ダンジョンで料理人が有名なのは間違っていますか? 作:混沌の魔法使い
メニュー39 激辛カレー その1
俺の立ち位置が良く無い事を案じてくれたガネーシャの招待で、俺はガネーシャファミリアに訪れていた。
「良く来てくれたカワサキ! ガネーシャは感激だッ!」
「今日はよろしくガネーシャ」
主神自ら出迎え握手を求めてくるガネーシャの手を握り返す。
「前に言っていた辛いカレーを楽しみにしていた! ガネーシャも作るから楽しみにしていてくれ」
「おう。楽しみにしてる」
ガネーシャと激辛カレーを互いに作りあい、それを食べようではないかというお誘いだったのだ。他にも辛いカレーが好きな団員も何人か参加するとは聞いているが、殆どは炊き出しの甘いカレーが主流だと聞いている。まぁスパイスをこれでもかと効かせた辛いカレーは好みが分かれるのも当然か、とはいえ俺は辛口のカレーが好みなので今日は俺が食べたい辛さのカレーをしっかりと作りたいと思う。
「さてと、始めるか」
ガネーシャに案内された厨房に荷物を下ろし早速調理を始める。使うのはガネーシャファミリアに来る前に買ってきたマトンだ。
(インドでは豚肉と牛肉は駄目らしいからな)
宗教上の問題で牛肉と豚肉は駄目らしいので、今回はマトンを買ってきたのだ。水洗いしたマトンから包丁で脂を取り除き、レモン汁と塩を混ぜ合わせてからヨーグルトも加えてマトン肉にしっかりと揉み込み、魔石で冷やす冷蔵庫の中に入れて休ませる。
「次はこれっと」
スパイスの山と量り、それとすりこぎを取り出して使うスパイスをすり潰し分量を丁寧に量る。激辛と言っても辛ければ良いと言うものではない、旨味と辛味の両立こそがカレーの真髄……スパイスの芸術と言われる由縁だ。
「こんな物か」
スパイスの準備を終えたら玉葱を微塵切りにし、親指くらいの大きさの生姜とにんにく一欠片を摩り下ろして混ぜ合わせる。
「始めるか」
フライパンの中にサラダ油をたっぷりと入れ、クミンシードとマスタードシードがそれぞれ小さじ1ずつ、カルダモンとクローブを4粒ずつ、ブラックペッパーを10粒、赤唐辛子をたっぷりと3本使ってじっくりと炒める。焦がさないように香りが立ってくるまで炒めたら微塵切りにしていた玉葱を加える。
「特製飴色玉葱が味の決め手ってね」
本来飴色玉葱は甘いものだが、大量のスパイスによって辛めに仕上げる。良い具合の飴色になってきたら、先程摩り下ろしていたにんにくと生姜を水で溶かして飴色玉葱に加える。これをじっくりと炒め、にんにくの香りが立って来たらトマトの缶詰を加え、トマトを潰しながら全体を良く混ぜ、水気が飛ぶまで炒める。
「良し、次だ」
今度は辛味を決めるカイエンペッパーを大さじ1、コリアンダー、ターメリック、クミンパウダー小さじ1を鍋の中に加えて、時々水を加えながら弱火で焦がさないようにじっくりと炒めてルーを作ったら1度火から降ろして、新しいフライパンでマトン肉を焼き色がつくまで炒めたらルーを加え、マトン肉の色がスパイスの色で紅く染まるまで混ぜ合わせながら炒める。
「完成は近いな」
マトン肉にしっかりとスパイスの味がついたであろうタイミングで水を加えて、スパイスを溶かしながら炒め粗引き唐辛子をたっぷりと加えて辛みの調整を行い。
「良い香りがしてきたな、どれどれ……んー……」
スパイスの香りがし、カレーの香りがしてきたので味見をするが、少し辛味が足りないのでカイエンペッパーと唐辛子を追加し、全体を良く馴染ませ、煮立つまで弱火で時々かき混ぜながらしっかりと煮込む。
「これで仕上げっと」
仕上げに調合したスパイスではなく、アイテムとして持っているガラムマサラを加え、辛味と香りを追加すればマトンの激辛カレーの完成だ。
「飲み物も用意しておくか」
辛いカレーに水は逆効果だ。カプサイシンは脂溶性で水では溶けないので水では逆効果になる。
「牛乳にヨーグルトにレモン汁に砂糖っと……牛肉は駄目でも牛乳はセーフだよな? まぁ後でガネーシャに聞いて見るか」
牛乳は多分大丈夫だよな? と少し不安を抱きながらアイテムボックスから取り出したミキサーでラッシーを大量に作り、それを次々と氷を入れたピッチャーの中に入れて飲み物の準備をしてから保存で良く冷えた状態を維持させる。
「さーて、ガネーシャはどんなカレーを作ってくるかな、楽しみだ」
ガネーシャはインドの神なので彼が作るのはきっと本場の激辛カレー。一体どんなカレーが来るのだろうかと期待しながらただの米では味気ないと思いサフランライスを炊く準備を始めるのだった……。
カワサキと料理対決というわけでは無いが、俺が作るのと違うカレーというのは興味があった。それに闇派閥の攻勢が終わり、カワサキの立ち位置が良くないのも知っているので後ろ盾というわけでは無いが、カワサキの後にはガネーシャファミリアがいるという印象付けをしたかったというのもある。
「スパイスの扱いならば俺とて負けんぞ」
……それとやっぱり少しカワサキへの対抗心もあったかもしれないと苦笑する。だがカレーと言えば俺の国の料理、それでカワサキに負けると言うのは正直面白くないと思う気持ちもあるのもある意味当然だった。
「まずは玉葱」
玉葱はカレーの基本だ。玉葱をたっぷりと微塵切りにし、にんにくと生姜を目分量で摩り下ろしておく。
(こういうところは本職に負けるかも知れんが、それでも俺のカレーは美味い)
料理を毎回同じレベルで提供するのは俺には出来ないが、それでも俺のカレーは美味いという自信がある。
「よし、始めるか」
鍋の中に油を入れ、スパイスを鍋の中に入れて弱火で炒める。この時使うスパイスも自分の勘とその日の気分で決める。
「にんにくと生姜」
スパイスの香りが出てきたらにんにくと生姜の擦りおろしを加え、弱火で炒める。
「香りが出てきたな。ここで玉葱」
にんにくの香りがしてきたらたっぷりの玉葱の微塵切りを加え、玉葱の色が変わったらスパイスをまた目分量で投入し、しっかりと混ぜ合わせる。
「♪~♪」
少し水を加えてスパイスの粉っぽさが無くなるまで炒めたらトマトを投入し、それをヘラで潰しながら炒め、全体が良く馴染んだら骨付きの鶏腿肉を加えて、スパイスと混ぜ合わせながら良く炒める。
「これで良しっと」
ルーが鶏腿肉全体に絡んだらひっくり返し蓋をして、自分の今までの経験の時間……多分大体3分くらい火を通したら蓋をして蒸し焼きにする。
「良し、我ながら上手く出来たな」
スパイスの分量に鶏肉もしっかりと中まで火が通っている上に、スパイスの旨味もしっかりと染み込んでいる。
「後はカワサキのカレーか。どんな物か楽しみだな」
いつもファミリアの団員に振舞っているカレーだ。辛くはあるので辛い物が苦手な団員には不評だが、辛い物が好きな団員には好評のカレーだ。美味いことには自信があるが、果たしてカワサキはどんなカレーを作ってくるのか、そして俺のカレーとどっちが美味いのかウキウキしながら俺は食事の準備を進めるのだった……。
ファミリアの食堂に漂ってくる刺激臭に思わず手が震えてくる。それほどまでに今回のカレーはやばいと食べる前から感じていた。
「アーディ……止めておいたら?」
「……カワサキさんの料理だよ。食べるよ……うん、食べる」
辛い料理はそこそこ食べれるけど、本気で作っている辛い料理を食べれるかどうかは少し不安はある。
「お姉ちゃんは辛いの好きだもんね」
「ああ。ガネーシャのカレーはいつも楽しみにしているからな」
カワサキさんのカレーも前向きに楽しみにしているお姉ちゃんを見ながら、私の食べれる辛さかなぁと少しだけ恐怖を覚える。
「カワサキの作ったカレーは美味かったけど甘かったからなあ」
「今度は辛いカレーだろ。どんなのか楽しみだなぁ」
皆が辛いカレーを楽しみにしているみたいだ。
(どんなカレーかなぁ……そこまで辛くないと……)
そこまで辛くないと良いなぁと思っていると、カレーが完成したのかカワサキさんとガネーシャが食堂に入ってきたのだが……。
「これは凄いな……」
「気合を入れて行かないと駄目そうだな。でも美味そうだ……ッ」
「待ってました! 大盛りでお願いするぜッ!」
湯気と香りだけで目が痛い。それに鼻も少し痛みを感じている。
(これ大丈夫……? お腹壊さない?)
果物や飲み物にサラダも次々と用意されているが、それで辛味が何処まで軽減されるのかが不安でならない。
「俺は骨付き鶏腿のカレーだ。まあ何時もと同じカレーだが、今回はスパイスに拘ってみたぞ」
「俺はマトン肉のカレーだ。今朝市場で良いマトンが売っていたから買ってきた。俺はスパイスだけではなく、米にも拘ってみた」
スパイスに拘った特製カレー……確かに辛そうな香りだが、その中でも美味しそうな香りもしている。少し怖いと思っていたが、カレーの蓋が開けられると食欲の出てくる香辛料の香りに恐怖心よりも美味しそうと言う気持ちが勝ったのだが、食べ始めてその余りの辛さにすぐに後悔する事になるのだった……。
メニュー40 激辛カレー その2へ続く
辛いカレーなので折角なので前後に分けて見たいと思い。今回は少し短いですが、ここで話を切りたいと思います。
辛いカレーを食べてバタバタするガネーシャファミリアがどうなるのか楽しみにしていてください。
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間違っている
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間違っていない