ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか? 作:混沌の魔法使い
お正月番外編 それはもしもの未来
オラリオの恩人とも言えるカワサキには謎が多い。14年前にフラリと現れ、ダイダロス通りを改革し、学校、そして孤児達に教育と職を与え、野球を広めた。現れた時と同じ様にまたフラリと消えそれから7年後にまたフラリとオラリオに現れた謎ばかりの男……それがカワサキだ。
「許婚なのに、許婚なのにぃっ!! なんで僕にいつもなにも言わないのさッ! 少しはなんかいえよぉッ!!」
「え!? カワサキさんとやまいこさん婚約者だったんですか!?」
「知らなかったな……」
「なんでカワサキさんはそういう話を皆にしないかなあ」
ギルドの床をバンバンと叩き号泣する眼鏡の女性とカワサキの事を知っているであろう男達にギルドに来ていた冒険者は勿論、受付嬢であるエイナ達にベル達も興味津々という表情を浮かべていた。
「なんか騒がしい……お、カワサキじゃーん! やっぱりいたね! やほーお元気♪ なんで山ちゃんは床を叩いて号泣してるの」
「カワサキ。良かった、また会えて嬉しいよ」
そこに小柄だが出る所は出て、へこむ所はへこんでいる美少女と茶髪で柔和な笑みを浮かべた美青年が加わり更にギルドがざわめく。
「モモンガさん、他にギルメンは?」
「え。あ、今はここにいるので全員ですが」
「ん、じゃあ全員来い。ベルもファミリアに帰るぞ。いつまで蹲ってる舞子、行くぞ」
「はーい、今行くよー♪」
声が低くなったカワサキが歩き出し、それを慌てて追いかけていくモモンガ達とベル達。その姿が見えなくなっても、いや、見えなくなったからこそカワサキの話は爆発的にギルド、そしてオラリオへと広がって行き……。
「……え、カワサキさんに……許婚……?」
「許婚が追いかけてきた……?」
一部激重感情をカワサキさんに向けている人達の顔がとんでもない事になり、ギルドととあるファミリアのホームに戦慄が走るのだった……。
謎ばかりのカワサキの過去を知る人間がオラリオにやって来た。しかもその内1人は許婚だというのは流石の俺も驚いた。
「なぁ、カワサキって良い所の生まれなのか?」
「あーいや別にそういうわけじゃないぞ、ヴェルフ。どこにでもある普通の家の普通の長男だ」
許婚がいるくらいだから名家の生まれだと思ったのだが、そうではない……。
「なんで嘘言うのさ。ゆうめっちゃお金持ちの生まれじゃんよ。上から数えた方が早いし、一生遊んで暮らせるレベルだったよね? 私もだけど」
「お前はちょっと黙ろうか? 舞子」
「はーい」
許婚だというやまいこ、いや舞子? その人に黙ろうかとカワサキがいうが、一生遊んで暮らせるレベルの名家の生まれらしい。
「え、カワサキさん。そんなに凄い生まれだったんですか?」
「んーまぁ生まれは? とは言えなぁ……」
「なにかあるんですか? カワサキさん」
なんか歯切れが悪いカワサキに俺達が首を傾げているとベルが何か事情があるんですか? と問いかける。
「いや、うん。まぁ……あれだ、家にいても俺のやりたいことは出来ないって事で出ていったんだよな、家。だからその時に舞子との婚約は解消されてるんだけどなあ、というか俺お前の家から結婚したって聞いてたから正直少し安心してたんだけど……」
カワサキの言葉にやまいこの顔から表情が消え、その身体を震わし始めた。
「ねーカワサキ。いくらなんでもそれはやまちゃんに酷くない?」
「ってもなあ。あそこにいても俺のやりたい事できねえしそりゃ出て行く事無いか茶釜?」
「ちなみにカワサキさんは何をしたかったんです?」
「飯を作って少しでも腹を減らしてる奴を減らしたかった。というかな、俺は俺があいつらと同類って思われるのがめちゃくちゃ嫌だった」
凄まじく嫌そうな表情と声で言うカワサキにウルベルトが膝をたたいて大声で笑い出した。
「ハハハハハハハハ!! 確かに確かに、クックク……分る、分るぞ。俺はお前の気持ちが良く分るぞ、カワサキ」
「だろー? というかあれと同じで見られるとかさ……」
「「死にたくなるな」」
死にたくなるレベルでカワサキの生まれた家とその周りの連中が酷かったのかと俺達は凄まじい衝撃を受けた。というか良くそんな環境で生まれて育ってこれだけ人を思いやり、人を導ける人間になったなと正直に驚かされる。
「だからってさあ、僕をおいて行く? 僕婚約者ぞ?」
「だってよお、お前先生だし? 巻き込んで貧乏暮らしさせるのもなぁって思うじゃんよ?」
「でも連れてけよぉ!! いや、せめて顔見せろよ! なんだよ手紙ってさあ!! しかも貧民層に行く、じゃな!ってなんだよ!? 店も畳んであるし、これで俺を忘れろとか言って金を置いてくとか馬鹿にしてんのかオラぁぁンッ!! 人を舐めるのも大概にしろよぉッ!!」
何を言ってるのか半分くらいは分からないけど、めちゃくちゃ切れてるのは分った。後手切れ金にしか思えない金を置いて姿を消すのは駄目だと思う。
「ええ……カワサキさん、いくらなんでも……それは」
「いや、普通にドン引きだよ。何してるんだよ、カワサキさん」
「ククク、ハハハハハハハハッ!」
「笑いすぎだろ、ウルベルト」
「……フフ、フハハハハ……だがな、たっち・みー。カワサキの奴は円満だったと……ククク……夜逃げ同然じゃないかとな……」
カワサキの過去が明らかになったのは衝撃的だったが、それと同じ位カワサキの仲間にも驚いた。全員が全員個性の塊みたいな連中だが、気の良いやつらっていうのはすぐに分かった。
「逃げたわけじゃないぞ、ちゃんと昼間に正面から出て行った。たまに帰って来い、戻ってこいっていう手紙も来たがそれなりに楽しく過ごしてたさ……あの時までは」
なんか急にカワサキの雰囲気が変わった。どんよりというか、恐れているというか……余りに触れてはいけない空気を纏い始めた。
「何があったんですか?」
「キチガイサイコパスメンヘラお嬢様に監禁されて手足を切り落とされる寸前まで行くまでは割と平穏だった」
「「「「何があったの!?」」」」
余りの爆弾発言に俺達の絶叫がヘスティアファミリアのホームである教会を物理的に揺らすのだった……。
カワサキさんの話は余りにも衝撃的だった。富裕層のキチガイに拉致監禁、しかも手足を切り落とされる寸前だったとか想像出来ない話だった。
「俺の腕を少し切って血を舐めて恍惚の表情をしてるあの女はやばすぎた」
それは誰が聞いても、どう考えてもやばすぎる相手である。カワサキさんのやばすぎる貧民層での話に皆ドン引きだ。
「……ちなみにどうやって逃げたの?」
「自分で腕を切り落とすかなあとか色々と考えて、それは最終手段にしようと思ってひたすら鎖を千切ろうと暴れたら千切れたから後は気合で」
「気合で何とかなるレベルじゃないと思うんですけど……」
ベル君のいう通りである。それは気合で何とかなるレベルではないと思う……。
「人間死ぬ気になれば何とか出来るもんだって、まあそんなわけで貧民街に行ってからは色々あったけど、まあそれなりに楽しくやってたよ」
「それ楽しくないから!? 普通に助けを求めてよ!?」
「いやあでもなんとかなったし?」
「普通はならないよ!? あーもうッ! なんでゆうはいつもこうかなあ!? なんでこう少し頭のおかしい人を引き寄せるのかなあ!?」
「そんな事ないと思うけどなぁ」
「そんな事あるんだよ!?」
やまいこさんの話を聞く限りカワサキさんは元々ちょっと感情重めの人に好かれやすい性質らしい……。
「なんか問題ありませんでした? 大丈夫でしたか?」
「あーうん。僕は別に気にしてないかなあ、カワサキ君。良い子だし、人助けもしてくれるし。ベル君はどう?」
「僕はそうですね……7歳くらいの時から面倒を見てもらってましたし、カワサキさんは僕の先生ですかね?」
「7年前!? カワサキお前そんな前からいたのか!?」
「いや、14年前くらいだと思う、あっちうろうろ、こっちうろうろしてたよ」
「まぁカワサキなら大丈夫だと思うけど……あんまり無茶と無理をしないようにな?」
「大丈夫大丈夫、無茶なんて闇派閥とかいうのをぶちのめしたくらいだよ」
十分無茶してるカワサキさんにちょっと頭が痛くなった。
「カワサキさんはリリ達みたいなちょっと家に居場所のない子達の為の学校とかを作ってくれた頼れるおじさんです。ただちょっとたまに想像もしない事をしますけど……ベル様に変態に捕まったら股間を蹴れとか、凶暴な動物に襲われたら鼻を殴れとか……」
……とりあえず大きな問題はないけど、どこかぶっ飛んでいるいつものカワサキさんのようだ。
(しかしファミリアの雰囲気が良いなあ)
カワサキさんがいるからだけではなく、このヘスティアファミリアの雰囲気が俺はとても気に入った。ここまで来るまでにこの世界では主神を見つけ、主神から恩恵を刻まれる事で冒険者として活躍出来るということは分っていた。リアルで何があったのかは正直あまり覚えていないのだが、皆リアルで死んで気がついたらこの世界にいたというのは共通している。オラリオに来るまでに色んな場所を見て来たが、所属したいと思ったファミリアはここが初めてかもしれない。
「でもここ結構良い感じだよね、モモンガさん」
「確かにな、俺もそう思う」
「オラリオを拠点にするならそろそろファミリアに所属する必要があるだろうしね」
ペロロンチーノさん達もヘスティアファミリアが気に入ったようだ
「え、もしかして僕のファミリアに入ってくれるのかい!?」
「もしヘスティアさんさえ良ければ、他にも仲間がいるので最終的には30人近くになると思いますが……大丈夫ですか?」
「全然OKだよッ! カワサキ君の仲間なら安心だし、ベル君はどう思う?」
「は、はい。僕も良いと思います神様」
なるほど、ファミリアの団長はベル君なのかと若いのに団長をしている……やはりカワサキさんが面倒を見ていたらしいのでそれもあるのだろう。
「おん? モモンガさん達へスティアファミリアに入ってくれるのか?」
「ええ。オラリオに来たのはカワサキさんを見つける目的もありましたけど、所属するファミリアを探してというのもありますし、カワサキさんがいるなら私達も安心ですしね」
カワサキさんは結構危機管理能力が高いし、ここに居を構えているということは信用出来る相手ということだ。
「ゆうは反対?」
「いや、俺も賛成。良かったな、ヘスティア。これでメンバーが増える」
「ほんとだよ~良かった良かった。あ、早速恩恵を刻むから1人ずつ地下ね?」
「はいはいはい! 俺から!「黙れ愚弟、お前は私と一緒だ。というわけで、この馬鹿と私は一番最後で良いから」
茶釜さんに睨まれ小さくなるペロロンチーノさんに苦笑しながら俺達はヘスティアさんに恩恵を刻まれたのだが、ここで俺達に嬉しい誤算があった。
「聖騎士のスキル……ふふ、なんだか懐かしいな」
「俺は闇魔術師だ。ワールドディザスターにまで登り詰められるか楽しみだ」
「僕はプリースト、回復の初期スキルしか使えないけどこれはこれで良し」
「俺は長距離狙撃だな、ハンター系のスキルが欲しかったなあ」
ユグドラシルでのアバターの職業やそれに関するスキルを習得し、初期ステータスもなんかかなり高い見たいだ。
「全員Bクラスのステータスとか信じられないよ。カワサキ君だけじゃなくて、カワサキ君の仲間も皆どっかおかしいね、Lv1からスキルも魔法もあるとか正直信じられないよ」
「そうかあ? でも良いんじゃないか、新興ファミリアだし、最初は強い仲間はいたほうが良いって、モモンガさんはどうなんだ? スキル」
「あーそうですね。使ってみますか、詳細不明ですし、ぶっつけ本番は避けたいですしね……我が名は至高の御方モモンガである……ってええ!?」
かつての御身としての姿というスキルを使った瞬間。俺の身体から肉が消え骨だけになり、服もここに来るまでに買い揃えた防具ではなく、ゲーム中に使用していたローブ姿へと変わっていた。
「嘘だろ、なんで私だけこうなるのッ!?」
モモンガ玉もないし、スタッフ・オブ・アインズ・ウール・ゴウンもない、もっと言えば死の支配者ではなく、もっとも初期の姿である骸骨の魔法使いに変身していた俺の絶叫がヘスティアファミリアのホームに木霊する。
「モモンガさん、戻れるのか?」
「あ、は、はい。も、戻れ!」
カワサキさんに言われて戻れと咄嗟に叫ぶと元の人間の姿に戻れた。
「珍しい変身系のスキルみたいだね」
「安全な所でどんなことが出来るのか試した方が良いですね、後はギルドにも話を通すべきでしょうか神様」
「うん、それが良いね。モンスターと勘違いされたら困るし」
「まぁそれは追々考えれば良いだろ? それよりも今やら無ければならない事があるだろ?」
「ゆうの僕への謝罪だね?」
「それは違う、昼飯の時間だ。焼肉とかどうよ?」
「マジで!? お願いしまーす!」
「良いね。カワサキの飯は久しぶりだ、楽しみにしていよう」
「あ、それだとちょっと足りなくなるかもしれないから買出しに行って来ましょうか?」
「悪いな、ベル。これで頼む」
「はーい、リリ。行こう」
「はい、一緒に行きましょう」
「うっし、ヴェルフとたっち・みーは手伝ってくれ、鉄板を準備するぞ」
「分った。ヴェルフだね、よろしく」
一気に慌しくなって来たが、それも楽しいと思えるもので俺も手伝うとたっち・みーさんとヴェルフに声を掛け4人で焼肉の準備を始めるのだった……。
続かないよ!
アンケートの結果次第では本編開始の時間軸でアインズ・ウール・ゴウンのメンバー参戦で書いてみようと思います。とりあえずギルメンにはかつての御身の姿という特殊スキルがデフォだったり、途中で生えたりしてユグドラシルのアバターに変身する事が可能になりますが、レベル100の姿ではなく初期の職業の物になり、レベルアップするとこっちの変身した姿も成長する感じになります。
本編に参加する場合はもっと肉付けしますが、今回はお正月特別番外という事でここまでにしたいと思います。それでは楽しんでいただけたのならば幸いです
オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは
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間違っている
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間違っていない