ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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メニュー33 スタミナランチ

 

メニュー33 スタミナランチ

 

フレイヤファミリアにはロキファミリアにはない熱があった。強くなろう、前へ進もうという意志が炎のように燃えていた。それはロキファミリアではベートとティオネ、ティオナ、それとガレスしか持っていない熱だった。

 

「うーし、気合を入れていくか」

 

スタミナたっぷりのがっつりとしたメニューで今日は決まりだ。まずはスライスと微塵切りのにんにくをたっぷりと用意したらフライパンにオリーブオイルを入れて、スライスしたにんにくが狐色になるまで炒める。

 

「次は豚肉っと」

 

にんにくチップを取り出したらにんにくの香りがたっぷりと移ったオリーブオイルで豚肉を炒める。この時に少量の塩を振り焼き色がつくまで炒めたら豚肉を取り出し、そのまま今度はにんにくの微塵切りをフライパンの中へ入れる。

 

「良い香りだな、食欲が沸いてくる」

 

「スタミナたっぷりのガッツリメニューを作ってやるから楽しみに待ってろ、オッタル」

 

「ああ。そうさせて貰う」

 

死屍累々という感じの他の団員と違って涼しい顔で厨房が見える位置に腰掛けたオッタルにそう声を掛けながら卵を割りいれ、卵が半熟になったらたっぷりの白米をフライパンの中へ入れる。ずしりと重い感覚が手に伝わってくるが、この程度はどうということは無い。

 

(これは間違いないな)

 

にんにくの香りと豚肉の脂が染み出したオリーブオイルに絡めるように米と卵を炒める。卵と米がパラパラになり米全体を油でコーティング出来たのを確認したらあら挽き胡椒と塩で味付けし全体を良く混ぜ合わせたら取り出しておいた豚肉を鍋の中に戻してネギの青い部分を刻んだ部分も入れて香り付けをし、最初に作ったにんにくチップとフライパンの回りに醤油を回し入れて焦がし醤油の香りを加えれば……。

 

「カワサキ特製ガーリック炒飯の完成っと」

 

保存を掛けたら今度はニラとレバーを取り出し、レバーは食べやすい1口サイズ、ニラはざく切りにする。ここで臭み消しに牛乳とかを使う場合もあるが、この臭みも楽しんでこそのレバーの料理だと俺は思うので臭み消しはせず数回水洗いをしたら片栗粉を塗す。

 

「醤油、砂糖、塩、オイスターソース、摩り下ろしたしょうが、にんにく」

 

調味料と摩り下ろしたしょうがとにんにくを混ぜ合わせタレを作ったらフライパンにごま油を入れて加熱する。

 

「良し、OK」

 

ごま油の香りが出てきたら片栗粉を塗したレバーを炒める……いや揚げ焼きの感じで両面焼き色がつくまで炒めたらニラを加えしんなりするまで炒めたら作っておいたタレを加え、タレが全体に絡んだら完成だ。

 

「最後はスープだな」

 

新しい鍋にごま油を入れ、ごま油の香りが出てきたらネギともやしをさっと炒めたら、水を鍋の中にいれて、豆板醤、醤油、味噌、砂糖、にんにくの摩り下ろしと鶏がら出汁の元を加えてさっと煮たら完成だ。

 

「良い香りだ」

 

少しピリ辛の食欲を誘う香りにつられて食堂に少しずつ人が集まって来た。

 

「ほい、カワサキ特製。スタミナランチだ」

 

「待っていた、早速いただこう。いただきます」

 

手を合わせていただきますとオッタルが口にする声を聞きながら、俺は次のランチの準備をする。

 

「昼のメニューは何だ?」

 

「んー? ガーリック炒飯とレバニラ炒め、それとピリ辛スープだぞ、アレン」

 

「俺も貰う」

 

「おう。おかわりもあるからどんどん食えよ」

 

俺も、私もという声を聞きながらふと気付いた。

 

「お前ら肉とか大丈夫なのか?」

 

白と黒のエルフ……えーっと確かへグニとヘディンに問いかける。

 

「も、問題ない。普通に食べれる」

 

「私も問題ない」

 

「なら良かった」

 

エルフは肉は駄目が定石なので、大丈夫という返事を聞き、俺は安堵して2人の分のランチの盛り付けをし、へグニとヘディンに手渡すのだった……。

 

 

 

にんにくの香りが凄まじい炒めた米にこれまた香りが強い内臓と野菜の炒め物に食欲を誘う香りのスープ、どれもこれも香りが強い物で鼻が聞く俺のような獣人には少し刺激が強いメニューだった。だが疲れきった身体と空腹を訴える腹に食欲を誘うこの香りは空腹を強く刺激した。スプーンで炒めた米を掬い口へと運ぶとその瞬間口の中に凄まじい旨みが広がった。

 

「……うまッ!」

 

にんにくの香りは勿論あるのだが、そこに豚肉の脂の香りまで米に確りと移っている。米というのは味のない物だが、この強烈な香りが移った米はとんでもなく美味かった。

 

「……むぐ、むぐ……これも美味い」

 

内臓料理だからこそ臭みがあるのだが、その臭みよりも強い香ばしい香りと甘辛い味付けに内臓料理だというのにどんどん手が進む。

 

「このスープは何だ……美味い、美味いがそれしか分からない」

 

香ばしい香りと少しだけ舌を刺激する辛味、そして複雑で濃厚な旨みが口の中一杯に広がり、また食欲が込み上げてくる。

 

「美味い、これめちゃくちゃ美味い!」

 

「美味しいわね、これちょっと匂いが気になるけど」

 

「美味いから良いじゃねぇか!」

 

品のない食べ方と言われるかもしれないが、食堂にいる全員がガツガツとカワサキの作った料理を口にしていた。

 

「良し、これで良い」

 

「お前めちゃくちゃするな、オッタル」

 

「駄目か?」

 

「いや、別に良いけどさ、はは。良いんじゃないか? 丼にしても」

 

オッタルは炒めた米の上に野菜炒めを乗せ、それをガツガツと頬張っていた。どう見ても行儀が悪すぎる食べ方なのだが、余りにも美味そうに食べているので、少しだけ野菜炒めを米の上に乗せて頬張って見た。

 

「……美味いぞ、これはッ」

 

野菜炒めのタレと野菜の食感、そして内臓の臭みと香ばしい香りが食欲を強く刺激する。ガツガツと勢いよく食べ、スープで口休めをしまた勢いよく食べる。そんな事を繰り返しているとあっという間に料理を食べ終えてしまった。

 

「おかわりを頼む。今度はもう少し多くて良い」

 

「ん、了解」

 

少し物足りないと思っていたが足りなければおかわりを頼めば良い、簡単な話だ。

 

「カワサキ。俺も頼む」

 

「私もお願いして良いかしら?」

 

「あいよっ! ちょっと待ってくれよ」

 

俺と同じ様に物足りない奴は大勢いて、俺の分が無くなるかもしれないと俺は慌てて席を立ち、カワサキの元へと向かうのだった……。

 

「大分香りが強いけど美味しいわね。でも口臭が気になるわ」

 

「後で口臭ケアの薬をカワサキが分けてくれるそうですよ」

 

「そうそれなら良いのだけど」

 

なおカワサキは相手が美の女神だろうとお構いなしににんにくマシマシのガーリック炒飯セットを出していたが、後に口臭ケアのタブレットを貰えると聞いていたヘルンによってフレイヤはワインを楽しみながらガーリック炒飯を口へと運んでいるのだった……。

 

 

 

フレイヤファミリアでの1仕事を終えた俺はそのままダイダロス通り……に帰らず、オラリオの街並みを見て回っていた。

 

(……やっぱりだな、仕掛けられてる)

 

あちこちの建物に少しずつ火炎石が仕掛けられていた。建物を爆破するほどの威力は無いが、それでも建物を崩すには十分な威力がある小さな小さな火炎石だった。

 

(下手に弄るとあぶねえな……)

 

出来る事ならば取り除いておきたいが、俺の勘が取り除けば何か取り返しの付かないことになると訴えており、俺は少し悩んだ後に炎無効の巻物の切れ端を火炎石と建物の間に挟んだ。

 

(この感じは前に見たことがある……確かそう、あれだ。大雨の時に濁流の流れをコントロールして、貧民街を押し流そうとしていた富裕層の連中の手だ)

 

建物を意図的に角度をつけて崩し、流れをコントロールする。タナトスがコントロールしようとしているのは雨では無く、もっと悪辣な物だが、大まかな考えは間違ってない筈だ。

 

(神酒で狂わされた冒険者と民間人、もしくはモンスター……それの進路をコントロールして向かわせるのは……ギルド)

 

ギルドを潰すため、そしてギルドの進路にあるファミリアも全て潰しダンジョンから注意を逸らし、エレボスが用意していた大最悪とかいうモンスターを破壊した街並みに沿って暴れさせる……まだ進路は完全に完成していないがそれも時間の問題だ。

 

「そろそろ仕掛けてくるか」

 

ここまで仕掛けをしていれば最早時間の問題。闇派閥の一斉攻勢は近いと見て間違いない。それが分っていたから思わず声が出てしまった。そしてその声を聞いた者がすぐ近くにいることすら俺は気付いていなかった。

 

「……何が仕掛けてくるんですか?」

 

背後から聞こえて来た声に俺は溜息を吐いた。火炎石と火炎石をどう対処するかで回りへの警戒が疎かになっていた。

 

「よう、久しぶりだな。アリーゼ」

 

振り返りながら険しい顔をしているアリーゼに片手を上げて声を掛けるが、アリーゼは険しい表情のままだった。

 

「お久しぶりですね、それで仕掛けてくるってどういう意味ですか」

 

「……ここじゃ話せん、どの道フェルズとウラノスの所に顔を出す、そこで話してやる」

 

「待ってください、貴方は何者なんですか、何をしようとしているんですか?」

 

肩を掴んでくるアリーゼに俺は溜息を吐き、ポケットからゼウスの爺さんに渡されていたエンブレムを見せた。

 

「それ……は」

 

「あの助平爺とその嫁さんに言われてオラリオ改善の為に俺は来た。それで良いだろ? ほら早く来い、もう時間的な猶予は殆どない。最悪に備えてフェルズとウラノスに話を通しておきたいんだ。来る気がないならそれでも構わないが」

 

「い、いえ。行きます」

 

「じゃあ、来い」

 

アリーゼを連れて俺はギルドへと足を向ける、タナトスが全てをぶち壊そうとするのは俺もある程度は危惧していた。時間的な猶予も余りないと思っていたが……。

 

(思ったよりも早い、他の闇派閥に見切りをつけたか? なんにせよ不味いな)

 

だが俺が想定してたよりもタナトスの動きは早かった。オラリオで過ごしている間に出来るだけの備えと準備をして来たが、本当にタナトスが全てをぶち壊そうとしているとなると準備も備えも何もかも足りていない。

 

(時間との勝負か)

 

タナトスが全てを壊す準備を終えるのが先か、俺達が備えるのが先か……ゼウスとヘラを失った事で始まったオラリオの暗黒期、その終わりの時が刻一刻と迫っていた……。

 

 

 

下拵え 破滅の引き金 へ続く

 

 




という訳で今回は短いですがここまでです。暗黒期の終わりへ向けて話を進めていくので後多分4話くらいで暗黒期終了。
復讐鬼のリューさんとかの話を書いて本編へと進めて行こうと思います。カワサキさんがいることによるバタフライエフェクトでイベントが多少前後するかもしれませんが50話までに暗黒期を終え、ベル君の話を少し挟んで55話くらいからは原作に入って行こうと思っております。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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