワサキさん!!」

 

「うっせえド馬鹿、っというか茶釜はいないのか、茶釜は……「ユウウウウウ!?」うおッ!? ま、舞子か!? 「痛い! ユウの愛が痛いッ!?」 うっせえ!耳元で叫ぶな、というか愛じゃねえよ」

 

「やだじゃあDV?」

 

「それもちげえよ!?」

 

猛獣もかくやという勢いでカワサキさんに突撃するやまいこさんの頭を掴んで止めるカワサキさん。カワサキさんがこんなに怒鳴っているのは村を出てから初めての事かもしれないけど……。

 

「ユウって言いましたね?」

 

「言ったな? もしかしてカワサキの名前か? どうなんだベル」

 

「えっとそれはちょっと分からない」

 

カワサキさんは名前はないと言ってカワサキって事しか教えてくれなかったので、ユウが愛称なのか、カワサキさんの名前なのかは僕には判断がつかなかった。

 

「よう、カワサキ」

 

「ん? ウルベルトか……それにモモンガさんも」

 

「あー良かったぁ、カワサキさんだ。随分と探しましたよ。オラリオでカワサキっていう有名な料理人がいるって聞いてもしかしてって思って来たんですけど、こうして再会出来てよかったです」

 

和やかに談笑しているカワサキさんだけど右手と左手にそれぞれ1人ずつ人間を掴んで持ち上げているのはちょっとどうかと思う。

 

「はーいはーい! カワサキさんにアイアンクローで頭を潰されかけている俺を誰か助けてくださいッ!!」

 

「ちょっとぉ! ゆうッ! ゆう! 久しぶりの許婚にあった喜びのハグがこれはあんまりだと思います!! もっとこう優しいのを!」

 

「「「「い、許婚ええ!?!?」」」

 

やまいこさんのカワサキさんの許婚という言葉にギルドが大きく揺れ、カワサキさんは疲れたように溜息を吐くのだった……。

 

 

 

 




ちょっと前々から考えていたギルメンINのオラリオです。ただ、ギルメンはカワサキさんと違ってリアルで死亡後に転生した勢なのでゲーム装備ではなく、普通にこの世界の住人見たいな感じで考えています。これでギルメンまで強かったらベル達がいる意味無くなりますからね。クリスマス番外編を考えていたのですが、本編がまだ開始されていないのでまだ上手く動かせないなと思いこういう形にして見ました。それとアンケートもやりますのでもしも間違っていないが多数だった場合はお正月にこの続きを書いて投稿してみようと思っていますのでアンケートにも参加してもらえると嬉しいです。


オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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