ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか? 作:混沌の魔法使い
下拵え 始まる滅び
何時ものように子供達に飯を作り、何時ものように食う術を失った冒険者に新しい仕事を教え、何時ものように強さを求めるベートやオッタルを転がす。何時ものと同じ何も変らない、変り映えのない日々……。
「やぁ、初めまして君がカワサキかな?」
紫の髪に黒衣、男でありながら妖しい色気を持つ男が暗がりから姿を見せた。柔和な笑みを浮かべているが、その目は狂気で爛々と輝いていた。
「取り繕う必要はないぞ。その喋り方好きじゃないんだろ?」
俺の言葉に俺の前に立っている男は肩を震わせて、左手で己の顔を掴んだ。
「けひゃっ! ひゃははははは……分る、分るか!」
「色んなやつを見てきたからな、何か飲むか? タナトス」
闇派閥の最大勢力であり、最も俺が危険視すると同時に最も感情移入出来るタナトスに俺はそう声を掛けながら小屋の扉を開いた。
「お前変ってんな、俺がお前を殺すとは思わないのか?」
「思わんね」
殺意を出す振りをしているタナトスに返事をしながら淹れた紅茶に口をつける。
「へえ? それはなんでだあ?」
「死神は慈悲深い神だ。俺の地元ではそうだ、死は悲しい物ではあるが、それと同時に救いでもあるからな」
俺の言葉にタナトスは目を見開き、尻餅を付くように椅子に座ると紅茶を口にする。
「そんな事を言われたの初めてだ」
「そうなのか? オラリオの連中は見る目が無いな。生きているから死がある、死があるから生がある。命は循環し廻り回るものだろう?」
俺の言葉にタナトスは小さく喉を鳴らすように笑い出した。
「お前みたいなのがもっとオラリオにいれば俺はこんな事はしなかっただろうな」
「まぁお前の眷属のやったことは許せんが、お前が命じたわけじゃないんだろ?」
「そんなめんどくさい事をするかよ」
「そりゃそうか」
少し話をしただけだが、この男にはこの男なりの考えとそして想いがある。それを認めることも、共感する事もないが、それでもこの男はこの男なりにオラリオを思っているのは間違い無かった。
「死にたくなければオラリオを離れるんだな」
「忠告どうも、でもまだ俺はオラリオを離れるわけには行かないんでね。行くならさっさと行っちまえ」
シッシっと手を振るとタナトスは驚いた表情を浮かべた。
「隙だらけだぞ? 殺さないのか?」
「ここで殺したら全部動き出すんじゃないのか?」
俺の言葉にタナトスはにやあっと言う音が聞こえてきそうな笑みを浮かべた。
「勘の良い奴だ」
「お約束って奴だ。まぁ始まる前に忠告してくれたのは感謝するよ。もう会わないだろうけどな」
「そうか……やりづらい奴だ。まぁ良い……ご馳走さん。茶美味かったぞ」
「辛いか? 死人の声を聞くのは」
そう笑って出て行くタナトスの背中に俺がそう問いかけるとタナトスは狂気を隠そうともせず、残忍な笑みを浮かべた。
「辛いに決まってるだろ? 死の運命を覆して生きて、生きて、反吐が出る。恩恵のシステムも経験値も、俺は反吐が出るね」
そう吐き捨てて裏路地の中に消えていくタナトスを見送り、俺は生温くなった紅茶を口にして大きくため息を吐いた。
「恩恵の弊害……か」
経験値を得れば老化は遅くなるし、生命力も高くなる。それによって死を先延ばしにする、世を乱すだけではなくあの世で待ってる魂も嘆き苦しむ。それがタナトスには許せなかったわけか……。
「カワサキ。客が来てたのか?」
「丁度良い所に帰ってきてくれたエレボス。急いでギルドに行くぞ」
「どうしたんだ、急に……まさかッ!?」
「タナトスが来ていた、始まるぞ。あいつらの最後の進軍がな」
賽は投げられたのだ。闇派閥……いや、この世界をある意味憂いている1人の狂人の最後が始まろうとしていた。
その惨劇は唐突に始まったオラリオのあちこちの建物が爆発し、それから僅かに遅れて闇派閥の大攻勢が始まった。
「ガアアアアアアアッ!!!」
「オオオオオオオッ!!!」
闇派閥の冒険者達は最早人では無かった。狂気に溺れ、どれほどダメージを与えても全く意に介さずに襲ってくる。
「むんッ!!!」
「が……ッ!! ガアアアアアッ!!」
「はぁッ!!」
「ゲボォッ!?」
オッタルのボディブローからのアッパーで闇派閥の1人が宙を舞い、背中から地面に叩きつけられ動かなくなる。
「やはり一撃で意識を刈り取らなければならんか。ベート、お前はカワサキに教わっているだろう?」
「実戦でやるのは初めてだけどな」
「なら実戦でものにしろ。ここを突破される訳にはいかん」
「言われなくても分かってるッ!」
タナトスがカワサキの元へ訪れた事でウラノスとフェルズは動き、民間人の多くをバベルへと避難させ、そして有力なファミリアに協力を要請した。だが闇派閥の攻勢などもうないだろうと高を括った主神と眷属とその要請を聞き入れたファミリアとで命運がはっきりと分かれた。
「こいつら狂ってるの!?」
「分らん! だが意識を狩りとらなければ何をしても無駄だ!」
ソーマの酒で狂っている闇派閥の冒険者達は意識がある限り暴れ続ける。腕が折れようが、足が折れようが、内臓が零れ落ちようが、目が潰れようが、意識が残っていれば襲ってくる。
「た、助け……ぎゃああああああッ!?」
「い、いやああああああッ!?」
要請を受け入れず後手に回っていた冒険者達は狂った闇派閥に飲み込まれ、噛まれ、引っかかれ、モンスターに喰われるよりも哀れな姿で地面に転がっていた。
「ダイダロス通りは大丈夫かな!?」
「カワサキさんがいるから多分大丈夫! こっちをなんとかしよう」
建物が爆破された事で狂った闇派閥達の進路はある程度コントロールされているが、それがかえって苦しい展開になっていた。
「腑抜けていた連中ばかりで困るなッ!」
「全くだッ!」
闇派閥の進攻が緩くなり、闇派閥はもう動かない、動けるだけの力がないと気を抜いていた者達が大勢いた。ウラノスからの要請があってもなお積極的に動かない者もいた。戦力不足、準備不足、錬度不足……様々な要因によって闇派閥の攻撃を止めれている区画、そうでない区画と命運が分かれた。アストレアファミリア、そしてオッタルとベートがいる。市民が避難している区画への攻撃は辛うじて止めれていたが、少しずつその均衡が崩れ始めているのをオッタルが感じ始めていた頃闇派閥の一団の中心が吹き飛んだ。
「罪を犯した者にはそれ相応の制裁を、死の裁きの時が来たぞ、愚かなる者達よ」
「罪人に与えられる許しなどない、貴方達の罪を死を持って償う時が来た」
漆黒の鎧に身を包んだ男と血のように紅いドレスを身に纏った女性の姿を見た広場に集まっていた冒険者達は引き攣った悲鳴を上げた
「死皇子と鮮血姫だッ!?」
「なんでオシリスファミリアのやつらがここにッ!?」
オシリスファミリアの切り込み隊長の死皇子、そして絶世の美女だが残忍なナイフ使い鮮血姫。何年も前にオラリオを追放されたオシリスファミリアの冒険者の参戦によってオラリオの争乱はより激しさを増していくのだった……。
下拵え 滅びに怯える者へ続く
死の7日間は大きく変更、タナトスも大きく性格改変をして見ました。オシリスファミリアも2名参戦と大きく流れを変更です。
この滅びの話はちょっと自分でもかなり難しいので短い話、場面飛ばしとなるかもしれませんが要所は書いてみて、今後時間を見て加筆をしてみようと思っているのでご容赦願います。
オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは
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間違っている
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間違っていない