ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか?   作:混沌の魔法使い

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下拵え 終結

下拵え 終結

 

タナトスのオラリオを更地にし、以前のような生と死のバランスが取れた世界へ戻すという計画はオッタル達の活躍によって阻止された。

 

「美味い物を作ってやると言っておいてこの様で悪いな」

 

決死の戦いを終えて帰ってきたベート達に向かって頭を下げる。闇派閥が全員が全員ソーマの酒を飲まされたとは思っていなかった。一部の優秀な人材はソーマの酒を飲まさずに、あるいはソーマの酒を飲んでも強い意思を持ってその力を全部自分の物にしている者がいる可能性は考えていた。

 

「いや、それに関しては俺達の責任だ。カワサキは悪くない」

 

「良くあの化物を相手にして生き延びたと思うぜ」

 

エレボスからも聞いていたがディース姉妹というやばい闇派閥の構成員がいると聞かされていたが、そいつらと応戦し不覚にも左腕を負傷してしまった。ポーションで回復させて怪我は塞がっているのだがどうにも握力が戻らず、いたしかたなく俺はアイテムボックスから大量の肉を出して、これを好きに焼いて貰うことにしたわけだ。

 

(しかし、強かったな)

 

オラリオの冒険者に技術はないと思っていたがディナとヴェナはオラリオの住人は考えられないほどに技術に秀でていた。2振りのスティレットを巧みに操る近接戦に優れたディナと魔法や魔剣を駆使する遠中距離戦に秀でたヴェナの連携はかなり厄介だった。双子特有のシンパシーと精神感応というべきなのか連携の錬度が群を抜いていて、ただの2対1なら苦戦する理由は無かったが相手は2人だが、ただの2人以上にあいつは強かった。

 

「えっと、どれを混ぜれば?」

 

「そこの醤油をベースに砂糖と酒とごま油と摩り下ろしたにんにくと生姜を混ぜてくれ」

 

「はい、えっと……これくらい?」

 

「もう少し多くても大丈夫だ」

 

握力がなくては料理は出来ないので、リリ達に指示を出して調味料を混ぜてタレを作る。

 

「肉は全部食っても良いのか?」

 

「おう、全部食って良いぞ。足りなければどんどん出すから好きに食べてくれ、美味い物は元気になってからな」

 

楽しみにしていると言って肉を切り分けるベート達を見ながら座っていた椅子に腰掛ける。

 

「大丈夫ですか?」

 

「怪我はもう大丈夫だが、握力がな……」

 

毒なら毒無効のスキルで無効化出来る。だから俺の握力の低下は毒などではない何かによって齎されている状態異常だ。

 

「神威が影響してるかもしれないですね。神ミアハに相談しておいたほうが良いと思いますよ」

 

「分った。アーディの言う通りにしておく」

 

左腕を負傷し、握力が戻らず、その上ディース姉妹は取り逃がした。

 

(失態だな)

 

殺すつもりは無かったが、取り押さえるつもりではあった。だが俺は取り逃がしてしまった……これは正直かなり不味い、オラリオの人間は善人も多いが悪人も多い。闇派閥という脅威を退いた後に始まるのは……間違いなく権力争い、そして邪魔者の排除だろう。

 

(そろそろ潮時かねぇ……俺としてはもう少し面倒を見てやりたかったんだが……)

 

闇派閥の脅威は一時的とは言え退けた。だがそれが新しい混乱を呼ぶ事は分っていた、俺が何処かのファミリア等に所属していればまた別問題ではあるが、どこに属する訳でもない俺の存在はこれからのオラリオでは問題になるのは確実だ。

 

「焼けましたよ。どうぞ」

 

「ん、ありがとな」

 

「はい!」

 

「おじさんもちゃんと食べないと駄目だよ~?」

 

オラリオに来た時は笑顔も無かった子供達が笑っている。それだけで俺がオラリオに来た意味があったなと思いながら、俺は差し出された皿を受け取るのだった……。

 

 

 

 

 

フレイヤファミリアのオッタルとカワサキが呼び寄せたザルドによってダンジョンに逃げた闇派閥の討伐は成された。完全に闇派閥を無力化出来たわけではないが、それでも闇派閥の多くを壊滅、あるいは壊滅寸前に追い込めたので以前のように闇派閥が大勢力と成ることはないだろう。それは喜ばしいことではあるのだが、更に別の問題が近いうちに出て来る事をウラノスも私も十分に理解していた。そして今私とウラノスはある意味闇派閥との戦いよりも遥かに厳しい戦いに望んでいた。

 

「……ではギルドとしてはオシリスファミリアをオラリオに呼び戻すつもりはないと……それがギルドの最終決定ということでよろしいですか?」

 

オシリスファミリアの副団長……執事の鋭い視線に息が詰まる。私としても今回の事でオシリスファミリアを呼び戻すことを本気で考えた。表向きの正義を司るのはアストレアファミリアとガネーシャファミリアで良い、闇の正義としてオシリスファミリアはオラリオには必要だ。

 

「大々的に呼び戻す事は出来ないのだ。執事」

 

大々的にオシリスファミリアを呼び戻せば闇派閥の活性化、そして私とウラノスを失脚させたい者を活性化させる事になる。地位や名誉には興味は無いが、それでもまだギルド長の地位を降りるわけには行かないのだ。

 

「少数精鋭でオラリオに滞在して貰いたい。ギルド……いや、カワサキからこの魔道具を提供するし、表向きの仕事も準備する」

 

カワサキから譲り受けている認識阻害の指輪やペンダント、これがあればオシリスファミリアの団員を団員と認識出来なくなる。

 

「なるほど、私個人的には引き受けてもよろしいですが……1度ホームに戻り団長とオシリス様と話をしてから返事をします」

 

そう言って執事は立ち上がり、応接間を出て行こうとし思い出したように足を止めた。

 

「フェルズギルド長。良く覚えておくと良い、悪人はどこまで行っても悪人であり改心などしない。我々は苛烈な復讐を行うが、無差別に殺戮は行なわない。犯した罪に相応しい裁きを下しているという事を忘れないでいただきたい」

 

オシリスファミリアは闇派閥と同類の扱いをされているが、闇派閥ではない。彼らには彼らの正義があり、彼らを恐れる者は後ろめたい事があるからだ。だからこそオシリスファミリアとゼウス、ヘラファミリアに戦争遊戯を行なわせ彼らを追放したのだ。

 

「俺を見ていたな……殺されなかったのは運が良かっただけか」

 

エレボスが奥の部屋から出て来てやれやれと肩を竦めた。

 

「だがお前のお蔭で被害はある程度抑えれた。感謝してるよ」

 

「本当ならタナトスがやろうとしていたことは俺がやろうとしていたことだけどな」

 

カワサキとゼウス、ヘラの両名に出会えなければタナトスがやろうとしたオラリオの崩壊はエレボスが行なっていたことを考えれば確かにエレボスを今回の件の立役者として公表することは出来ない。

 

「エレボス。今日お前を呼んだ理由だが、お前とその眷属であるヴィトーには死んでもらいたい」

 

ウラノスの言葉にエレボスは一瞬眉を上げたが、すぐにその理由を理解した様子だった。

 

「俺の存在は闇派閥の活性化に繋がるか」

 

「ああ、言いたくは無いがお前は悪神に準ずるからな」

 

根が善良であっても死の神ということでエレボスを闇派閥と考える神は非常に多い、だからこそ次の旗頭になる前にエレボスには死んだという事にして貰いたい。

 

「タナトスの処刑と同時に処刑を行い、お前には地に潜んでもらいたい」

 

「断れる立場じゃないのは分かっているから引き受ける……が、これからカワサキの立ち位置は不味い事になる。それをしっかりとギルドの方でコントロールしてくれ、オラリオの恩人がオラリオを見限るようなことにならないようにな」

 

そう釘を刺してエレボスは応接間を出て行ったが、私とウラノスは揃って溜息を吐いた。

 

「カワサキの立ち位置か……正直な所、それが今の所の一番の問題だな」

 

「何処の神も享楽的過ぎて困る」

 

ダイダロス通りを立て直し、孤児や引退した冒険者達に仕事を与え、今回の闇派閥の襲撃の際には魔道具やポーション、それに炊き出しで冒険者や家を失った多くのオラリオの住民を救った。

 

「……何故神というのはこうも自分の事しか考えないのだ」

 

「それが超越存在としての神のあり方だからだろう。私を含めて……な」

 

カワサキを邪魔者として闇派閥の裏切り者としてギルドに精査を求めるファミリア、あるいはカワサキを所属させて自分のファミリアを拡大しようとする主神。

 

「闇派閥との戦いが終わってすぐこれか……本当にうんざりする」

 

良くも悪くもカワサキはオラリオを変えすぎた。闇派閥の脅威が一時的に弱まった事でカワサキの影響力を再認識し、まだ戦いが終わったばかりだと言うのに多くの神々がカワサキを排除、あるいは手にする為に動き出しているのだった。

 

 

 

メニュー38 ビーフシチューへ続く

 

 




闇派閥の脅威が無くなったら動き出す神々、これはダンまち時空ではあるあるではないかなと思ってやって見ました。良いも悪いも享楽主義だからこそこういう風に動くかなと思っております。色々意見、批判はあると思いますがこれは私の感じるオラリオの神々の悪いところとして書いてみました。それでは次回の更新もどうかよろしくお願いします。

オラリオにアインズ・ウール・ゴウンのメンバーがいるのは

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