ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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メニュー34 ナポリタン

メニュー34 ナポリタン

 

フェルズやウラノス、そしてアリーゼにもかなりきついことを言ったが、俺自身も出来る事なんかたかが知れている。

 

(結局の所、俺に出来るのは手の届く範囲だけなんだよな)

 

ゲームのアイテムを持っていようが、クックマンのスキルがあろうが、結局の所俺は1人であり、助けてくれる人間がいたとしても全てに手が届くなんて口が裂けても言えない。

 

(出来る事はした、だけどこれでも被害を完全に抑えることは出来ないだろうな)

 

火炎を無効にする巻物はあくまで短時間の効果しか無く、同時に起爆されれば完全に無効化することは出来ず、下手に建物の倒壊を防げば余計に被害が広がる可能性もあり、阻止することが更にオラリオに波乱を巻き起こす可能性もあり、知っていてもそれを阻止することが出来ないというのは自分に出来る事が少ないという事を思い知らされる。

 

「……ふう」

 

たっぷりのお湯の中にパスタと野菜屑と塩を入れて少し長めに茹でる。気持ちを入れ替える為には料理をするのが俺にとって1番必要だ。

 

(どうすれば良いんだろうな)

 

ゼウスの爺さんとヘラ、そしてオシリスファミリアの力を借りたとしても全てを守る事は出来ないのだ。どうすれば何をすれば良いのかと考えていても俺の身体はしっかりと料理を続けており茹で上がったパスタをザルの上にあげて、そのままフライパンを手に取りサラダ油を強火で加熱し、スライスした玉葱とハムを加えて炒める。

 

「……うーん」

 

玉葱が透けてきたらピーマンと砂糖を加えて炒め、ピーマンの緑が鮮やかになってきたらフライパンの半分に野菜を寄せてケチャップをフライパンの中に入れる。

 

「おじさん、もう少しでご飯できる?」

 

「お腹空いたー」

 

「ん、もう少し出来るから良い子で待ってな」

 

「「「はーい」」」

 

明るく元気の良い声で返事をする子供達の声を聞いて、子供達には被害が出ないようにしたいとは思うが何時起爆するか分からない時限爆弾を前にどこまで出来るかは分からない。

 

「はぁ……」

 

ケチャップを加熱し、水気が飛んでふつふつとしてきたらパスタと茹汁を加えて全体を良く混ぜ合わせたらケチャップとバターを加えて全体を良く混ぜ合わせたたら完成だ。

 

「ほれ、出来たぞー、持ってって良いぞ」

 

「「「わーい!」」」

 

完成したナポリタンを盛り付け持って行って良いぞと声を掛けると嬉しそうに笑いながらナポリタンを持っていく子供達。

 

「さてと……ちと作りすぎたな」

 

自分の分とペニアの婆さんの分を準備しても余るからどうした物かを悩んでいるとペニアのばあさんが顔を見せた。

 

「今あんたの分を……」

 

「あんたに客だよ、カワサキ。子供達の面倒は見ておいてやるからちょっと話をしてやりなよ、この小娘達のさ」

 

ペニアの婆さんの言う客とは俺がヴァレッタを叩きのめしてから姿を見せなかったリュー達とアリーゼだった。

 

「んーとりあえず飯食うか?」

 

深刻そうな顔をしてるアストレアファミリアの面子に対して俺は普段通りの態度で食事を勧めるのだった……。

 

 

 

野菜をたっぷり使われた赤いパスタはリリ達にとって見たことのないパスタでした。

 

「ソースがないね」

 

「うん、珍しいね」

 

「そうですよね」

 

私達の知っているパスタはソースを使っている物ばかりだが、このパスタは炒めてあった。スープもソースも使ってないパスタはどんな味がするのだろうかとわくわくしながらパスタを口へ運ぶ。

 

「……トマトです。トマトの味がします」

 

甘くて酸味のある独特の味とモチモチのパスタの食感に思わず笑みが零れる。

 

「ミートソースと違うけど美味しいね!」

 

「うん、美味しい! これなら苦手な野菜も食べれるよ!」

 

玉葱にピーマンと少し苦手な野菜だが、この甘くて酸味のある味のお蔭で頑張れば食べれる。

 

「むぐむぐむぐ」

 

「アイズは美味しいのですか? 不味いのですか?」

 

「おいひい」

 

「……そうですか」

 

ロキファミリアのアイズも時々食べに来ていますが、無表情すぎて美味しいのか美味しくないのか全然分からないですねと苦笑しながらパスタを口に運ぶ。

 

(もちもち……炒めるとまた食感が全然違いますね、でもこれもしかして茹でてる?)

 

もしかして炒めただけではなく茹でてもいるのでこのモチモチの食感なのでしょうか……私達の知らないパスタなのでどうやって作っているのか分かりません、分かりませんけど美味しいのだけは確かなのです。

 

「ん? 何をしているのですか?」

 

「美味しいと思うから……あむう」

 

アイズがパンを手で裂いてパスタを挟んで食べて無表情なのに目を輝かせるというとても器用なことをしました。でもその反応を見ればそれがとても美味しいのだというのは一目で分かりました。

 

「私もやるー!」

 

「僕もー!」

 

「おいしそー!」

 

目を輝かせているアイズを見て私達も興味を持ってパンを手で千切って、パスタを中に挟む。

 

「んんー♪ 美味しいです!」

 

「パンがふわふわでもちもちのパスタですっごく美味しい!」

 

「おいしー♪」

 

パスタをパンに挟むという発想は私達に無かったですが、アイズが作ってくれたお蔭でパスタをパンに挟んでもおいしいというのが分りました。

 

「むぐむぐ……これ、今度市場のパンに増やそう」

 

「良いですね! ソーセージを挟むのも人気ですけど、これもきっと人気が出るです」

 

「うんうん! 後でおじさんに相談しよ!」

 

ソーセージを挟んだパンや、燻製肉を挟んだパンも人気ですけど、このパスタを挟んだパンを売り出せばきっと人気になると皆でわいわいと盛り上がりながらカワサキさんの小屋を見る。

 

「まだ難しい話をしてるね」

 

「うん……どうしたんだろう」

 

いつもは皆と一緒にご飯を食べてくれるカワサキさんがいない、誰かが尋ねて来たのは知っていますけど、閉じられた扉の中で一体どんな話をしているのか、もしかしてカワサキさんがまたどこかに連れて行かれてしまうのではないかという不安をだれもが感じていた。

 

「大丈夫さ、まだカワサキはどこにもいかない、そんな事を考えてないでまずはお昼、その後に昼寝だよ昼寝」

 

ペニアが手をパンパンと叩きながらカワサキさんはどこにもいかないと言ってくれたので私達は食事を再開しましたが、この時の私も皆もまだとどこにもいかないという小さなペニアの言葉を聞き逃してしまっているのだった……。

 

 

 

 

凄く美味しいパスタだったが、無言でギスギスした雰囲気だったので味もクソも無かった。ただただ無言で口に詰め込むだけという拷問のような食事が終わった所でリューが切り出した。

 

「何故貴方は何もしないのです」

 

「質問の意味が分からないな。俺は俺に出来る事をしているぞ?」

 

「闇派閥の大攻勢があるとアリーゼに言っておいて何故なにもしないのかと聞いているのです」

 

リューの言葉にカワサキさんは溜息を吐いて、やれやれと言わんばかりに肩を竦めた。

 

「馬鹿にしているのですか?」

 

「馬鹿にはしていない、ここまでアホだったかと呆れているだけだ」

 

カワサキさんの返事にリューが腰を浮かせるが、それよりも早くカワサキさんの投げた調味料の瓶がリューの額を捉えた。

 

「うっ!?」

 

「隙だらけだな、お前。これが投げナイフだったらお前は死んでるわけだ。リュー・リオン」

 

その通りだ。カワサキさんは今の一瞬でリューを殺せるという事を示して見せた。

 

「何もしないわけではない、何もしないことが備えという事ですか?」

 

「当たらずとも遠からずだ。結局の所俺には俺に出来る事しかできない、このダイダロス通りの孤児達に飯を食わせて、悪い事をさせないようにする。後は出来る時に魔道具を配置してる。俺には俺に出来る事をしているよ」

 

リュー達に睨まれてもカワサキさんは飄々とした態度で熱い極東のお茶を啜っていた。

 

「なんで避難誘導とかしないの?」

 

「どこに避難させる? 避難させた後の生活は? もしも家が崩壊したら? 闇派閥が襲撃を仕掛けてこず、騙したと言って家に帰った瞬間にテロが起きたら?」

 

カワサキさんがいう言葉に誰も返事を返せなかった。避難させなくてはと思っても具体的に何をすれば良いのかというのが私達には無かった。

 

「行動するのは間違っていない、だがその行動で取り返しの付かない事につながるかもしれない、感情的に動くのではなく、1度良く考えることだな。間違いなく闇派閥は大攻勢に出る筈だからな」

 

カワサキさんはそういうと立ち上がり、大きく背伸びをした。

 

「もう用がないなら帰ってくれ、勉強の後のおやつを作ってやらないといけないからな」

 

口調は柔らかいがその目には僅かな失望の色が見えた。口にはしていないが、こんな所で何をしていると、人を責める前に自分のやるべきことをやれと言われている気がした。

 

「ご馳走様でした! 皆行こう」

 

あえて明るく元気な声を出して皆を連れてカワサキさんの家を出る。

 

「目の前しか見えていないという事ですか……」

 

「とにかく出来るところからやるのと、周囲を警戒するのと……」

 

自分達に出来る事をどんな小さなことからでもやっていくしかない。それが今の私達に出来る唯一の事だと考えてどうするべきかと話し合いを始めるが、リューだけは何かを考え込むようにずっと無言なのだった……。アリーゼ達のように前向きに動ける者もいれば、そうではない者もいた、冒険者としての勘で何かが起きることを感じ取った1人の男が闇夜に紛れてカワサキの元へ訪れていた。

 

「ふーん、それがお前さんの答えか? 本当にくだらねぇ、つまんねぇガキだな」

 

「……うるさい」

 

「はっはっは、図星か? ガキ。いや勇者もどきさん?」

 

「黙れええッ!!」

 

「逆切れか、本当につまらねえな。お前」

 

夜人が寝静まった時間にカワサキを排除しようとやってきたフィンの怒号と静かに、しかしその目に隠しきれない失望の色を宿したカワサキの呟きがダイダロス通りに木霊した……。

 

 

メニュー35 ちゃんちゃん焼きへ続く

 

 




と言う訳で次回は引き篭もっていたフィンの登場ですが、カワサキさんを闇討ちしにきたという迷走の末の責任転嫁の駄目男みたいになっておりますが、今作ではこれしかないかなと、1回叩いて、叩いて潰さないとフィンは立ち直れないと思ったのでこういう流れにして見ました。異論はあると思いますが、こういう解釈もあるなと思っていただければ幸いです。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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