ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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メニュー31 お手軽酒のつまみ

 

メニュー31 お手軽酒のつまみ 

 

太陽が落ち、月と星星が空を飾り始めた頃にカワサキがさらりととんでもない事を言い出した。

 

「すまない、今なんと言った?」

 

俺の聞き間違いであってくれと願いながらカワサキへと問いかける。

 

「ソーマと酒を飲むぞ。お前も飲むだろ、エレボス」

 

「……なにがどうしてそうなった!?」

 

何をどうすればソーマと酒を飲むことになると叫ぶとカワサキは小さく首を傾げた。

 

「なんかザニス? ゼニス? まぁ忘れたがソーマの所の元団長が闇派閥に行ったらしいから、情報をくれって話をしたら酒を飲みたいと言い出したからじゃあ飲むかって」

 

情報提供の代わりに酒を飲む……分からないわけではない、分からないわけでは無いが……どうして俺まで巻き込んだという気持ちが強い。

 

「良い酒を出すから飲めよ。エレボス」

 

「……うーむ。まぁしょうがないか、仲間に引きこめるなら引きこんだほうが良い」

 

俺だけでは出来ることは限られているし、事情を知る神の仲間がいるのは俺としても都合が良いかと思い、俺もカワサキとソーマと共に酒を飲むことを了承した。

 

「じゃあミアハ達も呼んで良いか?」

 

「それは止めろ。この狭い所で5人も男が酔いつぶれたら地獄だぞ」

 

「それもそうか、またの機会にしよう」

 

もう飲むことは確定しているのかと思わず溜息を吐くと、家の扉が開いた。

 

「こんな所に暮らし……エレボス?」

 

「よう、ソーマ。まぁ色々と聞きたい事はあると思うが先ずは座れ、な?」

 

悪神の俺とカワサキが共にいることに怪訝そうな顔をするソーマにまずは座れと声を掛ける。

 

「……まぁ良いだろう。私が余計な事を言える立場では無いからな」

 

「悪いな。まぁ俺達にも俺達の都合があってここにいる訳だ」

 

神友と言う訳では無いが、まぁたまにはこんなのも良いだろうと思っているとカワサキがキッチンから氷水で満たされた小さな桶を持って来た。

 

「まずはこれでも飲んで待っててくれよ。良く冷えてるぜ」

 

「「これはどうやって飲めば良いんだ?」」

 

金属製の小さな缶を見せられてもどうやって飲めば良いのか分からないというとカワサキは氷水の中から缶を取り出した。

 

「ここを持ち上げて、ゆっくりと倒す。ほれ、駆けつけ一杯」

 

「貰おう」

 

ソーマはその小さな缶を受け取り、俺もカワサキの真似をして缶の蓋をあける。

 

「「乾杯」」

 

カワサキがつまみの準備をしてくれている間に軽く口を湿らせるつもりでカワサキが用意してくれた酒を口にする。

 

「ほお、これは美味いな」

 

「良く冷えたエールか、これは良いな。美味い」

 

金属製の缶なので良く冷えているの手で楽しみながら、俺の知るエールとはまた違う刺激と苦味を持つ酒にソーマと共に舌鼓を打つのだった……。

 

 

 

ソーマとエレボスが酒呑みを始めたので、俺も手早く準備しておいたつまみを仕上げる事にする。

 

「といってもそこまで凝った物は作るつもりは無いんだけどな」

 

酒を飲む時は多少チープなつまみの方が良い。酔っ払う前提の時に凝ったつまみなんて作っても味も何も良く分からなくなるのが決まりきっているので、酒を飲む時は多少雑ですぐ作れるつまみを作ると決めている。

 

「馴染みないかな……うーん……そうだな」

 

油揚げは割りとつまみとして良いが、エレボスとソーマに馴染みが無いかもしれないのでごま油を敷いたフライパンで軽く焼き色をつけて、チーズを乗せて蓋をして焼く。

 

「……仕上げっと」

 

チーズが溶けてきたらフライパンから取り出して小口ネギと七味唐辛子を散らして、食べやすいように切り分けたら完成だ。酒のつまみって言うのはこれくらいチープなほうが返って舌に馴染むと俺は思う。次は千切りにして晒しておいたじゃがいもに小麦粉を塗して、サラダ油を敷いたフライパンの上に広げて焼いて、良い具合に焼き色がついたら塩胡椒で軽く味付けっと。

 

「おーい、つまみはまだか?」

 

「美味い酒には美味いつまみと決まってるだろ?」

 

「すぐに出来るから飲んで待ってろ、俺も飲みたいんだよ」

 

偶に酒を飲むのは人生の息抜きみたいなものだ。日常的に飲むわけでは無いが、偶に酒を飲むときは何も考えずにお手軽なつまみと美味い酒で舌鼓を打ちたいわけだ。

 

「まぁいざとなればアイテムボックスから何か取り出すか」

 

アイテムボックスにはガチャの外れアイテムの燻製肉とかもあるので、肉の類はそれで良いだろう。締めはインスタントラーメンと今日はとことん手抜きで酒を楽しもうと思う。

 

「えっとトマトとにんにくとオリーブオイルとパセリと白ゴマ」

 

ヘタを取ってざく切りにしたトマトににんにくを潰した物とオリーブオイル、粉チーズと塩胡椒をボウルの中に入れて適当に和えて皿の中に入れたら上からパセリを散らせば完成だ。

 

「ほっほっと」

 

きゅうりをすりこぎで叩き、手で裂いてと輪切りにした唐辛子と共にナイロン袋の中に入れる。ごま油、しょうゆ大さじ1、味噌、みりん、酢を小さじ1、砂糖小さじ1/2を混ぜ合わせたタレをナイロン袋の中に入れて揉みこんで味を馴染ませる。

 

「お、そうだそうだ」

 

料理の時短の為に設置している電子レンジに耐熱ボウルにくし切りにした玉葱、水、顆粒出汁の素と醤油を加えてラップをしたら電子レンジの中に入れて1分30秒ほど加熱し、1度取り出して混ぜ合わせたら今度は3分ほど加熱する。その間にボウルの中ににんにくの摩り下ろし、ごま油、醤油を混ぜたタレを作り、そこに手で千切ったキャベツを加えて塩昆布、胡麻を加えて全体を混ぜ合わせる。

 

「これが案外癖になるんだよな」

 

決して派手では無いが、酒の摘みには嬉しいやみ付きキャベツ。

 

「お。出来た出来たっと」

 

丁度電子レンジが加熱終了の音を立てたので、仕上げに黒胡椒を振って仕上げだ。

 

「後は……適当に刺身と……これ馬刺し……お、こっちは鯨か……良し良し」

 

ガチャの外れアイテムは山ほどあるので、これをパックから取り出して皿の上に盛り付け、トレイの上に完成したつまみを全部乗せてキッチンを出る。

 

「酒のあてが出来たぞー」

 

「待ってたぞ!」

 

「どんな物か楽しみだな」

 

さすが神なのか、ビール程度では赤くもなっていないし、酔ってる素振りも無いがテンションが普段より高いエレボスとソーマが待つ机の上につまみの皿を並べ、氷水で冷やしたビールのプルタブを開ける。

 

「「「乾杯!」」」

 

そして3人でビールの缶をぶつけ合い、男同士の密かな酒宴の幕が開くのだった……。

 

 

 

酒を飲む時につまみと言えば味の濃い燻製肉や揚げ物が定番だと思っていたし、実際私もずっとそうしてきた。だがカワサキの準備したつまみによって私の価値観は完全に崩れ去った。

 

ぽりぽりぽり……ッ!

 

「これ美味いな。なんか癖になる」

 

「味は派手では無いが……それがかえって酒に合う」

 

きゅうりを適当に潰しただけで甘辛いタレに絡めただけ、シャキシャキとした食感とごま油の香りと僅かな辛味が酒を飲む手を進ませる。

 

「これもお勧めだぞ、やみつきキャベツ」

 

「やみつきキャベツ? それほど夢中になるのか?」

 

「好きな奴はずっとこればっかり食ってるな」

 

そう笑いながら金属製の缶を開けるカワサキを見ながら私とエレボスはやみつきキャベツに手を伸ばした。

 

「普通のキャベツのように見えるが……」

 

「まぁ美味いというのなら試してみようじゃないか」

 

エレボスと共にやみつきキャベツとやらを口に運ぶ、手で千切ったキャベツの包丁で切るのではない独特な食感とにんにくのパンチのある味と深みのある塩味……。

 

シャキシャキシャキ

 

私とエレボスのキャベツを夢中で食べる音とビールを飲む音だけが部屋の中に響く。

 

「美味いだろ?」

 

「美味い、なんだこれ癖になるな」

 

「美味い酒のつまみというのはこうも酒を進ませるか」

 

酒の神である私は当然酒にはうるさいが、摘みにはそこまでこだわりは無かったが、美味い酒には美味いつまみの大事さを知った。

 

「……玉葱だけなのに甘くて美味い」

 

「トマトに粉チーズだけなのになんでこんなに美味いんだ?」

 

「はっはっは、そりゃもう俺の腕前さ」

 

「ところでこれめちゃくちゃ美味いけどなんだ?」

 

チーズが乗せられて焼かれているサクサクとした食感の謎のつまみ。ほんの少しの辛味とサクサクした食感と脂はついつい手が伸びるそんな味だ。

 

「油揚げっていう豆を加工したもんだよ。美味いだろ?」

 

酔いが回って来たのか上機嫌で笑う料理の説明をしながらカワサキは虚空に手を伸ばし、そこから酒瓶を取り出した。

 

「極東酒まであるのか」

 

「ほほお。これは良いな」

 

極東酒は文字通り、極東で飲まれる酒だがオラリオには滅多なことでは回ってこない。それが目の前に置かれたことに思わずテンションが上がる。

 

「この酒にはこれだ」

 

カワサキがそう言って私達の前に差し出したのはどこからどう見ても生肉だった。

 

「生だろ、それ」

 

「そうだぞ。これが馬、こっちが鯨、んでこっちが魚」

 

魚はともかく、馬と鯨の生肉には流石に怯むが、カワサキが馬の生肉を頬張り極東酒を飲んでいるのを見て、私も少し恐怖しながら馬の刺身を口に運んだ。

 

「美味いだろ」

 

「……ああ、美味い」

 

脂はそれほどではなく、さっぱりとしているのだが赤身肉の肉らしい濃厚な旨みににんにくの香りのする甘めのタレが良くあう。

 

「馬刺しにはこれ、ぐっとやれよ、ソーマ」

 

そう言って差し出された極東酒を呷ると辛い、とにかく辛い、強い酒精の辛味が口の中一杯に広がった。

 

「ふはあ……なんだ、これは私の知る極東酒とはまるで別物だ」

 

甘い極東酒ではなく、辛口の極東酒は初めての経験だった。

 

「辛口だからな、甘いタレの馬刺しにはこれが合う。んで、エレボスはどうする?」

 

極東酒を飲みたいエレボスも少し躊躇いを見せた後に鯨の刺身を口へと運んだ。

 

「これは……美味い、凄く濃厚で、だが肉とは違うが、肉のような旨みがある」

 

「だろ? これには甘口の極東酒が合うぞ」

 

つまみによってお勧めの酒は違うのか様々な極東酒を勧めてくれるカワサキ。カワサキ自身も飲みすすめているのを見て、私とエレボスも勧められるままに酒を飲み……。

 

「ここにゼウスのジーさんが美味いと歓喜していた黄金の蜂蜜酒があります」

 

「「全部飲んでしまえ!」」

 

「ネクタルもある」

 

「「飲むに決まっているだろ!?」」

 

「「「あっはははは!!!」」」

 

オラリオでは入手は勿論口にするのも不可能な天界の酒を飲み続けた私達は当然のことながらザニス達の話が出来るわけも無く……。

 

「「「あたまいてえ……」」」

 

「良い男が3人も酔い潰れているなんて何馬鹿やってるんだい!!」

 

「「「響く、響く……」」」

 

空っぽの皿と酒瓶が散らばる部屋に差し込む朝日で目を覚ました私達は当然ながら3人とも酷い二日酔いで呻く事になり、炊き出しと子供の食事の時間だと言いに来たペニアに怒鳴り散らされ、私達は頭を押さえながら響くと呻くのだった……。

 

 

下拵え 謀略 へ続く

 

 




今回はお手軽の酒のつまみとして簡単に作れるつまみをいくつか紹介してみました。本当に簡単に作れて酒のつまみになるのでお勧めの一品です、次回は下拵えですが闇派閥などを中心にして暗黒期の終わりに向けての話のフラグを書いてみようと思います。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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