ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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メニュー36 親子丼

メニュー36 親子丼

 

予測されていた闇派閥の大攻勢はカワサキのおかげで被害はかなり押さえ込む事が出来た。冒険者とサポーターはかなりの被害が出ているが瀕死に近い重傷を負っている者も多いが、民間人にはあまり被害が出ていないのが不幸中の幸いだった。

 

「何故事前に闇派閥の攻勢について説明しなかったと探索系のファミリアから苦情が来ておりますが……」

 

「何度も通達はしていた。気を緩めるなと、それをこちらの責任にされるのはお門違いだ。文句があるなら直接来いと返事をしておけ」

 

「わ、分りました」

 

ヴァレッタ達が抑えられてから闇派閥の動きが鈍くなった事で自分達の勝利だと勘違いした馬鹿なファミリアにはいい薬となっただろう。

 

「すまない、色々とばたついていてな」

 

「かまいませんよギルド長」

 

ギルド長の部屋で待っていたのは糸目でスーツ姿の男。見た目は柔和で温厚に見えるが全身に染み付いた血の匂いがこいつが危険人物だと教えてくれる。

 

「オシリスファミリアのNO.3が来てくれるとは思っていなかったよ」

 

「オシリス様のご命令ですからね。カワサキさんに感謝すると良いですよ、あの人から連絡が無ければ死皇子と鮮血姫は間に合いませんでしたから」

 

オシリスファミリアの構成員の多くはその名を捨てている。復讐者として生きる事を決めた時に自分の名を捨てる。それがオシリスファミリアの1つのルールでもあった。

 

「なんと呼べば良い?」

 

「……黒と」

 

「分った。黒、我々ギルドはオシリスファミリアに何もしない、好きにしてくれ」

 

「ええ、言われなくともそうします。あ、そうそう。オシリス様を呼び戻すならご連絡お待ちしておりますよ、では」

 

一礼し黒の姿は溶けるように消えた。全員が全員1級の暗殺者であり殺戮者であるオシリスファミリアの眷属の層の厚さには驚かされる。

 

「今回の事で闇派閥……いや、タナトスの方向性が分ったな。愚者よ」

 

「そうだな、ウラノス。無差別テロに見えて、これは違う歴とした目的に沿った攻撃だ」

 

火炎石で建物を爆破し、パニックになった所を襲撃する無差別テロだとカワサキも思っていた。だが被害者の名簿を見ればそれは違うとすぐに分かった。

 

「タナトスが狙っている者……それは本来死んでる者だけだ」

 

「死の神としての矜持……か」

 

恩恵によって瀕死の傷でも耐える。魔法やポーションで傷や怪我を治すことも出来るし、ヘファイトス達に頼れば高性能な銀の義手等も作ってもらえる。恩恵によって本来死ぬはずだった者も生き永らえる……か。

 

「それがタナトスには許せなかったのかも知れんな。あいつのやっている事が許されるわけでは無いが……」

 

死の神として、死を司る者として死の運命を捻じ曲げることが許せなかったのかもしれん。そうだとしてもタナトスのやっている事が許されるわけでは無いが、攻撃の方向性がある程度分ったというのはオラリオを防衛する為の情報としてとてもありがたい物だった。

 

「まだ攻撃は続いている。可能な限り防壁を作り、暴徒の攻撃を食い止める。これ以上被害を出すわけにはいかん」

 

「分かっている。可能な限りのファミリアには応援要請を出す。避難民達も可能な限りバベルへ収容する」

 

本来死んでいた筈の者が狙われると言ってもそれが全てではない、ある程度の攻撃の方向性が死んでいる筈の者なだけで、目に付けば他の者も襲われる。可能な限りダンジョンの中で重傷を負った経験のある冒険者を避難民から離した位置に配置する事である程度攻撃を誘導し、防衛網を張ることが出来る。

 

「揚げ足を取られることにはなるが仕方あるまい。最悪私がギルド長を降りれば済む話だ」

 

「そうはさせんよ。大体お前の変わりにギルドを纏め上げれる者などいはしないからな」

 

勘違い、あるいは私やウラノスを引きずり降ろしたいファミリア等が面倒事を持ち込んでくるだろうが、その程度でオラリオへの被害を抑えることが出来るのなら御の字だと思う事にし、次の襲撃に備えての作戦を練り始めるのだった……。

 

 

 

 

不幸中の幸いとは言いがたいが市民への被害が殆ど無かったのが闇派閥の第一次攻勢の唯一の成果と言えた。殆どがつくのはギルドの指示に従わず、襲撃が始まってから避難した市民への被害であり、避難中に転倒した等が原因で闇派閥の攻撃が理由ではないので被害はほぼないと言っても過言ではないだろう。

 

「疲れたか? ベート」

 

「……それなりにな。疲れよりも腹が減った」

 

一時的にだが攻撃が収まったので広場で防衛網を張る事にし、防衛と言う名目で一休みしているベートの言葉に苦笑しながら鶏腿肉を3等分にしてから1口サイズの食べやすい削ぎ切りにし、塩で下味をつけてから酒をかけて良く揉んで休ませておく。

 

「カワサキは分かっていたのか?」

 

「何がだ、オッタル」

 

「闇派閥の攻勢だ。そうでなければザルドを呼んでおくなんてことは出来ないだろう?」

 

「襲撃の可能性は考えていた。あれだけ活発に動いていた闇派閥が身を潜めた。何かあると考えるのが当然だろう?」

 

闇派閥が諦めるというのは考えられなかったし、事実タナトスが尋ねて来たことから大攻勢は時間の問題だと思っていた。フェルズには話を通しておいたし、可能な限り妨害もした。冒険者とサポーターには少しばかり被害が出たが……ギルドからの指示に従って備えていれば抑えることが出来ていた被害だ。

 

(結局の所自分たちには関係ないと思っていた連中に被害の多くが集中した結果か)

 

アストレア、ガネーシャ、そしてオッタル達が主力だから自分達は関係ないという慢心と油断が原因なので言いたくは無いが自業自得としか言いようがないのが現状だ。

 

「こっちの方はバリケード作れましたよ」

 

「中々に骨だったが、これで暫くは持ち堪えられるだろう」

 

「お疲れさん。もう少しで飯が出来るから待っててくれ」

 

バリケード作りに参加していたアーディ達にもう少しで出来ると言ってフライパンに鰹出汁、みりん、休ませておいた鶏肉、長ネギを入れて魔石コンロのつまみを回して中火にかける。

 

「冷たい状態で作り始めるのか?」

 

「低温でじっくり煮詰めるほうが旨みが良く出るんだ」

 

鶏腿肉とネギに味を馴染ませたいのでまずは醤油をいれずに煮て、出汁が煮立ってきたら鶏腿肉をひっくり返し、醤油を加えて更に煮る。

 

「良い匂い~もうすぐ出来ますか?」

 

「もうちょっとだ。後少し待っててくれ」

 

「この甘辛い匂いは駄目だな、腹が減る」

 

「後少しだ。もう少しだけ待っててくれ」

 

醤油を加えてから沸騰してきたら火を弱火にし、ボウルの中に卵を2個割りいれて菜箸で手早く解き解したらまずは半分だけ回し入れて、卵が固まってきたら残りの半分も回し入れたら火を止めて余熱で火を通している間に丼に米を盛りつけ、半熟卵で綴じた鶏腿肉と長ネギをたっぷりと米の上に盛り付ける。

 

「特製親子丼の完成だ。どんどん仕上げていくから取りに来いよー!」

 

広場にいる連中にそう声をかけ、俺は次々と親子丼を仕上げるのだった。

 

 

 

 

 

空きっ腹に染み渡る甘辛い香りに口の中に唾が溢れ腹がなる。まだかまだかと待っていると目の前に丼が置かれた。

 

「ほれ、出来たぞベート」

 

「待ってました! いただきます!」

 

目の前に置かれたずしりと重い丼を持ち机の上のスプーンへ手を伸ばす。

 

「んー甘くて良い匂い」

 

「これは美味しいと食べる前に分かりますね」

 

狂っている闇派閥と戦い続けやっと一息つけた時にこの香りはやばい。

 

「おかわり」

 

「喰うの早いな、おい」

 

「美味いからな」

 

オッタルが殆ど一瞬で食べ終えお代わりを求めているのを見ておかわりが無くなると思い親子丼を口に運ぶ。

 

「うっめえッ!」

 

甘辛い味付けのタレが卵にも鶏肉にも染みこんでいて、思わず美味いと叫んでしまった。

 

「おいしー! これ本当に美味しいです!」

 

「いくらでも食べれるな」

 

行儀が良いとはいえないがガツガツと親子丼を口に運ぶ。鶏腿肉は少し薄切りにされているが、そのおかげで味が良く染みこんでいて一緒に煮られていたネギにもしっかりと出汁が染みていて噛み締めると口の中に出汁の味が溢れ、米を勢いよくかき込む事が出来る。

 

「おかわり!」

 

「おう、どんどん食え」

 

すぐに新しい親子丼が差し出され、それを広場に座り込んで頬張る。丼を出した理由は分かっている普通の食事では何かあった時に対処が間に合わない、おかずと一体化している丼はすぐに食べることが出来る。サンドイッチもありだがパンではいざと言う時に力がでない気がする。

 

「おいしいです」

 

「もうちょっとたべるー♪」

 

ダイダロス通りの孤児にアイズも混ざって親子丼を食べてにこにこと笑っているのを見ていると自然と笑みが零れる。

 

(これが、これが俺が守りたい物だ)

 

次期長として、そして力を持つ者として弱いものを守り平和を守る。それが俺が拳を握る理由だ。2杯の親子丼を食べ終え少し休憩している間に戦う理由を改めて認識していると広場に斥候が駆け込んできた。

 

「第二陣だ! 休憩していた者は交替してくれ!」

 

「凄い勢いだ! バリケードも突破されるかもしれない!」

 

その鬼気迫る報告に俺は立ち上がると同時に走り出す。疲労は完全には抜けていない、体力も戻っているとは言いがたいがそれでも戦う理由が俺にはある。

 

「行くぞ、ベート。正面を死守する」

 

「言われなくても分かってる! 行くぜぇッ!!」

 

最初の襲撃を遥かに越える狂った闇派閥の軍勢を見て俺はそう吼えながら地面を蹴って敵陣のど真ん中へ飛び込むのだった……オラリオの長い夜はまだ明けることはないのだった……。

 

 

メニュー37 豚汁へ続く

 

 




というわけでオラリオ攻防戦その2の開幕です。ソーマで狂っていて無限に押し寄せてくる軍勢は恐怖そのものですね。暗黒期は後10話ほどで完結させて少し別の話を挟んでアストレアファミリアの全滅からの原作開始を予定しております。少し駆け足になるかもしれませんが1度カワサキさんがオラリオを離れるところもありますし、そこら辺で整合性を取りたいと思います。それでは次回の更新もどうか宜しくお願いします。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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